異世界はスマートフォンとともに。if   作:咲野 皐月

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第28章:鬼の傀儡、そして全体回復。

「な、何だありゃ……」

 

「此処が『カワゴエの砦』の近くでござる」

 

 

僕たちが【ゲート】を抜けて降り立ったのは、黒煙を上げて攻められている砦の近くだった。直ぐ様【ロングセンス】を使って、視覚を砦の方へと飛ばした。幸いにも迫り来る敵兵は防げている様だが、至る所から火の手が上がっていて、消化と迫り来る敵の撃退に手を焼いているみたいだ。

 

絶える事無く火矢が周囲を飛び交い、その隙間隙間を使って、砦をよじ登ろうとしている敵兵も幾つか見える。僕はスマホを取り出して、マップアプリで〘八重のお兄さん〙と検索する。……居た。砦の中、城壁の手前で左右に動いている。どうやら無事みたいだね。

 

 

「お兄さんの方は無事を確認したよ。……問題はお父さんの方だね。安否不明だよ」

 

「っ!早く砦に向かわないと……!」

 

「待ちなさい。貴女、あの中に飛び込んで無事で居られると思ってるの?」

 

 

直ぐにでも砦へと駆け出そうとした八重を、リーンが止める。砦の壁の前には沢山の敵兵が居り、近寄るのは容易では無さそうだ。……けど、方法が無い訳では無いんだよ?

 

 

「僕が【ロングセンス】で1km先を確認して、その後に【ゲート】で跳ぶ。これを繰り返せば、砦の中へと入れるよ。皆で行って下手に目立つよりも、まずは僕一人で行って来る。異常がない事を確認してから、改めて【ゲート】を開くよ。それまで待ってて欲しい」

 

「なるほどね。それなら確実だわ」

 

 

リーンが顎に手をやり、うーんと考え込む。あれ?そういえば……と思って、リーンに聞いてみたが、背中の羽根は有翼人とは違って退化してしまって、少し浮くぐらいしか出来ないんだとか。……残念。

 

僕はユミナ達から少し離れた後、魔法を発動させる態勢に入る。

 

 

「琥珀。皆を頼むよ。何かあったら直ぐ報告」

 

『分かりました』

 

「!?この子、喋るの!?」

 

 

リーンが僕に返事をした琥珀に、驚いて目を丸くしていた。……ありゃ?言ってなかったっけか?ミスミドの関係者にバラすのは不味かった?まあ、僕の能力についても黙っててくれるみたいだし、大丈夫じゃないかな〜とは思うんだけどね。

 

【ロングセンス】を展開して、1km先を視認する。……まずはあの辺りなら大丈夫かな。砦の手前にある林の中に【ゲート】を開く。

 

 

「じゃあ行って来る」

 

「お気をつけて」

 

 

ユミナの心配そうな声を背に受け、僕は【ゲート】を抜けて林の中に転移する。戦場特有の雄叫びや怒号が飛び交い、尋常ではない空気が漂っていた。焦げ臭さに混じって血の匂いまで漂って来る。……あんまりグズグズしては居られないね。

 

目の前の砦を見上げ、此処からどう跳ぶかを少し考える。あと2回ほど【ロングセンス】と【ゲート】を使えば城の中に入れるが、出来れば敵兵に見付からずに転移したいわなぁ……。

 

 

「【ロングセンス】」

(……あちゃー、何処も彼処(かしこ)も敵だらけ。ふぅ、仕方ない……こうなったら!比較的敵の少ない所に転移して、その辺りを完全に抑えてから【ゲート】を繋いで砦の中に入るか)

 

 

暫く視点を切り替えながら、比較的敵兵が少ない所を探す。……見つけた。彼処に転移して、目の前に居る弓兵を二人倒せたら、少しは時間を稼げそうだね。

 

 

「【リロード】」

 

 

右腰にあるレミントン・ニューモデルアーミーには【パラライズ】を付与したゴム弾を、腰の後ろにある剣銃ブリュンヒルドには実弾を込める。……まあ、これは相手が魔法に対する護符を持っていた時の対策と言う事で。

 

 

「……よし!【ゲート】!」

 

 

僕は先程【ロングセンス】で視認した場所に【ゲート】を開いて転移する。そのまま銃を構えて狙いを定め、二人の背後を目掛けて麻痺弾を連続で撃ち込む。そしてその二人はゆっくりと倒れ込む。

 

 

(うわぁ……なんか、卑怯臭い気が……ん?)

 

 

倒れ込んだ二人を見ると、麻痺する事無くムクリと立ち上がった!う、嘘でしょう!?しかも鞘から刀を抜いて戦闘態勢だし!……って、何あれ!

