第1章:転生、そして出会い
【長崎:とある高校】
「だからさ、ここはこうやって……」
「わかった」
そう言って放課後の教室に残っているのは、
そして日が傾きかけてきた頃……。
「ここで終わりにしよう。これ以上詰め込んでやるのは、あまり効率が良くないから」
「そうだね。ありがと、教えてくれて」
「大丈夫。気をつけてな」
その言葉を最後に、颯樹の学友はそそくさと準備していた鞄を持って下校する。そしてそれを見た颯樹も準備を始め、学校から下校したのは午後6時になろうかと言う時間だった。
そして少し進んだ後……。
「あれ?……雨?」
(可笑しいな、今日は雨は降らないって予報だったのに。走って帰るか)
そう言って颯樹は走り始めた。その間にも雨は次第に強さを増し、雷まで鳴り出す始末となってしまった。
そして家の近くの横断歩道まで走って来たが、そこで不運にも颯樹を待っていたのは!
ゴロゴロゴロ……ピシャァァァァ!!!
「ぐぅぁぁぁぁ……!」
突如として落とされた雷の直撃を受け、颯樹は自身の意識を手放して行った。……その後の事はと言うと、子の帰宅の遅延を心配した母が様子を見に訪れたが、そこにはもう「手遅れ」としか言い様の無い光景だった。
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次に颯樹が目を覚ましたのは、今まで見た事も無い場所であった。
「ん……ここって。何処だ?」
「おお、気が付いたか」
颯樹が目を覚ましたのと同時に、部屋の中央から声が聞こえた。そこに座っていたのは、白髪に白い髭をこれでもかと生やしている老爺と思しき人だった。
さらに辺りを見渡すと、古き日本の家庭で良く見る卓袱台を始めとし、箪笥やテレビに畳などの簡素な家具が置かれていた。
「あの……ここは?」
「あー、お前さんには申し訳ない事をした」
「どう言う意味です?」
「実はな?お前さんが死んだ時に落ちた雷なんじゃが……」
その老爺と思しき人は、颯樹にありのままを説明し始める。颯樹は死んだ時の記憶があったので、それを頼りに何とか状況を整理できていた。
そしてひとつ息を吐くと、老爺と思しき人(次からは神様と表記)に自分の思いを告げる。
「状況は理解できました。特に気にしてませんよ。寧ろ、ここでワーワー喚いた所で何も変わらないので」
「ホゥ……よく人間が出来とるのぉ〜」
「ありがとうございます」
(本当は学校の先生や母さんに鍛えられたからだけどね、これって)
「突然ですまんが、今からお前さんには生き返ってもらうからの」
「良いですよ」
神様から告げられた言葉に、了解の意思を示した颯樹。普段の生活では聞かない「生き返ってもらう」という言葉に半信半疑の思いを持っていたのだが、それも有り得るよなという思いを持っていた。
その顔を見た神様は、驚きを隠せない様な事を颯樹へと伝える。
「ええ?良いのか?」
「はい、死んでしまったのは紛れも無い事実。ですので、次なる人生を確り自分の手で切り拓くだけです」
「……ふぅ。死んでしまった原因は儂じゃからな。何か罪滅ぼしをさせてくれんか」
「え?」
神様から持ち掛けられた提案に、颯樹は少し考え込んでしまう。……そして少し考えた後に、颯樹は神様にこう頼んだのだった。
その時に颯樹は、学生服のポケットの中に入っていたある物を取り出した。それは颯樹の元いた世界では連絡端末として重宝されている「スマートフォン」であった。
「これを使える様にしてくれませんか?……もし無理なら『無理』と言ってくれて良いのですが…」
「それをか?……出来ん事もないが、一つだけ条件があってな?」
「事情は分かってます。元居た世界には干渉できないけど、情報などは見る聞く事が出来るんですよね?」
「はぁ……儂から言う事はもう無さそうじゃな。お主もかなり理解しておるようじゃし……」
神様のため息と共に出た言葉に、颯樹は頷く事で肯定の意を示す。それを見た神様は、颯樹の元へと歩き始め、目の前へと移動したのだ。
「そのスマホは、お主の魔力で充電できるようにして置くからの。切れる心配もない」
「はい。ありがとうございます」
「さて……最後に貨幣価値の説明じゃがな?お主の元居た世界のお金は使えん。じゃが、今から行く世界では『金貨』を始めとした丸い貨幣を使うんじゃ」
そう言い始めた神様の説明を、颯樹は真剣に聴き込む。そして暫く話し続けると、神様は颯樹の額に触れて、何かの動作をし始めた。
それを感じた颯樹は目を閉じ、その力を受け入れる体制をとった。
「さて。転生して早速死んでしまったら堪らんからの、お主の身体能力や基礎能力、その他諸々の全ての能力値を底上げして置こう。これで、余程の事が無い限りは死なんじゃろう」
「良いんですか?ここまで大層な事を……」
「良いんじゃよ。元々は儂のせいじゃからな……さっきも言ったように、これは『罪滅ぼし』じゃ。有難く頂戴するもんじゃぞ?」
「分かりました」
