「んで、何でこんな事をしてた訳」
「我々は《エスピオン》、ベルファスト国王陛下直属の諜報員で、現在は姫様の身辺警護を任じられています」
「諜報員……スパイって訳か」
「その様に考えて貰えれば」
ラピスさんの説明に『なるほどな〜』と納得する。仮にも一国の王女様を預ける訳だから、ここまで考えていたと言う事か。うーむ、さすがは国王陛下と言った所かな?
そう言えば「銀月」の屋根裏でガサゴソと音がしたけど、あれはラピスさんたちだったのだなぁ……。そう考えれば辻褄が合いそうだけど。
「警護はラピスさんとセシルさんだけですか?」
「いえ〜、あと数人居ますよ〜。みんな女の子ですけど〜」
間延びした声でセシルさんが答える。表情を伺うと、にこにこと緊張感の無さそうな笑みを浮かべていた。みんな女の子なのか。まあ、その方が色々と都合が良いのかもね。天井裏に潜んで警護しているなら、着替えとかプライベート等も考慮して、その方が好ましいかもしれないね。
……え?僕の方はどうしてたかって?ユミナが着替える時は部屋から退出してましたよ?事前に本人とは打ち合わせていて、その通りにしていただけです。……おいこら、今変な事考えた輩はそこに直りなさい。粛清したげるから。
「ていう事は、ベルファストからここまで……ずっと付いて来てたと言う事ですか?」
「それが任務ですので」
「そう言えば一度【ゲート】で屋敷に戻った時、二人とも居なかったっけ。……まさか、ライムさんもグルだったり?」
「そうですよ〜」
うわぁ、思わぬ失敗しないで良かった……。必要無い所に首突っ込んでも得は無いからね。『火のないところに煙は立たない』って言葉の通りだよ。二人がメイドギルドに所属してるのは本当で、潜入捜査には必要なスキルが得られるのだとか。「エスピオン」の女性メンバーは漏れなく全員所属してるとか。……すげ。
「それで、これからどうするつもりです?僕には一応この事をユミナに伝えて置く権限がある訳ですが」
「私達の正体はどうか姫様には内密に……」
「姫様に護衛が付いていた事がバレると〜、姫様に国王陛下が怒られちゃうんですよ〜」
あ、そういう事が有るのね……。だから隠れて行動していた訳か。ユミナの雷が怖いから、本人には絶対に明かさない様にって。これは共感して良いのか?怒って良いのか?よく分かんないけどね。ま、何か被害が実際にあった訳でも無いし、伝えずに置く分にはさして何も問題無いでしょ。
「分かりました。僕の方でも口裏は合わせておきます。この後も引き続きよろしくお願いします。無論、僕の方でも警戒はして置くつもりですけど」
「ありがとうございます」
そんな会話を一通りした後、ラピスさんとセシルさんとは一先ず別れて、僕はユミナたちの元へと戻る。琥珀には状況を事細かに説明し、ユミナたちにはその時に何があったのか説明を求められたが、そこら辺に関しては「逃がした、ごめん」と濁しておいた。でも実際には一回だけだが逃げられているので、何とも言えない所ではあるのだが。
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次の日、ベルファストとミスミドの同盟内容を話し合うべく、国王同士が会談をする運びとなった。その際に何方が何方の王都へ出向くかで少し揉めたのだが、ベルファスト国王がミスミドへと出向く事で丸く納まった。
そして転移する為の(という事になっている)姿見を会議室にセッティングし、姿見の上で【ゲート】を開き、その中から国王陛下と弟のオルトリンデ公爵が現れる。鏡の中から人が出て来ると言う事に驚きを隠せなかったが、それも一瞬で元に戻り、当然の如く一国の王を恭しく出迎えた。
「ようこそミスミドへ、ベルファスト王よ」
「お招き感謝する、ミスミド王」
