異世界はスマートフォンとともに。if   作:咲野 皐月

3 / 60
第3章:出発、そしてサムライ。

神様の手違いに寄って、この世界に舞い降りた僕は、リフレットの街で出会ったエルゼやリンゼと一緒に、旅を続けていた。

 

途中の荷車の中で、エルゼが眠ってしまったのだが…その寝顔が思わず目を惹く物だった為、本人に気づかれぬ様にスマホに写真として収めた。

 

 

「今回の依頼は《王都への手紙の配達》だったね。まだ着くまでにはもう少しかかりそうだから、今日はここで宿を取ろうか」

 

「ええ。そうしましょ」

 

「賛成、です」

 

「じゃあ宿屋を先ず探そうか。ご飯などの後から決めれる事は、今は後回しにしようか」

 

 

そう言って僕たちは、この街にあるであろう宿屋を探しに出た。少し移動していると、街の道端から何やら言い合う様な声が聞こえてきた。

 

……何だか既視感を覚える光景だぞ?…こう言う時って大体……。

 

 

「よくも俺の仲間を!」

 

「ああ、警備兵に突き出した者たちの仲間であったか。あれはお主たちが悪い、市民に乱暴狼藉を働くからでござる」

 

「うるせぇ!やっちまえ!」

 

 

大雑把に確認できるだけでも、男が10人程度居るのに対して、その中心には着物を着た女の子が1人か。……寄って集って痛め付けよう、って魂胆か。下衆が。

 

そんな事を考えている間に、中心になっていた女の子は背負投を始めとした柔術で男たちを捩じ伏せる。

 

 

「あんなの、見た事ないわ!」

 

「あれは柔術。腰に刀を差しているのに、装備無しと遜色ない動き……かなりの手練だね」

 

「詳しいですね、颯樹さん」

 

「まあ一応。知識として心得ていた感じだ」

 

 

そんな会話を2人と繰り広げている間に、ほぼ半数の敵が地面で伸びていた。……ん?あの娘、お腹を抑え始めた?音から察するに…まさか、空腹!?

 

2人が止めるのも構わずに、僕は魔法を行使する態勢に入る。……ごめん、助太刀するよ!

 

 

「【砂よ来たれ、盲目の砂塵、ブラインドサンド】!」

 

 

魔法の詠唱を済ませた僕の右手に、小さく圧縮された綺麗な砂が握られる。僕はその握られている砂を、先程の女の子に飛び掛っている男に投げ付ける。

 

 

「が、うがァァァ!み、見えねぇー!」

 

「はあっ!」

 

「あーもう!厄介事に、首を突っ込んで!」

 

 

ブラインドサンドを当てた男に、僕は飛び蹴りをお見舞する。そしてもう見て居られなくなったのか、エルゼが他の男たちを殴り飛ばしていた。

 

その喧嘩の音に気付いた警備兵が、僕たちを取り抑えようと動き出した!……ここで捕まるのは、ごめん蒙りたい!

 

 

「さっさと逃げるわよ!」

 

「さ、君も一緒に!」

 

「え、えぇ……///」

 

 

そう言って僕たち3人は、先程の女の子と一緒に近くの裏路地へと身を隠した。その間に警備兵たちは、各地に別れて捜索し始めた。……はぁ、大変だった。

 

 

「此度のご助成、かたじけなく。拙者、九重 八重と申す。あっ、八重が名前で、九重が家名でござる」

 

「僕は盛谷 颯樹。颯樹が名前で、盛谷が家名ね。家名の方は間違われるから、名前で呼んで欲しい」

 

「な、なんと!颯樹殿もイーシェンの生まれでござるか!?」

 

「……と言うと、君の故郷は…イーシェン?」

 

 

僕がそう八重に問い掛けると、案の定と言う答えが帰って来た。更に聴いてみると「オエド」と言う所から来たのだとか。……ここは安土桃山時代か何かなの!?

 

 

「さっきお腹を抑えてたけど、お腹空いてるの?イーシェンからベルファスト迄は、距離が結構あったはずなんだけど」

 

「そ、その……拙者、旅の途中で恥ずかしながら路銀を落としてしまい…///」

 

「颯樹、とりあえず食事処を探しましょう」

 

「そうだね」

 

 

八重から事情を聞いた僕たちは、宿屋を探す前に、八重と共に食事処へと向かった。辿り着いて注文した迄は良いのだが……持って来られた料理の総量が、軽く4〜5人前は在ろうかと言う量だった。

 

……僕もそれなりに食べるほうだけど、八重ってもしかして大食らい?……食費がえらい掛かるかもね…はあ。

 

 

「八重さんはどうしてここへ?」

 

