異世界はスマートフォンとともに。if   作:咲野 皐月

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第38章:二人目、そして申し込み。

リンゼの告白の後、よく状況が整理できないままに僕らはシェスカを連れて、ベルファストの屋敷へと戻った。頭がパニックになっていた僕は、ライムさんに半ば強引にシェスカを頼んで、我先にと自室へと戻っていた。

 

 

「……はぁ、何か、かなり疲れた」

 

 

ちょっとベッドに横になれば、頭がスッキリするかも。と思って僕はベッドの方へと歩こうとする。すると、先程の空中庭園で感じた威圧感が、僕へとビシバシ伝わって来ていた。

 

思わずその発生元に首を傾けると、そこには普段見せている優しさなんて塵一つ残らない様な厳しさを向けた、ユミナが僕の事を睨み付けていた。

 

 

「颯樹さん」

 

「はい」

 

「正座してください」

 

 

僕はユミナに言われるがままに、素直に床に正座をする。心做しか彼女のオッドアイも、視線が優しい物から厳しい物へと変貌している気がしてならない。

 

そしてじーーーーーーーっと、彼女のオッドアイが僕を見つめる。本当にこれは返答を少しでも間違えたら、とんでもない事になりそうだな。

 

 

「颯樹さん」

 

「はい」

 

「私、怒ってますよ?」

 

 

いや、そんな事を言われましてもぉ……。婚約者のユミナからして見れば、僕が他の女の子に告白されて面白い訳が無いだろうけど。

 

目の前で眉間に皺を寄せて、頬を膨らませている姿はこれはこれで或る意味で可愛いのだが、こんな状況でそんな事を言える程、僕の肝は据わっちゃいない。

 

 

「なんで……」

 

「はい」

 

「なんで私にはあんなに強くしなかったんですかぁ!先程のシェスカさんみたいな!」

 

「え?……もしかして、そっちぃぃぃ!?」

 

 

ええ!?そっちでしたぁぁぁぁ!?……確かに思い返して見れば、今回みたいなヤツは、ユミナからの方が多かった気がする。僕の方はと言うと軽くするくらいだ。まさか……それで怒ってたとは……。反省。

 

 

「え?リンゼの告白の事に怒ってる訳では、無いんだよね?」

 

「リンゼさんが颯樹さんの事を好きなのは、既にわかっていたので。そこに関しては気にしてません」

 

「ほっと一安心……」

 

 

僕の中では【一番最悪なパターン】まで予想出来てたけど、そうならなくて良かった〜。そこに関しては少し一安心した。

 

 

「この際だから言いますけど、私は颯樹さんがお妾さんを十人作ろうが二十人作ろうが、その娘たちを不幸にしない限りは文句はありません。それも男の甲斐性だと思っています」

 

 

そう言えば、神様が『この世界では一夫多妻が普通だ』って言ってたけど、実際その通りなのね。前世じゃ一夫一婦が普通だったから、どうしても狂うんだよなぁ〜。

 

それにしても、ユミナって本当にしっかりしてるよね。普段の立ち振る舞いから一つ一つの行動、そして恋愛の事に関しても。ホントにこの娘12歳な訳?達観しすぎじゃない?……それとも、僕の事はあまり好きでは無いのでは無いだろうか……?

 

 

「……いま失礼な事を考えましたね?」

 

「はい」

 

 

どうして……こうさ!僕の周りの女性は全員例外無く!勘が鋭い人ばっかりなのかなぁ!ユミナは自身が座る3人がけのソファの隣を軽く叩き、僕にそこへ座る様に促す。

 

僕はユミナの指示に従い、ユミナの左隣(入って来た方から見れば)へと腰を下ろす。それを見たユミナが、一つ一つ言葉を紡いで行く。

 

 

「颯樹さん。私は貴方を生涯の夫とし、妻として生きる覚悟ができてます。それは貴方が好きだからです。リンゼさんにも負けないくらい貴方が好きだからです。それだけは疑って欲しくないです」

 

「……ごめんなさい」

 

 

僕の口から素直に謝罪の言葉が出た。それだけは疑ったら、彼女の想いに対して一番失礼にあたるからね。全体的に悪いのは何も決められちゃいない……情けない根性無しの自分なのだから。

 

 

「……本当にすまなかった」

 

「……抱き締めてキスしてくれたら許してあげます。それも熱いモノを」

 

 

