異世界はスマートフォンとともに。if   作:咲野 皐月

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#2. A級クエスト、そしてミスリル。

メリシア山脈に着くと山沿いを少し北上し、ステア鉱山の上空に空中庭園を静止させた。眼下に見える採掘場を眺め、地上へと向かって【ゲート】を開いて転移する。何かあった時の為に、シェスカは空中庭園でお留守番だ。

 

地上へと降り立つと、辺りは静まり返って居て、少し不気味な雰囲気すら感じられた。

 

 

「誰も居ないんでしょうか?」

 

「いや。ゴーレムの性質上、侵入者が居ない限りは動いて来ない筈だから、僕たちが入って来た事に気づけば、自ずと此方に向かって来るよ」

 

 

ユミナから漏らされた疑問に僕は答え、スマホのマップアプリで「ミスリルゴーレム」を検索する。……ああ、居るね。坑道の奥でゆっくりと動いている事から、どうやら此方に向かって来ているようだ。

 

 

「崩落の危険性も考慮して、玄帝の時に使った策は出来ないね。マジの真剣勝負に時短策は要らないよね」

 

『アレはキツいわよぉ……』

 

『二度と味わいたくは無いのう……』

 

 

僕の言葉にゲンナリとした顔で、黒曜と珊瑚がボソッと呟いた。……安心して良いよ。アレは余程の事が無い限りは使わんから。

 

……?そう言えば、ユミナの初依頼の時に使った作戦がもう一回使えないかな?そう思った僕は、地面に手を触れて土魔法を発動させようとする。

 

 

「ねぇ……颯樹」

 

「ん?何?エルゼ」

 

「この音、もう一つ聞こえませんか……?」

 

 

エルゼとユミナの不安な声を受けて、僕は周囲の音に耳を傾ける。

 

 

「……!?……まさか、ミスリルゴーレムは二体居るってのか?」

 

「颯樹殿、どうするんでござるか!?」

 

「一応、エルゼ以外の三人には【エクスプロージョン】を付与した弾丸を渡しておくね。それと八重は銃を持ってないから、ニューモデルアーミーも合わせて」

 

 

僕はポーチから弾丸を50発ほど取り出し、爆裂魔法に属する【エクスプロージョン】を付与した弾丸を、エルゼ以外の三人に渡した。八重にはニューモデルアーミーも一緒に渡した。彼女の持つ刀では、今回のクエストには部が悪すぎると踏んだからだ。

 

その後に【ストレージ】を開いて、僕は二振りの剣を背中に挿し込む(正確には留め具みたいなのがあって、そこの凹みに剣を入れただけなんだけど)。

 

 

「何時でも来やがれ!」

 

「来たでござる!」

 

 

坑道の入口から、太陽の光に照らされた銀色のボディを持ったゴーレムが現れた。……あれがミスリルゴーレムか。名前だけは聞いた事があるが、実物を実際に見るのは初めてだ。

 

ゴツゴツとした身体は岩の様だが、全てが金属特有の光沢を放っており、その大きさはざっと6メートルくらいだろうか?足は短くて、腕は大きく長い。顔はのっぺりとしていて、目に当たる部分に黒く窪んだ穴が見える。その中は赤く不気味に輝いていて、まるでこちらを睨んでいるかの様だ。

 

 

「さ、颯樹さん、アレ!!」

 

「くそっ!もう一体も来たのかよ!」

 

 

ユミナが指差す坑道から、先程来たのと同じミスリルゴーレムが姿を現す。道理で地響きが二つ分あると思ったよ!

 

……まずはこれで様子見だ!

 

 

「【岩よ来たれ、巨岩の粉砕】」

 

「【水よ来たれ、衝撃の泡沫】」

 

 

……どうやらリンゼも、考えている事は僕と同じみたいだね!その詠唱の後に僕の方には、土属性の魔法陣がミスリルゴーレムの上に広がり、リンゼの方にはシャボン玉の様な水玉が何個か浮かび上がる。

 

そして一気に……それを解き放つ!

