異世界はスマートフォンとともに。if   作:咲野 皐月

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#7. 解放、そしてフレイズ。

「……なるほど、大体の経緯は理解できました。つまり貴方方3人が連れている7名は、元居た国では《奴隷》という立場に置かれていたと」

 

「ああ」

 

「そして貴方方は、依頼主が奴隷商人と知らずにその人の護衛をしていたと」

 

「……」

 

「しかし、その商人が襲撃を受けて死亡し、襲って来た盗賊たちを撃退した貴方方は、これ幸いとその国から逃げ出したは良いものの、砂嵐に巻き込まれて遭難してしまった……という事でOKです?」

 

 

僕の纏めた言葉に、レベッカさんがゆっくりと頷いて返した。まさか……生きてる内で《奴隷》と言う言葉を聞く事になろうとはね〜。世界は広いわなぁ……。

 

しっかし……人身売買って。とんでもない事を考える野郎も居るもんだ。聞けばサンドラ王国と言う国は、他国との関わりがあまり無いらしく、独自の文化で成り立っているのだと。

 

まあ、ミスミドから大樹海を越えて、灼熱砂漠を踏破してまで訪れようと思う人など、恐らくそうは居ないはずだ。

 

 

「それにしても《隷属化の首輪》……ねぇ」

 

「その首輪を付けられた者は、人としての意思や威厳すら奪われる。外す事が出来るのは、その首輪を付けた本人のみだ」

 

「無理矢理にでも外そうとすれば?」

 

「装着者に激痛が走り、最悪死に至る」

 

 

なかなか悪趣味だなおい。更に聞けば、その首輪を付けた者は主人となった者を傷付ける事が出来ず、命令にも背く事が出来ないのだとか。そこから隙を突いて逃亡しようとしても、その主人が一言【戻って来い】と念じればそれで終わりだ。逆らえばまた苦痛を味合わされる羽目になる……のだとか。

 

僕は試しに自分の首を軽く掴む。……女性の首周りの大きさは、男である僕よりも少し細いくらいだろう。何とかギリ収まるかな……。

 

 

「どうかしたのか?」

 

「いえ。これなら外せるかも……と思いまして」

 

「なに?」

 

「本当ですかっ!?」

 

 

ふと訊ねて来たローガンさん(男性)の言葉に、僕は一連の行動から導き出た結論を述べる。それにいち早く食い付いて来たのは、この中では一番若そうなウィル(少年)だった。

 

気の所為か……ウィルの眼が、かなり見開かれてる様な気がしてならない。

 

 

「やってみない事には分からんけど、試してみる価値は充分にあると思うよ。ダメならそのままだけどね……」

 

「お願いします!ウェンディを解放してあげて下さい!」

 

 

……ウェンディ…?ウィルは僕の所に、先程自らが名前を挙げていた人物を連れてくる。その人物も首には他の人と同じ《隷属化の首輪》を付けて居たのだが、7人の中ではかなり若い部類に入りそうな人だった。

 

歳は13か14……丁度、エルゼやリンゼと同じくらいだろうか?褐色の肌にくすんだ金髪を三つ編みにし、左右の胸の前に垂らしていた。ウィルの後ろの背に隠れて、ビクビクと此方を伺っている様だった。

 

 

「じゃあ……行くよ?【アポーツ】」

 

 

僕はそうウィルに前置いてから、物体移動魔法の【アポーツ】を発動させる。これで僕の手の中には、既に《隷属化の首輪》が握られている。

 

僕の手に首輪が握られているのを見て、驚きを隠せないままに、ウィルは後ろに隠れているウェンディに振り返った。当然、そこに首輪は無い。

 

 

「取れてる!取れてるよ、ウェンディ!」

 

「え…?」

 

 

ウィルの喜びの声に、少し怯えながらもウェンディがそう答える。そして自分の首を摩り、首輪が着いていない事を確認する。首輪から解放された事が分かると、眼からポロポロと涙が溢れ、口元を手で押えた。

 

そんな涙目になった彼女を、ウィルは確りと抱き締める。あーなるほどなるほど〜。ふーん、そう言う事ね。そりゃあウィルが必死にもなるわなぁ。

 

 

「……おいおい、今一体何をしたんだ?」

 

「無属性魔法【アポーツ】……物体を引き寄せる事のできる魔法ですよ」

 

