異世界はスマートフォンとともに。if   作:咲野 皐月

17 / 60
第17章:竜殺し、そして復興支援。

僕とリンゼは、パーティーメンバーのエルゼや八重に先駆けて、目の前に立つ黒竜と対峙していた。後ろに下がろうと動くが、そこには黒竜の火炎のブレスによって燃やされた木々が広がっていた。

 

……どう行動しようか決めあぐねていると、夜の空を飛び翔る一つの影が映った。その影は黒竜の片目を斬撃で潰し、こちらへと降り立った!

 

 

「大丈夫でござるか、颯樹殿、リンゼ殿!」

 

「八重!良い所に!」

 

「拙者だけではござらんよ!」

 

 

駆け付けて来た八重の言葉を聞き、目を少しずらすと、そこには林の中から飛び出したエルゼが、竜の横腹に【ブースト】を付与した一撃を与えていた。

 

……だが、その攻撃も虚しく……。

 

 

「い、痛ったぁー!硬すぎるわよアイツ!」

 

「それは僕も実感したよ。刀がこんなになってしまったし」

 

「それだけの強度だという事でござるな」

 

 

僕がエルゼの愚痴に答えていると、竜の口からブレスが発射される。それを僕たちは寸での所で回避し、左右に散り分けられる。……高位魔法を使うのは初めてだけど、やってみますか!

 

 

「リンゼ、相手の足元を拘束!八重とエルゼは、少し時間を稼いで!」

 

「「「了解(でござる)!」」」

 

「【氷よ絡め、氷結の呪縛、アイスバインド】」

 

「こっちでござるよー!」

 

 

僕の指示に3人が動き出し、リンゼは水属性の拘束魔法である【アイスバインド】で黒竜を拘束し、八重とエルゼは黒竜の注意を惹き付けている。

 

……ありがとう、3人とも!僕は心の中でそう思いながら、魔法発動の為の詠唱を始める。

 

 

「【マルチプル】!」

 

 

僕の言葉で【マルチプル】の魔法陣が、次々と展開されて行く。1…2…4…8…16…32…64…128…256…512!512個の魔法陣が、黒竜の胴体に向けてセットを終えた。

 

……喰らえ!これが、僕の高位魔法だ!

 

 

「【雷よ穿て、百雷の矛、ライトニングジャベリン】!」

 

 

その詠唱と共に雷を纏った512本の槍が、黒竜の胴体へと向けて発射される。それを受けた黒竜は、最初は痛みによる反応を見せたものの、静かにその行動を止めた。

 

その後にリンゼに【アイスバインド】を解除してもらい、硬質で逞しい鱗に触れて見たが、何も反応を感じられず、グラりと横に倒れたのだった。

 

 

「やっ…た……」

 

「やったでござるよ、颯樹殿!」

 

 

八重とエルゼの2人が、はしゃぎながらこちらに駆け寄って来る。琥珀に乗ったリンゼもこちらへやってきた。何故か琥珀からは『スカッとした』と言う声が聞こえたが、そこまであの竜が憎たらしかったのか?分からんでもないが。

 

すると間隔を空けて、地面に黒い影が伸びた。何かと思って空を見上げると、さっきの竜とはまた別の竜が現れた。その竜の身体は紅く金色の目をしていて、白い体毛が鱗の間から見えていた。大きさは先程の黒竜よりも一回り大きいくらいか。

 

 

「戦闘態勢!……クソっ、もう一匹か!」

 

『こちらに戦う意思はない。我が同胞が迷惑を掛けたようだ、謝罪する』

 

「言葉が分かるんですか?」

 

『我は聖域を統べる赤竜。暴走した者を連れ戻しに来たのだが、どうやら一足遅かったみたいだ』

 

 

そう言って赤竜は、僕たちを確りと見回す。その金色の目からはどこか悲しそうな雰囲気が漂っていた。……そっか、連れ戻しに…。もう少し早ければ、こちらも対応のしようはあった筈なのに…。

 

何とも言い難い雰囲気の中、琥珀が赤竜の前に進み出る。

 

 

『赤竜よ、《蒼帝》に言っておけ。自分の眷属ぐらいちゃんと教育しておけとな』

 

『なに……?この気配……まさか…貴方は《白帝》様か!?何故このような所に……!?』

 

 

琥珀の応答に気づいた赤竜が、驚きの余りに目を丸くしてしまう。……そう言えば、琥珀って《白帝》って云われてる神獣なんだっけ。凄い獣を仲間にしたかもね、今更だけど。

 

 

『なるほど…黒竜を倒したのは《白帝》様であられましたか……道理で黒竜如きでは相手にも……』

 

『勘違いするでない。其奴を倒したのは我が主、颯樹殿だ。畏れ多くもこの小僧は我が主を侮辱しおったのでな。当然の報いよ』

 

『なんと…っ!?《白帝》様の主ですと!?人間が、ですか!?』

 

 

再び赤竜が驚愕した声を挙げる。金の双眸が僕を見つめる。……何か、品定めされてるかの様で落ち着かないんですが…。

 

