一般人と雪の音の少女   作:FKIN

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番外編です。ちなみに時系列は割とバラバラになると思います。短編集みたいな形で作ると思うので無印~Gの間ではありますけどその間のバラバラのものとなっております。絶唱しないとついたら基本的にネタに走ります。


戦姫絶唱しない大学生 その1

 

 《中村圭人のスペシャリテ》

 

 クリスが帰ってきた翌日の晩の事

 

 「」

 

 クリスは絶句していた。目の前の料理を見て……

 

 「どうした?食べないのか?」

 

 対して涼しい顔をしているのはこの料理の制作者にして……この部屋の家主である中村圭人。そして二人の目の前にあるのは……

 

 麻婆豆腐だった。

 

 「な、なぁ……?圭人?これ、なんだ?」

 

 「何って?決まってるだろ?麻婆豆腐だ」

 

 「決まってるだろ?じゃねぇよ!!普通の麻婆豆腐がこんなに煮立たないってことアタシでも知ってるぞ!?」

 

 そう指摘するクリス。そう。二人の目の前にあるのはたしかに麻婆豆腐だ。言うまでもなく。ただ、問題は……普通の麻婆豆腐にしてはありえなく赤い。むしろ紅を通り越して朱にちかい。そして煮だっていた……

 

 「……クリス……君は本当の麻婆を知らないのだな……」

 

 「ハァ!?何だよ本当の麻婆って!?」

 

 「……麻婆豆腐には中国四千年の歴史が詰まっている……そして、これは……俺の高校時代の行きつけの店の店長に認めてもらうまで通い、独り暮らしでここから離れるといったときに選別でもらったレシピで作った……要は俺のスペシャリテだ……」

 

 「いや、全く意味がわからないんだけど!?」

 

 いつもと全く雰囲気の違う圭人の姿に驚きを隠せないクリス……今の圭人の目はいつもの優しげのある目とかではない……正しく愉悦を求めているかのような黒い深淵を覗き込むような目をしていた。

 

 「まぁ、つまるところ言えば本場中国の麻婆豆腐みたいにスパイスとか全て調合してるって感じ。要は市販で売られているような麻婆豆腐のもとは一切使ってないって意味でもある」

 

 「そ、そうなのか……?」

 

 「そうそう。だから……おあがりよ……」

 

 そう言いながら口角を釣り上げ麻婆豆腐の皿を渡してくる圭人。

 

 「ち、ちなみに……拒否権は?」

 

 「ない。なんならお残しも許さん」

 

 「……マジかよ……」

 

 「マジだ……いつもの俺なら少しの慈悲をこめて甘口も用意してやるが……今回は流石に……な」

 

 と、圭人の好きなアニメの神父みたいな顔をして渡してくる……

 

 「この愉悦部め!!分かったよ!!食えばいいんだろ!?食えば!?」

 

 「そうだ。最初からそういえば良いものを……」

 

 そう言いながら圭人(愉悦部員)は目の前の麻婆豆腐をハフハフしながら食べていた。しかもこれみよがしに美味そうにしながら……

 

 「……」(ゴクリ)

 

 そして、アタシはレンゲで麻婆を掬い、見る。

 

 綺麗な色だ……これがとてつもない激辛だと知っていなければ……

 

 「……ええい、ままよ!!」

 

 そして、アタシは麻婆豆腐を口に含んだ……のだが……

 

 「……あれ?そんなに辛くない?」

 

 そう、普通の麻婆豆腐だった。中辛くらいの。

 

 「……流石に俺の域にいきなり挑戦させるのは酷だったのでな……先に甘口を用意しておいたんだ……どうだ?驚いたか?」ハフハフ

 

 「……え?」

 

 「……泰山の麻婆豆腐のランク愉悦は確かに辛いもの好きにはたまらない味だが……初めて食べるやつには刺激が強すぎるんだ……だから普通の食べとけ」

 

 そう言いながら自分の麻婆を食べる圭人。

 

 「……覚悟しとけって言っておいてこれかよ……」

 

 「……あぁ、でも。怖がらせないと罰ゲームにはならねぇだろ?」

 

 「……そうだな」

 

 「……オレの感じた気持ちはお前が今感じた恐怖以上だからな……それくらいですんだと思えば軽いだろ?」

 

 「……うん……」

 

 そうこたえ目の前に出された麻婆豆腐を食べる。普通の麻婆豆腐の中辛の辛さではあるけれどとても美味しく、白米と共に完食をした。

 