 

驚きのまま表情が固まっている、ローガンさんを差し置いて、僕は残りの六人に着いている首輪を、同じ要領で外して行く。やがて七つの首輪全てを外し終えると、僕はそれを火属性魔法で焼き尽くした。

 

燃え尽きて行く首輪と僕を見ながら、レベッカさんが呆然と呟いた。

 

 

「……一体君は何者なんだ?」

 

「僕ですか?貴方方3人と同じ、冒険者ですよ。これがその証明です」

 

「赤!?」

 

 

僕が出したカードの色に、冒険者の三人(レベッカさん、ローガンさん、ウィル)が色めき立つ。手渡したカードを全員が覗き込む様に確認し、更に大きな声を挙げた。

 

……ま、一応それなりに冒険者やってますからね(とは言ってもまだ一年も経ってはいないのだが)。ともあれ、僕はカードを返して貰うと、レベッカさんにこれからどうするのかを聞く事にした。

 

 

「奴隷から解放されても、登録が抹消された訳では無いからな。この国に居ては面倒な事になるだろう。やはり他の国へ連れて行こうと思っているが……」

 

「でしたら。ベルファストに来ませんか?良い国ですよ。暫くでしたらウチに住んでも構いませんし」

 

「いや、ちょっと待てよ。此処からベルファストまでどれだけ離れてると……」

 

 

ローガンさんの言葉を遮って、僕は目の前に転移魔法の【ゲート】を開く。そしてそこに現れた光の門に首を突っ込み、ユミナを《空中庭園》から呼び寄せた。

 

いきなり見知らぬ人物が現れた事で、冒険者三人は既に武器を構えて戦闘態勢だ。

 

 

「だっ、誰だ!?」

 

「ベルファスト王国国王、トリストウィン・エルネス・ベルファストが娘、ユミナ・エルネア・ベルファストでございます」

 

「「「え!?」」」

 

 

ユミナの優雅な一礼を伴った自己紹介に、三人とも動きが完全に固まってしまった。……ま、普通はそうなるわな。

 

こう言う時、ユミナが『本当に王女なんだなぁ』と思い知らされる。綺麗なドレスを身に纏ってなくても、その育ちの良さと仕草が本物だと分かるのだ。……事実、既に目の前の4人は、ユミナの存在に飲まれてしまっている。

 

 

「皆さんの事情は全て聞いておりました。我が国は貴方たちを受け入れる事ができますが、如何致しますか?」

 

 

にっこりと笑いながら、ユミナは一人一人に視線を向けて行く。魔眼を使っているのだろう。……もしこの中に邪な考えを持っている人が居るとしたなら、ベルファストに連れて行ったとしても、暫くは監視を付けねばなるまい。

 

ユミナは全ての者へ視線を向けた後、僕の方へもにっこりと微笑んでくれた。どうやら問題は無い様だ。固まっていたレベッカさんがやおら膝を折り、ユミナに対して土下座状態となる。

 

 

「は、ははっ!あ、あの、よ、よろしくお願い致します!」

 

「お、おお……」

 

 

僕は目の前の光景に処理が追い付かず、少々現実離れの様な表情をしてしまった。現実と認識させる為に、隣に居たユミナに頬を抓る様にお願いしたが、彼女は焦りながら否定をして来た。彼女曰く『颯樹さんの顔に傷をつけられません!私にはそんな酷い事できません!』との事で。

 

……仕方なかったので、僕は両手で頬を叩いた。そしてその後に改めて、目の前に居る人達に目を向ける。

 

 

「では皆さんをベルファストへ。颯樹さん、お願いします」

 

「はい来た!【ゲート】」

 

 

一人一人【ゲート】を潜らせるのは面倒なので、僕は皆を立ち上がらせて、その足下に開く事にした。そして出口はベルファストの我が屋敷の庭……地上1cmの所に開きながら【ゲート】を上へと移動させて抜けさせた。

 

海外SFドラマでよくある、転送装置みたいな移動をイメージしていたのだが……失敗した。これは止めた方が良い。気持ち悪くなる。

 

何だろうなぁ……階段を昇っていて昇り切って、もう1段あると思い込んでの、ガクンとなる感覚と似てるのかな。地面が一瞬にして消失すると言うのは、物凄く嫌な感覚になるね。……まあ、そこまで考えたのは僕とユミナくらいで、他のみんなは突如変わった風景にキョトンとしていた。

