異世界はスマートフォンとともに。if   作:咲野 皐月

46 / 60
#5. 事情、そして夜襲。

ニール副団長に詫びを入れられた後、リオンさんに騎士団の現状を聞かされた。騎士団は王都の守りを主に司っていて、都の安全や王室警護、要人護衛などを任務としているそうで。

 

騎士団のほとんどが貴族の子息であるが、家督を継ぐべき長子では無く、次男や三男が多いらしい。その立場から責任感が全く無く、家柄を誇るだけの我儘なヤツらも居るとの事。

 

 

「かく言う僕も次男ですけどね。まあ、ウチは他の家と違って、人様に迷惑をかける様な間違った行ないをすれば、火焔の拳による鉄拳制裁が待っていますので……」

 

「あー、何と言うか察せました」

 

 

苦笑しながらリオンさんがそう語る。……あー、あの親父さん(レオン将軍)だしなぁ…。甘やかされる要素が全然無さそうだな……。

 

 

「少数だがやはり家柄にしがみつく者が居てな。伯爵家の新兵が男爵家の隊長に従わなかったり、また逆に隊長の方が新兵に媚びたりな。全く下らない話だ」

 

 

ニールさんが苦々しくそう話す。何処も問題を起こす奴ってのは居るんだなぁ……。まあ、そんな奴らに護衛とかの依頼を頼む方は、溜まったモンじゃないだろうな。

 

 

「まあ、今回は《渡りに船》だったよ。彼奴らは騎士団にとって獅子身中の虫になりかねんからな。今までは実家の手回しで躱して来ただろうが、今回はそうは行かん。何せ姫様のフィアンセに手を出したのだ。首が繋がっているだけ有難く思って欲しいものだ」

 

 

この人……初めから僕とアイツらが揉める所を見ていたな?確信犯か。まあ、乗せられた僕も僕なんだけれどもね。

 

そう思っていると、ニールさんは僕の腰に提げられている《剣銃ブリュンヒルド》を興味深そうに眺めて来た。それを見た僕は、腰のホルスターからブリュンヒルドを取り出して、ニールさんとリオンさんに見せる。

 

 

「これは僕専用の武器で、僕しか使用・製作が出来ない代物です。遠距離と近距離の両方で使用でき、短剣や長剣状態へと変化します。さらに言うなら、相手を麻痺させる事も可能です」

 

「ふむぅ、凄い武器だな。私にも作っては貰えぬだろうか?」

 

「すみませんが、それはちょっと……」

 

 

銃に関しては慎重にならないと……。これは使い方を少しでも間違えれば、人をも容易に殺せる物だからね。他人に譲渡するなら、余程信頼の深い人でないと無理だ。それこそ、ユミナやリンゼみたいな人とか。

 

 

「そうか……残念だ」

 

「あ、でも変形する武器や、麻痺の能力を付与した物を作る事は出来ますよ?使いこなせるかどうかは、本人次第にはなって来ますが」

 

「本当か!?ならお願いしたい!」

 

 

僕はニールさんの返事を聞き入れ、収納魔法の【ストレージ】から鋼のインゴットを取り出す。ミスリルの方が硬度はあるのだが、ミスリルは何方かと言えば……武器には向いていないのだ。何故かと言われれば『軽過ぎるから』だと返させて貰おう。

 

アレで作った武器を活かすのであれば、軽さと硬さを利用したエストックや細剣(レイピア)の様な刺突武器か、『斬る』事に特化した刀が相応しいと思う。

 

 

「ニールさんは、どう言う武器を得意にしてるんですか?」

 

「そうだな、やはり槍だな。無論、剣も使えるが」

 

 

ニールさんからのリクエストを受けて、僕は武器作製に取り掛かる。仕組みは《剣銃ブリュンヒルド》を作った時の構造を活かして、厚みのある短剣の刃を薄くして長剣状態へと変形できる様にする。あとは、昔ゲームで見た槍の形を思い出して、製作をして行くだけだ。

 

そして変形機能の【プログラム】や、麻痺効果のある【パラライズ】を付与する事も忘れない。

 

 

「よし、これで完成かな。一先ず試しに」

 

 

くるりと出来たばかりの槍を、一度試しに回してみる。……うん、イーシェンで作ったのと同じ様に、相も変わらずバランスは悪い。これは慣れないと少し難しいかもしれないな。

 

その後に《スピアモード》に《ブレードモード》や《ダガーモード》と言った変形機能の確認をする。どの機能も問題無く作動するみたいだ。……暫く試して最初の槍の状態へと戻した後、ある事を確認する事にした。

 

 

「《スタンモード》」

 

「え?」

 

 

僕はニヤリと不敵な笑みを浮かべ、リオンさんの肩を槍で軽く叩く。……すると次の瞬間、リオンさんがその場に崩れ落ちてしまった。

 

 

「はうぅ!?」

 

「麻痺効果も問題無く作動……っと」

 

「おいおい……」

 

 

ニールさんか呆れた様な声を出す。まあ、何でも試して見ないと……ねぇ?