……ちょっ!?この状況でそれはハードルが高すぎやしませんかねユミナさん!隣に居た彼女の身体を此方へ抱き寄せ、心配させたお詫びとして抱き締める。

 

そしてユミナは僕の腕の中から身を起こすと、顔を上に向けて静かに目を閉じた。……覚悟を決めろ俺!少しの間を空けて、僕はユミナの小さな唇にキスをする。シェスカにされた時の様に、彼女の口内を舌で蹂躙した。それが彼女の中でスイッチとなったのか、ユミナも《お返し》という事で同じ事をして来た。

 

暫くそんな状態が続き、彼女の息遣いがどんどん色っぽくなって行く。ここらが引き際だと思った僕は、重ね合わせていた唇を放す。僕とユミナの間には、ピアノ線のような銀色の糸が引かれていた。

 

 

「颯樹さん……///」

 

「これで良い?多少荒っぽかったかも」

 

「はい、満足です♪」

 

「良かった〜。……それと、出て来て良いよリンゼ。君が居る事は薄々察してたから」

 

 

僕の言葉を引き金にして、今まで姿を消していたリンゼが姿を現す。彼女が先程から見えなかったのは、リーンに【インビジブル】をかけて貰ったからだろうなと推測できた。

 

 

「リーンさんに頼んで、認識阻害の魔法をかけて貰いました。こうでもしないと、リンゼさんも納得しなかったので」

 

「納得。さっきはごめん、余裕が無くなってた」

 

「あ、あの、あの時はすみませんでした。シェスカのキスを見たら、負けられないって、思ってしまって……気が付いたら、あんな事……」

 

 

彼女はそう言って、僕への謝罪を始めた。確かにその気持ちはあるだろうね。目の前であんなのを見せ付けられちゃあ、自分に歯止めが効かなくなってしまうのも無理は無い気がする。でもこれは、僕が自分でやってしまった事。自分で償わなきゃ意味が無い。

 

 

「ひゃあ///」

 

「僕もリンゼが好きだ。ユミナにも言ったけど、大切な人の泣き顔が一番見たくない。リンゼが僕と共に歩みたいと願うなら、僕はその気持ちを尊重するよ。可哀想だからって想いは無い。ただあるのは」

 

 

そう言ってから僕は、リンゼの眼を見る。今にも彼女の眼からは涙が溢れそうになっていて、この後に続ける言葉がとても重要だ。

 

僕は一泊置いてから続けた。それは、僕の中でも大切にしている、前世で見たあの某有名なチートアニメの名言の要約だ。

 

 

「僕はこの命を大切な人の為に使う。一分一秒一瞬を、僕自身が守り抜くと決めた人の為に使うよ」

 

「颯樹さん……///」

 

 

そう呟いてリンゼが笑顔を見せる。……うん。リンゼにはやっぱり笑顔が似合う。それを奪った今の僕は、双子のお姉さんの方に殴られても、何も文句は言えまい。

 

 

「お互いの気持ちが分かった所で、どうでしょう。リンゼさんもお嫁さんに貰うと言うのは」

 

「え!?」

 

 

ユミナがサラリととんでもない事を言ってくる。お嫁さんって……リンゼをですか?リンゼの方を見てみると、真っ赤な顔を俯かせてモジモジとしている。

 

 

「王族や貴族、大商人とかなら第二、第三夫人とか普通ですし。あとは颯樹さんの甲斐性だけですよ。きちんと私たちを養って行けるのなら、誰も文句は言いません。リンゼさんは問題ありませんよね?」

 

「わっ、私も、颯樹さんのお嫁さんに、なりたい、です……」

 

 

ま、マジですか。……いやね?嬉しいのは事実なのよ?それより先に色々な不安があるのですが……。と思っていたら、リンゼがまた泣き出しそうな顔になった。

 

……もう…!なるようになれだろ!一々細かい所を気にしてたら、もう絶対に先に進まん!

 

 

「第二夫人とか、リンゼはそれでも良いの?」

 

「…私はユミナと仲良くやって行けると、思ってます。同じ人を好きになって、一緒に幸せになれるなら、こんなに嬉しい事はありません」

 

「はぁ〜……。……わかった。ユミナとリンゼがそれで良いって言うなら、君たちの望む様にするよ」

 

 

途端にリンゼから笑顔が溢れ、力強く抱き着いて来た。普段大人しいリンゼにこの様な事をされると、正直反応に困ってしまうな。と思っていたら……ユミナまで立ち上がって、同じ様に飛び付いて来た。

 

これじゃまるで……『両手に花』だ。ちょっと!これはこれで色々と恥ずかしいわ!

