異世界はスマートフォンとともに。if   作:咲野 皐月

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#3. バビロン捜索、そして制作依頼。

「……で?今日は何の用な訳?」

 

「そうね、残りのバビロンの転送陣なのだけど。今の所これと言った確かな情報は無いわ」

 

 

ミスリルゴーレムの依頼から帰って来た後、僕は屋敷に訪れていたリーンを、自宅のテラスにて応対していた。そして彼女の口から語られたのは、バビロンの転送陣の事についてだった。

 

 

「……そうか。進展無しか」

 

「貴方とは気が合いそうね。そう言った話題に、興味が有るの?」

 

「興味が有るとか無いとかじゃなくて……、残り9つのバビロンは何処にあるんだろって、個人的に気になってるだけだよ」

 

 

実際の所はと言うと、バビロンの古代遺跡を探すのは、此方から願い下げをしたいくらいだ。しかしそうも言ってられない理由がある。……フレイズの事だ。

 

リーンが戦ったヤツの様な魔物が、この時代に既に存在して居るのだとしたら、残りのバビロンを本腰を入れて探さないといけないかもね。……取り敢えず、転送陣の情報が無い事には、僕たちも動きたくても動けないのが現状だ。

 

 

「ま、転送陣の事は詳しい情報が入ってからでも……充分間に合うと思うよ。確実にあると言う情報が分かり次第、僕の方まで教えて欲しい」

 

「わかったわ。転送陣のある情報が判明したら、バビロンの古代遺跡探しに協力して貰うわよ」

 

「それは勿論。皆にも話を通す必要があるけど」

 

 

約束を取り付ける事が出来たリーンは、ポーラと共に屋敷を後にする。……フレイズの事だけど、何時皆に明かそうか……。先んじて僕とユミナは知ってるから、後はエルゼにリンゼと八重なのだが……。

 

その事を頭に浮かべつつ、僕はパーティーメンバーの4人を呼び集め、依頼の報告をしにギルドへと向かう事にした。

 

──────────────────────

 

「ミスリルゴーレムが二体ですか……。申し訳ございません。此方の調査ミスの様ですね」

 

 

そう言って受付のお姉さんが、僕たちに向かって頭を下げる。ゴーレムの討伐と言う内容に関しては、何の間違いも見当たらないのだが……《鉱山の解放》が目的であったのならば、二体討伐と描くべきだったのだろう。

 

 

「この場合、キチンと二体分の討伐部位もございますし、此方の手落ちでもございますので、報酬の二倍……白金貨十枚を支払わせて頂きます。勿論ギルドカードへのポイントも二倍にさせて頂きます」

 

 

おっ、それは助かります。……って言うよりも、これは《当たり前》なのかな?普段は二体分の討伐部位を持っていても、その数(討伐指定数に指定されている数)分だけしか支払われないけれど、今回は調査ミスが響いていた事から、正式に二体分の報酬を受け取れるって事かな。

 

カウンターに白金貨十枚を並べて、僕らのギルドカードに何時もの様に、ポンポンポンと判子を押していく。

 

 

「このポイントで全員ギルドランクが上がりました。おめでとうございます」

 

 

その後に返されたギルドカードが、ユミナは《二流冒険者》を意味する青に、それ以外の僕らは《一流冒険者》を意味する赤に変わっていた。おお〜、これで僕らも一流冒険者の仲間入りか。頑張った甲斐があるね♪

 

……あれ?《ドラゴンスレイヤー》のシンボルの横に、新しいシンボルが追加されてる。ゴーレムの頭の様なシルエットにヒビが入っている、四角い形をしたシンボルだけど……。

 

 

「さらに今回の討伐に因り、ゴーレム討伐の証である《ゴーレムバスター》の称号を、ギルドから贈らせて頂きます」

 

「ありがとうございます」

 

「ちなみにこの称号を持っていると、ギルド提携のお店で買い物をされる時、商品の価格が合計価格より二割引となります」

 

 

それはなかなか美味しい情報なのだけれど……、前に黒竜討伐の際に貰った《ドラゴンスレイヤー》が三割引なので、あんまり意味は無さそうだ。

 

