異世界はスマートフォンとともに。if   作:咲野 皐月

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第19章:パーティー、そして妖精師匠。

「颯樹さん!」

 

 

そんな声と共に、急に後ろからドスッと腰の辺りに抱き着かれた。何事かと思いつつも振り返ると、下にはピコピコと動く小さな狐の耳。あ、これって。

 

 

「やっほ、アルマか」

 

 

可愛らしいドレスに身を包んだ、狐の女の子の頭を撫でる。と、アルマの後ろに恰幅のいい、白い髭を蓄えたにこやかな紳士が立っていた。その白髪混じりの頭からぴょこんと伸びた耳、太くて長い尻尾。この親にしてこの子あり、かな?かな?

 

 

「初めまして、アルマの父のオルバと申します」

 

「盛谷颯樹と言います。名前が颯樹で、盛谷は家名です。是非とも名前で呼んで貰えると」

 

「ほう。イーシェンの生まれで?」

 

 

またお決まりの言葉が来たよ……惑わされないかんね、絶対に。そう思いつつも、僕はオルバさんの固くて逞しい手を握る。

 

こうして見ると、歳をとったら耳とか尻尾にも白髪が混じってくるんだなぁ……と思ってしまう。その後にかなーり緊張しながらもリオンさんが自己紹介を始めた。

 

 

「べっ、ベルファスト王国第一騎士団所属、リオン・ブリッツでありましゅ!」

 

「おお、貴方が。オリガから話は聞いています。娘たちの護衛をして頂き、本当にありがとうございました」

 

「い、いえっ!それが我々の任務でしゅから!」

 

 

ふふっ、テンパってるテンパってる♪まあ、アルマの父親という事は、オリガさんの父親と言う事だから、テンパるのも何となくわかるけど。

 

それから話を聞くと、オルバさんは交易商人をしているのだと言う。最近は「将棋」を手に入れて、売り始めようとしてるとか。確か馬車の中に1セットあったはずだから、それを渡せば良いかな。その話については、リオンさんがオルバさんの所に後日伺う事で話が纏まった。

 

……何だろ?少し廊下側の所が騒がしくなって来たな。ちょっと行ってみますか♪

 

 

「……」

 

 

会場入口の方から現れたのは、獣王陛下とオリガさん、そしてユミナたちが立っていた。オリガさんはベルファスト王国の煌びやかなパーティードレスに身を包み、逆にユミナたちはインドのサリーのような民族衣装を纏っていた。エルゼは赤、リンゼは青、八重は紫、ユミナはピンクと言った具合だ。それぞれ色が違うが、とてもよく似合っている。傍らには琥珀が付き添っている。

 

 

「おう、颯樹殿。なかなか似合っているじゃないか。ミスミドの貴族と言われてもおかしくないぞ」

 

「そうですかね……」

 

 

ニヤニヤしながら僕を眺める獣王陛下。何だか……こういうのって、結構恥ずかしいのですが…。ふと横を見てみると、そこにはオリガさんのドレス姿に目を奪われるリオンさんが居た。あらら。髪には何時かの髪飾りが光っている。……ふむ、これは脈アリとみた。

 

その様子を後目に、ユミナたち4人が僕の所へとやって来た。

 

 

「似合ってますよ、颯樹さん。素敵です」

 

「うん、バッチリじゃない?」

 

「…何時もと、違う魅力があります」

 

「カッコイイでござるよ、颯樹殿」

 

 

4人も先程の獣王陛下と同じ事を言ってくる。……何だか照れるなぁ。僕も4人に似合っている旨を伝えて、写真を撮ろうと動き出した。その時に聞こえた音にビックリしたのか、何事かと誰何される。

 

僕がその疑問に答えて実物を見せると、次から次に「撮って欲しい」と言った旨の依頼が転がり込んで来た。仕舞いには『あーでもないこーでもない』と言う人も出る始末だ。ポラロイドカメラじゃないんだから……と、思ったその時。

 

 

「え?」

 

 

僕の目の前を通り過ぎたのは、50cm弱の熊のヌイグルミであった。ミスミドには獣人も居るから、その類かと思ったのだが……あれは正真正銘のぬいぐるみである。ひょこひょこと歩いている所を見るに、疲れてるのかな?そもそも、ぬいぐるみに『疲れ』があるのかが気になる所だが。

 