 

 

「【ロッククラッシュ】!」

 

「【バブルボム】!」

 

 

その魔法名と共に放たれた二つの魔法は、ミスリルゴーレムへと直撃した。僕が放った【ロッククラッシュ】の方は実感があったのに対して、リンゼの【バブルボム】に関しては、全くの無傷で終わる形となった。

 

それに追撃する形で、ユミナのM1860アーミーの連射が火を噴く。被弾した肩の部分が【エクスプロージョン】の効果によって爆破するが、ヒビらしき物は入った様子が見えない。

 

 

「入れ替わろう!《スイッチ》だ!」

 

「す、スイッチ……?」

 

「交代するって事だ!リンゼのやった方は、僕がやる!僕のやった方をリンゼ頼む!」

 

「わ、分かりました!」

 

 

リンゼ達の方に向かってそう伝え、僕は先程までリンゼが対峙していた一方へと向かい合う。そして背中に挿している二振りの剣を取り出し、左右の手に構える。

 

 

「行くぞ!【ブースト】!」

 

 

増強魔法の【ブースト】を詠唱すると、僕は勢い良く採石場を駆け出した。先ずはこれからだ!

 

 

「アインクラッド流剣術、二刀流奥義一式、二刀流突進撃(ダブル・サーキュラー)!」

 

 

そう唱えて左右交互に連撃を繰り返す。何れも腕に命中しては居たが、決定的な一打を与えるには至っていなかった。そう思った僕は、力の限り大きな声である人物へと頼み事をする事にした。

 

 

「ユミナ!」

 

「は、はい!何でしょうか!?」

 

「みんなを連れて後退して欲しい!ある作戦を実行に移す!」

 

「……?分かりました!」

 

 

僕は先程ミスリルゴーレムとぶつかった場所まで【アクセルブースト】を使って戻る。そしてみんなと合流して【テレポート】で近くの瓦礫の中へと転移する。

 

その後にマップアプリで「ミスリルゴーレム」を検索し直し、ターゲットをロックする。

 

 

「【ゲート】!」

 

 

そう唱えると、ミスリルゴーレムの反応がスマホから消失し、それに伴ってゴーレム達の姿も消えていた。取り敢えずは一安心かな……。

 

僕は両手に持っていた剣を挿し直し、4人と一緒に身を隠していた。

 

 

「颯樹さん、さっきのは……?」

 

「ああ。アイツらを【ゲート】で転移させた」

 

「何処へ、転移を?」

 

「採石場の上……ステア鉱山上空まで」

 

 

それを聞いた際に、4人の顔が驚愕に満ちたものになっていた。いくらあの図体のでかさでも、落下による衝撃からは逃れられないからね。

 

その直後に物体が急高速で落下して来る音が聞こえた。着地予定地点が少し西にズレたみたいだ。落下を衝撃で確認した後、僕たちはその地点まで【アクセル】を使って移動する。

 

 

「……まだ戦えるのか。だったら」

 

「【水よ来たれ、衝撃の泡沫、バブルボム】」

 

 

擂鉢の中から立ち上がろうとしている、ゴーレム二体を牽制する様に、リンゼの【バブルボム】が炸裂する。ヒビだらけの身体に更に衝撃が加わり、胸のミスリルがガラガラと崩れ落ちる。

 

その胸の中に鈍い銀色に光る球体が見えた。……あれが討伐部位の《中枢核》な訳ね。

 

 

「【アクセルブースト】!」

 

 

エルゼが身体強化と加速の魔法を併用し、放たれた矢の如き速さでゴーレムの胸に飛び込んで行く。振り被った右手の破壊力増強のガントレットが、チャージ完了の赤い光を放っていた。

 

ガキィィィン!!!と重い金属同士をぶつけた音が響き渡り、ゴーレムの中枢核の一部が砕け散る。そのままゴーレムは背中から地面へと倒れ伏し、ピクリとも動かなくなった。

 

 

「喰らうでござるよ!せあっ!」

 

 

その傍らでは、八重が僕のニューモデルアーミーでゴーレムへと攻撃していた。複数の銃声の後に、爆裂魔法の【エクスプロージョン】が発動した事を示す爆発が起こった。先程のゴーレムと同じく、爆発した胸部が破壊されて中枢核が剥き出しになる。

 

 

「【光よ穿て、輝く聖槍】」

 

「【雷よ穿て、百雷の矛】」

 

 

……待ってました!ありがとう、八重!僕は左の掌を向け、ユミナは右の掌をゴーレムに向けて魔法の詠唱をする。そして僕とユミナの周囲には、雷と光を纏った槍が現れていた。

 

それを一気に……瀕死寸前のミスリルゴーレムへと発射させる!