 

 

「じゃあこれでリンゼさんも、私と同じ婚約者と言う事で」

 

「はい」

 

「あの〜、現実を突き付ける様で悪いんだけど、もう夜ですよ?」

 

 

ユミナがにこにこと嬉しそうに話していて、リンゼの方はと言うと、まだ顔の赤みは引いてはいなかったけど、嬉しそうにこくこくと頷いていた。

 

もう夜も遅いので、部屋に戻る様に(ユミナは同室の為に寝床を共にするのだが)促したら、おやすみのキスをせがまれた。自分の不甲斐なさで迷惑を掛けたので、それくらいはしても何の問題も無いだろ。二人の唇に軽いキスを落とすと、各々で様々な反応を見せていた。

 

 

「くっはぁ〜……!疲れた!」

 

「お疲れ様でした♪」

 

「まさか、ユミナの他にも婚約者が出来るなんて」

 

「……颯樹さんなら、気づいてましたよね?この家をお父様に貰った日、私たち女性陣の間で何があったのか」

 

 

ふとユミナから、そんな話題を持ちかけられる。そう言えば国王陛下から屋敷を貰った日、ユミナ以外の三人の顔が赤かった時があったな。顔を僕から逸らしていた事から、何かあったのだなぁと気づいては居たのだが。

 

 

「ん、でも今何でそんな事を?」

 

「あの時颯樹さんから眼を逸らしたのは、リンゼさんだけだったと思います?」

 

「……!まさか!あの二人も!?」

 

 

ユミナからの手助けに、僕は再び頭を使って考えて見る事にした。すると、ある一つの可能性に思い至った!それは或る意味で当たって欲しくなかった物だ!

 

 

「ふふっ♪……さて、寝ましょうか」

 

「そうだな〜」

 

 

そう言って僕とユミナは寝床に着く。途中でユミナが寝易い様に、右腕を出して枕代わりにしていたのはまた別の話。

 

……しかし、リンゼだけじゃ無かったか〜。まさかあの二人もとは……。あの二人に至っては、リンゼよりもスパッと早めに来る物だと思っていたのだが、少々意外な所だ。そんな事やこれからの事を考えながら、僕は微睡みの中へと意識を手放して行った。

 

──────────────────────

〘翌日〙

 

日も昇った翌日、隣ですやすやと寝ているユミナの寝顔を目に焼き付けた後、僕は身体を起こす。その時ドバンッ!とドアを叩き破る様な音が鳴り、それにビックリしたユミナは寝惚け眼を摩りながら起床し、僕は思わずその音のした方向を見ていた。

 

ドアの方に眼を向けると、朝日を逆光に浴びてコチラを見ている一つのシルエットがあった。その人物はベッドの所まで来ると、声を発するのだった。

 

 

「朝から煩くしてすまないわね。……颯樹、ちょっと話があるんだけど良い?」

 

 

僕とユミナの寝るベッドの横に居たのは、昨日僕のお嫁さんになると言ってくれた、二人目の女の子と瓜二つの顔を持つお姉さんの方だった。

 

朝日に照らされて、彼女の腰に吊るされたガントレットが、鮮やかに光り輝く。

 

 

「ユミナ、ゴメンなさいね。颯樹を少し借りてくわね。コイツには聞きたい事があるから」

 

「分かりました。お任せします、エルゼさん」

 

「行くわよ。時間はかけないから」

 

 

その言葉で僕は彼女にある所へ連れて行かれる。……え?ひょっとして、朝からピンチでしょうか?

 

そんな想いが彼女に伝わるはずも無く、僕はエルゼの先導を受けて……ある所へと向かって行った。




今回はここまで!如何でしたか?


さてさて……新年、明けましておめでとうございます!ついに2020年(オリンピックイヤー)のスタートです!そして今日はその初日!翌日が休みだからか、10時半には就寝して6時に起きたんですよ。そしたらびっくり!驚くほど筆が乗るんですよ!やっぱ人ってこれくらい寝ないとダメなのね〜と実感させられました。

どうか今年も「異世界はスマートフォンとともに。if」を応援頂けますと、恐悦至極に存じる次第でございます!


次回の投稿は1月6日(月)午前0時の投稿予定です!明日も執筆作業をしますので、早ければ完成日の翌日に投稿出来るかもですよ♪

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