 「……ご馳走様でした」

 

 「お粗末さま。取り敢えず水につけておいてくれよ?」

 

 「おう」

 

 そうこたえアタシは食器を流し台に持っていき水につけておく。

 

 「……」ハフハフ

  

 「……なぁ、圭人?」

 

 「……ん?」

 

 「……改めてごめん……お前に心配かけちまった……」

 

 「ま、それに関しちゃ仕方ないさ。風鳴さんにも何かとあったんだろうし、未成年である俺とお前守る為だったのかもしんねぇ……だからもう気にすんな。俺の気はすでに麻婆ドッキリで晴れたからな」

 

 そう言い笑う。

 

 「ハッ……何だよ……それ……でもありがとう……許してくれて……」

 

 「いいって事よ。俺としちゃぁお前が帰ってきてくれたことが嬉しい限りさ〜」

 

 「……お前寂しがりやだもんな〜」

 

 「オマッ、それ言うなよ……」

 

 そう言いながらジト目で見てくる圭人。本当に時々だけどコイツが年上であることが信じられないときが多々ある。

 

 「……そういえばさ、圭人」

 

 「あん?」

 

 「それ、どんだけ辛いの?」

 

 アタシは興味本位で圭人の食べている麻婆豆腐の辛さを聞いてみた。

 

 「ん〜何だろうな〜口では説明できない強烈な辛さ?店長曰く中国の四川省の本場レベルを軽く凌駕するらしいからな〜でも食べているとそれだけで愉しくなってくるんだよなぁ……美味しすぎて……」

 

 そう言いながらお茶を口に含む圭人……あれ?それすごくやばいんじゃ……そんな圭人を見ていると圭人が何か思いついたような顔をしてアタシを見て

 

 「……食うか?」

 

 と、聞いてきたので……

 

 「食べない」

 

 真顔で力の限りを振り絞りそう返した……何故かこう返さないといけない気がしたのは気のせいだろうか……

 

 

 

 ただ、後にクリスもこの辛さに自然と慣れていくのだと……このときのクリスはまだ知らなかった……

 

 そして、そのさまを見て圭人はこう言ったらしい

 

 「……愉悦」

 

 と……

 

 

 

 

 《仏壇》

 

 ある日の出来事だった……

 

 朝食を食べ終わったので俺は洗い物。クリスはソファーの上で寝転がっていた。そんないつもの日常……ただ……

 

 「……知らなかった…。特機部二のシンフォギア装者やってると小遣いもらえるんだな」

 

 クリスの呟いた単語……その一言で今日一日が大きく動き出す。

 

 「なになに?風鳴さんのところってバイト代出んの?」

 

 「みたいだな……まぁ、あたしの小遣いだし好きに使おうかな」

 

 「ま、それでいいんじゃない?……ところで良かったらでいいんだけどさ……何円くらい入ってんの?見せてよ」

 

 「?いいぞ?」

 

 そうやって見せてくるクリス。ただ、ぱっと見せられた数字を見て俺は床に手をついた……

 

 「お、おい!?どうしたんだよ!?」

 

 「……なんでなん……」

 

 「ん?」

 

 「……なんで俺の給料の何倍もする値段高校生でもらってんの……」

 

 「……へ?」

 

 クリスは戸惑いの声をあげる。しかし、仕方がないのだ……クリスの給料は二課……つまり国家から支給されている……つまりそのぶん下手な仕事より多くもらえる。勿論それは圭人のバイト代よりも破格の支給なわけであってそれでへこたれているのだ……

 

 「……あんな桁……通帳でついてんの初めて見た……」

 

 「し、仕方ねぇだろ?い、一応国家の秘密組織なんだし……」

 

 「……ま、それもそうか……命張ってるしそんなもんかね」

 

 と言って互いに笑う。けれど圭人の心に受けた致命的なダメージはまだしばらくは癒えなさそうだ……そうこうしていると……

 

 「あっ……」

 

 「ん?なんか欲しいものでも思いついた?」

 

 「……あぁ、できた……なぁ、圭人?頼みがいくつかあるんだけどいいか?」

 

 「ん?頼み?」

 

 「あぁ……実は……」

 

 と、クリスがしてほしいことをいくつか言ってきた。

 

 「……多分大丈夫かな……本棚置こうと思ったスペースを使えば大丈夫だろうしね……じゃあ、早速見に行くかい?」

 

 「あぁ、行くか!!」

 