やがて静かに赤竜は地面に降り立つと、身を屈めて頭を下げた。

 

 

『重ね重ねの御無礼、ひらにご容赦を願いたく…。此度の事はこの黒竜一人で行なった事。何卒温情を持って……』

 

「分かった。今回は琥珀や君の顔を立てる事にするよ。誰しも間違いはある。そこから学べば良いんだから。でもね?」

 

 

僕は目を細めて赤竜を見つめる。僕の視線に威圧を感じたのか、赤竜が背筋を強ばらせる。

 

 

「次のチャンスは存在しないよ。無論、他のどの竜がどのような事をしてもそれは同義。二度と同じ事が無いように、確り言い聞かせておいてね」

 

『は。必ず。直ちに聖域に戻り、皆に伝えましょう。それでは失礼致します』

 

 

そう言って赤竜は、自らの住処である聖域へと戻って行った。その後に琥珀が小虎の姿に戻り、3人が地面に座り込んでいた。……多分これも神様効果だったりして…ね?まあ、琥珀と《蒼帝》の事に関しては「竜虎相搏つ」という言葉の通りなのかもね。

 

僕はそんな事を考えながら、3人に回復魔法を掛けて回った。

 

──────────────────────

【翌日】

 

「あー、疲労困憊だよ全く」

 

 

僕は辺り一面に広がる草村に、身を投げ出していた。日の角度から計算するに、もう朝の7時過ぎだろうか…。黒竜を倒した後に街へと戻り、消火作業と怪我人の回復に大きな時間を費やした。リンゼは水魔法で消化を行ない、八重とエルゼは怪我人が居ないか走り回り、僕は連れて来られる怪我人を回復魔法で治療したのだ。

 

幸いにも被害者はそこまで居ないのだが、村全体はと言うと……ほぼ壊滅状態になっていた。被害甚大だなこれは…。

 

 

「颯樹殿、ここに居ましたか」

 

「リオンさん、お疲れ様です」

 

 

寝っ転がっている僕の元へ、リオンさんが歩いて来た。状況を鑑みるにもう大体収束したらしい。何処からか炊き出しのイイ匂いが漂って来ている。

 

 

「しかし、たった四人で竜を仕留めてしまうとは……。驚きを通り越して呆れてしまいます」

 

「そもそもあれはそんなに強くない若い竜らしいです。だからだと思いますよ?」

 

 

赤竜から聞いた事をボヤかしてリオンさんに伝える。と、そこに狼隊長のガルンさんもやって来る。

 

 

「おお、颯樹殿。あの竜の死体なんだが、どうするつもりだ?」

 

「え?竜の死体をどうするか、ですか?」

 

「いや、あれだけの素材だ。売れば物凄い金になるだろう。しかし、どうやって運ぶか……」

 

 

その言葉を聞いた僕は、首を傾げてしまった。それを見たリオンさんに説明を受けると、粗方の事を理解できた。先にパーティーメンバーである3人には話を通してあるらしく、その判断は僕に一任するとの事であったらしい。

 

……これからの冒険の資金にするよりも、先ずは壊れた街の復興や繁栄に役立てる方がとても有意義じゃないかなこれって。……よし、決めた。

 

 

「竜の死体は、全て余り残さずにエルド村に差し上げます。家屋や街の修繕にそれ以後の繁栄を考えると、僕たちが持ってるよりも遥かに最良な選択かと」

 

「竜をか!?全部か!?」

 

「颯樹殿、分かってますか?物凄い価値がある素材なんですよ?金額で言ったら王金貨10枚は下らないんですよ!?」

 

 

王金貨10枚って事は、1億円相当か……。持ってても使い道に困りそうだし、困ってる人が居るなら積極的に支援して行かないと、ね!

 

僕は朗らかな笑みを浮かべて、2人にこう伝えた。それを聞いた2人はたいそう驚いていたが。

 

 

「こんな大金、独り占めは出来ません。先程も言いましたが、全て余り残さずにエルド村に差し上げます。どうか役立てて貰えると嬉しいです」

 

「……ミスミドを代表して感謝する。ありがとう、颯樹殿」

 

「はあー…。父上が言った通り、器の大きい人ですね。頭が下がります」

 

 

エルドの村の人たちから、感謝と尊敬の眼差しが送られる。……ま、後で何やら言われても、取り付く島は与えないけど♪

 

その後インチキ転移鏡を使って、オリガさん、アルマ、ユミナを連れて帰って来ると、先ずはオリガさんに礼を言われた。竜を倒し、村を救ってくれた事に対してらしいが、それは護衛兵士たちの活躍もあったからだと純粋に思う。

 

その彼らも力尽きて、馬車の周りで仮眠を取っている。……マジで眠い。さっさと寝てしまおうかと思ったが、それを遮る様に僕の所に杖を突いた獣人の老人がやって来た。

 

 

「村長のソルムと申します。この度は村を襲った竜を倒して頂き、その上、村の復興に多大な援助まで……ありがとうございます」

 

