異世界はスマートフォンとともに。if   作:咲野 皐月

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#8. マンタ、そして乱入者。

……まず、デカい。僕がソイツを初見しての大雑把な感想だ。以前見掛けたコオロギ型は《軽自動車》くらいのサイズがあったが、今回は大型バス四台分の大きさだ。

 

頭……と言うか、身体の先頭部分にアーモンド状の頭部らしきものが二つ並んでおり、その中にはオレンジ色に光る核みたいな物が見える。

 

身体の大きさに合わせたのか、以前のコオロギ型の核のサイズは野球のボール位だったが、今回のはバスケットボールくらいの大きさがある。前回のように【アポーツ】を使うのはとてもじゃ無いけど無理だ。

 

 

「どうする?」

 

「確実に倒すよ。それ以外の選択肢は無い」

 

「……ふぅ。聞くまでも無かったわね」

 

 

リーンからの問い掛けに、僕はさもそれが当然の様に答えた。ここは何も無い砂漠。周囲への配慮を一番しなくて良い所だ。……でもこのまま放っておけば、その先のミスミドやベルファストにも被害が及ぶ危険性がある。

 

僕は腰の剣銃ブリュンヒルドを抜いて、軽く素振りをしていた。……とここで、エルゼが僕に質問して来た。

 

 

「だけど、どうやって?アレがリーンの言っていた魔物なら、魔法は吸収されるし、物凄く硬いはずよ?しかも今回のは空まで飛んでるわ」

 

 

エルゼの言う事にも一理ある。八重の刀はミスリル製に変わってはいるが、それが何処まで相手に通じるかは、やって見ないと全然分からない。

 

しかも相手は常時空を飛んでる……。此方が近接戦闘を仕掛けたら、確実に苦戦する事は免れられない。

 

 

「【ロッククラッシュ】や【アイスロック】が一番有効的かもしれないね。フレイズに効かないのは《魔力を纏った魔法》と言うだけで、直接攻撃する物でない魔法は、確実に相手に効くと思う」

 

「そうするしか無いわね」

 

 

リーンの言葉に、ユミナとリンゼが頷く。何とかその攻撃であのマンタを叩き落として、僕とエルゼに八重で本体に直接攻撃。その方法で行くしか道は無い。

 

 

「よし、行こう!【ゲート】」

 

 

全員が準備出来たのを確認した僕は、地上の砂漠へと【ゲート】を開いて、全員でその地点へ飛び出す。……あ、召喚獣三匹とポーラは《庭園》でお留守番だ。

 

地上へと飛び出してみると、ソイツの大きさを直に実感する事になる。そのマンタフレイズは、僕たちの頭上をゆったりとした動きで飛んでいた。太陽の光を反射させて、マンタフレイズの水晶の身体が光り輝いていた。

 

 

「先ずは……威嚇射撃!」ドンッドンッ!!

 

 

そう思った僕は、ブリュンヒルドの引き金を引いて発砲する。ガキュンガキュンと弾丸が水晶の身体を滑る様に弾かれ、肝心の標的にはかすり傷すら与えられて居なかった。

 

……これは身体が硬い故に出来る事か。それに身体が流線型になっている事もあり、放たれた弾丸の威力を逸らしてしまうのだろう。

 

 

「通常弾は効果無し……」

 

「【氷よ来たれ、大いなる氷塊、アイスロック】」

 

 

リンゼが魔法を発動させると、マンタの上空に巨大な氷塊が現れ、そのまま標的目掛けて落下される。氷塊自体はマンタのボディに激突したが、空中で浮遊する物体に対しては、さほど威力を発揮できず、そのまま砂漠へと落ちて行く。まさに《暖簾に腕押し》と言う言葉がピッタリだ。

 

対処法が他に無いか考えていると、水晶のマンタがゆっくりとこちらを向いた。左右にある核の入った水晶体の間に、少しずつだが光が収束していた。……なんか不味いヤツが来る!

 

 

「リーン、散開して!」

 

「了解よ」

 

「「「「「【アクセル】!」」」」」

 

 

僕はリーンに指示を出した後、他の4人と一緒に【アクセル】を使ってその場から退避する。そして次の瞬間、マンタから光の弾丸が発射され、僕らの居た所に寸分の狂い無くクリーンヒットする。

 

光の弾丸が着弾した所からは、その威力を物語るかの様な砂柱が揚がっていて、それと同時に物凄い爆音も鳴り響いていた。

 

 

「……嘘。冗談もここまで来ると辛いわぁ……」

 

 

僕はその惨状を見ながら、柄にも無く情けない声を出してしまう。撃ち出すのに数秒の溜めが必要みたいで、それだけが唯一の救いと言った所か。あれなら少し対処しようがあるかもしれない。

