異世界はスマートフォンとともに。if   作:咲野 皐月

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第18章:ミスミド王都、そして獣王戦。

黒竜との騒動があってから2日が経過した頃、僕たちは遂にミスミド王国の王都である《ベルジュ》の街へと足を踏み入れた。ベルファストの王都も広かったが、ミスミドの王都もそれなりにあるのだと実感した。

 

 

「……うへぇ……こう来たか…」

 

 

王都ベルジュに着いてその宮殿を見た時、真っ先に出て来た感想がそれだった。何だろうか……インドにある『タージ・マハル』がその部類に当てはまるのだろうかと言う感覚だった。世界の建造物については詳しく知らないので、ここら辺はどうとも言えないのだけどね。

 

馬車から見る街並みは、ベルファストと較べたらまだまだ発展途上なのだと言わざるを得ないだろう。新興国なのだから、そこら辺は覚悟していたが。だが、街の人から感じる活気は、それに劣る物では無かった。……賑わってるね♪良い事だ。

 

高い建物が並ぶ街並みを通り抜け、宮殿への長い橋を渡る。都に巡らされた水路の上を走ると、宮殿の敷地へと入って行った。

 

 

「着きました、ここがミスミド王国の宮殿です」

 

「で、デカ……」

 

『あ、圧巻ですね…主』

 

 

馬車を降りてオリガさんと僕ら5人、そしてガルンさんにリオンさんの8人が、宮殿の庭を横目に歩道を歩いて行く。美しい庭園では小鳥が遊び、等間隔に植えられた木々の上からは、リスが此方を見つめていた。

 

長い階段を上がって宮殿の中へと入る。明るい日差しが天井の灯り取りから降り注ぎ、それが大理石の白と相まってキラキラと眩しく輝いている。僕らは中庭の中央を貫く、円柱が並んだ回廊を奥へ奥へと進んで行き、装飾が施された荘厳な扉の前へと着いた。

 

 

「この先は国王の謁見の間です。準備は出来ていますか?」

 

「もちろんです」

 

「では、開けますね」

 

 

オリガさんの問に僕はそう答え、その言葉と共にオリガさんが門番の兵士たちに一声を掛け、軽い軋みの音を立てて兵士たちが扉を開ける。中に入ると、そこには赤い絨毯が広がっており、天窓から光の差し込む謁見の間の左右には、様々な亜人たちが立っていた。誰も彼も立派な身なりで、この国の重臣たちだろうか。

 

そして中央に威厳を示す様に置かれた玉座では、この国の国王である、獣王ジャムカ・ブラウ・ミスミド陛下が悠然と腰掛けていた。見た感じは30代後半か40代前半を思わせるが、実際は50半ばだとか。白い体毛や髭を生やしたその顔からは、王としての風格や威圧などを感じられた。

 

僕たちは片膝を突いて跪き、頭を下げる。その後にオリガさんが獣王陛下に報告を始めた。

 

 

「国王陛下…オリガ・ストランド、ベルファスト王国より帰還してございます」

 

「うむ、大儀であった」

 

 

獣王が静かに頷く。続けてオリガさんの後ろに控えるガルンさんやリオンさんにも声が掛けられる。

 

 

「ガルン、そしてベルファストの騎士殿もオリガの護衛を無事果たしてくれた事を嬉しく思う」

 

「「ははっ」」

 

 

そして獣王はやおら此方を眺め、目を細めながら小さな笑みを浮かべる。

 

 

「そなたたちがベルファスト王からの使いの者たちだな?なんでも旅の途中、エルドの村を襲った竜をそなたたちだけで撃退したそうだが、それは事実かな?」

 

「はい。その通りでございます。ここに居る私以外の4名で、村を襲った黒竜を撃退致しました」

 

 

獣王の疑問に答えたのは、ユミナだった。獣王陛下の御前であるにも関わらず毅然とした態度で答えたユミナに対し、獣王陛下は誰何する。

 

 

「……そなたは?」

 

「申し遅れました。ベルファスト王国国王、トリストウィン・エルネス・ベルファストが娘、ユミナ・エルネア・ベルファストでございます」

 

 

謁見の間にどよめきが広がる。……まあ、妥当でしょうなぁ。一国の姫君がいきなり現れたんだからな。事情を知っているオリガさんとリオンさんはまだしも、ガルンさんは目を見開いて驚いている。

 

 

「なんと…ベルファストの姫君が何故我が国に?」

 

「ミスミドとの同盟は我が国にとってそれだけ重要ということでございますわ。これは父上からの書状でございます。どうかご確認を」

 

 

