異世界はスマートフォンとともに。if   作:咲野 皐月

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#11. 本収集、そして商売開始。

《何をするにも元手が必要》…そう思った僕は、真っ先にバビロンの《工房》へと向かい、ロゼッタに頼んで自転車を50台ほど量産して貰った。

 

そしてそれを持って、今度はミスミドの交易商である、オルバさんの所へ行った。その後に交渉したら、自転車をかなりの高値で買い取ってくれた。

 

 

「……ただの鉄とゴムだけなのに、こんなに貰って良いのかな……」

 

「(ま、向こうも商売人だから、損になる様な交渉はしないはず。恐らくアレでもっと儲けを出すはずだから、遠慮をするのは止そうか)」

 

 

取り敢えず、開業の為の資金は揃ったね。そのままミスミドの本屋へと行き、メジャーな物語の本を何冊も買う(シリーズ物なら全巻)。実はこの世界、僕の出身世界で言う所の《発売予定日》と言うのが無いのだ。それは素直にびっくりした所だ。

 

ミスミドの本屋で500冊ぐらい、イーシェンの本屋では同系統のジャンルの本を300冊ほど買い、その後にユミナとラピスさん、レベッカさんから記憶を渡して貰い、そこの本屋でも同系統の本を、成る可く多く買い占める(渡して貰った記憶は、順にリーフリース皇国皇都ベルン→レグルス帝国帝都ガラリア→サンドラ王国王都キュレイ)。

 

 

「……っと。最後にベルファストの本屋で買った物を……っと」

 

「颯樹さん、こんなにたくさんの本を集めて、一体どうするんですか?」

 

「あ、ユミナ。さっきはありがとね。……実はお店を開こうかと思って」

 

 

疑問符を頭の中で浮かべたユミナに、僕は経緯とその内容を伝えて行く。……で?リンゼは一体そこで何をしてるのかなぁ?興味のある本でもあったのかな?読み耽ってますけど。

 

ま、今リンゼが読んでいる物も含めて……買って来た本全てに【プロテクション】をかけておく。一応商品ですからね。と、そこに扉を開け放つ音が聞こえた。……どうだったかな?

 

 

「言われた通り物件を探して来たわよ。ちょうど良いのが一件あったわ」

 

「ありがとう、エルゼ。場所は?」

 

「南区の中央通りね。通りの隅っこにあるけど、立地条件は悪くないわ」

 

 

《南区の中央通りの端っこ》か……。よし。一度下見をしてから、良さそうならそこにしようか。それを聞いたリンゼが『本屋でも開業するのか』と聞いて来たが、ちょっと惜しいな。確実に《本屋》では無い。

 

 

「本屋じゃなくて……形式的には、喫茶店かな。入店するのに料金がかかる+時間制限付きだけど、その時間の間だったら、喫茶店内のどれでも好きな本を読んで良いんだ」

 

 

例えるなら……向こうで言う所の《漫画喫茶》が近いだろうか。こっちの世界でだと、物語の系統の本はかなり高い。買えなくは無いんだけど、簡単に手出しが出来ない感じの。それなりに稼いでたら読めるかもしれんが。

 

ともあれ、色々な国の本が沢山集まって……それを買う事無く気軽に読む事が出来る。言うなれば《読書喫茶》だろうか。

 

 

「……なるほど。たくさんの本を自由に読めて、食事もできる……私なら、入り浸ってしまいそうです」

 

「本好きな人には良いと思う。ま、それは《興味のある本とかが明確にあれば》の話なんだけどね。特定のジャンルだけしか集めてないから、その他をってなると大変だけど」

 

「で、その喫茶店をあの子達に任せる訳?」

 

 

リンゼの呟きに答えを返した後、僕はエルゼの疑問に返答を返して行く。サンドラの砂漠で助けた彼女たちは、それなりに料理も出来るので、そこら辺の心配は無用と言った所か。

 

《読書喫茶》のメインは[読書]なのであって、そこで食べる[食事]では無いから、不味い物を出さない限りは問題無いと思う。もし売り上げが出たらそこから給料を払えば良いし、彼女たちの生活費は無理無く稼げると思う。

 

 

「取り敢えず、物件の方を見に行こうか。案内をお願いして良い?エルゼ」

 

「分かったわ。付いて来て?」

 

 

僕はリンゼを連れて、エルゼ先導の下にその物件がある場所へと向かう。……ちなみに同伴にリンゼを選んだのは『活字中毒を防ぐ為』だと記しておこう(気になる方はどうぞ調べて下さいな)。