「王都へ剣術修行をしに行く所でこざるよ?武者修行の旅の途中でごさるからな」

 

「私たちも王都へ手紙を届けに行く所です」

 

「ねぇ、八重さえ良ければなんだけど、僕たちと一緒に行かない?道中は一緒だろうし」

 

 

僕は八重の目的と自分たちの目的の一致に気づき、八重を旅の仲間に加える事にした。それにエルゼとリンゼは肯定的であった為、後は八重からの返事を待つだけなのだが……。

 

未だに食事中なのだろう、口の中に物を入れたまま話し始めた。

 

 

「ま、誠でござるか!……もぐもぐ。ご馳走になった上旅の同伴まで…もぐもぐ。忝ないでござる」

 

「良いよこれくらい。でも、食べる時は確り食べなよ?さっきのは行儀悪いからね」

 

「……もぐもぐ。承知したでござる」

 

 

そう言いながら八重は、テーブルに乗っていた料理の4分の2を食べ切った。僕とエルゼとリンゼは、置かれていた分で漸く半分食べ終えた所だった。

 

……八重が仲間に加わるとなると、食費にもうちょっと気をつけたほうがいいかも。

 

──────────────────────

 

旅の仲間に八重を加えた僕たちは、王都へ続く道を進んでいた。途中でリンゼから魔法書(無属性魔法についての事柄が記載)を受け取り、勉強も行なった。

 

……そしてしばらくした頃。

 

ガキィン!

 

 

「何だ、今の音は!」

 

「この先です!」

 

「八重、進んでくれ!」

 

 

そう伝えて僕たちは、先程の音が聞こえた場所へと向かう。その場所に着いてみると、黒塗りの紋章付きの馬車が1台止まっており、その前には護衛と思しき人物が3人と、人型の竜が3頭睨み合っていた。

 

……仕方ない、戦いますか!

 

 

「ここは任せて下さい!」

 

「な、何なんだお前たちは!」

 

「旅の者です!協力させて下さい!」

 

 

僕は護衛の1人と話を付けたあと、1頭の人型の竜(後にリザードマンと知る)と向かい合った。今回の僕が持っている装備は、初依頼の時では使わなかった武器だ。

 

向かう時は慎重に……。そして!

 

 

「【アクセル】!【ブースト】!」

 

「無属性魔法の重ね掛けだと!?」

 

「せいっ!」

 

 

無属性魔法の重ね掛けは、初めてだったけど……何とか上手く行ったみたい。エルゼやリンゼに八重も好調に敵を倒しつつあるみたいだね。……って、八重が危ない!

 

 

「【摩擦よ無くなれ、スリップ】!」

 

 

そう詠唱すると、八重を切り付けようとしていたリザードマンがその場で転倒する。それを見逃さなかった八重が、倒れたリザードマンに剣を突き刺す。……よし、これでOKかな。

 

……ん?魔法の詠唱の口上が聞こえる…まさか、召喚魔法!?あのリザードマンは、召喚魔法に寄って呼び出された傭兵って事か!

 

 

「……!」

 

「颯樹!?どうするのよ!」

 

「こう、するのさ!」

 

 

そう言って僕は剣を上に振り上げ、召喚魔法を行なっていた男の持つ杖を空へと飛ばす。そして身体の腹部を足場にし、男の背後へと飛び移った後に回し蹴りをお見舞する。

 

そして後は喉元に剣を当てれば……終了だね。

 

 

「チェックメイト、アンタの負けだ」

 

「ひ、ひぃぃ…!」

 

 

そう言って先程の召喚士の男は、踵を返して逃げ出そうとする。……甘いな!

 

 

「【摩擦よ無くなれ、スリップ】!」

 

「うわっ!」

 

 

逃げ出そうと思ったのが、運の尽きみたいだね。……さあ、大人しくしてもらうよ?

 

僕は先程の男を縄で縛り上げると、3人の下へと戻る事にした。

 

 

「あっ、颯樹!どうだったの?」

 

「召喚魔法の使い手を捕獲したよ。尋問でも何でもして構わないよ」

 

「す、凄いでござる……」

 

 

そう言って八重とエルゼが、捕えれている男へと歩いて行った。その後に護衛の人からお礼を言われたけど、たまたま通り掛かっただけなんだよな……なんて。

 

 

『誰か、誰かおらぬかー!』

 

「!?」

 

 

突然その様な声が聞こえ、近くに居た僕とリンゼは声の元へと向かう。するとそこには私服姿のお姫様らしき人と、執事と思しき人が居た。

 

女の子の目からは涙が出ており、執事の人に寄り添っているのがわかる。……執事の人に何かあったのは、確実と言って良いね。

 

 

「じい!じい!」

 