そう言って懐から一通の手紙を取り出す。なるほど。黒竜騒動の際に避難した時、国王陛下から受け取っていたと言う訳ね♪

 

側近の一人が恭しくその書状を受け取り、玉座の王へと手渡す。封を開けてその中にざっと目を通すと、獣王陛下はユミナの方を見て笑みを浮かべる。

 

 

「なるほど……。あいわかった。ここに書かれている内容を前向きに考え、近いうちに答えを出そう。それまでは姫様とそちらの方々もごゆるりと我が宮殿でお過ごしくだされ」

 

 

書状を側近の人に戻し、獣王陛下は僕らに向けてそう言葉をかけた。……あれ?何か、視線が僕の方を見て離さないのですが……嫌な予感。

 

 

「……フッ、血が滾ってくるよの。うむ。黒竜を倒した者がこちらへと出向いてくれたのだ。儂としてはその者の実力を見てみたいと思うておる。側に仕える白虎の事もあるが、儂に気遅れせぬ貴殿の力を見てみたい」

 

「はっ、お望みとあらば。我が手腕、お見せいたしましょう」

 

 

僕は獣王陛下からの提案を承諾する。それを見た重臣たちは揃いも揃って頭を抱えていた。……え?何か、受けたら不味かったですかこれ!

 

──────────────────────

 

連れて来られた闘技場は、正しく『闘技場』と言わんばかりの構造だった。感じとしてはイタリアにある《コロッセオ》みたいな物だろうか……闘技場の周りには水が張っており、それを浮かばせるように観客席やフィールドが存在する感じだ。

 

獣王陛下は右手に剣を持ち、左手には円形の盾を装備している。僕は右手の剣だけだ。……盾は使い慣れてないからね、仕方ない。

 

 

「勝負はどちらかが真剣ならば致命傷になる打撃を受けるか、あるいは自ら負けを認めるまで。魔法使用も可。ただし本体への直接的な攻撃魔法の使用は禁止。双方宜しいか?」

 

「了解した」

 

「OKです」

 

 

試合のルール説明を審判の有角人から受ける。……特段そこまで気負う感じでも無さそうだし、容赦も遠慮も要らないよね♪直前に、キチンと仕込まれてるし。

 

 

「それでは、開始!」

 

「まずはお手並み拝見、と行きましょうか」

 

「良いのか?では【アクセル】!」

 

 

僕はその場に立ちながら、獣王陛下の【アクセル】による加速された攻撃を流して行く。流石、これは獣王陛下と言ったところだろうか。一太刀一太刀を正確に狙っていて、普通の人なら流すので精一杯だろうか。

 

 

「これが儂の無属性魔法【アクセル】よ。手も足も出ないだろう?」

 

「……それで終わりですか?」

 

「ん?」

 

「【アクセル】【ブースト】」

 

 

僕は先程の獣王陛下が使った【アクセル】に、更に【ブースト】を付与しての攻撃を行なう。それを見た獣王陛下は負けじと【アクセル】で加速しながら、僕の剣筋を辿って行く。

 

……こんなもん?

 

 

「貴殿も【アクセル】の使い手だったとは……」

 

「僕の得意な魔法の一つです。その手の専門家には負けますけど…ね!」

 

「やるな!だが……儂も簡単にやられる気は無いわ!」

 

「遅い」

 

 

その言葉と共に僕は、獣王陛下の持っていた剣を横薙ぎで吹っ飛ばし、その後に【ブースト】を付与された剣で盾を切り裂く。……これで終わりだ!

 

 

「な、……」

 

「勝負あり。僕の勝ちです」

 

「……ハッハッハ!参った、儂の負けだ!」

 

 

獣王陛下が発した言葉を受け、僕は獣王陛下の喉元に突き付けていた剣をそっと引かせる。獣王陛下に勝った事でブーイングが起こる物だと思っていたが、実際はと言えば、周りから拍手と歓声が上がっていた。

 

……これで、グラーツさん達との約束は果たせたかな。少しは獣王陛下もシャキッとしてくれると良いが。そう思いながらも僕は闘技場を出ようとした。

 

 

「お疲れ様です」

 

「ユミナ、それにみんなも。少しヒヤリとさせてしまったかな」

 

「……ってよりもあんた、かなり剣筋が良いのね。あの獣王陛下を相手に圧勝とか……」

 

「拙者も一度手合わせを願いたい物でござるなぁ〜。颯樹殿となら、良い剣戟が出来そうでござるよ」

 

 

そう話し込んでいると、獣王陛下が僕の方へと歩み寄って来た。その顔は清々しくもあり、何処かサッパリした感覚が滲み出ていた。

 

 

「気持ちイイくらいに負けてしまったわ!強いな、颯樹とやら。どうだ?儂の国で兵士としてやって見ぬか?」

 

「いえ、結構です。僕よりも適任の人が必ずや現れるはずです。あ、それよりも側近の人たちを大事にしてあげて下さいな。かなーり不満が溜まってるみたいですよ?聞く限りだととんでもない事をしてるみたいですし」

 

「……そうだな。かーっ!しかし、あんなに気持ちイイくらいに負けたのは久々だ!」

 

 

そう言って高笑いをする獣王陛下。その横で僕は国王陛下の前だと言うのに、ため息をついてしまった。……ちょっとはしたないけど、これくらいは許してくれるだろうか…?

