異世界はスマートフォンとともに。if   作:咲野 皐月

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第15章:ミスミド領内、そして脅威。

「すみません、颯樹さん……」

 

「別に大丈夫だよ。態勢がキツかったら、遠慮なく言って良いからね」

 

 

アルマとユミナを同伴しての探訪を終えた後、ミスミド領内へと続く船の港に辿り着いた僕たちは、無事に仲間たちと再会を果たす事が出来た。そして案の定な展開だが、ブローチの件について質問が飛んで来た。その件に関しては、こちらで必ず用意するという事で納得して貰えた。

 

そしてガウの大河を渡って2時間後、僕たちはついにベルファスト王国を離れ、オリガさんとアルマの出身国であるミスミド王国へと突入した。実はその時の船内で、本を読んでいたリンゼが船酔いを起こし、更なる悪化を防ぐ為に僕が降船後にリンゼを背負っているという訳だ。

 

 

「想像してたよりも、少し大きな街なんだね」

 

「…ここはまだ、ベルファスト寄りだから、じゃないでしょうか」

 

 

僕がふと漏らした疑問に、背中のリンゼが答える。ラングレーの町を見渡してみると、人間と亜人の姿を見る事が出来たのだが、ベルファスト王国側が人間が大半だったのに対して、ミスミド王国側は亜人が大半である。今こうして露店を開いてるのも、殆どが亜人であった。色々な形があるんだなぁ……。

 

街の中を観察しながら、オリガさんの案内に従って街の中を歩いて行く。少し開けた所に出ると、僕たちがカナンの街まで乗って来た馬車と同じ物が3台用意されていた。

 

 

「どうしますか、颯樹さん。リンゼさんの体調が悪いようなら、今日は休んで明日から出発するという事にしましょうか?」

 

「あ、もう、大丈夫、です。船から降りたら、楽になりました」

 

 

リンゼはオリガさんからの質問に、普段通りの表情で答える。それを聞いた僕は、背負っていたリンゼを地面へと立たせる。……確かに、船から降りたら何ともなくなっているようだ。

 

その後にエルゼがリンゼにススッ…と近付いて、ある事を言い始めた。

 

 

「もっとおんぶしてもらっててもいいのよ、リンゼ〜」

 

「おっ、お姉ちゃんはっ、なっ、何を言っているのかな!?言っているのかな!?」

 

 

顔を真っ赤にしながら反発するリンゼ。……そりゃあ、ずっとおんぶされてたら、誰でも恥ずかしいか。自分じゃ気づいてないかもだけど、耳も赤いよ?

 

 

「では一時間後に出発しましょう。私は獣王陛下に手紙を出して来ますので」

 

「あ、で、では私もついて行きましょう!何があるか分かりませんので!」

 

「はい。ではリオン殿も」

 

 

そう言って二人は連れ立って歩き出す。……なんか、本当にお似合いの二人なんだよな〜。こりゃくっ付くのも時間の問題、という事かな?見ていて微笑ましい限りだね。

 

二人が離れた直後に僕たちも一時間後に待ち合わせという事で動き出し、各々の支度をし始めた。僕はユミナと共にお茶の葉や非常食等の、所謂細々とした物を露店で購入した。……その最中。

 

 

「?」

 

「どうかしましたか?」

 

 

僕の不審な行動に、ユミナが疑問をぶつけて来る。……今、誰かに見られてる様な気がしたんだけどな。そう思いながら、僕は琥珀に先程の視線の真偽を確かめる。

 

 

〈さっきのって、こっちの方を見てたよね。恐らく対象は僕たちか〉

 

〈はい。何者かが主たちの様子を伺っていました。今は完全に気配を消しています。ご注意ください〉

 

〈了解〉

 

 

先程の視線の正体に疑問を持ちつつも、露店での買い物を難なく済ませる。そして見た事の無い果物を10個ほど買って戻ると、他のメンバーが全員揃っていた。どうやら僕らで最後だったみたいだ。

 

 

「これでみんな揃いましたね。では出発致しましょう」

 

 

オリガさんがそう言うと、護衛の兵士たちは一番前方と後方の馬車に乗り込み始めた。僕たちは真ん中の馬車に乗り込む事になっている。エルゼと八重が御者台に座り、残りのみんなが客車に乗り込もうとした時、オリガさんの髪に桜のような花をあしらった髪飾りが光っているのを見つけた。

 

 

「あら、その髪飾り素敵ですね。よくお似合いです」

 

「え?そ、そうですか、ありがとうございます。ユミナ王女もよくお似合いです」

 

「ありがとうございます。颯樹さんから贈って貰った物です」

 