 

 

「【シャイニングジャベリン】!」

 

「【ライトニングジャベリン】!」

 

 

僕とユミナの周囲に漂っていた槍が、ゴーレムの中枢核へと向かって放たれる。パキンッ!!という音と共に、核は四等分になって砕け落ちた。そしてその後には、此方のゴーレムも仰向けに倒れて動かなくなった。

 

二体とも完全に活動を停止し、辺りは土煙と砕けた細かいミスリルで一杯である。

 

 

『お疲れ様でした』

 

「ん。上手く行ってほんとに良かった」

 

 

近寄って来た琥珀の言葉に、僕は短く答える事で琥珀へと返答した。さて……討伐部位の回収をしようかね。

 

一部が砕け散った中枢核をエルゼが、四等分に割れた中枢核の半分を八重が、もう半分をユミナが回収した。バレーボール程のそれは、ボディの銀色よりもくすんだ鈍い銀色をしていた。

 

 

「討伐部位も手に入れたし、これで依頼完了ね」

 

「そうだね。……でも、後片付け」

 

 

エルゼの言葉に頷き返した僕は、二体のミスリルゴーレムの下へと歩みを進める。そしてある魔法を詠唱する。これは僕とエルゼにリンゼ、八重のパーティーが旧王都の遺跡で行なった依頼の際に、僕が使っていた魔法だ。

 

 

「【ストレージ:イン/ミスリル】」

 

 

収納魔法を発動させると、魔法陣が地面に浮かび上がって、目の前のゴーレムがストンッと地面へと沈んで消えて行く。ゴーレムが消えた地面を調べて見たが、ミスリルの破片一つ残っては居なかった。……よし、成功だ。

 

同じ様にもう一体のゴーレムも【ストレージ】で収納する。収納魔法である【ストレージ】の容量は本人の魔力量に依存するので、僕で無いとこれは収納できないからね。

 

 

「よし、じゃあ家へと帰りますか」

 

「何時もの様に【ゲート】を使うん、ですか?」

 

「嫌。……考えても見なよ。ここでアイツを放置しておけばどうなるか」

 

「「「「『あっ……』」」」」

 

 

僕は【ゲート】を開いて、シェスカの待つ空中庭園へと戻り、そこからベルファストの自宅へと帰還した。屋敷の庭に出て見ると、レネがセシルさんと自転車の練習をしていた。

 

レネは何時ものメイド服では無く、シャツとサスペンダーの着いたズボンと言うボーイッシュな服装だ。途中で倒れまくったのか、随分とあちこち汚れては居たが。確か今日はレネの休日だから、セシルさんが仕事の合間に練習に付き合ってあげてるのかな。

 

 

「あ〜、お帰りなさい、旦那様〜」

 

「ただいまです、セシルさん」

 

 

セシルさんの声で僕らに気付いたレネは、自転車を走らせて此方へ向かって来た。目の前で確りとブレーキを掛けて停止する。もう乗れる様になったのか。公爵殿下よりも早いんじゃないのかな?若さ故なのかもね(おいキミも若いでしょう?)。

 

 

「お帰りなさい、颯樹兄ちゃん!」

 

「ただいま、レネ。もう乗れる様になったんだ」

 

「うん!」

 

 

嬉しそうに笑うレネの頭を撫でる。こんなに喜んで貰えるなら、自転車を作って良かったと心から思うよ。取り敢えず風呂に入って、埃や砂を落とさないとね。レネは皆(女性陣)と入る方が良いでしょ。僕はその後でゆっくりと浸からせて貰うけど。

 

……あ〜疲れた。八重の新しい武器に関しては、明日調達する形にしようかな。先ずは休息を取らなきゃ。……先ずは背中に挿している2本の剣を【ストレージ】に収納しなきゃだけどね。




今回はここまでです!如何でしたか?


原作では依頼先から帰還する際は、シェスカの居る空中庭園を使わずに戻ってましたが……今回は、キチンとシェスカの所を経由して戻っています。

そして颯樹くんは遂に剣を2本携える……感じだけ見れば、何処ぞの《黒の剣士》を彷彿とさせますね。


次回のお話は1月24日(金)午前0時の投稿を予定しています!話の流れから行けば、八重の新武器を調達するお話からのスタートです♪

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