 

──────────────────────

 

物件その物は全然良い所だった。元々この場所は酒場だったみたいで、結構中が広めに造られていた。一階は酒場の様になっていたが、改装して本棚で一杯にして、ここから選んで読める様にしたら良いか。

 

二階と三階とかは個室にして、ゆっくり読みたい人の専用部屋にするのも、かなり面白いかもしれない。その分だけ料金は割高になるけれども。

 

 

「問題無いね。よし、ここに決めよう」

 

 

呼んで来た不動産屋さんにサインをして、この建物の所有権を購入する。決して安い買い物では無かったが、商売をこの場所を使ってするのだ。それ位は妥当と言えよう。

 

さあて、改装するよ〜。しちゃうよ〜♪屋敷からウェンディ達(呼んでないのにウィルまで来た)ウェンディとウィル以外の六人で、上の階の掃除をお願いした。

 

 

「【モデリング】」

 

「何をしてるんですか?」

 

「あ、ここら辺にある家具を変形させてんのよ。喫茶店みたくするんだ。それっぽくしなきゃ」

 

 

作業中に話しかけて来たウィルの言葉に、僕はそう返して作業を続ける。さっき彼には《喫茶店みたくする》と言ったのだが、正確には《読書喫茶》にするのだ。ただの本屋にすると、何処にあるのとも何ら変わらない物が出来てしまうからね。

 

 

「受付カウンターはこっちで、ここは飲み物を置く所にしようか。水とか簡単なお茶なら、料金を取る必要は無いね。入店料はちゃんと頂くわけだし」

 

 

【モデリング】を使用しての、家具の変形作業を終えた僕は、設備の配備などを決めていた。観葉植物に関しては僕は作れないから、後で《庭園》から何本か持って来る事で固まった。……あ、本棚はここにサイズ違いのを一面に、と。

 

リクライニングシートみたいなのも、幾つか作っておくか♪小さいテーブル付きみたいなのにして。うーん、この作業なかなか楽しくなって来たな。

 

 

「じゃあ……ウェンディとウィルは、この本たちを順番に並べて行ってね〜」

 

「分かりました」

 

「……そう言えば旦那様、一つ質問があるんですけど」

 

 

僕が【ストレージ】から出した、本を並べているウェンディが手を動かしながら質問をして来る。……実は今でも[旦那様]と呼ばれる事に少しばかり抵抗があるのだが、何故か彼女はそう呼ぶ事をやめない。

 

彼女の事を『真面目だなぁ〜』と思いながらも、僕はウェンディの疑問に耳を傾ける事にした。

 

 

「お客さんの中には、本をこっそり持ち帰ってしまう人も居るんじゃないですか?」

 

「あ、それは俺も思った。例えば個室で入店して、バッグとかに読んでいた本を入れてさ、後は何食わぬ顔で出て行くヤツとか出そう。そこら辺はどうするんですか?」

 

 

二人が心配してるのは、このお店から万引きが出てくる事だったのか。……ふっふっふ、そこら辺は抜かり無しだよ。僕だってそこら辺は容易に想像が着く。

 

この世界では、本は貴重な物だからね〜。気持ちは分からないでもないんだけど、そんなヤツらを野放しにしておく訳には行かない。

 

 

「じゃあ……例えばなんだけど、ウィルが試しに盗んでみてくれる?服の下に忍ばせておくとかで」

 

「俺がですか?」

 

 

そう言ってウィルは、積まれた本の中から適当に一冊取って、服の下に隠してから建物の外に出ようとした。そうしようとしたのだが。

 

その結果としては、店を出ようとしたウィルに【パラライズ】が掛かり、彼の身体は呆気なく崩れ落ちてしまった。……よし、成功。

 

 

「とまあこの様に、万引きを働く不届き者が居たとしても、さっきのウィルみたくなるって訳。しかもこの建物から10メートル離れても、自動的に本棚へと戻って来る仕組みになってる。……と。ごめんねこんな役を引き受けさせて。【リカバリー】」

 

「あ、ありがとうございます……。確かにこれなら盗む事は出来ませんね」

 

 

そりゃあ勿論。麻痺対策の護符を持った者や魔力抵抗の高い者で無ければ、無傷で僕の監視の目を掻い潜ろうと言う事は、そう軽々と出来まい。

 

