「ところで……敵兵の中に混じっている仮面を被った兵士は何者です?」
「分からない。あの兵士の顔に付いている仮面を破壊するまでは、槍で突こうが剣で切り裂こうが、何度も立ち上がって来るんだ」
僕は砦の開けた場所へと出て、眼下の戦場を見渡す。仮面を被った兵士は未だ砦へと侵攻を続けていて、徳川の兵はそれを迎え撃つので精一杯と言った感じだ。
「ふぅん……。何かの無属性魔法か、で無ければ《アーティファクト》かしらね」
「《アーティファクト》……魔法や古代の技術を使って造られた道具の事か」
「その通りよ。貴方の持ってるそれも、アーティファクトなんじゃないの?」
リーンに手に持っていたスマホを指差され、思わず苦笑いを浮かべて誤魔化す。……死体を操るコントローラーがあるとして、あの兵士の顔に付いている仮面は、命令を受け付けて受信する為の装置みたいな物かな。
……まあ、仮面を壊すしか対処法が無いし【パラライズ】も効かないみたいだし……ここは一気に殲滅した方が良いみたいだね。
「……殲滅以外有り得ませんね」
「……なんだって?」
不思議そうに重太郎さんが僕を見る横で、僕はスマホのマップアプリで〘仮面の武田兵〙と検索をかける。すると画面上の砦の周りにストトトトッとピンが落ちまくり、その一つをタップしたら全てのターゲットがロックされた。
そして戦場の上空には、照準を合わせた事を示す白い魔法陣【マルチプル】が無数に浮かんでいる。誰か何か言っているけど、こっちとしてはそんなの関係無いので。
「……!」
僕は左手を空に翳し、魔力を集中させて……呪文の詠唱と共に一気に解放させた!喰らえ!
「【光よ穿て、輝く聖槍、シャイニングジャベリン】!」
敵をロックオンした全ての魔法陣から、光の槍がまるで激しい雨を降らせるが如く、ターゲットへと照準を合わせて降り注いで行く。幾度と無く地響きが鳴り響き、土煙と光の粒が火花のように弾け飛ぶ。眩い光彩陸離の光の煌めきが、弾けては消え、弾けては消える。
やがて光の雨があがった後には、武田勢のほぼ半数以上が地に倒れ伏して動けなくなっていた。
「はい。仕上げに【パラライズ】をっと」
そのまま検索対象を〘武田兵〙と検索し直し、僕は【パラライズ】を発動させる。ほとんどの武田兵は痺れて動けなくなったが、一部は護符を持っていたお陰で助かったみたいだ。その護符で助かった兵士達は、自軍の異様な様を目撃するや否や一目散に逃げ出していた。
「ふぅ……とりま、これで完了かな」
「今のは……君が、やったのか……?」
しばらく唖然としていた砦の徳川兵だが、状況が把握出来てきた途端、皆一斉に勝鬨の雄叫びを上げた。その横では唖然とした顔で、重太郎さんが掠れる声でこちらに問い掛けて来る。
……まあ、無理も無いか。いきなりほとんどの武田兵が戦闘不能になり、それを見た残りが踵を返して逃げ去るって言うのは。普段なら見ない光景だからね〜。
「まあ、一応。騒がれるのは苦手なので、あまり言いふらさないで貰えると」
「わ、分かった……」
僕がそう答えると、傍に居たエルゼが腰に手を当てて、大きく息を吐いた。……また何か僕はやってしまったみたいで。状況が違ったら多分、僕も同じなんだろうね。
僕はやってしまった事の重大さと、微妙な空気を背に受けつつ眼下の状況を眺めているのだった……。
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「先ずは此度の助太刀、心から御礼申し上げる」
砦の天守閣(と言っても15畳程の板の間だけど)で、上座に座る恰幅の良さそうな、40代前半のちょび髭の男性が深々と頭を下げた。この人が
「いえ、此方に出向いたのは偶々の事です。どうかお気になさらぬ様に」