颯樹が了解を示した頃を見計らい、神様は颯樹を別の世界へと転生させるのだった。その後に何を言われたのかは、颯樹は転生した後に知る事となるのだ。
それが分かってるかの様に、神様は颯樹を柔らかな笑顔で見送っていた。
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【ベルファスト王国:リフレットの街 郊外】
「ん……ここは…。そうか、ここが異世界」
転生後に気がついた颯樹は、周りの風景を見渡した。そこは元の颯樹の居た世界とは別の景色が広がっており、それはスマートフォンにインストールされている地図を見ても同じだった。
スマホを見ていた颯樹に、突然の着信が鳴り響く!その音に多少の驚きはしたものの、慣れた手つきで応じる。
『やあ、颯樹くん!無事に着いたようじゃな』
「はい。……えと、さっきの地図やこれは……」
『儂からの餞別じゃ。これで連絡を取り合う事ができるからの。ただし、そっちの世界にはあまり干渉出来んのでな』
「ありがとうございます、活用します」
『うん。それじゃあな』
そう言って神様は通話を終わった。そしてディスプレイには「12:00」と表記されており、今の時間帯がお昼時であると理解を示した。
颯樹は道なりに進んで、近くの町を目指そうと歩き出した。その隣を高級そうな馬車が通り過ぎた。
(へぇ〜、馬車か。如何にもって感じだね。……ハローワークの様な、仕事を提供する場とかも有るのかな?)
そう呟いて通っていた颯樹の数メートル手前で、先程の通り過ぎていた馬車が急停車した。そこから降りて来たのは、小柄だが恰幅の良さそうな人だった。
その人は颯樹の服を見るなり、この言葉を使って来たのだった!
「き、キミ!その服は、一体……何処で手に入れたのかね!」
「え?これですか?」
「もし良ければ、私に売ってくれぬか!報酬は弾ませてもらうから!」
(ま、この世界でのお金が手に入るのなら……良いよね。この世界だとこれは目立ち過ぎるから)
いきなり「服を売って欲しい」と言われた颯樹は、少し怪訝そうな顔を浮かべるも、その人の誘いに乗るのだった。馬車に揺られて連れて来られたのは、如何にも高級そうな服屋さんだった。
颯樹はスマートフォンの地図アプリを使って、このお店の名前を調べる。
(なるほど……ここは『ファッションキング・ザナック』って言うのか。さっきの人も『ザナック』って言ってたから……この人のお店なんだね)
「ささ、入ってくれ!君に合うものを用意させよう。勿論お金も払うのでな!」
「分かりました」
そう言って颯樹はザナックの後に着いていく。……これは後で分かった事なのだが、ザナックは颯樹の身に纏っていた全ての衣服を「売ってくれぬか!」と頼み込んでいた。
……その代わりとして目立たない服と、売った服の総代金である金貨8枚を得る事は出来た。この間だが『これで済むなら安いもんだろう』と颯樹はタカをくくっていたそうな。
「服とお金は手に入ったね。……じゃあ後は宿屋と仕事だけか」
(そう言えばザナックさん、宿屋の情報を教えてくれてたよね。確か……)
そう思って颯樹は地図アプリを開く。それを見ると、ザナックさんのお店の他に『銀月』と言う宿屋があるのを確認出来た。
一先ずはそこに向かう事にして、街中を歩いていたはいいのだが……。
『ちょっと!それってどういう事よ!』
(ん?喧嘩、かな?……取り敢えず行ってみるか)
聞こえて来た声を頼りに向かうと、そこには2人組の男女2ペアが何やら言い合いをしていた。女の子の方は髪が長めの女の子が、後ろで怯えている女の子を護るようにしていた。
男たちの方は筋肉質な2人で、以前の颯樹なら「敵わない」と思っていた。……今回の揉め事としては、左の男が握っている角に原因があるらしい。
「約束通り、水晶鹿の角を持って来たわよ!さあ、報酬は?」
「お姉ちゃん……」
「ちっ、仕方ねぇな。ほらよ」
そう言って男から投げられたのは、銀貨1枚だけであった。颯樹に関しては「1回の依頼で1万円相当貰えるだけでも良いんじゃ?」と思ったのだが、どうやらそれはお気に召さないらしく……。
「なっ……!銀貨たったの1枚!?報酬は『金貨1枚』のはずよ!」
「ほーら姉ちゃん、ここをよーく見てみな」
「んん?」
颯樹もその言葉を受けて、水晶鹿の角を見る事にする。その水晶鹿の角には、小さく傷跡があるのが見える。揉め事の原因は、どうやらそれにあるみたいだ。
「ここに傷があるだろ?だから『銀貨1枚』なのさ。新品じゃなけりゃ意味ねぇんだよ!」
「くぅぅぅ……!」
「だからあれ程『ギルドで正式な依頼を受けよう』って言ったのに……」
男たち2人に強気で言ってのけた女の子は、妹によって宥められる。これ以上は見ていられないと思ったのか、颯樹は4人の下に歩み寄った。
「あの、ちょっと」
「何だおめぇは」
「いえ、僕が用があるのは……そこの姉妹です」
「あ、あたしたち…?」
そう言って颯樹は、先程の女の子2人に声を掛ける。その時に言い放った言葉に、ロングヘアの女の子が食いついて来たのだ!