 

そんな僕の考えを嘲笑うかの様に、今度はマンタの尻尾が伸びて、その先端が腹の下に来るように曲げられた。そしてその先端から何かが機関銃の様に発射され、僕らへと再び襲いかかって来た。

 

 

「嘘っ!?」

 

 

撃ち出された何かを躱し、体勢を整えながら……砂漠に突き刺さった物を確認する。

 

それは透き通った水晶の矢……棒手裏剣とでも言った方が良いかな?そんな物だった。何方にしろ危険極まりない物に違いは無い。

 

みんなの無事を確認する為に、周りをぐるっと見渡してみると、リンゼが足を抑えて倒れていた。

 

 

「リンゼ!大丈夫?!」

 

「大丈夫、です。掠っただけ、ですから……」

 

 

リンゼは傷付いた足を回復魔法で回復しながら、自身の不調を僕に悟らせまいと、何とか気丈に立ち上がる。そんな彼女に、再び尻尾の先端が向けられる。……これ以上は不味い!

 

 

「【アクセル】!」

 

 

僕があげた指輪の能力を使い、エルゼが妹の所へと加速移動する。降り注ぐ棒手裏剣の雨に、エルゼは左手のガントレットを翳す。ガントレットの風の付与効果によって、水晶の弾丸は全て双子姉妹を避けて逸れて行く。

 

 

「颯樹殿!拙者を【ゲート】でヤツの頭上へ!」

 

「……っ!【ゲート】!」

 

 

八重の提案に一瞬躊躇したが、言われた通り彼女の足下に【ゲート】を開いて、マンタの数メートル上空に転移させた。

 

彼女が振り下ろしたミスリル製の刃は、マンタの背に喰い込んでは居たが、決定的なダメージを与えるに至っては居なかった。マンタの背を蹴って八重は離れる。……チョイ待ち!下が砂漠だからって、あんな所からは!

 

 

「颯樹殿!【ゲート】を!」

 

「……その手があったか!【ゲート】!」

 

 

八重の言葉を聞いた僕は、直ぐ様彼女の足下の空中へと【ゲート】を開き、僕の横の地上から1m上に出口を設定する。彼女は空中に開いた【ゲート】に消え、僕の隣に軽やかに着地した。

 

 

「ふぅ……。心臓に悪い事をさせないでくれ…」

 

「すまんでござる」

 

 

しかし……ミスリル製にした八重の刀でさえも、あのマンタ型フレイズには効果薄と来たか……。どうやったら此奴にダメージを与えられるのか……?

 

前回のコオロギ型の様に、核を壊せば何とか収まるのだろうが……【アポーツ】は出来ない上に、核は二つあると来た……。と思っていたら、マンタ型フレイズの尻尾の先が再び此方を向く。……不味い!

 

 

「【風よ渦巻け、嵐の防壁、サイクロンウォール】!」

 

「……ユミナ!助かった!」

 

「これくらい何て事ありません!」

 

 

ユミナの紡いだ呪文が、僕と八重の周りに風の防御壁を生み出す。マンタから放たれた棒手裏剣は、その渦に呑み込まれて上空へ消えて行く。僕はユミナに対してお礼を言うと、彼女から心強い返答を得る事が出来た。

 

しかし砂嵐が収まってみれば……、光の弾を今にも打ち出さんとしているマンタの姿が。もう一発すんのかい!

 

 

「ッ!【アクセル】!」

 

 

隣に居た八重を抱き上げて、僕は加速魔法でその場から離脱する。そして背後からは耳を劈く様な、大きな爆音が聴こえて来る。……危なっ!意外と頭良いぞアイツ!

 

その後にリーンが【ロッククラッシュ】で応戦するも、先程のリンゼと同じ様な結果になってしまった。……不味いな、このままだと……。

 

 

「(どうする……?此方には決め手が無い。下手に戦闘をこのまま続ければ、犠牲者が出かねない……。ここは一旦【ゲート】で離脱して、対策を立てるか……)」

 

「あれ?誰かと思ったら、颯樹かい?」

 

「き、君は!?」

 

 

戦場特有のピリピリした空気とは、明らかに場違いな声が聞こえて来た。その方に目を向けて見ると、こんな砂漠の中では確実に暑そうなマフラーを付けた、モノトーンの少年が立っていた。

 

……僕とユミナが一度会った事のある謎の青年。確か名前は《エンデ》と言っていたな。

 

 

「ちょ、何でここに……!?」

 

「久しぶり。フレイズの気配がしたから来てみたら……まさか颯樹とユミナに出会えるなんて」

 

「エンデ、まさかアイツの事を……!?」

 

 

僕がそう尋ねてみると、案の定な答えが彼から返って来た。彼曰く『僕らが今相手をしているフレイズは《中級種》である』との事。これは『《結界》が壊れかけている影響か』との事らしい。

 

……え?《中級種》…?《結界》……?……え?エンデは一体何を知ってるんだ……?