 

 

「こ、ここは……?」

 

「ベルファスト王国の王都にある、僕の家です。暫くはここに住んで貰えたら。ライムさーん」

 

 

僕が我が家のスーパー執事を呼ぶと、直ぐ様メイド部隊を引き連れ、テラスから僕たちの元へと現れた。相変わらず早いなぁ……。

 

 

「僕らが帰るまで、この人たちのおもてなしをお願いします」

 

「かしこまりました、旦那様」

 

 

深々と頭を下げて、ライムさんがメイド部隊に目配せをすると、ラピスさん達が皆(僕とユミナ以外)を家の中へと先導して行く。辺りをキョロキョロと窺いながら、レベッカさん達はメイドさん達に従って、ぞろぞろと付いて行った。

 

 

「取り敢えず、身の振り方は後で考えて貰おう。僕らの方は《庭園》へと戻ろうか」

 

「そうですね」

 

 

レベッカさん達三人は冒険者だから、ギルドの仕事をこなせば王都の宿に拠点を移す事も出来るだろう。他の人たちは……流石にウチは7人も雇えないからな……。何か仕事を見付けられると良いが。

 

僕がふとそう思っていると、僕の方に誰かから連絡が届いた。

 

 

《主!》

 

「ん?琥珀?」

 

「琥珀ちゃんからの連絡ですか?」

 

 

僕は『まあ、そんな所』と伝えておいてから、聞こえて来た念話に応じる事にした。先程の口調から察するに、かなりの緊急事態の様だ。……何かあったのだろうか?

 

 

《どうかした?琥珀、何があったの?》

 

《砂漠に突然変な魔物が現れたのよぅ。キラキラ光って水晶の様な……》

 

 

僕が琥珀の念話に応答すると、返って来たのは琥珀では無く黒曜の声だった。水晶の魔物……?まさか!?

 

 

《戦闘準備をして待機!みんなにそう伝言!僕たちも直ぐそっちに戻る!》

 

《お待ちしております、主!》

 

 

そう召喚獣たちとの念話を終え、僕とユミナは転移魔法の【ゲート】を使って、無事に《庭園》へと戻った。そしてモノリスの前に行くと、皆がその画面を見上げながら確認しており、僕たちもそうする事にした。

 

……そこに映っていたのは、巨大な水晶の魔物が砂漠に浮かんでいて、共鳴音の様な甲高い音を発していた。

 

僕らが出会ったのは『コオロギ型』、リーンが出会ったのは蛇、そして画面に映る三体目……フレイズの姿は、オニイトマキエイ───マンタの形をしていた。




今回はここまでです!如何でしたか?


次回はいよいよ……、フレイズとの初戦闘の回になります!剣も魔法も通じない魔物に、颯樹くん達はどの様に立ち向かうのか、楽しみにしていて下さいね!

次回の投稿は2月14日(金)午前0時の予定にしています!その日は恋人が居る人にとっては、かなり大切な日になるかと思いますが……私にそんな事を考える暇は無いので、小説執筆に励みたいと思います!仕事も長期離脱(半ば強制的に取らされた)なので、本腰入れて頑張りますよ!

今回も感想を是非!高評価やお気に入り登録も、何時もの様にお待ちしております!

─────────【追記】─────────

先ずは……「ソードアート・オンライン 〜二人の黒の剣士〜」でお馴染みの《ジャズ》さんと、私の作品「異世界はスマートフォンとともに。if」とのコラボが決定しました!

内容に関しては、今現在協議中です!完成したら此方でもお知らせしようかと思いますので、ぜひ読んでみてくださいね!


次に……現在連載中の作品である「異世界はスマートフォンとともに。if」のR-18版を執筆する予定が、遂に出来ました!

描く内容としては、よく《フーライコタロー》さんの言う『ゆうべは おたのしみ でしたね▼』のお話のみになりますが、読者を飽きさせる事の無いお話を書こうと思います!

作者自身初めてのR-18小説ですので、何分勝手が分からないと思います。……ですが、そこら辺は少しずつ勉強して行ければと思っていますので……どうかよろしくお願いします(。ᵕᴗᵕ。)
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