異世界はスマートフォンとともに。if   作:咲野 皐月

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#6. 砂漠、そして遭難者。

騎士団とのゴタゴタから暫く経った日の朝早く、僕たちは食堂に集まって朝食を摂っていた。やっぱり一日のエネルギー源だからね、確り摂らなきゃ。

 

……と、思いながら朝食のトーストを咀嚼していると……食堂のドアが勢い良く開け放たれた。

 

 

「見つかったわよ!場所はサンドラ王国の南東、ラビ砂漠!」

 

「……?」

 

 

僕は咀嚼していたトーストの破片を飲み込んで、リーンの話に耳を傾ける事にした。彼女がドアを開け放つ程喜ぶ事と言えば……十中八九《バビロンの古代遺跡》の事だろう。

 

 

「で?もっと詳しく」

 

「昔、砂漠の中にあった古代遺跡に、ニルヤの遺跡と同じ、六つの魔石が埋め込まれた石柱があったそうよ!今は砂漠に呑み込まれて砂の下らしいけど!」

 

「「(海の次は、砂漠(ですか)……)」」

 

 

リーンから話を聞いた僕とユミナは、揃って頭を抱えていた。海の次は砂漠か……。あの博士は、僕たちを引っ掻き回して遊び倒したいらしい。……次に会ったら一つ文句言ってやる。

 

 

「それで?正確な位置は?」

 

「ミスミド王国の南の、大樹海を超えた先にある《灼熱の国》と呼ばれる、サンドラ王国。ラビ砂漠はその南東にあるわ」

 

「砂漠……また面倒な所に」

 

 

あの博士には《未来視の宝玉》があるから、この展開ですらも覗いている可能性がある。僕はそれが気になり、天井を何となしに睨みつけてみた。

 

まあ……5000年も経てば地形など多少は変化すると言う物。流石に、そこまで狙った嫌がらせをするとは、僕は思えないんだけどね。……そう素直に思えないのは、脳裏にあの博士の、ニヤついた笑みが浮かんで来るからだろうな。まるで『絶対に逃がさない』って言われてるみたいで、ちょっとだけ癪だけど。

 

 

「探しに行くのは結構。……問題は」

 

「?なンでしょウか?」

 

「君みたいなのが、もう一人増えるのかと思うとね……素直に受け入れられないんだよ」

 

「酒池肉林、ウハウハだト」

 

「ごめん、少し黙っててくれないかな」

 

 

行く前から頭痛くなって来た……。まあ、結局の所はその古代遺跡を、今から探しに行くんだけどね。本音としては『そこまで集めなくても良いのでは?』と思うんだけれども。

 

然しそうも言ってられない理由もある。博士からのメッセージに残された《フレイズによる古代文明滅亡》……アレが未だに僕の中で疑問に思っていたりする。僕の単なる考え過ぎなら問題無しなんだけど、いざと言う時に力を借りる事も、もしかしたらあるかもしれない。何事も《手遅れになってから》では遅すぎるからね。

 

 

「出発するよ!シェスカ、《庭園》の準備を!」

 

「イエス、マスター」

 

 

僕の返答を聞いたリーンとポーラが喜ぶ中、他の皆はやれやれ……みたいな顔をして席を立つ。支度をする為に部屋に戻る様だ。ユミナは僕と同室だから、自然と一緒の行動になる訳だけど。

 

そう言えば、温泉を『銀月』に作る際にリフレットから転移させた空き家が、何も手を付けられて無かったはずだ。別荘として使えるかな〜と思ったんだけど、ちょっと手入れをする必要性アリだよね。家自体は傷んでいないし、それなりに広いから許容範囲内なんだけど。

 

……ま、今回の移動中に少し手を加えようかな。

 

──────────────────────

 

ベルファストから発進した《庭園》は、一路ミスミド王国の南に位置する、サンドラ王国へと向かう。

 

《庭園》のスピードは、飛行機とそう大して変わらないくらいだろう。シェスカによると、飛行時間は四時間だと言っていたので、それなりに距離があるのかな。……じゃあ、この間に空き家を改装してしまおうか。ここで何もしてないよりは、その方が遥かにマシだからね。

 

 

「……よし。傷んでる所も無いし、使えるよ」

 

「じゃああたしは二階を掃除するわね」

 