「颯樹殿はとても優しいお方ですね。妹のアルマもお世話になり、ユミナ王女の様な可愛い彼女さんにも手厚くしてくれるのですから」

 

 

オリガさんの髪飾りの話から、どんどんと本筋が離れて行く。……!……何だか、何処からかすごーーーく冷たい寒気がするんですが…?オリガさんとユミナの間には暖かな空気が流れる一方、僕は正体不明の威圧感に苛まれていた。

 

そんな事を知らずか、ユミナは話を続ける。

 

 

「はい。私の自慢の……未来の旦那様です♪何れは私の左手の薬指に指輪を填めて貰うつもりなので///」

 

 

きゃっ、と軽く嬉しい悲鳴をあげてその場を盛り上げていた。……こっちが謎の威圧感に苛まれてる中で、よくそんな事がズケズケと言えるよね……。その一方でオリガさんもクスクスと笑ってるし……はぁ、本当に3人に何か贈り物をした方が良いか?

 

──────────────────────

 

結局3人には大分怒られ、謝罪と感謝の気持ちを込めて3つの装飾品を贈った。2つは色違いだが同じ花をあしらった物を、最後の1つは白百合をあしらった物だ。エルゼには赤い薔薇を、リンゼには青い薔薇を、八重には白百合をって感じだ。

 

八重に送る際には、髪留めにし易い様にゴムも付けたのだ。3人ともそれが大層気に入ったのか、早速身に付けている。

 

 

「これじゃあ、日暮れまでにエルドの村に着くのは無理そうですね」

 

 

オリガさんの言葉に、僕はスマホの時間を確認して見る。……確かに今が17:00を指しており、エルドの村に着いたとしても真夜中になる事を示していた。今夜も野営かな?

 

 

「ミスミドは幾つもの種族が集まって出来た、云わば群体の様な物です。今でも種族毎に村や町を形成していて、互いに友好的な種族も有れば、互いに相手を毛嫌いしている種族も居ます。それを纏め上げているのが、国王陛下を含めた七族長なのです」

 

 

オリガさんから行なわれた説明に寄ると、七族長って言うのは……獣人族、有翼族、有角族、竜人族、樹人族、水棲族、妖精族の主要七種族の長なんだとか。で、現在は獣人族の長、獣王が国を統治しているのだとか。獣人は最も数が多いから、その方が国として機能がしやすいからだろうか。

 

 

「王位って、世襲制だったりします?国王の子供がその国を継ぐって感じの」

 

「一応そうですね。ですが、他の六種族の長も強い権限を持ってます」

 

 

成程ね……有力貴族みたいな物か。まだ出来たばかりの新興国だから、色々と課題も問題も山積状態だな。そう考えている間に、日が暮れて来た。暗くなると危ないから、そろそろ野営の準備を始めよっか。

 

少し開けた所に馬車を停め、野営の準備を始めた。集めて来た薪と石を使って小さな竈を作り、食事の用意を始める。僕もそれに参加し、野菜スープ(ミネストローネ)を作った。

 

どっぷりと陽が暮れて辺りが暗くなると、森の中のざわめきが少しずつ強くなっていく。夜行性の魔獣とかが多いのかな?

 

 

「ちょっと怖いですね……」

 

「大丈夫♪いざとなれば僕も居るし、琥珀も居るからね。通常の獣だったら小さいままでも撚って来ないし、魔獣でも直ぐに分かるからね。……スライムとかは無理だけど」

 

 

僕の作ったスープを飲みながら、ユミナが不安を零す。それに僕は安心する様に答え、琥珀からの念話の内容を伝えた。すると彼女は横にいた琥珀を抱き上げ、ギュッと抱き締めた。

 

 

「ありがとう、琥珀ちゃん」

 

『安心して下さい、奥方。私が居れば大丈夫です』

 

 

他のみんなに聞こえない様に、琥珀がユミナにそう伝える。その言葉に安心したのか、ユミナは微笑んで琥珀の頭を撫でた。

 

食事を摂っている最中にも、数人が交代で見張りを行なっていた。油断した隙をやられたら面倒な為、警戒心ゆるゆるで行くよりも、この方がずっと確実なのだ。しかしベルファスト騎士団の方が、見知らぬ土地の為に少し緊張していた。

 

 

「そろそろ八重とエルゼを迎えて来るよ。琥珀、ユミナとリンゼの事を頼むよ」

 

〈御意〉

 

 

ユミナに抱かれている琥珀にそう言うと、僕は他の人たちに気付かれないように、焚き火を囲む皆から離れて客車の中へと戻り、ベルファストにある自宅へ向かって【ゲート】を開いた。

 

