ピピピピッ
タイマーの音で目が覚める。そろそろ入学式の会場ができた頃だろうか。起きなければ。と若干ぼんやりとした頭のまま起き上がろうとすると、
「あれ…」
おかしい、俺の体が起き上がらない。何かが俺にしがみついているみたいだ。
うっすらと目を開けると、俺のお腹のあたりに頭一個分くらい小さい青年が俺にしがみついたまま寝ていた。
そいつは髪がピンクでピアスがあり指輪やネックレスなどジャラジャラで明らかに不良のそれだ。俺も人のこと言えないが。
「…むにゃむにゃ」
不良とは思えない寝言だな。
「ちょっと〜困るっすよ〜俺入学式出なきゃいけないんすよ〜」
俺が大きめの声でピンクの彼を揺さぶると、急にガバッと起き上がり殴りかかってきた。
俺は違和感のないように横に転がりギリギリで避ける。
「危ないじゃないっすか!!」
俺が怒鳴ると我にかえったのかそいつは、
「あっれ〜☆ごめーん☆寝ぼけてて殴りかかっちゃった☆テヘペロ」
酷くこちらが逆に殴りたくなったがなんとか堪えどうして一緒に寝ていたのか聞く。
「今日入学式じゃん?サボりたかったんだけど先生に言ったら新入生は全員出席しろって言うじゃん?面倒くさいから近くで寝てよーと思ったら君が先に寝てたからさ☆」
ヘラヘラしながら答えるそいつ。
「嫌、理由になってないっすよ。なんで一緒に寝たのか聞いてるんです!」
「いや〜気持ちよさそうに寝てるから起こすの悪いじゃーん☆」
は?って言いそうになったがこいつはそういうやつなんだろう。問い詰めたほうが負けな気がする。もういい。気にしないことにしよう。
「そうなんすね…。じゃあ俺は入学式出るんでここでお別れっすね。」
そう言いながら俺は出口のドアまで歩く。
「僕は如月吉良(きさらぎきら)だよ☆君は今日から僕の相棒だ☆何かあったら助け合おうね☆イケメンくん☆」
バンッ!
強くドアを閉めたが耳がいい俺は全部聞き取れてしまった。なんだ相棒って何言ってんだこいつ頭湧いてんのか。
ヘラヘラと笑いながら入学式の会場に向かい俺は脳内で毒を吐く。
俺は案内された席に座った。どうやらクラスごとに席が決まっているらしく、俺はBクラスの席だった。この学園は優秀な順にA〜Eとクラス分けされている。
それとは別に問題児を集めたFクラスもある。
俺は自分で言うのはなんだが頭もよく運動神経もいい。下手したらAクラスのトップも狙えたかもしれない。しかし面倒くさい。果てしなく面倒くさい。面倒事には首を突っ込みたくないのだ。
なので、頭が悪いふりをする。言動も軽くなるように、しかし、能力が無いのも見下されるので能力は足が速いとか、そのぐらいにしておけば矛盾しないだろう。そんな考えである。
隣の席に座ったやつはいかにもスポーツしてそうな爽やかな青年だった。
彼が俺が見てるのに気づいたようで挨拶をしてくる。
「そこに座ってるってことは君もBクラスかな?僕は竹中優馬(たけなかゆうま)。同じクラス同士よろしくね」
期待通り爽やかな笑顔だ。差別をするようにも見えない。仲良くしても損は無いだろう。
俺はニコッと笑った。
「俺は明智海斗!仲良くしてくれると嬉しいっす!」
二人で他愛もない話をしながら体育館内を眺めていると吹奏楽らしき生徒たちが演奏を始めた。入学式が始まるようだ。
可愛らしいスカートを履いた女の子が指揮を振っている。
今更だがここは男子校だ。女の子など存在しない。教師なら分かるが、あれはどう見ても制服だ。
女装…と思いながら、眺めているとどうやら俺達のクラスが呼ばれたようだ慌てたように立ち上がると名前が呼ばれていく。
担任らしき人がこちらを見ているのが分かった
「明智海斗!」
「はいっ!」
元気よく答えると担任は満足そうに頷いた。
この見た目だから返事しないかもとか思われてたのかもしれない。
座りながらぼーっと話を聞いていると生徒会の紹介になったようだ。
ぞろぞろと個性の強い奴らが壇上に上がっていく。