「…私はキッチン周りと、食堂を」

 

「拙者は一階のリビングを中心に、片付けて行くでござるよ」

 

「では私は玄関と廊下を。颯樹さんは壊れている箇所の修理と、水周りや明かりなどの改良をお願いします」

 

 

ユミナにそう言われた僕は、他の三人と同じ様に行動を開始する。……確かに水路が流れてないと、ここに咲き誇っている花たちは枯れてしまうからね。それを考えたら当然だよね。

 

僕は《庭園》のモノリスを操作している、シェスカの所へ行って水路の事を聞いてみた。結果としては、博士の作った水を生み出す……アーティファクトがあるのだとか。

 

 

「へぇ〜……。この噴水から出てる水が、そのアーティファクトから流れてるんだね?」

 

「ハイ。この噴水から吹き出タ水ハ、自動的に水路へ流レて……この庭園を循環シていまス」

 

「(それって永久機関なんじゃ……)」

 

 

よく良く考えれば、魔法とかに物理法則なんて求めちゃいけないような気がしてくる。実際に使ってるのが、物理法則すら平気で無視してるからね。そこら辺は無闇に突っ込んだら負けかな。

 

これに限界水量とかあるのかな……なんて思ってたら、シェスカから『水量が減ったら増やして、自動的に元の量に戻る様になっている』との返答を聞けた。

 

 

「……これ、飲める?」

 

「人体に害はありませン」

 

 

と言う事は、ここから水を引いても問題無し……と言う事だね。なら……使わせて貰いますか。

 

温泉を作る際に使ったのと同じ手を使って、短いパイプを噴水の所に設置して置く。一応排水パイプは《庭園》の水路を巡った最終地点にしておこう。ここから浄化されるらしいからね。

 

 

「リンゼ、ちょっと手伝ってくれる?」

 

「?良いです、よ?」

 

 

僕はキッチン周りを掃除していたリンゼに、貯水用の樽を運ぶ協力を要請し、外へ運び出した直後に【モデリング】で流し台を作った。ミスリル製のシンクが、眩いばかりに輝いている。その上には蛇口が取り付けられてあり、ここと噴水を【ゲート】で繋いでいる。もちろんの事ながら、排水口も排水パイプに繋がっている。

 

その後にお風呂や、照明関係などを改良して先程の場所へと戻ると、二人と三匹が皆してモノリスに映る映像をじっと見ていた。

 

 

「?どうかした?」

 

「面倒な物を発見したのよ。多分……遭難者ね。ここはサンドラ王国の手前だけど、既に砂漠地帯。こんな所誰も通らないのに」

 

 

モノリスの画面に地上が映し出された。砂漠の中で荷物を積んだ駱駝を連れ、ボロボロの日除けマントを身に付けた数人が、力無くヨタヨタと歩いていた。数にして十人くらい……?それにしては、荷物が若干少ないかな?

 

 

「遭難者なら、助けた方が良いかも?」

 

「どうやって?この《バビロン》の存在を明かすの?行きずりの遭難者に。もしあれが悪人やお尋ね者だったら?こんな所を進んでいるなんて、絶対に普通じゃないわ。面倒な物って言ったのは、そう言う事よ」

 

 

……まあ、確かに。そりゃあ面倒だわな。全員が悪人であるかどうかは、ユミナの魔眼で判断できはするけど、全員が善人であるかどうかも定かでは無い。

 

……でもな。さっき見た十人の中に、一人だけ悪人が本当に居て、その人だけ砂漠に置き去り……なんて事は傍から見れば可哀想だからな。こんな事言ったらアレだけど。

 

 

「とにかく助けよう。《庭園》には連れて来ないにしても、ベルファストやミスミドへ【ゲート】で送る事も可能だし」

 

 

僕はリーンに思った事を伝える。……しかし、そうなった場合はどうしようか……。突然目の前に現れても、警戒されてしまうのが関の山だ。んん〜、どうするかな。

 

 

「急いだ方がイイかもしれませンよ?」

 

「……と言うと?」

 

 

シェスカの指さす画面に目を移した僕は、そこで起こっている内容に驚きを隠せなかった。

 