 

 

「ま、ちょっと待ってて。まず、アレを片付けるから」

 

「はぁ?」

 

 

そう言って笑いながら、エンデはマンタ型フレイズへと歩いて行く。そんな彼めがけて水晶の矢が容赦無く降り注ぐが、次の瞬間……エンデの姿がその場から消え失せた。

 

その光景に一瞬驚いた僕は、辺りを隈無く見渡したが、エンデの姿は何処にも見当たらなかった。

 

 

「(まさか認識を阻害させる魔法を使ってるのか……?でもあれは視覚を誤魔化すだけで、その場所に居る事は絶対に誰かにわかる筈……)」

 

「彼処でござる!」

 

 

僕が思慮に耽っていると、腕の中に居た八重が勢い良くある一点を、指を挿しながらそう言った。……人を指ささないよ〜……と思いながらもその方向を見ると。

 

そこには、マンタ型フレイズの背中に乗っているエンデの姿があった。……え!?一体、どうやってソコに!?

 

 

「よっ、と」

 

 

するとエンデは、何気無い仕草でフレイズの背に蹴りを入れた。右足を上げて、それを下ろしただけの緩慢な蹴りだった。たったそれだけの事で、フレイズの身体にヒビが入り、それが全身にあっという間に走って行く。

 

やがてパキィンッ!とガラスを割った様な大きな破裂音が響くと、ガラガラとフレイズが崩れ出した。……え?何アレ。何やったんだアイツは!?

 

 

「よっ、と。……ふん」ガシャアーーーン!!!

 

「おいおい……何したの一体」

 

「何も?アイツと同じ固有振動を、魔法で叩き付けて破壊しただけだけど」パンパン

 

 

フレイズの核二つを破壊した手を、払い落とす様にパンパンと叩きながら、僕の問いにエンデは何でも無さそうに答える。

 

《固有振動》……?それって《共振現象》みたいな物って事?魔法だから、同じ物とは言えないのかもしれないけど、ね……。

 

 

「エンデさん……。貴方さっき《結界》とか言ってましたけど、それって結局何なのですか?」

 

「この世界にフレイズが入って来れない様にする為の網みたいな物かな。だけど綻びがあるみたいだな。此奴もそこから抜けて来たヤツだろう。まだせいぜいこのレベルのヤツしか、こっちに来れないみたいだけど」

 

 

砂漠に散らばる水晶の欠片を眺めながら、ユミナの問いにエンデはそんな事を呟く。……そして後に彼は自分の目的を「眠れるフレイズの《王》を探す事」だと言った。その目的が、過去に現れたフレイズたちと同じ目的だと言う事も。

 

……な、何だって?フレイズの《王》?そんなのが居ると言うの?この世界に……?

 

 

「おっと、そろそろ行かないと。ちょっと約束があるもんでね。じゃあ颯樹にユミナ、また会えると良いね」

 

「あ、ちょ……!」

 

 

エンデはそうにこやかに微笑むと、引き留めようとする僕を無視して、その場から消え失せた。これは一体何だろ……【テレポート】みたいな転移魔法だろうか……。

 

 

「フレイズの《王》……だって……?」

 

「エンデさん……。会えば会う程益々わからなくなりますね……」

 

「だね……。取り敢えず、先ずは《庭園》に戻ろっか。そうしないと何も進まない」

 

 

僕とユミナはエンデが置き去りにした、謎に頭を抱えながら合流した皆と一緒に【ゲート】で《庭園》へと帰還する事にした。

 

……「フレイズの《王》」、「《結界》」……。まだまだ分からない事だらけだな……。取り敢えず先ずは《バビロン》集めだ。その過程で知る事があれば、聞いてみようかな。




今回はここまでです!如何でしたか?


投稿が遅くなって申し訳ないです……!自動車試験場での学科試験がつい昨日有りまして、何とかギリギリの90点で合格する事が出来ました〜♪一問でも間違えたら落ちる得点だったので、ほっと一安心です。

でもこれから先は、余程の事が無い限りは遅れない様に投稿して行く所存ですので、是非とも楽しみにしていて下さいね♪


次回の投稿は2月17日(月)午前0時を予定しています!話の内容としては、今回のお話の続きとなります!次回のお話は原作と違う所が、ハッキリと出て来ます!それが何処なのか、予想を立てられてみては?

今回も感想を是非!高評価やお気に入り登録も、何時もの様にお待ちしてます(。ᵕᴗᵕ。)感想は初絡みでも大歓迎ですよ♪
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