「いえ、気にする事は無いですよ。僕たちは全員の意思でこの村を援助する事を決めたのですから、これくらい何ともありません」

 

 

僕は正直な気持ちをソルムさんに告げる。その後にソルムさんは村の人たちに、何かを持ってこさせていた。先が尖った何かの角?……もしかして、これって。

 

 

「これはあの竜から取った角の一本です。これだけでもお持ち下さい」

 

「え?これは皆さんに差し上げた筈では……」

 

「なんでも武器を損傷されたとか。この角があれば、新しい武器の素材にする事も、売って新品の武器を買うこともできましょう」

 

 

なるほど。では、お言葉に甘えて貰って置きますか♪受け取った竜の角を持ってみると、思いの外に軽かった。こんな軽い角で大きな竜がよく飛んだな〜と思ったが、硬さは鋼鉄以上だとか。……うわ。何となくわかった気がする。これより硬い物ってなると、ヒヒイロカネやミスリル、オリハルコン位しかないと言う事みたいだ。

 

僕はソルムさんの所から逃げる様に立ち去った。正直に言えば、眠くて眠くて仕方が無かったのである。馬車の中で休もうと思い立ち、覗いて見たら……3人が寝ていた。その馬車のドアを閉めた僕は、先程の場所へと戻っていた。

 

 

「颯樹さん、毛布をどうぞ」

 

「ありがと、ユミナ……」

 

 

そこに一枚の毛布を持って、ユミナがやって来た。タイミング的にもそろそろ寝たいと思っていた所で、この上ないナイスタイミングである。僕はゆっくりと閉じそうな瞼に抵抗する様にユミナにお礼を言うと、毛布を受け取ってそれに包まる。……温か。もう、無理ですわこれは…。

 

そして僕は意識を手放し、微睡みの中へと落ちて行くのであった。

 

──────────────────────

 

暫くして目を覚ますと、空をバックにユミナの顔が見えた。まだぼんやりとした眼で、僕を上から覗き込むユミナの顔を見つめる。

 

 

「ん……んん」

 

「お目覚めになりましたか?」

 

「あ、ああ……何とか、ね」

 

 

ユミナの問い掛けに、僕はそう答える。……ん?待て?これって。膝枕されてた!?今の今まで!?ゴロゴロっと地面を転がって、その状況を脱する。……少しユミナが名残惜しそうにしてたけど、今は状況確認が先!

 

ガバッと身を起こすと、周りの村人や既に起きていた護衛兵士たちがニヤニヤと生暖かい眼を向けていた。うわぁ……!大衆の面前で女の子に膝枕って…!気遣いはとても嬉しいが、恥ずかしさの方が勝るよこれ!

 

 

「あら、お目覚めのようね」

 

「…よく、眠っていましたね」

 

「気持ち良さそうでござったなぁ〜」

 

 

ブルり……と背筋に悪寒を感じて、恐る恐る後ろを振り返ると、そこにはにこやかな笑みを浮かべた3人の女の子が立っていた。……え?何で?ナンデ優しそうに笑ってんのに、目がワラッテナイワケ!?……何か、怒ってますか?

 

 

「あの〜、何かありました?」

 

「「「別に〜」」」

 

 

僕が3人に訪ねても、そっぽを向かれてしまう始末だ。ありゃ……これ、どう見ても怒ってますねはい。それを見兼ねたユミナが、3人を説得しにかかる。

 

 

「はいはい、そこまでにしましょう?じゃんけんは神聖な勝負です。恨みっこ無しのハズですよ?」

 

「わかってるわよ…」

 

「…むう…」

 

「残念至極…」

 

 

そう言ってユミナを含めた女性陣は、客車へと戻って行った。その後に琥珀に何があったか尋ねると、なかなか薄情者の答えが返って来た。……馬車の中で少し考えてみるかな。

 

そう思いながら、僕も客車の中へと戻って行った。その後に少し3人に聞いてみると、先の贈り物の件では無かったみたいなので、少し一安心した僕であった。




今回はここまで!如何でしたか?


次回はできれば……獣王陛下との戦いまで行きたいですね〜。新しい武器の話には行けなかったので、それはまた後の話にしましょうか♪

この前すると言っていた花の解説ですが、し損ねていたのでここでご紹介を。


薔薇(赤)→「愛情」「美」「情熱」など

薔薇(青)→「夢叶う」「奇跡」「神の祝福」

白百合→「汚れのない心」「純潔」


颯樹くんが3人に渡した意図は、花言葉が由来になっています。エルゼだったら「愛情」と「情熱」で、リンゼだったら「奇跡」の別の言い方をして「不可能を可能にする」、八重は『純粋で居て欲しい』と思っているので「純潔」を由来にしてます。

作者もそこまで考えた訳では無いので、どの様に考えたのかは皆さまで想像して見てください。


それではまた次回に!……ちなみにですが、投稿ペースって遅くした方が良いですか?このままで大丈夫ですか?もうちょっと加速させて行った方が良いですか?アンケート取りますんで、答えて貰えると嬉しいです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。