異世界はスマートフォンとともに。if   作:咲野 皐月

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第41章:指輪、そして謎の少年。

ユミナを始めとした4人を、本格的に婚約者として迎えた翌日、僕はユミナと共に王都の南区、商業区へと降りて来ていた。

 

 

「どうしたんです?いきなり『私と出掛けたい』なんて♪」

 

「や、今回は婚約指輪を買いにね。他の三人には事前に予め断りを入れてるし、その場で指輪のプレゼントもしたいからね」

 

「えへへ。そう言われると嬉しいです」

 

 

僕の言葉を聞いたユミナが、顔を少し赤らめながらそう答える。まあ《婚約指輪》は、僕の方で【モデリング】を使えば作れなくも無かったのだが、態々婚約者にあげる物をケチると言うのは……流石にナシ。

 

そう思いながら歩いていると、何処からか揉め合うような声が聞こえて来た。

 

 

「颯樹さん、あれ……」

 

「人を指ささないよー。……ん?」

 

 

その方向を指差したユミナに諌言を入れ、僕もその方向に目を移した。するとそこには、白髪に黒の衣装で首に白のマフラーを巻いた少年と、店主の男性と何やら口論をしている様子が拡がっていた。

 

 

「あのな、兄ちゃんよ。それが何処の金か解らねぇが、それじゃあ支払えねぇの。わかる?」

 

「困ったなぁ。僕、それしか持ってないんだよね……」

 

 

あちゃぁ〜……。あの少年は、この国の共通通貨を持たずに屋台で買い物をしていたと言う訳か。少年の手元には食べかけのクレープが二枚握られていて、商品の支払いをしなければ事が片付かない様子だ。

 

 

「金が無いなら無銭飲食だ。警備兵の所へ突き出してやる」

 

「ええっ、だからこれで払えないの?これもお金だよ?」

 

「だからこの国ではそんな金使えねぇって…!」

 

「すみません……ちょっと横槍失礼しますよ?」

 

 

更なる状況の悪化を危惧した僕たちは、意を決してこの二人の間に割って入ることにした。少年と店主の男性の表情が驚いた物になっており、突然の介入に状況を理解出来てないみたいだ。

 

 

「何だい、あんたは」

 

「通りすがりの冒険者です。その代金、僕が支払いますよ。それで構いませんか?」

 

「そりゃ金さえ貰えりゃ文句はねぇが……。……ん?そこの嬢ちゃんは……」

 

 

続けて店主の男性は、視線を僕から隣に居たユミナに目を向けた。……すると額に大量の脂汗が浮き出し、かなり慌て始めてしまった。

 

そして屋台から飛び出すと、ユミナを見上げる様に地面に膝を着いた。

 

 

「ゆ、ユミナ王女!?どうして貴女様がこのような所へ!?」

 

「か、顔を上げて下さい!私はこの方と共に偶々通り掛かっただけです!」

 

「……ん?その女の子が、どうかしたの?」

 

「馬鹿野郎!此方に居られる方こそ、ベルファスト王国の王女様だ!」

 

「……なるほど、この国のお姫様」

 

 

隣で膝を着いた店主を見て、平然としていたモノトーンの少年は、その後の店主からの諌言にも、短くそう答える。取り敢えず僕としては、少年が買った商品のお支払いをする事が出来たら良かったんだが……。

 

 

「こ、この度は……誠にお見苦しい所をお見せしてしまい、申し訳なく」

 

「別に気にしてませんよ。お勤めご苦労様です」

 

「はっ!……ところで何ですが、このボウズとの関係は……どのような物で?」

 

「将来を誓い合った夫婦です」

 

 

ユミナが店主の男性に放った一言で、周りの空気が一瞬で凍り付く。……ああ〜!更にややこしい事になりそうな予感……!

 

 

「僕もそこに関しては、気にしてませんから!すみません、銅貨二枚でクレープを四つお願い致します」

 

「お、おう……わかったぜ!」

 

 

未だに驚きが残っている店主に、僕はクレープを四つ注文する。そして先程の少年の買い物の支払いは、銅貨一枚で支払った。……前世でお祭りに行った時、クレープは一つ500円で売られてたから、それを考えてみれば安いもんでしょ。ちょうどピッタリだったし。

 

僕はユミナと一緒に少年を連れ、屋台から離れて行く。その場に状況を把握出来てない人たちを残したまま。

 

 

「ありがとう。助かったよ」

 

「いやいや、困った時はお互い様って事で。それよりも君って……共通通貨を持ってないの?」

 

「前はこれで買い物が出来たんだけどなぁ……」

 

 