 

僕が驚いたのは相手の魔法抵抗の高さでは無く、相手の異様な姿だった。日本風の鎧兜に身を包んで、手には刀を握っている。……とまあ、そこまでは良いのだが……問題はその後だ。鬼の仮面を付けていて、鎧の中が紅く光る様に発光?していたのだ。

 

 

「……だったら……これだ!」ドンッ!

 

 

相手に麻痺弾が効かない事が解った僕は、剣銃を腰から引き抜く。そして相手の弓兵一人の足を目掛けて、ブリュンヒルドの引き金を引く。……出来れば殺したくないんだけどね。

 

と思った僕を他所に、足を撃たれた筈の弓兵は躊躇いも無く手に持った刀を振り被って、僕に襲いかかって来た!危な!

 

 

「仕方ない……【スリップ】!」

 

 

兵士の足下の摩擦係数が0になり、バランスを崩して転倒する。……よし!スリップ有能!その隙に刀を持つ手を左足で勢い良く踏み付け、右足で思い切り顔面を蹴り飛ばす。仮面が砕け散り、それっきりその兵士は襲って来なかった。

 

……マジで?コイツらって全員操られてんの!?ブリュンヒルドを左手に持ち替え、右手にニューモデルアーミーを再び抜き、刀を構えるもう一人の兵士の仮面にゴム弾を撃ち放った。

 

弾丸を叩き付けられた衝撃で仮面にヒビが入り、その後に真っ二つに砕け散る。地面に割れた仮面が落ちたと同時に、そいつは膝から崩れ落ちて倒れた。

 

 

「何なんだコイツらは……って、うわっ!何か血腥(ちなまぐさ)いし!もしかして……既に死んでたとか言う、そんなオチですか?」

 

 

もし『あの仮面が死体を操る為の道具で、それを使って死んだ兵士たちを再び立ち上がらせた』と言うのであれば、この状況も納得が行く。実際に銃弾を撃ち込んだヤツや、今倒れているヤツからも血があまり流れていないのだから。

 

 

「もしかして……死体を操る死霊術師(ネクロマンサー)とか居たり?……有り得そうで怖いんだけど。……取り敢えず、砦の方へと向かおうか」

 

 

思わぬ光景に身震いを覚えた僕は、再び【ロングセンス】で砦の中に視覚を飛ばす。敵だと思って斬り掛かられたら大変だからね。八重のお兄さんを探して、この状況を説明するのが先か。

 

えーっと?……居た居た、この人かな?黒髪に黒目で、右頬に刀の傷跡。黒い鎧を着込んでいて、穏やかそうだが身のこなしは只者では無さそうだ。身体中に返り血を浴びながらも、厳しい檄を飛ばしている。

 

 

「【ゲート】」

 

 

いきなり目の前に現れたら、驚いて斬り掛かられるかもなので……【ゲート】が開いた状態を保ちつつ、少し間を開けよう。向こうでは光の扉が開いた状態になってるから、それからゆっくりと姿を見せようかな。

 

僕は砦の中に開いた【ゲート】を潜り抜け、八重のお兄さんの目の前へと転移する。

 

 

「ッ!何者だ!?武田の手の者か!?」

 

「わわっ!待って下さい!敵じゃないです!……えーっと、貴方が九重八重のお兄さん、九重重太郎さんでお間違い無いですか?」

 

「確かに私は重太郎だが…。なぜ八重を知っている…?」

 

 

僕が現れた途端に刀を構え、八重のお兄さん……重太郎さんが誰何してくる。周りの兵士たちも、重太郎さんと同じ様に一斉に刀を向けて来た。わわっ!いきなりは怖いですって!

 

咄嗟に手を翳して、敵意が無い事を伝えた僕から、八重の名前が出て来た事に、重太郎さんは訝しげな視線を向けて来た。

 

 

「僕はベルファストと言う国で、八重と知り合った彼女の仲間です。お兄さんに危機が迫っている事を聞き、助けに来たと言う次第です」

 

「八重の!?」

 

「はい、彼女も近くに来ています。今から僕が転移魔法で呼びますが、構いませんか?」

 

 

ザワザワと周りの兵士が、重太郎さんに視線を向ける。「八重殿?」「八重殿が此処に?」と言う声が聞こえる事から、道場の門下生たちかな?と察せてしまう。

 

やがて重太郎さんが刀を降ろし、ゆっくりと頷いて肯定の意を見せた。

 

 

「じゃあ、呼びますね。【ゲート】」

 

 

僕が新たに開いた光の扉から、一人の少女が現れる。辺りを見渡して重太郎さんをその目に留めると、一目散に駆け寄りその胸に飛び込んだ。

 

 

「兄上!」

 

「八重……?本当に八重か?」

 

「はい!」

 

 