僕らの前に座って、家泰と対峙しているのはユミナだ。ベルファストの王女と言う立場を取り、あくまでも僕らは《ユミナの護衛》という事にした。その方が向こうにもわかり易いかと思ったが、毎度毎度の事ながらユミナの社交性には助けられてばかりだ。
八重はユミナの護衛の一人という事にした。その繋がりでここへ助太刀に来た、と言う形にしたのである。実際その通りなので、そこは何の不思議も無い。
「それにしても八重がユミナ姫の護衛とは……。驚いたぞ全く」
家泰の横に座っている、がっしりとした40代後半の偉丈夫が
「して、其方の……我が砦を救ってくれた彼は……?」
「この方は盛谷颯樹さんと申しまして、私の護衛……と言うか未来の旦那様です♪」
家泰さんから問われた質問に、ユミナは確りと答えを返して行く。……その最後にはキャッ♪と頬を染めて、身を捩らせていたが……。……まあ、実際その通りだから何も言い返せんけどさ……。
ほぉ〜、と感心とも驚きとも取れる声を漏らす、領主と指南役。いやいや、その反応はどうな訳?
「いや、なるほど。ベルファスト王女の
「ええ、私もこの方を誇りに思いますわ」
家泰さんからの賞賛に、まるで自分の事の様に胸を張るユミナ。もうやめてくれんかな……正直居づらいんですが……。嬉しいのは確かだけどね///
「ところで一つお聞きしたいのですが《ニルヤの遺跡》なる場所をお知りでは無いでしょうか?我々はそこを目指してイーシェンへ来たのですが……」
「ニルヤ……?」
ふと放たれたユミナの問い掛けに、暫し考え込んでいた家泰さんだったが、やがて何かに思い当たったのか、膝をポンと叩いて答えた。
「ああ、《ニライカナイの遺産》があると言う遺跡の事ですな。私は詳しくは存じませぬが……。重兵衛はどうだ?」
「確か……ニルヤの遺跡は島津の領地にあったかと。しかし彼処は海の底ですぞ、入る事すらままならないと思いますが……」
海の底!?それって、海底遺跡って事!?んー、どうやってそこに行くんだろうか……。潮の満ち干きによって生じる陸路を通って入るとか?
まあ、何にしても行かないとわからないよね。とにかくその遺跡の場所は分かったんだから、いざそこに向けて出発─────とは行かないよね……。
「武田軍ですが、あれでこのまま引き下がると思いますか?」
「確かにまた態勢を整えて攻めて来るやもしれぬ。鬼面の兵士たちを更に増やし、大砲を持ち出して来るかも……」
僕が家泰さんにそう尋ねると、彼は腕を組んで唸り始めた。家泰さんとしては、またあの事態……更に言えば、そこからまた大きな被害が出るのでは?と危惧しているみたい。
ま、いくら兵士たちを仮面で仕立てあげても、さっきと同じように殲滅するだけだけど。大砲とかは少し面倒臭いけど、潰す事は出来なくは無いよね。
「しかし……此度の鬼面兵と言い、突然の侵略と言い、訳が分からぬ。武田の領主である真玄殿は、武田四天王と呼ばれる四人の武将を率いる猛者ではあるが、今回の戦いはどこか真玄殿らしくない様に思える。やはり、あの噂は本当なのだろうか……」
「え?何ですか、その噂」
ふと漏らした家泰さんの呟きに、今度は僕が聞き返してしまう。それに対して返答をしたのは、家泰さんでは無く、その傍に座る重兵衛さんだった。
「既に真玄殿は亡くなっていると言う噂だ。そしてその死体を操り、武田軍を意のままにしているのが、闇の軍師・山本完助だと」
「山本完助……ソイツが今回の元凶って訳か」
「あの鬼面兵を見ていると、有り得ない事じゃないわね。死体を操る事に特化した魔法、若しくはアーティファクト使いなのかもしれない」
重兵衛さんの話を聞いて、リーンが自らの考えを述べる。確かにあれ程の死体を動かせるなら、今の考察が正しいだろう。完助の目的は武田を乗っ取って、イーシェン統一をする事なのか……?