盗んだヤツは警備兵へと突き出しにプラスして、二度と立ち入れない様にする。そうされて当然の事をしているのだ。恨みがましい言い訳等聞きたくはない。

 

 

「まあ、一応警戒の為に……レベッカさんやローガンさんにウィル。君と他の冒険者二人には、ここの警備の仕事を任せたいと思う。なるべくなら知り合いに頼みたいからね。どうしても都合が合わないなら、ギルドとかに日雇いで依頼するから」

 

「俺は構いません。週に三日はギルドで別の依頼をこなして、残りの三日はここの警備をしようと思います」

 

「そっか……、わかった。じゃあその様に手配しておくね。残りの一日は……」

 

 

僕はウィルから聞いた事をメモに留め、彼の元へと近寄る事にした。そして彼の耳元まで腰を屈め、恐らく彼にとっては未体験の事をする事にした。

 

 

彼女さんを大切にしなよ?ウィル」ボソッ

 

「……!!!!///」ゾワァッ!!!

 

 

……あの後、ウィルとウェンディは顔を真っ赤に染めながら仕事をこなしていた。そしてチラチラと目が合う度に、顔から湯気が出そうな程に頬を紅潮させていた。良い物ですな〜『恋』と言うのは。

 

その二人を放置して、僕は【モデリング】で椅子を変形させて、リクライニングシートを作成する。そこにエルゼを座らせて、少しずつ快適な形になる様に、調整して仕上げて行く。

 

 

「旦那様は無属性魔法が使えて良いよな〜。俺は何の属性も無いから羨ましい……」

 

「ウィル、君まで……」

 

「ウチの亡くなったじいちゃんは、無属性魔法を使えたんですけどね。魔法の資質ってやっぱり遺伝しないんだなあ」

 

 

僕はウィルの零した言葉に、思わず聞き返してしまう。その後にウィルから聞いた話によると……どうやら、ウィルの亡くなった祖父は【グラビティ】と言う魔法の、適性を持っていたのだとか。

 

聞けば『触った物をちょっとだけ重くしていた』のだと言う。……うーん、それが概要なら少し心許無い気がしないでも……ん?待てよ?

 

 

「ウィル?後でその【グラビティ】って魔法を、教えて貰って良いかな。僕の予想が大当たりなら、使い所はかなり多岐に渡る筈だよ」

 

「?良いですけど……」

 

 

僕の予想が間違って無ければ、その魔法はかなり多岐に渡る可能性を秘めている。その名の通り《重力》に関する魔法ならば……。……ま、その事は後でも考えられるね。

 

僕は目の前のリクライニングシートを完成させ、更にもう一つ作り始めた。それが終わったら軽食のメニュー考案だなぁ……。軽く摘める物が一番好ましいはず。例えばケーキとか甘い物があった方が良いかもね。パフェとかも考えてみようか。




今回はここまでです!如何でしたか?

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ここで今後の予定をザッとお伝えしておきます(これは重要事項ですので、把握をよろしくお願いします)。


【①】来たる3月の何処かで、いよいよ私の描きたかった《帝都動乱》Partを書きます!散々お待たせしまった事を、本当に申し訳無く思います!そのお詫びも兼ねまして、五人目と六人目の婚約者の初登場回は、ユミナの初登場回(1st seasonの第6章)と同じ文字数で描こうと思います!私自身、一番描きたかった内容がここから先は続きますので……今までよりもかなり集中的になります!是非とも楽しみにしていて下さいね!

【②】書籍版4巻にて掲載されている……幕間劇である《襲撃者有りて。》は、本編に加える予定で居たのですが、予定変更をしまして【サイドストーリー、そしておまけ。】の第3話として描こうと思います(この話もユミナメインですので、加えても問題無し)!

【③】《帝都動乱》Partのその後である《新国家樹立》Partをある程度進めた後、本編の内容から抜け落ちる所があります!これは前から言っていた事なので、把握をよろしくお願いします(^_^;)(ちなみに、この先でも何話か話が抜け落ちる所がありますのでよろしく)

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以上の三点です!また詳しい情報はその時が近づいて来たら、活動報告や今回みたいな後書きにてお知らせしますので、是非楽しみにしていて下さいね(今描いている《読書喫茶「月読」》Partの後は、もう《帝都動乱》Partへと突入させます)!


次回の投稿は2月28日(金)午前0時を予定しています!今回も感想を是非!高評価やお気に入り登録も、何時もの様にお待ちしております(。ᵕᴗᵕ。)
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