僕が出現したリビングでは、エルゼと八重がすっかり寛いでいる。……全く、依頼の途中だってのに。その横には家のスーパー執事のライムさんが控えている。

 

 

「あ、もう時間?」

 

「忙しないでござるなぁ……まだ髪が乾ききっていないでござるよ」

 

 

そう、2人には先程までお風呂に入って貰っていた。他の人たちに【ゲート】の存在が気付かれないように、30分交代って制約を作って。

 

魔法で水は出せるので……盥に貯めた水に焼いた石に寄るお湯を作り、湯浴みをするという偽装工作を経て、その実、お風呂に入っている。二人一緒な理由はと言えば、片方が見張りという役で交代に湯浴みをするという流れになってるからだ。

 

 

「ほら、怪しまれない内に戻るよ。ライムさん、何か変わった事は有りましたか?」

 

「いえ、これと言って何も。ああ、フリオが庭の隅に家庭菜園を作ってはどうかと申しておりましたが、いかが致しましょうか」

 

 

家庭菜園、か。採れたての新鮮な野菜を食べられるのは、僕としても非常に嬉しいし、皆にとっても大助かりだしね。

 

 

「許可します。好きに使ってください」

 

「では、そのように」

 

「ほら、行くよ?2人とも」

 

「「はーい」」

 

 

そう言って僕は、エルゼと八重を連れて馬車の中に出る。……そう言えばラピスさんとセシルさんの姿が見えて居なかったが、何かあったのだろうか?まっ、他人の事情に首を突っ込んでも良いことは無いしね♪

 

そう思いながら外に出ると、何やら様子がおかしい。森が強くざわめいており、色々な動物たちの鳴き声が聴こえて来る。……え!?ホントに何なのさ!

 

 

「颯樹さん!」

 

「ユミナ!これは一体、どうなってんの?」

 

「分かりません……急に森の動物たちが騒ぎ出して……」

 

 

僕はユミナからの近況報告を聞き、辺りを見渡す。そして僕の横にいた兎の獣人であるレインさんが、何かを感じたように声を上げた。

 

 

「何か大きなものが来ます……空だ!」

 

 

どうやらこの現象を引き起こした元凶は、空に居るみたいだ。その実体を拝んでおこうかと思い立ち、空を見上げては見たのだが……。

 

 

「おいおい……冗談だろ?まさか、竜……かよ」

 

 

ベルファスト騎士団の人たちや、ユミナを始めとした仲間たちは、ボンヤリとしか見えて居なかったが、僕は確実にその姿を捉えていた。更に言うなら、ミスミド側の人たちは更に細かい所まで見えていた。

 

全身を黒い鱗で覆った巨大な体躯からは、見た者全てを平伏す絶対的な貫禄が備わり、手や足の鋭き爪は、触れた物全てを跡形も無く引き裂く力を持っていた。それを見た僕たちは衝撃に囚われていた。

 

 

「何でこんな所に竜が……!」

 

「え?どう言う意味ですか?まるで『普段はここまで来ない』って言い方ですけど……」

 

 

震える声で呟いたオリガさんの言葉に、僕は疑問を持ちつつも、彼女に問い掛けた。突然の竜の襲来に怯えた妹に寄り添いながら、僕の質問に答えて行く。

 

 

「竜…ドラゴンは普通、この国の中央にある聖域で暮らしています。そこは竜のテリトリーとして誰も立ち入る事は無く、また、竜たちも侵入者が居なければ、そこから出て暴れる事は無いのです。そうやって我々は住み分けてきたはずなのに……!」

 

「誰かが聖域に踏み込んだのですか!?」

 

 

オリガさんの答えた言葉に、ミスミド兵士隊長のガルンさんが声を荒らげる。……確かに、誰かが聖域に踏み込んだのだとすれば、それを撃退する為に竜が暴れ出したのだと説明がつく。

 

しかしそうとは一概にも言えず、例外がある事をガルンさんから伝えられた。……おいおいどうすんだよ、この状況は!




今回はここまでです!如何でしたか?


次回はいよいよ、ドラゴンとの戦闘シーンです!原作主人公とは違った方法で倒そうかと考えてますが、導入に関してはアニメを参考にしますので。そこら辺のご心配は無用です。まあ、弓に剣と持っているなら……応用させないといけないですよね?

関係ない話かもですが……今期最大の台風が、関東地方へと進路を定めて進んでいます!台風の通り道になっている県にお住まいの人たちは、3連休は気を付けて過ごして下さいね!


それではまた次回です!因みに、お話の中で3人に贈られた装飾品にあしらわれた花には、キチンと意味が存在しています。興味がありましたら、ググッてみては?次回の後書きでも紹介はするつもりですが。
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