小中高とエスカレーター式の学校で生徒会について知らないのは外部生の俺ぐらいらしく、竹中も生徒会についてはそこそこ知っているみたいだった。
「生徒会は強さと見た目のランキングで選ばれてるんだ。校内で、バトルを申し込める制度は知ってるだろう?それで勝っていってランキングが上位の人たちの中からあの人たちは推薦で選ばれたんだよ」
まあ、人気ランキングみたいなものだねほとんど、そう言いながら竹中は苦笑いをしていた。
生徒会長は獅子王陸(ししおりく)
ハーフのようで赤い髪に茶色の目をしている。体格も良く、男らしい見た目をしている。名前的にも王様そう呼ばれるのもわからなくない。
副会長は佐川零(さがわれい)
王子と形容してもおかしくないような繊細そうな顔でにこやかに笑っている。
中身も王子かは分からないが。
会計は一度話したことがある篠崎だ。この人も確かに真面目そうなといったが顔も整っている。
書紀は四ノ宮月(しのみやあかり)
身長がかなりデカイな、俺は180丁度だがそれ以上あるように見える。
しかし本人がほわほわと笑っているせいか、威圧感を感じないようだ。
庶務は二人いるみたいだ。片方は俺も朝話した真田だ。確かにこの人も金髪で不良っぽいが顔面は整っているだろう。
もう一人は土御門憐(つちみかどれん)
無表情で静かに周りを見ているのが印象的だ。口数も少なそうだ。
確かに全員見ても顔は整っている。強さのランキングというよりかは人気ランキング。確かに竹中の言うことも一理ある。
「こういうところが風紀は気に食わないんだろうね…やりたい人ではなく、人気で選ばれてるんだから。」
竹中の言ったことで風紀と生徒会の仲の悪さの理由を聞くことができた。
これは記憶しておこう。
風紀の紹介もあるようだ。人数は多く風紀は立候補制。立候補した中で優秀な人から順に構成されているらしい。
風紀委員長は篝和葉(かがりかずは)
茶髪でこの人も顔面は整ってるが立候補した中で一番優秀だったから委員長なのだとか。
副委員長はいないらしい。
風紀委員はそれぞれ人数が多いことで挨拶はしなかったのでどれがどの人か分からないが、副委員長候補と言われているのが風紀委員にいるらしく、竹中曰く
戸田光(とだひかる)
と言うやつらしい。
あれ?風紀委員長に見られている気がする。もともと視線は感じていた。しかし外部生だから物珍しいのかと思っていた、だが、明らかにじっとこちらを見ている。
まさか、風紀にもう目をつけられたのか??
じっとこちらも見つめ返すと、先程まで冷たい氷の様だった目がキラキラと輝いたように思える。あれ、この目見覚えが…。
俺の記憶がパラパラとページをめくり始める。
「あくのそしき…!…作ったらかいとくんも入ってくれる???」
あ…れ…?
見覚えが…??
俺は見なかったことにした。
俺は色々と学校の説明が合ったが体調が悪いと担任に言い、そそくさと竹中に連絡先を伝え、自分の寮に向かった。
Bクラスの寮はC〜Dと一緒で普通の寮だ。Aクラスの寮は学校付近にあり、見た目豪華な寮だった。ランキングが高くなると、どのクラスだったとしてもAクラスの寮を使うことができるらしい。Fクラスだけは別でランキングが高かろうと一番遠いあの監獄のような寮に入らなければいけないらしい。
すると隣りの寮で騒動が起きているようだ殴り合いのような音が聞こえる。
「うっける〜☆複数人で来といてめっちゃ僕にボコボコにされてるぅ〜☆」
耳のいい俺は声が聞こえた瞬間ダッシュで自分の寮に入った。
あいつ、もうバトルしてやがる!自分からじゃなかったみたいだが、巻き込まれるのはゴメンだ。相棒とか言ってくるやつだ。逃げたほうがいいに決まってる。
担任から端末をもらっていた俺はそれを使い部屋に入ると一人部屋らしく普通に生活できそうな広さで安心した。
二人部屋だと疲れそうだしな。
はぁ…学校生活…目立たずにやってけるのかな…