遭難者十人の目の前に、巨大な怪物が砂の中から突如として現れたのだ。ん〜……あれは、虫!?いや、ミミズなの?先頭部分が全て口になっていて、鋭い牙が口内に360°びっしりと生えている。

 

 

「サンドクローラーね。砂と一緒に獲物を飲み込む砂漠の魔獣よ」

 

 

リーンが画面を睨みながら、その魔物の正体を呟いた。映像の中では遭難者の三人が、剣や斧を振りかぶって魔物に向かっていたが、どうもかなり分が悪いみたいだ。

 

足下は動きがかなり制限される砂漠、そして目の前の魔物に攻撃が効いた様子も無い。後者の方は《彼らの腕があまり高くない》と説明すれば直ぐだが、魔法使いも居ない状況でこれはキツそうだ。

 

 

「……リーン、他の皆を頼む」

 

「了解したわ」

 

「【ゲート】!」

 

 

僕は地上に向かって【ゲート】を開き、広大な砂漠地帯へと躍り出た。サンドクローラーの上空から出現し、ブリュンヒルドの弾丸の雨を撃ち込む。……あ、もちろん【エクスプロージョン】の付与された弾丸だよ?ただの弾丸では効き目薄そうだったので。

 

弾丸が直撃したサンドクローラーから、不気味な体液が撒き散らされる。うわぁ……僕的にこれはアウトだな。焼き尽くそう。その方が良さそうだ。

 

砂漠の地上に降り立った僕は、右手を翳して詠唱の準備に入った。……ぶっつけ本番だけど、勘弁ね!

 

 

「【炎よ来たれ、燃やせ煉獄、インフェルノ】」

 

 

僕がそう詠唱すると、サンドクローラーの周囲から推定1億度の炎の渦が撒き上がり、その魔物を取り囲んだ。

 

ここで僕が《推定》と言ったのは、撒き上がっている炎の正確な温度が、よく分からないからだ。温度計でも使って調べても良いのだが、温度計に使われている水銀がその熱に耐え切れない危険性がある為、調べようにも調べられないのだ。

 

その魔物を取り囲んだ炎の渦は、次第に囲んだ物を黒く焦がして行く。その姿を一見すれば誰でも、ただの炭に見えるかの様に。

 

 

「【水よ来たれ、清冽なる刀刃、アクアカッター】」

 

 

そして炎の渦が収まった頃合いに、水属性の切断魔法である【アクアカッター】を使う。放たれた水圧で出来た水の刃は、サンドクローラーの身体を一刀両断する。

 

腰のホルスターにブリュンヒルドを仕舞い込み、倒れた黒焦げのサンドクローラーを見ていると、遭難者の一人が此方へと歩いて来た。手には長剣を持ち、日除けマントで顔は分からないが……女性である様だった。

 

 

「……君は?」

 

「盛谷颯樹と言います。たまたま貴女方を見付けたのですが、危険だと判断した為に戦闘に介入させて頂きました」

 

「いや、感謝する。おかげで助かった。私はレベッカ、冒険者だ」

 

 

先程《レベッカ》と名乗った女性は、マントに付いているフードを外した。そこから現れたのは、日焼けした褐色の肌に、肩口辺りで均等に切り揃えられたアッシュカラーの髪だった。

 

 

「あんたすげぇな。あんな魔獣をあっという間にやっちまうなんてよ」

 

 

レベッカさんの後ろに居た、戦斧を持った男性がフードを外しながらやって来た。無精髭を生やした二十代前半で背が高く、がっしりとした男性だった。その横には、恐らく僕よりも歳下だと思われる少年が、剣を持ったまま肩で息をしていた。

 

チラッと見ただけだけど、あの子の体格的にあの武器は合っていない気がする。何方かと言うと小柄な、あの少年にはその武器は大きすぎる。

 

 

「あっ、あの!」

 

「ん?どうかした?」

 

「さっきの魔法は水属性の魔法ですよね!?でっ、でしたら、水を出して貰えないでしょうか!?」

 

 

突然の少年からの申し出に、僕は一瞬だけたじろぐも直ぐに理解できた。……こんなだだっ広い砂漠を水分無しで乗り切ろうだなんて、よく考えたなぁ……。そしてそれに上乗せして今の状況。自殺行為もいいとこだよ本当に。

 

 

「すまない。もし良ければ水を出しては貰えないだろうか。今は金が無いが、必ず恩は返す。だから……」

 