そのままギルドを出て、リンゼとユミナは魔法屋へと向かい、エルゼはレオン将軍と訓練が有るとの事なので、ギルドの入口の所から別行動をする事になった。琥珀をリンゼ達に、黒曜&珊瑚をエルゼに着いて行かせる。

 

……あんまり、召喚獣を携帯電話代わりに使うのもどうなのかな……。まあ、互いが離れていてもさほど問題は無いし、念話にも影響は無いとの事らしいので、そこら辺は心配して居ない。

 

 

「じゃ、僕たちは鍛冶屋の方に行こうか」

 

「どうするのでござるか?」

 

「えっと、さっき手に入れたミスリルを使って、八重の刀を鍛冶屋で打って貰おうと思ってるよ」

 

「新しい武器でござるか!?」

 

 

その言葉を聞いた瞬間に、八重の眼がキラキラと輝き出した。僕はそれを落ち着けた後に少し考え、近くの路地裏へと入って【ゲート】を開いた。

 

……普通の鍛冶屋では、刀など打って貰えないと思うので、イーシェンの鍛冶屋へと向かう事にする。刀を打ってるイメージは、イーシェンの方が強いからね。彼処ならば、八重の新しい刀をミスリルで打ってくれるやもしれない。

 

──────────────────────

 

「さて、オエドに着いたね」

 

「ここからは鍛冶屋を目指すんでござるな?」

 

「そうだね。そこが今回の目的地だからね」

 

 

八重と行き先を確認して、僕らは街の中へと繰り出していく。本来ならば……先ず先に八重のご両親である、重兵衛さんと七重さんの所に行ってから『娘さんを僕に下さい!』と言う挨拶をせねばならんのだが、この間会ったばかりでそれを切り出すのは、流石にちょっと抵抗がある。

 

直ぐに結婚をする……と言う訳でも無いし、もう少し落ち着いてからの方が良いって、八重本人からも言われたからね。そこら辺は考えないと。

 

八重の家とは逆方向、オエドの西の端に腕の良い刀鍛冶が居るとの事だ。そこへ向かおうと街中の通りを二人で歩いていると、時折ではあるが、八重が此方へチラチラと視線を向けていた。

 

 

「?どうしたの?」

 

「ふえっ!?あ、いやっ、その……せ、拙者は颯樹殿の許嫁でござる……よね?」

 

「どうしたの藪から棒に。僕たちは既にそう言う関係になってるんじゃん」

 

 

許嫁(いいなずけ)】とか聞くと、親同士が昔から決めていた婚約者みたいな言い方をするのだが、確かに八重の言う事に間違いは無い。

 

……最も、その事を改めて彼女から言われると、照れるのは事実なのだけれども。

 

 

「で、あるならば、でござるな……、その……手、手、手を、繋いで歩きたいなあ、なんて……」

 

「……わかった。はい」

 

 

僕が差し出した左手に、八重の右手が繋がった。そう言えば以前【リコール】を使う時に、一度八重とは手を握っているのだが、何時も刀を握っているとは思えぬ程の柔らかさだったのを、今でもよく覚えている。

 

八重は僕の方に顔を上げると、えへへと恥ずかしそうに笑って、キュッと僕の手を握って来た。……何この可愛い生き物はァァァァァ?!街中で無かったなら、どうなっていたかはあまり考えたくない!

 

オエドの西の端にある、鍛冶屋までの短いデートを終えると、カーン、カーンと鎚が鳴る店の中を覗く。

 

 

「すみません、何方かいらっしゃいますか〜」

 

「はーい、何でしょうか?」

 

 

そう言って店の奥から現れたのは、エプロンを付けた20代前半の女性だ。黒髪を後ろでひとつに纏め、脚にはサンダルを履いている。……この店の店員さんかな?