そう言って獣王陛下と国王陛下が手を取り合う。……さてここは国のお偉い方による会談の場。部外者は席を外すとしますか。一応中にはリオンさんを始めとした、僕らと一緒にやって来たベルファストの兵士団や、宰相であるグラーツさんに狼の獣人であるガルンさんを始めとしたミスミド兵士団も居るから大丈夫でしょ。
会議室から失礼して、廊下に出る。……後は会談が上手く行けば問題は無いのだが。
「ベルファスト王が来たみたいね」
「うん。今は中で会談中」
リーンからの問いに、僕は兵士の立つ扉に目を向けて答える。ここからは僕の推測だけど、かなり上手く行っていると思う。と言うのも、同盟を結べば両国の間に不可侵条約が結ばれて、他国から攻撃された時に協力が出来るからだ。更に言えば、そろそろくっ付くかも知れないお二人のサポートにもなるからね♪
「それで、弟子になる気はなった?」
「キミ、ホントにシツコイよね。僕にその気は無いし、受けるつもりも無いっての」
あれからリーンは、隙あらば僕を勧誘して来ている。この前と同じ様に、良い答えが聞けるまで逃がさないつもりか。……ぬぬぬぬ、かなーり大変だなこりゃあ。
そして隣にいるポーラは《こっち来いよ!》というジェスチャーしてるし。ほんと、器用だよねキミは。
「しかしポーラってぬいぐるみなのに生き生きしてるよね〜。それも【プログラム】してあるの?」
「ええ。もう200年近く、色んな反応、状況から自分の行動を起こせる様にしてあるのよ。人間だって叩かれて痛かったら泣くし、バカにされたら怒るでしょ?」
「……凄っ」
200年近くも……。その蓄積された無数の【プログラム】が、この様な自然さを生み出しているのかな?あれ?でもこれってさ【モデリング】で人間そっくりの人形を作って、今のポーラの様に【プログラム】を施せば出来るんじゃ……?……いや、止めておくか。200年近くも掛かってるんなら、妖精族の一部しか生きられない人間には幾世代掛かっても無駄だよね。
じーーーーっと見ていたのを不審に思ったのか、ポーラが少し後ずさった。こういう反応も【プログラム】のお陰なんだな〜。
「ところでさ、ポーラって200年近くも経ってるのに、ちっとも汚れとか劣化とかが見えないんだけど……それも無属性魔法のお陰だったり?」
「よく見抜いたわね。そうよ。保護魔法である【プロテクション】を掛けているの。色々な対象から、ある程度保護できるのよ。ポーラには汚れ、劣化、虫食いなどから影響を受けない様に保護しているわ」
なるほど……保護魔法か。あれ?それってさ、対象者自身に掛けたら、お風呂とか入らなくても良くなるって事?あーでもな、新陳代謝とかで垢とかは出たりするから……取り敢えずは『ずっと大切にしたい物』に掛けてた方が無難って事かな。それこそポーラみたいなぬいぐるみとか。
「ってかさ、リーンって幾つ無属性魔法を使えるの?僕が知ってる限りだと【プログラム】、【プロテクション】……シャルロッテさんからは【トランスファー】も使えるって聞いたけど…」
「妖精族は無属性魔法の適性が高いのよ。逆に無属性魔法を一個も使えない妖精族なんてあまり居ないわ。と言っても、私でさえ四つだけど」
一つでも使えたら良い方だと言われてる無属性魔法を、リーンは四つも持ってるのか。凄いな。って、無属性魔法を全て使える僕が言えた義理ではないよね。でもそれだったら、妖精族が魔法に特化した種族だと言うのも、物凄く納得できるね。リーンの残り一つの無属性魔法がちょっと気になるな……。
「颯樹殿、ベルファスト国王陛下がお呼びです。中に来てください」
「僕に?分かりました」
僕は中から出て来た宰相のグラーツさんに呼ばれ、会議室の中へと入る。そこには獣王陛下と国王陛下が居て、少しゆったりしている事から、もう会談は終わったのだと見られた。
「やあ、颯樹殿。話は滞り無く進んだよ。ありがとう」
「いえいえ、お役に立てたのなら良かったです」
ベルファストの王様の言葉を受け、僕はホッと胸を撫で下ろす。これで僕の仕事は殆ど終わった様なものかな?