 そう言って二人で出かけた……そう……

 

 仏具店へ。

 

 「へへッ!!一番かっこいい仏壇を買いに来たぜ!!」

 

 「すいませーん、仏壇の移動の手配お願いしまーす。住所ここで。はい、はい……」

 

 そして、購入手続きと移動の手続きを行い……そして……

 

 我が家に仏壇がやってきた。うちの本棚に使われる予定だったスペースを占拠する形で。

 

 「……悪いな……仏壇の移動の手配を任せっきりにしたり、部屋のスペースを圧迫したりして……」

 

 「別に気にするなって。クリスのしたいこと……大体わかるし」

 

 そう、返すとクリスは少し悲しそうな顔をしながら……

 

 「あたしばっかり帰る家が出来ちゃ……パパとママに申し訳ねえからな……」

 

 と、位牌を見ながらそういった……少し泣きながら……やはり思うところがあるのだろう……

 

 「……」

 

 「圭人?」

 

 俺は無言で仏壇の前に正座し手を合わせる。

 

 (……クリスのお父さん、お母さん。あなた達の娘は俺が責任を持って面倒を見ます。彼女の助けになるかはわからないただの大学生なので不安かもしれませんが許してください……後、彼女の行く末をいつまでも見守っていてください……)

 

 と、伝えたい事を伝え俺は立ち上がる。

 

 「……何かパパとママに言ったのか?」

 

 「……あぁ、君の行く末を見守ってください……って言ったくらいかな?」

 

 「……見守ってくれるかな?」

 

 と、不安そうにするクリス。

 

 「……当たり前だろ?親ってもんは何時までも子供のことが心配なんだ。いつまでも見守ってくれてるよ」

 

 「……そうだな」

 

 と、涙を拭い笑顔になるクリス。あぁ、やっぱりお前は笑ってるほうがいいよ……その方がご両親も安心するだろうしな……

 

 

 

 

 《その後の生活》

 

 チーンチーンチーンチーン。

 

 クリスは学校に通う事となり朝仏壇の前で手を合わせている。

 

 「おはようさん。朝から騒々しくて悪いな。でも、騒々しいのは音楽一家らしいだろ?」

 

 「騒がしいのは余計だ。馬鹿。俺がいつものように起きてたから良かったものの……初日から寝坊して遅刻しかけるやつがいるか!!」

 

 そう、言いながら俺がリビングに入ってくるとクリスは

 

 「ば、そんな事ねぇよ!!絶対起きれたからな!!」

 

 「ハーン。ほんまかいな?昨日俺がバイオやってるときに隣で見てて怖くなって俺のベッドに入り込んだ娘のセリフとは思えへんのやけど?」

 

 「!? 言うな!?いいか、その事は忘れろぉぉぉぉ!?」

 

 そう叫びながら俺の胸を思いっきり叩いてくる。

 

 「痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いって……マジでやめろってもう……」

 

 「……自業自得だ……馬鹿……」

 

 そう言いながら顔をそらすクリス……まぁ、

 

 「んじゃま……行くかね……今日から俺も授業再開されるし……お前も早くいけよ〜遅刻しても知らないからな〜」

 

そう言ってリビングにおいてあるスポーツバッグを肩にかけ玄関口にむかう。

 

 「なっ!?さっきのはお前のせいだろ!!待てって圭人!!」

 

 そう言いながらクリスは圭人の後を追って部屋を出ていった。そして二人が家を出たあと仏壇の前に茶髪の男性と銀髪の女性が現れた。そして二人はそのまますり抜けるかのようにベランダの方へ行き口喧嘩しながらも笑いながら学校に向かっている我が子とこの家の家主に一礼をしたあと姿を消した。

 

 

 

 

 「?」

 

 「ん?どうかしたのか?」

 

 「……いいや、気のせいだ……なんでもねぇよ」

 

 「?そうか」

 

 「……あぁ……それじゃあ、クリス。高校生活楽しんでこいよ」

 

 そう言ってクリスと別れた。実は先程止まったときに何か聞こえたような気がした……その言葉はクリスには聞こえなかったようだが俺は少し聞き取れた。内容は……

 

 『『……クリスをよろしくお願いします』』

 

 「……任されました」

 

 俺は誰もいない道でそう一人呟いた……雪音夫妻の冥福を祈ります……





 と、言うわけでクリス三本立てでした。しばらくこのシリーズは続きますのでGはもう少しお待ちください。
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