 

《スタンモード》になると、刃が無くなって相手を斬れなくなる。その反面に、槍で突く事は可能なのだが。麻痺効果は弱めにしておいたけど、それでも回復には1時間もかかるので……倒れたリオンさんに【リカバリー】をかけて麻痺を解く。

 

 

「ちょっと勘弁して下さいよ!」

 

「すみません。何事も試して見ないと分からなかったもので」

 

 

不満をぶつけるリオンさんに謝りながら、《スタンモード》から《ブレードモード》に戻した槍を、ニールさんへと手渡す。

 

 

「手製ですから、バランスがかなり悪いので……慣れが必要だとは思いますけど」

 

「ありがとう」

 

 

そう言って受け取ったニールさんは、槍を構えて一連の動作を流れる様に熟す。……流石は《副団長》と言った所かな。一つ一つの流れに無駄が無いし、まるで手足の様に扱っている。

 

短剣状態(ダガーモード)長剣状態(ブレードモード)へと変形させ、同じ様に一つ一つの動きを確認して行く。最後にまた《スピアモード》に変形させると、リオンさんの方に顔を向けた。

 

 

「《スタンモード》」

 

「ちょっと待って下さいよ!?」

 

「冗談だ」

 

 

焦るリオンさんを見て、笑いながらニールさんは短剣状態へと戻す。……やっぱり、手足の様に違和感無く使いこなしてるね。これは問題無しだね。

 

 

「《スタンモード》での麻痺効果は、相手が護符等で防御してると、無効化されるので気を付けて下さい。また、一旦麻痺させると普通なら1時間は効果が切れないので、味方を痺れさせない様に気をつけて」

 

「なるほど、承知した」

 

 

ニールさんはそう言って、僕から受け取った短剣を嬉しそうに眺めていた。そう言って貰えると、僕としても嬉しい限りだ。それを見たリオンさんが、武器作成を依頼して来たので、僕はそれに快く応じる事にした。

 

 

「……あ」

 

「……」ムスーッ

 

「どうかした〜?ユミナ〜」

 

「……別に何でもありません。颯樹さんが頼られるのは何時もの事です。それに一々腹を立ててたら、正気では居られません」プクーッ

 

 

置いてけぼりにされたユミナが、頬を膨らませながらむすーっとした顔で不貞腐れていた。……やべ、すっかり忘れてた……。僕がそのお詫びとして頭を撫でると、彼女の不機嫌さも少しは落ち着いたみたいだ。

 

 

「其方の方も大変ですね……」

 

「あはは……もう慣れました。お陰で楽しいですよ毎日毎日」

 

「そうか。……所で、この様な物を貰ったのだ。何か返さなきゃ悪い気がするな……」

 

 

僕がリオンさんの呟きにそう答えると、ニールさんが手にした短槍を眺めながらそう言った。……まあ、こんな武器を貰って何も返さないのもどうか、って思うのもよくわかるんだけどね。

 

 

「気にしないで下さい。ま、さっきの奴らと何か問題があったら間に立ってくれたら」

 

「わかった、約束しよう」

 

 

そう笑いながらニールさんは請け負ってくれた。まあ、彼奴らもアレを受けた翌日にまた《襲撃じゃああああ!仕返しだァァァァァァァァ!》なんて浅はかな考えをする馬鹿では無いと思うが。

 

──────────────────────

 

「……ねぇ、何これ。予想が当たりすぎると逆に怖いんだけど。ほんまもんのバカ?」

 

 

……まさか、そこまでのバカだったとは。うちの庭には昨日絡んで来た騎士たちに加え、屈強な男たちが雁首揃えてのこのこと現れていた。その数はザッと数えただけでも50人ほど。何これ。最早怒りを通り越して呆れんだけど……。

 

門番のトムさんには、わざと居眠りをしているフリをして貰い、僕はラピスさんから伝えられた情報を聞いて、一人庭先で待っていたと言う訳だ。

 

 

「……お前ら、ニールさんの言ってた事が理解出来なかったのかな。学習しねぇ野郎は足踏みするだけなんだがな……って」

 

