異世界はスマートフォンとともに。if   作:咲野 皐月

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第30章:密書、そして潜入開始。

「私は武田四天王が一人、高坂政信様配下、椿と申します。徳川家泰様宛の密書をお持ち致しました」

 

「何!?高坂殿の!?」

 

 

床に膝をついて、懐に入れてあった密書をその場に置くと、椿さんはそこから一歩下がった。仮にも先程まで刃を交えていた敵同士、油断してたら命取りになるからね。床に置かれた密書を椿さんから眼を逸らさずに、重兵衛さんが手に取って家泰さんに渡していた。

 

……僕?ああ、何か少しでもおかしな行動を取られた時の為に銃口を向けてますよ?そりゃ戦場ですから。

 

 

「殿。密書には何と?」

 

「どうやら噂は本当だったらしい。今や、武田軍は傀儡の軍と化している様だ」

 

「何ですと……!?」

 

 

厳しい表情の家泰さんの言葉を聞いた重兵衛さんは、驚きの余りに絶句してしまった。噂は本当だったか〜。これはいよいよ完助を何とかしないと、安心して出発できなさそうだ。

 

 

「真玄殿は既に亡くなっており、武田四天王も高坂殿以外、全て地下牢へ投獄されているらしい。何とか完助を止めて武田を救ってくれとある」

 

「高坂様は完助に従うフリをして、武田奪還を考えております」

 

 

椿さんが家泰さんの言葉に一言添える。どうやら完助は真玄が亡くなったのを隠蔽し、自らがその遺体を操る事で武田を手中に納めたらしい。それに気付いた四天王たちは投獄され、完助の考えに追従した(と、思わせた)高坂のみがその配下として行動……と言う訳か。

 

 

「正直に言えば、徳川は武田の為にそこまでする義理は無い。だが、このままでは完助の操る鬼面兵に徳川が殺られてしまうだろう。何とも情けない話だが、徳川を救うのも武田を救うのも……決定権は全てベルファストから来た客人たちにあると言う事だ」

 

「どうします、颯樹さん?」

 

 

家泰さんの神妙な面持ちから発せられた声に、僕は思わず背筋をピンと伸ばしてしまう。そしてそれを聞いたユミナは、何かを待っているかの様に僕に問い掛けて来た。……何言わせてんの。ここで引き下がる程、僕は薄情者ではありませんよってね!

 

 

「OK。ツツジガサキに潜入する。安心して《ニルヤの遺跡》へ出発したいからね」

 

「感謝します」

 

 

僕はユミナに自分の思いを告げる。それを聞いた椿さんが、僕に向けて頭を下げて来た。……ちょっと大袈裟な気がするんですけど……ま、良いか!

 

 

「と、なると……大人数で潜入するのは好ましく無いから、転移魔法が使える僕と、魔法に長けたリーン、そして武田内部の情勢に詳しい椿さんの3人で乗り込むのが最善だね」

 

「了解したわ」

 

「んー、いや。待て。万が一にって事があるし、何時でも入れる様に……ユミナ!」

 

「は、はい!」

 

 

本来ならば先程言った3人で乗り込むのが最善だろうけど……僕にはちょっとした懸念があるんだよね〜。椿さんは良いにしても、問題は……あの妖精娘(リーン)なんだよなぁと思いつつ。

 

 

「本来ならば、護衛する人物を将軍の下に預けて置いて様子を見るのが正解なんだけど……」

 

「はい」

 

「……リーンが何やら起こさんとも限らないから、念の為にユミナに付いてて欲しいんだ。大丈夫?」

 

「任せて下さい」

 

 

僕はユミナに耳打ちでそう伝える。僕が離れた直後、ユミナの顔がほんのりと紅くなっていたのだが……此処は戦場である為に、変な誤解を生まないように素知らぬ顔をして切り抜けた。

 

……あ、ポーラはもちろんお留守番だ。そう言うと何故か『ムキーッ!』って表情をしながら地団駄を踏んでいた。凄いな、この【プログラム】って。

 

 

「……颯樹、今何か私に対してすっごく失礼な事を考えたわね?」

 