モノトーンの少年は、そう言ってポケットから先程の銀貨を取り出す。僕らは何時も丸い硬貨を使っているが、この少年が取り出したのは、今まで見た事の無い八角形の形をしていた。

 

 

「見せて貰っても良いですか?」

 

「良いよ。……と言うよりも、その硬貨あげるよ。さっきのお礼。どうせ此処では使えないみたいだし」

 

「じゃあ、わかった。そういう事なら」

 

 

そう言って僕は、モノトーンの少年から銀貨を受け取ってポーチに入れる。正直に言ってしまえば、喉から手が出るほど欲しかったと言う訳では無いが、そう言ったら言ったで、先程の事を引け目に感じてしまうと思ったからだ。

 

 

「僕は颯樹。盛谷 颯樹。で、こっちがユミナ」

 

「ベルファスト王国国王、トリストウィン・エルネス・ベルファストが娘、ユミナ・エルネア・ベルファストです」

 

「エンデ。よろしく、颯樹。ユミナ」

 

 

《エンデ》と名乗った少年が差し出した手を、僕とユミナは握った。……普段人の手は、多少の温度差こそあれど温かい物だ。試しにエンデの手を握っていない手で、ユミナと握手をして見ると、確かに熱を感じる事が出来た。

 

……しかし、エンデの手はと言うと『まるでかなり寒い所から来たのか、或いは生きていると感じられない程』の冷たさだった。……ほんとにこの子、何者?

 

──────────────────────

 

「うーん。これからどうしようかな。お金が無いと色々と困るよね?」

 

「そうだね……取り敢えず仕事をした方が良いかも。仕事をして稼ぐ、これに限るかもね」

 

「颯樹は何の仕事をしてるの?王女様と一緒なんだし、騎士団で護衛の仕事とか?」

 

 

……騎士団で護衛の仕事って。僕自身『護衛』はあまりした事は無いからなぁ……。以前戦闘能力の高さを見込まれて、ミスミドの兵士として雇われかけた事があったな。今となっては良い思い出だ。

 

 

「違うよ。僕は冒険者をしてるよ。ギルドの仕事をこなしてお金を得てる。魔獣を倒したり、商人の護衛なんかをしたり」

 

「私も同じ事をしています」

 

「ああ、なるほど。それなら僕にも出来るかもしれない。……と言うよりも、お姫様も冒険者だったんだね」

 

 

エンデがユミナを見ながら、そう言って感嘆の息を漏らす。まあ着ている服の豪華さから、ユミナが『普段は冒険者をしています』と言ったとしても、素直に頷ける人など早々居ないだろうな。

 

それにしてもさ……エンデ、結構サラッと簡単に言うね。まあ、初心者の《黒ランク》の依頼なら、気を付ければ何とかなるよね。

 

 

「ギルドに登録するの?……見た所、武器も無いみたいだけど大丈夫?」

 

「一応、採取系の依頼もあったと思いますけど……それでも武器無しは、ちょっと……」

 

「二人は心配症だなぁ。武器なんて要らないよ。ドラゴンを倒す訳じゃないんだし」

 

 

素手でやる気なの?もしかして、エンデはエルゼと同じ様に《武闘士》なのかな。それとも魔法の使い手とか?と言うよりも『武器が有ればドラゴンでも倒せる』みたいな口振り。……凄い自信だなぁ。

 

 

「取り敢えず、ギルドまで案内するよ。僕もそこへ用があったから」

 

「ありがとう」

 

 

食べ終わったクレープの紙屑をゴミ箱に捨てて、僕とユミナにエンデはギルドへと歩き出した。指輪の為のお金を下ろさないと行けないからね。

 

エンデの身長は僕よりも少し高い位で、173cm程はありそうだ。顔立ちも整っていて中性的なイメージがあり、俗に言う『イケメン』ってタイプだ。……ま、そんな話はどうでもよろし。

 

 

「そう言えば、そのマフラーはどうしたの?」

 

「ああ、ある人からの贈り物なんだ」

 

 

なるほどね。……ま、他人のプライベートに首を軽々しく突っ込む程僕はお節介焼きでは無いから、そこら辺に関しては何も聞かないんだけれども。

 

漸くするとギルドの看板が見えて来た。何時もの様に、かなりの賑わいようだ。僕は受付のお姉さんの前に、エンデを引っ張って行って、登録の手続きをお願いした。その間に僕はユミナと隣のカウンターで、ギルドカードを使ってお金を引き下ろす。

 

 

「よし、これで揃ったね」

 

「お、颯樹。用事は終わったのかい?」

 

「ええ、先程無事に終わりましたよ。登録は無事に出来ましたか?」

 

「うん、おかげでね。後は依頼を熟すだけだよ。ギルドって世界中に有るみたいだから助かるよ。僕はあまり一つの所に居ないから」

 

 

あ、そうなんだ。それにしては随分と軽装だなぁと思ったんだよね。……と言うよりも、路銀も無しでよく此処まで来られたよね。何となくだけど世間知らずな感じがするし、何処かの国の王子様じゃ無かろうか?