「別に構いませんよ?ただ出そうにも入れ物がなぁ……あ、作りゃ良いのか」

 

「え?」

 

 

レベッカさんの呆けた声に構う事無く、僕は収納魔法である【ストレージ】から、掌サイズの鉄の塊を取り出す。それを【モデリング】で大きな金タライを作った。その後に水属性の魔法で、拳大の大きさの氷を何個か作り、そこから水を呼び出した。

 

 

「おおっ!」

 

「後はそうだなぁ……余ってる物は、何処かで有効活用しないとね。【モデリング】……よし、できた。どうぞ使って下さい」

 

 

水の音を聞き付けて、その他の人たちが一斉に此方へと向かって来た。それを見た僕は、余った鉄の塊を【モデリング】で変形させ、簡単なコップを作って渡した。

 

そのコップを受けとるや否や、我先にと水を掬ってゴクゴクト飲んでいた。……余程喉が渇いてたんだな。

 

 

「(……ん?そう言えば、さっき戦っていた三人以外の人の首に、何か付いてた様な……?)」

 

「水を飲んでいる最中にすみません」

 

「はい?何でしょうか?」

 

「少し首元を見せて貰っても?」

 

 

僕は残り七人の内の一人に話し掛け、首元を少し見せてもらう事にした。僕が話しかけたその人の首には、黒光りする大きな首輪が嵌っていた。……ここで、ある一つの疑問が浮かんだ。

 

遭難者の数は全員で十人。その中で剣を持っていた少年と、戦斧を持った男性以外は全て女性だった。更にレベッカさん以外の七人の女性。さっき見せて貰った人も含めて、全員が同じ首輪をしていた。

 

 

「……え?えぇ?」

 

 

僕は女性七人に付いている首輪を、訝しげな視線で見つめる。それに気づいたレベッカさんは、重々しくゆっくりと口を開いた。

 

 

「そうだ。彼女たちは《奴隷》だ。私たちが奴隷商人から奪って来た」

 

 

……え?リーンの予想が、ここで大当たり?助けた人たちは、もしかして《盗賊》でしたかァァァァ!?




今回はここまでです!如何でしたか?


今回のこのお話からですが、書籍版4巻の内容に入って行きます!まだ3巻の内容が済んではいないのですが、そこら辺はどうかご容赦を……。作者の無能キャパのせいでこうなってます。申し訳ない……。

そしてユミナの幕間劇なんですけど、やる時期を少し延長させて下さい。明確に『この時期にやります!』と言うのがまた分かりましたら、その時に投稿する最新話(本編or幕間劇)の後書きにてご紹介したいと思います。


次回の投稿は2月10日(月)午前0時です!次のお話はいよいよ……颯樹くん達にとって、フレイズとの最初の戦いを描く予定です(1st seasonの第5章でも機会はあったけど、彼処は描いてません)!

それではまた次回!今回も感想をぜひ!高評価にお気に入り登録も、何時もの様によろしくお願いいたします(*´︶`*)♥️

─────────【追記】─────────

遂に!この作品が、他のハーメルン作家さんとコラボします!今のところは「llight(リライト)」さんと「ヤギリ」さんです!

何方の作者さんも、TwitterのDMで入念に話し合った結果……無事承認を頂きました!やる順番としては、ヤギリさん→llightさんかなぁ?と言う感じですかね(llightさんは来週末まで予断を許さない状況なので、遅れる事は仕方無し)。


私の小説ではコラボ回は描かないのですが、先程の御二方の方でコラボ回はお届けされます!是非ともこの機会に読んでみて下さいね!

llightさんの方では、BanG Dream!×艦これ×SAO×イセスマのクロスオーバー作品を……ヤギリさんの方では、バディファイト×ラブライブ!サンシャイン!!×イセスマif(私の小説)の短編作品です!

何方の作品にも、私の小説の主人公が登場しています!そして此方の小説では未登場のキャラが登場しますので……「キャラの性格はこうで、話し方はこんな感じなんだな〜」と言うのを覚えて貰えたら!

読まれたら感想を送ってあげてくださいね!それを見たら、私(その小説の作者さん)は泣いて喜びます(他はどうかわかりませんが。ただ私は確実)。
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