「さあ?そこら辺は君の想像に任せるよ」

 

「……まさか、今から忍び込むつもり?夜になるのを待ってからの方が良いんじゃない?」

 

 

リーンとの痴話喧嘩(?)を終えた後、エルゼから仲裁が入った。……それもそうだ。エルゼにお礼を言った後、僕たちは重兵衛さんと重太郎さんの無事を伝えに、一度道場へと戻り、その後にベルファストの自宅へと戻った。今回は向こうで一泊する事を伝える為だ。

 

オエドからお酒や食料、矢や油などの消耗品を【ストレージ】で収納し、砦へと運ぶのを頼まれたりもした。まあ、別に疲れる訳では無いし……家泰さんからその代金も頂いたからね。結構貰ってしまったな……。いっその事、宅配会社でも作ってみるか……?そう思いながら過ごしていると、あっと言う間に夜になった。

 

──────────────────────

 

「それじゃあ椿さん、ツツジガサキの館が見える場所を思い浮かべて下さい。成る可く人の少ない所をお願いします」

 

「分かりました」

 

 

僕は目を瞑っている椿さんの手を握る。椿さんは背が高くて僕と同じ位なので、八重の様に屈む必要は無かった。……なんか、知ってる人と手を握るだけでも恥ずかしいのに、知らない人と手を握るって……この上ない恥ずかしさが込み上げて来るなぁ……。

 

……なんて思ってた矢先、魔力を集中している傍らでウチの女性陣が此方(主に僕の方)を刺すような目つきで睨んでいた……。ちょっとちょっとちょっとちょっとちょっと!物凄く怖いんですけど!特にユミナとリンゼ!貴女方の視線がガチに堪えるんですってば!目のハイライトが仕事して無いから!

 

……さっさと終わらせよう。その方が身のためな気がする。

 

 

「【リコール】」

 

 

魔力を集中させて、互いに額を合わせる。ぼんやりと複数の塀に囲まれた館と、それを取り巻く様に並び立つ城下町が浮かんで来た。……なるほど、ここが武田の本拠地であるツツジガサキか。

 

 

「【ゲート】」

 

「……じゃあ、行って来る。琥珀、何かあったら連絡よろしく」

 

《分かりました》

 

 

【リコール】で記憶を回収した僕は、椿さんから離れてツツジガサキへ向かう【ゲート】を、天守閣の中で開く。琥珀は僕と念話を通じて連絡できるから、何かあっても直ぐに駆け付けられる様にして置く。

 

開いた【ゲート】に先ずリーンが飛び込み、その後に椿さん、ユミナと続いて僕が飛び込んだ。

 

 

「ここが……ツツジガサキ?」

 

「……はい。皆様、前方の少し上をご覧下さい」

 

 

椿さんにそう言われて、僕とユミナにリーンは言われた方に眼を向ける。その方向には僅かに松明が点っており、完全に陽も落ちた暗闇の中で異様な存在感を示していた。恐らくアレが武田の本陣である、ツツジガサキの館なのだろう。

 

 

「あそこに潜入するのか……」

 

 

取り敢えず【ロングセンス】を展開し、視覚を飛ばす事にした。堀に囲まれた中で幾つかの橋があり、当然の事ながら城門は閉鎖されていた。門の前には鎧兜で武装した屈強な男たちが、槍を持って待ち構えている。

 

さらにその門の先へ視覚を飛ばすと、迷路の様に白い塀が続いて、その横手には井戸があった。そこから少し離れた所に隠れるにはうってつけの場所があった。あったは良いのだが……。

 

 

「……これってさ、敵が転移魔法による襲撃を予想しての事なのかな」

 

「どういう事です?」

 

「もしだよ?敵の中に転移魔法使いが居るとして、戦争をする際に『相手の中に転移魔法使いが居る』と言う事を伝え損ねる物かな?」

 

「……有り得なくは無いわね」

 

 

【ロングセンス】で目に映った護符を、リーン達3人に説明する。するとユミナが問い掛けて来たが、僕はある仮説を以て解答する。そう言えば確かオルトリンデ公爵が「【ゲート】は簡単な結界で侵入を防げる」と言っていたな。その影響だと考えれば、この状況にも合点が行くか。