「その水晶鹿の角、金貨1枚で買うと言ったら……どうする?」
「……!売るわ!売らせて頂戴!」
「毎度あり!」
そう言って颯樹は、道端に落ちていた石ころを3発親指で撃ち放った!2つは男たちの額に当たり、最後の1個は水晶鹿の角にクリーンヒットした!直撃を受けた影響か、水晶鹿の角は握られていた部分を残して欠片と化していた。
それを見た男たちは、颯樹へと恨みと怒りを込めて突進し出した!
「なーにしてくれてんだ、てめぇ!」
(え?こんなに遅いの、相手は。仕方ない、少し相手には悪いけど大人しくして貰おうか……な!)
「ぐはあっ!」
1人の男が肘打ちに寄って倒れ、もう1人は先程のロングヘアの女の子が捩じ伏せていた(主に拳で)。状況が粗方片付くと、先程の男たちは一目散にその場から逃げ出して行った。
そして先程の女の子2人と颯樹は、互いにお互いを労う様な表情を浮かべていた。
「助けてくれてありがと。助かったわ」
「礼には及ばないよ。……はい、これ」
「え?……ちょっと、これって!」
そう言って颯樹が渡そうとしたのは、先程の男たちとのやり取りの中で提示した『金貨1枚』である。それを見た女の子2人は、顔を見合わせた後に慌て始めた。
……まあ、いきなり『金貨1枚』を渡されて、慌てふためくのも無理の無い話であるのだが。
「う、受け取れないわよ!……だって、角はもう…壊れちゃってるわよ…?」
(まあ、あんなに簡単に倒せるなら…壊す必要も無かったかな)
「なら、これはとんだ迷惑料という事で。取っておいて」
「そう?なら、遠慮なく。有難く受け取るわね」
そう言って先程の男を殴った女の子が、金貨1枚を颯樹から受け取る。そして専用のポーチに入れた所で、遅れ馳せではあるが、自己紹介を始めたのだった。
「あ、私はエルゼ・シルエスカって言うの。こっちは妹のリンゼ・シルエスカ。あなたは?この辺じゃ見ない顔だけど……」
「えと、僕は盛谷 颯樹。よろしく」
「もりや?」
「えーと、颯樹が名前で…盛谷が家名ね。家名の方はよく間違えられるから、名前で呼んで欲しい」
「珍しい名前ね、イーシェンの出身?」
ロングヘアの女の子……エルゼの言葉に、颯樹は首を傾げる。…確かに地図アプリを見たら「イーシェン」と記されている地域が存在している。形は何処か自分の故郷である日本を思わせる様だ。
「まあ、一応そうだね」
「ここへは何をしに?」
「観光かな。まずは宿屋を確保して、その後に仕事を探そうかと思ってるんだけど……『銀月』って宿屋を知ってるかな?」
颯樹から放たれた言葉が余程不思議だったのか、エルゼとリンゼは首を傾げてしまう。そして次第に理解して行くと、鳩が豆鉄砲を喰らったかのような顔をした。
少しして、颯樹の疑問にショートカットの女の子……リンゼが答えるのだった。
「『銀月』なら、私たちも泊まってる宿屋、です」
「なら、案内をお願いして大丈夫?」
「構わないわよ?それじゃあ、行きましょうか」
そう言って3人は『銀月』への道を歩き始めた。今この瞬間から、颯樹の異世界での長くも険しい冒険が始まるのであった。
今回はここまでです!如何でしたか?
最初ですので、思い切って《第1章》の半分まで進めてみました!次は初依頼の所から進めて、出来れば八重と出会う所まで行きたいなぁ〜と思う次第です。
アニメの方は毎日見てますので、第1期辺りは大丈夫ですが……問題は第2期からなので、そこで躓かない様にして行きたいと思います(年内にユミナとの出会いまで行ければ上出来)。
それではまた次回です!