 

 

「刀を作って頂きたいんですけれども、お願い出来ますでしょうか?」

 

「刀ですか。はい、承っておりますよ。ちょっとお待ち下さいね。あなた〜、お客さんよ〜?」

 

 

その女性は店の奥の作業場へ声を掛ける。店員さんと思ったら、女将さんだったか〜。その声を受けて、店の奥から作務衣らしき物を着て、頭にバンダナの様にタオルを巻いた30代前後の男性が現れた。

 

その男性は少々髭面ではあるものの、優しい印象を受ける顔立ちをしている。よく工務店や作業現場に居る、全体の指揮を執っている男性……みたいな見た目だ。

 

 

「刀かい?どっちが使うんだ?」

 

「あ、こっちの彼女です。素材はミスリルでお願いしたいのですが……」

 

「ミスリル!?そりゃまた豪勢だねぇ!あんた、何処かの領主の息子かい!?」

 

 

うわぁ〜……、何だか変な空気になってる……。僕たちはミスリルを手に入れた経緯を事細かに伝え、ご夫婦が僕たちに抱いている誤解を解く。

 

その後に感心した様な息を親方が吐く。それから八重の刀と脇差を見せて欲しいと言い、それを手に取って()めつ(すが)めつしながら口を開いた。

 

 

「一週間で仕上げてやるよ。それで良いかね」

 

「ええ、全然構いません。それでお代の方は幾らぐらいするのでしょうか……?」

 

「金は要らん」

 

 

……え?金は要らんって、マジで?その後に親方から話を聞いてみると、イーシェンではたまーにヒヒイロカネは回って来るものの、ミスリルともなると滅多に出回らないのだとか。更に言うならば、西方から取り寄せるとバカみたいな金額がするとの事で。

 

……あ、なるほどね。だから『金は要らん』って言ったのか。それならば分けてあげられる。ミスリルゴーレムを討伐した時、かなり多めに手に入れたからね。

 

 

「構いませんが、相場が分からないので、どれ位差し上げたら良いか検討も付かないのですが……」

 

「そうだな……。じゃあ今日は刀と脇差を作る分だけを置いて行ってくれ。完成したらその出来具合で、料金をミスリルで支払ってくれたら良い」

 

「わかりました。ではそれで」

 

 

……次来る時までに、ミスリルの相場を調べておかなきゃね。僕は収納魔法の【ストレージ】を開き、ソフトボール位の大きさのミスリルの塊を、二つ取り出した。

 

これでどうかと聞いてみると、少し多いくらいなのだとか。そして親方はミスリルを手に取り、重さを確かめる様に上下に揺らした。

 

 

「では一週間後にまた来ます」

 

「ありがとうございました〜」

 

 

女将さんの声に見送られながら、僕と八重は鍛冶屋を後にする。

 

人気の無い所から【ゲート】でベルファストの屋敷に帰ろうとしたら、八重がコートの裾を掴んで、躊躇いながら上目遣いの視線を僕に向けて来た。

 

 

「あ、あの……も、もう少しだけ、二人っきりで……」

 

 

八重はそう躊躇いながら言うと、また顔を紅くして伏せてしまう。ああああああああぁぁぁ!可愛いなぁ!街中で無かったなら、確実に抱き締めてますよ!?

 

再び彼女の手を握って、照れくさそうな笑みを浮かべた八重を連れて、僕はオエドの街を歩き始めた。

 

 

「……ッッ!!?」

 

「?どうかしたのでござるか?」

 

「い、いやっ、何でもない……」

 

「?」

 

 

八重が不思議そうな顔をして、僕へと問いかけて来た。僕はそれに『何でも無い』と返すと、八重は再び首を傾げるも、直ぐに笑顔に戻って歩き出した。

 

……何だったんだ、今の寒気。今はそんなに寒いって訳でも無いし……。屋敷に帰ったらちょっと覚悟しとかなきゃ。ウチのお嬢様(一部のメンツ)の抱く嫉妬は凄いからなぁ……。




今回はここまでです!如何でしたか?


今回のお話は殆ど原作通りなのですが、最後には少しだけオリジナルを含んでおります!そのPartの一番最後で颯樹くんが言った言葉は、この小説と原作を読まれている方なら、容易に察しが着くと思いますよ……?

次回は《扇風機》の話題からしようと思ったのですが、かなりシステムの説明が多いので、その後のお話から始めたいと思います。そして原作を知ってる方は、この後に何が来るのかは……言わずとも分かりますよね?


次回の投稿は、来週の月曜日…1月27日(月)午前0時を予定しています!偶に端折って居る所があるから、原作未読者は読みにくくないかな……心配。

今回も感想を是非!高評価にお気に入り登録も、何時もの様にお待ちしております!
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