 

 

「恐らく完助の手の者による物でしょう。私だけなら《高坂様の使い》と偽って中に入る事が可能ですから、その護符とやらを破壊して来ます」

 

「やめときなさい。結界を壊せば、それを仕掛けた本人に気付かれる可能性が高いわ。誰が壊したかまでは分からなくても、警戒されるのはあまり得策じゃないわよ」

 

「では、どうするので?」

 

 

屋敷へと歩き出そうとした椿さんを、リーンが引き留めて忠告する。それを聞いた椿さんは、逆にリーンに疑問を問いかけて来た。

 

ここはやはり、あれを使うしか無いかな〜。

 

 

「リーン、確か……君の背に生えてる羽根ってさ【インビジブル】の効果で、他人から認識を阻害させてるんだっけ」

 

「ええ。そうよ」

 

「じゃあさ、その【インビジブル】の魔法を使って、武田兵の眼を掻い潜りながら潜入するってのは?」

 

「なるほど……そうしたら、容易く潜入できるわね。じゃあ私の正面に立ってくれる?」

 

 

僕が投げ掛けた疑問に、最初は驚いた表情をしていたリーンだったが、少しずつ僕の意図を理解して行くにつれて、彼女は納得の表情を浮かべた。

 

そして僕とユミナがリーンの正面に立ち、僕とユミナに手を翳して魔力を練り始めると、僕とユミナにリーンの立っていた足元に魔法陣が現れた。

 

 

「【光よ歪め、屈曲の先導、インビジブル】」

 

 

リーンが魔法の口上を詠唱し終えると、足元の魔法陣が上昇して僕らの身体を通過する。その魔法陣が頭の天辺まで通過すると、静かにそれは消えた。

 

 

「消えた……」

 

「大丈夫ですよ、椿さん。僕はここに居ます」

 

「え?」

 

 

僕は椿さんにそう言って、近くにあった木を揺らす。それと僕の無事な声を聞けたのか、彼女も少し安心した様子だ。

 

……と思ったら、僕の横をチョローっと通り過ぎる音がした。それを察した僕とユミナは、その人物に声を掛けて見た。

 

 

「「リーン(さん)、一体何をするつもり(ですか)?」」

 

「……バ、バレた?」

 

「なるほど。颯樹さんが私を呼んだのは、この事があると予感していたからなんですね?」

 

「んー、まあそんな感じかな。リーンには【リコール】の時の仕返しがまだだったし」

 

 

僕とユミナが発した異様な冷たさと声に、リーンは多少のぎこちなさを見せながら答えた。その頬からは冷や汗が伝っており、予想外という反応を見せた。どうやら彼女は姿が見えないのをイイことに、何やら悪戯をするつもりだったらしい。……ま、僕とユミナが居る限りそんな事は是が非でも防ぐけど。

 

 

「申し訳ないです……後でキツく叱っときますので、大目に見てやって下さい」

 

「わ、分かりました」

 

 

姿を消したまま僕が謝った事で、それを聞いた椿さんの表情が引き攣った物になっていた……。それにしても、初っ端からこんな事をするなんて……、あんのドS妖精娘は……。

 

僕とユミナはここから先の潜入に、一抹どころか物凄い不安を胸中に感じるのだった。




今回はここまでです!如何でしたか?


次のお話では……武田四天王が登場します!そしてその後には戦闘シーンも加える予定ですよ♪原作とは違って今回はユミナが一緒に居ますが、どの様な戦いになるのかとても楽しみですね♪

そして待望の水着回まで、あと5話近くになって来ました!こんな寒い時期にやるのも、何だか季節外れな話かもですが……そこら辺は大目に見てやって下さいm(_ _)m(何時もの事なので、特に気にはしてませんが)


次回の投稿日は12月9日(月)深夜0時です!これからも頑張って参りますので、応援の程を切によろしくお願いします(≧∇≦)/

今回も感想を是非!皆さんからの高評価やお気に入り登録、感想が私の励み(モチベーション)となります!どしどし送って来て下さいね!お待ちしております♪
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