 

……色々と疑問は残ってしまうけど、あまり僕には関係が無さそうだね。人はそれぞれ何かしらの事情を持ってるもんだ。

 

 

「じゃっ、僕たちは此処で。始めは簡単な依頼にしておいてよ?無理しないでね」

 

「うん、わかった。ありがとう颯樹。また、何処かで会えたら良いな」

 

「ああ、また何処かで」

 

「ごきげんよう」

 

 

そう言って僕とユミナはエンデと別れ、二人連れ立ってギルドを出た。……変な奴だったな。さて。当初の目的である宝石店へと向かいますか。

 

──────────────────────

 

「いらっしゃいませ〜」

 

 

エンデと別れた後、僕とユミナは御目当ての宝石店へと訪れていた。当たり前だが、こんな所に来るのは初めてだ。周りに陳列されてる商品は、どれもこれも高そうな物ばかりで、正直に言ってしまえば、手を付けるのも烏滸がましいと思えてしまうほどだった。

 

 

「何かお探しでしょうか?」

 

「えっと……指輪を買いに来たんですけれども」

 

「まあ、それはおめでとうございます。どのような物がご希望でしょうか?」

 

 

店員のお姉さんにそう聞かれ、僕は最初に考えていた事を確り伝えていく。指輪の相場って詳しくないから知らないけど、確か『婚約指輪は給料の三か月分』とか聴いた事がある。……あ、でもな。あれは確かジュエリー会社が広めたキャッチコピーに過ぎないって聞いた事がある。そもそも、僕の稼ぎは給料制じゃ無いからなぁ。

 

そんなこんなと話を進めて行く中で、暫くしてプラチナリングにダイヤモンドの埋め込まれた、シンプルな指輪が出て来た。

 

 

「これなど如何でしょうか?」

 

「……分かりました。買います」

 

「ありがとうございます」

 

 

そう言ってお勘定を済ませて行く。後々に確認して見た所、先程買った指輪がどうやら『給料の三か月分』とか言われている物なんだとか。……ま、可愛い彼女の為だからね。これくらいは出費を惜しまないよ。

 

そしてその指輪を購入し、近くの路地裏に入る。その後に先程の指輪を取り出し、魔法を詠唱する耐性を整えた。その指輪には【アクセル】、【ストレージ】、【トランスファー】を【エンチャント】と【プログラム】で付与して置く。

 

 

「これで大丈夫かな」

 

「ありがとうございます。けど、さっき付与したのは……?」

 

「先ず最初に【アクセル】。これは戦闘の際に、相手の懐に素早く移動できる様に。次に【トランスファー】。これは予備の魔力タンクとしてね。そして【ストレージ】。これに関しては、個人的な倉庫として使ってよ」

 

「ありがとうございます、颯樹さん」

 

 

そう言ってユミナは、指輪の嵌められている左手を右手で包み込んで、にこやかに微笑む。……ああ〜!もう!こう言う時にその笑顔は反則っ!益々惚れてしまうじゃんか///!

 

その後は【ゲート】で屋敷へと戻ったのだが、戻ったら案の定他の三人には詰め寄られ、色々と問い質されてしまった。こりゃあ明日から三日間、偉く大変な事になるぞ〜。覚悟しとかなきゃ。




今回はここまでです!如何でしたか?


次はどうしようかな〜?取り敢えず、今回のお話までで【1st season】の内容は一区切りなんですよね。ですので、次は三回の【幕間劇】を挟みつつ……次なる【2nd season】へと襷を繋げるか。若しくは【2nd season】をある程度(新たな婚約者を迎える)まで進めてから、溜まりに溜まった【幕間劇】をして行くか。

今回のアンケートの内容に関しては、後書きでのアンケートはしませんので……感想かメッセージにて教えて下さい。


以前Sayuki9284さんの感想を見ていたら『私の更新ペースは遅くありませんよ』と言われたんですけど、実際予定通りに1st seasonを終えられてない時点で、私はかなりのスローペースだろうなと思ってます。まだ始まったばかりでこの体たらくなら、この小説での嫁候補が全員揃うまでどの位の期間を要してしまう事やら……?

それではまた次回です!次は1月17日(金)午前0時の投稿予定です!今回も感想を是非!お気に入り登録や高評価も、何時もの様にお待ちしております♪
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