と、歩いていたクマがピタッと立ち止まり、僕の方に向けて目を合わせて来た。ヤバっ、目が合った。

 

 

じーーーーーーっ……。

 

じーーーーーーーーーっ……。

 

じーーーーーーーーーーーーっ……。

 

じーーーーーーーーーーーーーーーっ……。

 

 

……何時だったかな。こういうのって、前にもあった気がするんだよな〜。と、思っていると、くいっ、くいっとクマが手招きをしている。……付いて来い、って事?僕は訳が分からぬままに、クマの後を追う事にする。

 

一応、ユミナたちには『少し席を外す』と伝えて置きたかったので、琥珀を通じて念話を飛ばしておいた。……これで大丈夫かな。

 

──────────────────────

 

ひょこひょこ歩いて行くクマに付いて行くと、会場から少し離れた部屋の前に来た。ドアノブに手が届かないクマが、器用にジャンプしてノブを回し、ドアを開ける。中に入ると、またこちらを手招きして誘った。

 

その誘いに応じて中に入ると、薄暗い部屋で窓から入ってくる月明かりが見えた。そこそこ良い部屋のようで、家具なども確りと揃えられている。

 

 

「……あら?奇妙なお客さんを連れて来たわね、ポーラ」

 

 

不意に聞こえて来た声に、僕はビックリして辺りを見渡す。そこには窓の前にある赤いソファに腰掛けている、一人の少女が居た。歳はユミナやアルマと同じくらいだろうか、ツインテールにした白い髪に黄金色の瞳。フリルが付いた黒いドレスに黒い靴、そして黒のヘッドドレスと……まるで、ゴスロリ衣装だなぁ…。

 

……普通の人ならここで反応が止まるだろうが、僕はさらに深くまで見えていた。彼女の背中に拡がる薄い半透明の羽根。鳥などに着いている翼では無く、蝶の翅が背中から伸びていた。これって、妖精族?

 

 

「それで?貴方は何方かしら?」

 

「僕は盛谷颯樹。名前が颯樹で、盛谷は家名ね」

 

「イーシェンの生まれ?」

 

 

……その下りはもうよろし。いい加減聞き飽きた。でもまあ似たような物かな、としか返せなかったが。

 

僕の名前を聞いた少女は、何かを思い出したかのように言葉を紡ぎ始めた。

 

 

「なるほど。今日のパーティーに来てるっていう、話題の竜殺しね?」

 

「竜殺して。……と言うよりも、君は?」

 

「ああ、ごめんなさい。自己紹介が遅れたわね。私は妖精族の長、リーンよ。こっちはポーラ」

 

 

よ、妖精族の長!?この、ユミナと同じくらいの女の子が……!?驚きで声を出すのも忘れた僕を見て、可笑しそうに笑ったリーンは、少しずつ言葉を紡いで行く。

 

 

「こう見えても私は貴方よりずっと歳上よ?妖精族は長寿の一族だから」

 

「ご、ごめん……失礼だけど、今、幾つ?」

 

 

女性とか女の子に年齢を聞くのは禁句だと思いながらも、僕は彼女に幾つかを問う事にした。リーンはその質問を何でもないかのようにあっさりと答えた。

 

 

「どれくらいかしら…?600は確実に越えていると思うけど」

 

「はあ!?」

 

「面倒だから612歳って事にしといて」

 

 

いや、しといてって……。目の前にいる女の子が600オーバーって、何でもありだよね異世界って。その年齢なら妖精族の長ってのも納得できるね。

 

 

「妖精族は成長が遅いの?」

 

「……違うわよ。妖精族はある一定の年齢になると成長が止まるの。普通は人間で言うところの、見た目が10代後半から20代前半くらいで止まるんだけど、私の場合、止まるのが早かったのよ」

 

「……それは、何とも言えん辛さがあるだろうに……残念、としか言えないね」

 

 

プイッと唇を尖らせてブツブツと不満を呟く。どうやら成長しない身体に大層ご不満の様子らしい。そうした見た目は、ユミナとかと変わらないんだけどね。

 

そんなリーンを慰めるように、熊のヌイグルミであるポーラがヨシヨシと頭を撫でる。……結構器用だね、君。

 

 

「ところでそのポーラなんだけど、……もしかして【プログラム】を使ってたり、する?」

 

「ええ。そうよ。……という事は、貴方も【プログラム】の魔法を使えるの?」

 