 

と思ったその時、獣王陛下が僕にある事を聞いて来た。僕との剣戟に夢中になり、聞くのをすっかり忘れていたのだろうか。

 

 

「ん?先程から気になっていたのだが……そこに居る白虎は、そなたたちの連れの者か?」

 

「ええ、まあ。従者のような者でして」

 

『がう』

 

 

獣王陛下の疑問には、少し言葉をあやふやにして僕は答え、琥珀は肯定の意を込めて短く答える。ミスミド王国では白虎は神聖視されているみたいで、それを『従者』扱い……と言うのは些かどうかなと思えたが、首輪やリードで拘束されている訳では無いので、誰も文句は付けて来なかった。

 

──────────────────────

 

その夜は王宮で軽いパーティーが催された。ミスミドの重臣たちや有力貴族、重要な大商人などを迎えて、オリガさん帰還のお祝いと、ベルファスト王女であるユミナの歓迎会のようだ。

 

本格的な宴では無いため、正装でなくとも構わなかったのだが……「どうせなら」という事で、身なりをその場に合った物に変えていた。

 

 

「お、颯樹殿。よくお似合いですよ」

 

「リオンさんこそ。よくお似合いです。……しかし、これは…何だか若干スペースが空いているからかスースーするのですが……」

 

 

僕が着ている格好は、白のたっぷりとした上下に黒のベスト。幅広の紺の帯に幾重にも身体に巻かれた白く長い布。……これでターバンでも巻いたら、アラジンやシンドバッドだろうな。前世では文化祭の時にスカートを母から借りて、大衆の面前で踊ったのだが(見ていたのが学校生徒と先生、保護者だけだった)、それが気恥ずかしかったのを今でも思い出す。それと似た感覚だ。慣れないと難しいね。

 

対してリオンさんは、黒の燕尾服だ。元々ブリッツ家と言うのは、男爵家の家系であるために、こういう場にも慣れているみたいだ。イケメンと並び立って見られると、僕の方が何だか居た堪れなくなってくる……。

 

 

「それで、その……オリガ殿は何処ですかね?」

 

「。そう言えばまだですね。ユミナたちも着付けに時間がかかってるのかな」

 

 

何気ないフリをしてリオンさんが尋ねてくる。そう言えばもう一人の主賓である彼女の姿も見えていなかった。そわそわと忙しなく動き回る騎士様に、苦笑しながらも周りを見渡す。

 

主賓のユミナを含め、エルゼ、リンゼ、八重もこの場に姿を見せていない。あちらも正装させられている所だろうな。ま、護衛に琥珀を付けたからおかしな格好にはされてない筈だ。……そんなことしてよう物なら、琥珀に念話で伝えて参加は辞退させてもらってたところだが。




今回はここまでです!如何でしたか?


獣王陛下との対決は、長々しく書いてもアレだったので……取り敢えず簡略化してみました。どうでしたか?その他の所は原作とそんなに大差は無い筈なので、しっかり見られるかな〜と思っていたり。

次回は(?)いよいよ6人目のヒロインが現れます!ミスミドに居て、6人目のヒロインと言えば……もうあの娘しか居ませんよね?その女の子と一緒にいるぬいぐるみも出しますよ!……描く前から楽しみだ!


アンケートのご協力、ありがとうございました♪大変これは個人的な事なのですが、投稿ペースは今までよりもガクんと落ちる形になります。申し訳ありません(^^;

投稿ペースは落ちますが、一話一話をより見易く面白く作って行く所存です!年度が切り替わるまでには、ルーとの出会いの所まで行きたいな〜とか考えてます。

ルーとの出会いの所も、ユミナの時と同様に一話一話を長めに描こうかと考えています。私がイセスマのヒロインの中で、ユミナと同率で大好きなヒロインですので!そこは手抜き等せずに(何時もしてないけど)、キチンと描いて行きたいと思います!


それではまた次回です!

次回の投稿日は、来週の月曜日である10月28日(月)の深夜0時です!どうぞお楽しみに!
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