……という事はだよ?この事態をどうにかしない事には、僕たちは安心して出発出来ないって事じゃん。
「その山本完助を捕まえれば、全て一件落着ですかね?」
「それはそうかもしれんが……。あくまで真玄殿が亡くなっていると言うのは噂に過ぎないからな。それに完助は武田の本陣、ツツジガサキの館に篭って出て来ないらしい。まさかこっそりと忍び込んで捕らえる訳にも……」
確かにね〜。結局はそこなんだよな〜。僕はダメ元でリーンにある事を聞いて見たが、彼女曰く「光を迂回させて姿を見えなくしてるだけ」だとの事で、触れられたらバレるとの事で。……ん?姿を消せるなら、これが一番潜入する為に効率が良くないか?
まあ、敵にしても味方にしても、これ以上の被害は出したくない所だよね。
「潜入、する気ですか?」
「もちろん。本当に山本完助がこの騒動の黒幕だとしたら、抑えておく他無いからね。いざとなれば転移魔法の【ゲート】もあるし」
「それはそうですが……」
リンゼが此方の考えを読んだように口を開いた。僕を心配してくれてるんだろうけど、たぶん大丈夫……だと思う。いざとなれば【ゲート】で逃げれば問題無し。
「問題はそのツツジガサキまで、どうやって行くかなんだけど……八重は行った事がある?」
「いや、拙者はござらん。父上は?」
「ワシも無いが……それがどうかしたのか?」
「ツツジガサキに行った事がある者が居れば、颯樹殿の転移魔法で一瞬で移動出来るでござるよ」
「なんと……!」
驚いた様子の重兵衛さんと家泰さんが、再び僕の方に視線を向ける。……あんまり目立つのもどうだかなぁ〜。ま、用事が済めばイーシェンからは出るので、別にいいかなと割り切る事にした。
「ツツジガサキへの案内、私が務めましょう」
すると突然何処からとも無く、凛とした女性の声が響く。ここに居る誰のでも無い声だ。僕は咄嗟にニューモデルアーミーを抜き放ち、天守閣を周回する高欄付きの周り廊下に銃口を向けた。
「「誰だ!」」
……おっと、重兵衛さんと被ってしまったな……。僕と重兵衛さんが同時に誰何した直後、高欄付きの廻縁の影から一人の人物が姿を見せる。
うわぁお、忍者だ。一目見て直ぐに分かる黒装束だけど、真っ昼間からそれは流石に目立つんじゃ……?それで気付かなかった僕らも大概だが、ひょっとして何か認識を阻害させるための魔法を使ってるのだろうか。
顔を覆う黒い布を外すと、そこには顔立ちの整った美人さんが現れた。……これがくノ一って奴か?
「私は武田四天王が一人、
「何、高坂殿の!?」
今回はここまでです!如何でしたか?
投稿が遅くなって申し訳ないです!先週金曜日に睡眠検査を受けておりまして、退院したのが土曜日で……普段2日の時間を掛けて執筆する私にとって、かなりキツキツなスケジュールだった為に、この様な形となってしまいました!申し訳ないです!
ついに……来たる「異世界はスマートフォンとともに。⑲」の発売まで、1ヶ月を切りましたね!皆さんは特装版を手に入れる用意は出来ましたか!?恐らく発売日はかなりの人数が予想されますので、グロッキーになってしまわない様にお気を付けて!私も手に入れてきます♪お小遣いが買う為の金額に届きそうなので!
次回の投稿日は予定どおりに、12月6日(金)深夜0時です!明日にでも執筆を開始して、間に合うようにしたいと思います!今回は本当に申し訳ないです!