「うん、一応はね」

 

 

リーンは訝しげな視線をこちらに向けて来る。そして先程のポーラと同じ様に、こちらをじーーーーーーーーーっと覗き込んで来た。子は親に似るって諺があるけど、この事か〜。

 

やがてふうっと息を吐き、腕を組んだ。

 

 

「いろいろ聞きたい事はあるけど、今はやめておきましょう。……ポーラに気に入った人間が居たら、連れてきてとプログラムしておいたけど、また面白いのを連れて来たわね。シャルロッテ以来の掘り出し物かもしれないわ、貴方」

 

「シャルロッテ?」

 

 

聞き覚えのある名前に思わず反応してしまう。……え?待って?シャルロッテって、あのシャルロッテさん?

 

 

「私の弟子の一人よ。今はベルファストで宮廷魔術師をしてたわね、確か」

 

 

やっぱりあのシャルロッテさんだった。……ん?あ!僕の頭の中で、点と線が繋がった感覚がした。シャルロッテさんから聞いた話を元に考察すると……このリーンがもしかして…。

 

 

「どうしたのよ、急に黙りこくっちゃって」

 

「い、いえ……何でもない」

 

「私は怒らないから、正直に言ってみなさい。多少の悩みなら相談に乗れるかもしれないわ」

 

 

そう言ってリーンは諭してくる。……もう、話すしか無いかな……だって、今から言おうと思ってる事、十中八九この娘の悪口なんだもん!シャルロッテさん、後で恨みますよ……!

 

 

「怒んないで聞いてね?……シャルロッテさんから聞いた話なんだけど、ぶっ倒れるまで魔法を使わせて、魔力を無理矢理回復させて、またぶっ倒れるまで魔法を使わせるって言う、地獄の鬼師匠が居るって……聞いたんだけ、ど……うわっ」

 

 

僕が発し始めた言葉を理解したリーンは、かなりの怒りを示しておられました。……怖っ!なんか、背中辺りに幾多の武器を背負った阿修羅が見えるんですけど!

 

少し間隔を置くと頭が冷えたのか、澄ました顔でこちらを見ながら話し始めた。

 

 

「……まあ、いいわ。シャルロッテは何時か引っぱたくとして、颯樹、貴方は無属性以外だったら、どの属性を使えるの?」

 

「全属性使えます」

 

「……もう驚かないわ」

 

 

しばらく溜め息をついて考え込んでいたリーンだったが、ゆっくりと金色の眼をこちらに向けると、自らの目の前でパンっと両手を打った。

 

そして僕にある提案を持ちかけて来た。

 

 

「───決めたわ。貴方、私の弟子になりなさい」

 

「え?」

 

 

ツインテールのゴスロリ少女は、何を思ったのか突然にもそう言い出した。……一瞬、彼女の瞳が「弄りがいのあるおもちゃを見つけた」と言わんばかりの輝きを見せていたのは、僕の気の所為だろうか…。

 

これに関しては何も言えないが、気の所為であってほしいと切に願う僕だった。




今回はここまでです!如何でしたか?


次回は国王同士の会談と、新武器の作成のお話を書こうかな〜と思っています。そこから先は水晶の魔物の正体や、八重の故郷であるイーシェンの話などをして行こうかな〜と考えてます♪

さて、前回は週一で投稿します♪と言いましたが、あれはもう忘れて下さい。週二で投稿しようかな〜と考えてたりです。一話はこの前の様に月曜日に、もう一話は今まで通りに金曜日に投稿します。ペースは格段に落ちますが、そうでもしないと年末までにアニメストーリーが終わりそうに無い事が発覚しましたので……。苦肉の策です、はい。


次回はこの前お話してたように、来週の月曜日に投稿します!多少困惑されるかと思いますが、そこら辺はごめんなさい耐えてください!

因みに……幕間劇自体は描くつもりですけど、ヒロインはユミナ一本で描くつもりです。他のヒロインも考えては見たんですが、どうしてもユミナをメインに置きがちなんですよね。それに以前幕間劇を執筆した際に寄せられた感想の中に「ユミナをメインにしたR-18版の話が見てみたい」という旨の感想がありましたので、そっちを描いてみようかな〜と思っています。

なので、他のヒロインメインの幕間劇を待たれている方は本当に申し訳ありません!これは私の力不足です!何卒ご容赦くださいな!
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