重太郎さんは八重が現れた事に対して、少し驚いていたものの……八重の身体を抱き寄せていた。兄妹が再会を喜んでいるのを横に、開かれた【ゲート】からは、ぞろぞろとエルゼ達が現れる。

 

そしてそれに気付いた重太郎さんは、八重へある事を質問するのだった。

 

 

「あの者たちは?」

 

「拙者の仲間たちでござるよ。みんな頼りになる者たちでござる」

 

(なんか、そう言われると照れるね……)

 

 

八重からの賛辞の言葉に、僕は少し顔を赤らめて居た。……いざ言われるとなると、嬉しいけど何か恥ずかしいなこれは……。

 

そんな状態の僕を他所に、八重はもう一人の家族の安否を確認し始めた。

 

 

「それよりも兄上、父上は?ご無事なのですか?」

 

「ああ、無事だから安心しなさい。父上は今家泰様の警護をしている。後で会うと良い」

 

 

父親を心配する妹に、優しく話し掛ける兄。……何だろ、戦場に居るってのに感動してくるわコレ……。それに絵になるよ、この人は。

 

……って、今はこの状況をどうにかしないと。怪我人が多数……重傷の兵士も居るだろうね。よし、これでやって見ますか。

 

 

「……〘徳川兵の怪我人〙で検索っと」

 

「?何をしているんだ、彼は」

 

「颯樹殿の十八番(おはこ)でござる。拙者も彼にはかなり助けられているんでござるよ」

 

 

僕はコートのポケットからスマホを取り出して、マップアプリの検索欄に〘徳川兵の怪我人〙と打ち込む。もしこれが〘怪我人〙と打ち込まれたら、敵である武田兵も含む事になるからね。右手の親指と人差し指を広げる様にして、砦全体を対象の範囲に入れる。……結構居るねこれは……。

 

対象の一つをタップすると、それに順応して全てのターゲットがロックされる。横を見ると、怪我をしている兵士の上に【マルチプル】の白い魔法陣が浮かび上がっている。最初のうちに【マルチプル】と【プログラム】はマップアプリに【エンチャント】してあるからね。楽チン楽チン♪……よし、準備OK!

 

 

「【光よ来たれ、安らかなる癒し、キュアヒール】」

 

 

魔法陣から柔らかな光の粒が降りて来る。やがてそれが怪我人を包み込むと、対象となった者たちの負っていた傷をみるみる塞ぎ、回復して行った。

 

暫くすると砦のあちらこちらから、喜ぶ様な歓声が上がり、目の前に居た怪我をしていた兵士も、不思議そうに立ち上がって身体を動かしていた。

 

 

「ちょっと……何したの?回復魔法をかけたのは分かったけど、まさか……」

 

「砦の怪我人全員を治したよ。初めての試みだったけど、成功して一安心だよ」

 

 

僕の言葉にリーンが呆れた様な視線を向けて来た。……ま、何となく言いたい事は分かりますよ。もし僕の立場が逆だったとしても、それは同じだろうからね。

 

何が起こったか分からない重太郎さんに、八重が説明を入れ、僕の方へと目を向けた。それを見た僕は重太郎さんへと伝言をする。

 

 

「あくまで《傷が塞がった》だけなので、あまり無茶をさせないで下さい。それと失った血は戻りませんので、それにも気を付けるようにと」

 

「あ、ああ、分かったよ。ちゃんと通達しておこう」

 

 

重太郎さんがまだ驚きから回復していない感じで、僕に返事を返して来る。取り敢えず……これで怪我人は何とかなったね。

 

……しかし、下がガチャガチャガチャガチャ煩わしいったらありゃしない。よし、こうなったら……一気に纏めて殲滅しよう。少々派手に暴れるかもだけど、そこら辺は勘弁ね!




今回はここまでです!如何でしたか?


次のお話の投稿日は、12月2日(月)深夜0時です!次回は、家泰との邂逅の話になります!しかし、実際の歴史と似た様な感じなので……すんなりとお話を読む事が出来ますね♪やっぱイセスマは最高ですね(//∇//)

〘お気に入り登録者数50件突破記念回〙の内容は、まだまだ募集しています!誰でも全然構いませんよ!活動報告を立ち上げてますので、其方にでも構いませんし……メッセージに送って貰っても結構!皆さんからの沢山のご提案、心よりお待ちしております!


最後に……私、最近〘はるにゃまん〙さんと絡み始めまして、その作者さんにも協力を依頼しています。その方は別サイト【小説家になろう】で活動してますので、是非ともこの機会に見に行って見ては?オススメします!

私的には「俺に友達が出来た途端に幼馴染とクラスの女子に後輩が迫ってきた!」がとてもオススメです!ハーメルンやTwitterでも活動してるので、ぜひ名前を覚えて下さいね!


今回も感想をお待ちしています!お気に入り登録、高評価も大歓迎ですよ♪
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