「相手はガキ一人!殺れ!」

 

『うぉぉぉぉぉぉ!』

 

 

僕が言葉を紡ぎ終わるより先に、男たちは手にした剣や斧などを振り回して襲いかかって来た。動きが単調すぎるし、真面な思考もしてない。……まあ、上司からの諌言を貰って尚こんな馬鹿げた事をするのだ。それくらいは予想出来るか。

 

そこからはひたすら50発の連射である。……前も思ったけど、コイツらとやっても全然手応えを感じない。これならまだ一角狼の方が良い動きをする。

 

 

「人の話は最後まで聞こうな〜。ま、てめぇらみたいなクズに説教垂れてやるこっちの身にもなって欲しいが」

 

 

倒れた金髪たちに僕は歩み寄り、ブリュンヒルドで肩を叩きながらしゃがみ込む。

 

麻痺して動けなくなろうと、少なからず意識はあるので、キチンと僕の声は聞こえているはずだ。その証拠に怯えた目で此方を見ている。

 

 

「お前ら、これがどう言う事か豆粒みてぇな頭でもわかんだろ?剣だ斧だぶら下げてさ、襲撃だよなコレ。強盗未遂若しくは暴行未遂、殺人未遂だろうな。ま、どうでも良いが」

 

「片付きましたか、颯樹さん」

 

 

テラスに出て来たユミナを見て、倒れている金髪の眼が見開かれる。……はっ、こんな馬鹿でも流石は貴族。ユミナは知ってるのか。それなら話は早いよ。

 

騎士団の訓練所では、ユミナの事なんて《眼中にありません》と言う振る舞いをしてたのに、ねぇ?見上げたもんだよ全く。

 

 

「うん、そうだね。君らのした事は王家への裏切り、謀反、反逆だね。君が余計な事を企てたせいで、家はお取り潰し……君たちは目出度く斬首刑だね。お疲れさん」

 

 

僕の言葉を聞いた瞬間、金髪は白眼を剥いて気絶した。……全く、ちょっと脅しただけなんだがな。こんなんでよく襲撃しようと思ったな。逆に感心するよホントに。

 

その後、トムさんに騎士団まで自転車で走ってもらい、事のあらましを伝えてもらう事にした。

 

 

「この人たち、どうするんです?」

 

「まあ、被害は無いから死刑は無い様に頼むつもりだけど。コイツらの家の方にも罪は及ぶだろうね。爵位剥奪も有り得るかもしれない。……ま、どっちにしても二度と大きな顔は出来なくなるだろうね」

 

 

僕とユミナは、白眼を剥いて倒れている金髪を見ながらそう話した。……でもこれって、或る意味《自業自得》かな。親の方もコイツらの悪行を解った上で、庇い建てしてたんだから。

 

ニールさんの忠告を無視したって事は、この様な事態になる事も想定して……無かったんだろうね。基がバカだしね。

 

 

「夜襲を掛けて、数で押せば何とかなる。後は強盗が入ったとでもデマを吹聴すれば良い……なんて考えてたんだろ」

 

「安っぽいシナリオですね。無駄だと分かってたはずなのに」

 

「全くだ。親の顔が見てみたいよ」

 

 

僕たちが溜め息を零した後、ちょうど良いタイミングで、トムさんが騎士団の人達を呼んで来た。そして倒れている騎士たちは一人残らず、騎士団の人たちに連れて行かれた。

 

そしてその数日後、幾つかの家へと《爵位剥奪》と言う国王陛下のお言葉が降った。騎士団はこれを恥とし、一層の規律遵守を心掛ける事となった。……この一件以降、騎士団内部に於ける家柄に依る格差は、ほとんど無意味と化したのだとか。




今回はここまでです!如何でしたか?


ここでお知らせです。次のお話は、書籍版4巻《第1章 砂漠の出会い》の内容に入る予定でしたが、それの予定を1個だけズラしたいと思います。

なぜこんな事をしたのかと言うと……。実はその期間のうちに、あるお話を制作しようと考えたからです。正確に言えば、そのお話を作る期間は2月1日~2月6日の間なんですけどね。それだけ長い期間を取るので、かなり話の内容には力を入れるんですけれども。


そのお話を楽しみにして貰いつつ、本編の振り返りを少しずつして行きますので、よろしくお願いします(。ᵕᴗᵕ。)

次回の投稿は2月7日(金)午前0時です!今回も感想を是非!高評価やお気に入り登録も、何時もの様にお待ちしております!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。