「では我々はベルファストへ戻るよ。後のことを頼む。ミスミド王、これにて失礼」
「お任せあれ」
別れの挨拶(と言っても、明日には僕たちもそっちに帰るけど)を軽く済ませると、僕がこっそり開いた【ゲート】を通って、二人は鏡を通ってベルファストへと帰っていく。
二人が居なくなってから、僕は事前に打ち合わせしていた通りに行動を起こす。みんなの目の前で取り出したハンマーを使い、鏡を粉々に砕いた。
「さ、颯樹殿!?一体何を…!?」
「えーっと、ちょっと見ててくださいね?」
『???』
「【モデリング】」
慌てふためくグラーツさんに背を向けて、僕は鏡の破片と木枠を前に魔力を集中させて【モデリング】を発動させる。すると、割れた鏡と木枠が変形して行き、幾つかの小さな横長の鏡になる。縦2cm、横15cm程の鏡に木枠が嵌め込まれた物だ。そしてその一つにこっそりと【ゲート】を【エンチャント】して置く。
「これらの鏡はベルファストへと繋がっています。これから何か重要な連絡事をする時、ここに手紙を差し込んでやり取りした方が良いかもです。その際には、向こうに公的な書類だと分かる物を用意しないと行けませんがね。もちろん送られた側も同じですが」
「なるほど、往復20日掛かる連絡が一瞬で出来るのか。確かに便利だな。両国の交友に大いに活用させて貰おう」
僕から渡された鏡(後に『ゲートミラー』と命名)を受け取った獣王陛下は、僕に対して笑顔を浮かべた。これで僕の仕事は完全に終わったね〜。
さて、我が家に帰るかな。折角家を貰ったのに、全然ゆっくり出来なかったからな〜。明日から何日間かは休息にあてますかね♪
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「リオンさん達は、この後どうしますか?」
「私たちはここに残りますよ。この後の手続きとかで、ベルファストの人間が居ないと大変でしょうから」
「OKです。分かりました。それではこれを」
僕はリオンさんからの言葉を聞くと、先程作ったばかりのゲートミラーをセットで、リオンさんに手渡す。ひとつをオリガさんに渡しておけば、遠く離れていても連絡を取り合うことが可能だ。それを知った時のリオンさんの顔と言ったら……。ちょっと引いてしまった…。
「宜しいのですか!?我々は姫様の護衛を…」
「それはなりません」
「ひ、姫様!」
「貴方方は自分たちの仕事を為さって下さい」
もちろんリオンさんの決定に、異議を唱え立てる護衛の兵士たちも居たのだが……結局はユミナに丸め込まれる形となってしまった。ユミナ曰く「自分の仕事をしろ」という事で。……ま、妥当だわな。僕たちは【ゲート】を使って王都まで帰るから、ついて来られるとコチラが困る。
獣王陛下や宰相のグラーツさん、オリガさんに戦士長のガルンさんにも別れの挨拶を済ませる。リーンとポーラにも挨拶をしたかったのだが、彼女らは今は不在にしているとか。……うーん、残念。
今回はここまでです!如何でしたか?
次回はいよいよアニメ《第7章》の最後になります!その後には、アニメ《第8章『フレイズ、そしてイーシェンへ。』》の内容も少し入れようかなと考えてます!
先のお話のネタは、この前キャラクターのみ決まりました!どんな感じかは次回の後書きにて若しくは活動報告で、ご紹介できたら良いかな〜と考えてます(と言うよりも既に紹介済み)。あくまでも紹介程度にするので、アニメストーリー中に出て来る事はありませんよ?
それではまた次回です!次の投稿日は、11月11日(月)の深夜0時です!今回も感想を是非!