「う、ううっ……お、お嬢様…」

 

「リンゼ、回復魔法を掛ける際は…中に入った異物を取り出さないといけないんだよね?」

 

「は、はい。そうです」

 

 

リンゼから重要な情報を聞き出す事が出来た。……それなら、今覚えたてホヤホヤの魔法が使えるかも!近くに落ちていた矢の残部を拾い上げ、元々の矢の形に合うように持ち直す。

 

……成功すれば良いけど。

 

 

「【アポーツ】」

 

 

僕がそう詠唱を終えると、右手に矢の刺さっていた箇所が握られた。……成功だ。その後に僕は光属性の回復魔法である【キュアヒール】を執事の人に掛ける。

 

その魔法が齎す癒しのお陰で、先程まで苦しんでいた執事の人の顔が優しそうな表情へと戻って行った。

 

 

「お、お嬢様……」

 

「じい!」

 

「颯樹さん…凄いです、本当に…凄いです///」

 

「////」

 

 

執事の人が意識を取り戻したのが余程嬉しかったのか、『お嬢様』と呼ばれていた女の子が、その人に抱き着いた。リンゼに至っては涙が出てるし。……これは、嬉し涙だね。……それと、顔を紅くしてるのはどうして?

 

事態が落ち着いた頃に、僕たちは先程の女の子と執事の人や護衛の人たちと向かい合った。

 

 

「感謝するぞ、颯樹とやら!お主はじいだけでは無い、妾の命の恩人じゃ!」

 

「ご挨拶が遅れました。私、オルトリンデ公爵家家令を務めております、レイムと申します。そしてこちらの御方が、公爵家令嬢、スウシィ・エルネア・オルトリンデ様に御座います」

 

「スウシィ・エルネア・オルトリンデじゃ。よろしく頼む!」

 

 

なるほど……この人がご令嬢さん。それならレイムさんや護衛の人が居るのも納得だし、高級そうな馬車に乗っていたのも大納得だね。

 

……んで、僕の横にいる3人はなぜ片膝をついて頭を提げているの?…ん?待て?「公爵家令嬢」って言ってたか、レイムさん!

 

 

「何であんたはそんなに立ってられんのよ……公爵家よ、公爵」

 

「……あっ!」

 

「如何にも。妾の父、アルフレッド・エルネス・オルトリンデは国王陛下の弟である」

 

「それじゃあ、国王陛下の姪っ子って事だ。スゥシィ様って呼んだ方が無難かな?」

 

 

エルゼからの忠言に気付いた僕は、スゥシィ様の事を改めて再確認した。……何処と無く王族っぽいからね。護衛や執事も着いてるし。

 

向こう方に失礼があっては行けないので、僕は呼び方を変えようとしたのだが、それをスパッと切り捨てられたのだった。

 

 

「スゥで良い!公式の場では無いのじゃ、敬語も要らん!先程も言ったように颯樹たちは妾の命の恩人じゃ」

 

「やっぱり王族ともなると、狙われたりするよね」

 

「さっき話を聞いたけど、全然知らなかったわ。依頼主が誰なのかも分からないみたいだから……」

 

 

そう言ってエルゼは拳を握る。……えっ、待て?あの捕獲した召喚士を、殴ったの?そう思って左の森の方を振り返ると、瘤が3個積み重なっている状態だった。…うわぁ、僕もアソコまではして無いのに……。

 

結果としてスゥ達を救えたし、良かった良かった♪僕たちはこの先の王都に用があったので、その時に追加された《王都までの護衛》の依頼を受ける事に。1回で2つも受けるって、なかなか大変かも。……でも、人々が笑って生活出来るなら、これくらいの犠牲は必要だよね♪




今回はここまでです!如何でしたか?


内容としてはアニメ《第2章》の前半Partをお届けしました!次回は《第2章》の後半Partをお届けしようと考えています。その後の《第3章》ですが、最初から地下遺跡のお話を組み込もうかな〜と考えています。

そしてその後に《第3章》で出て来る『ロールケーキ』や『将棋』を広めるという感じにしたいなと考えています(第4章は流石に少しPartを変えるというのは、なかなか大変ですからね)。……まあ、予定としては2話後のお話で、各サイドに分かれた話を描こうかと考えています(書けたらの話)。


それではまた次回です!ちなみにこの小説ですが、完成した日の直ぐ近くの時間にクイックセットをして置きますね。早く出来上がったら、早くサクサクと読めるのでオススメですよ♪

……そろそろ、私も覚悟を決めてた方が良いかもですね。恐らく颯樹くんにとって、最初の恋愛になるやも知れないので。恋愛描写は久々なんですよね〜書けるか心配。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。