異世界はスマートフォンとともに。if   作:咲野 皐月

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#15. 二人の王、そして二人の姫。

「お父様!お父様!」

 

 

自宅の庭へと続く【ゲート】を抜けると、横たわる皇帝陛下に縋り付くルーシア姫が居た。さっきは微かに動いただけだったが、今はどうなってるか不安だ。

 

僕はルーシア姫の元へ行くと、横たわる皇帝陛下と目を合わせる様に屈んだ。そして皇帝に手を翳す。

 

 

「【光よ来たれ、女神の癒し、メガヒール】」

 

 

僕が詠唱した上級回復魔法の光が、皇帝の身体を優しく包み込む。恐らく刺されていたであろう、脇腹の傷がみるみる塞がって行く。

 

……だが依然として変化は無いみたいだ。これだけでは不十分っぽいな。

 

 

「【リカバリー】」

 

 

後は後遺症とかが出ない様に、状態異常も回復しておく事にした。……後の事がどう転ぶのかは、本人次第になってしまったのだけれどもね。

 

そのまま客室のベッドへ転移させる。ライムさんに王宮のラウル医師を連れて来る様に頼んで、ルーシア姫とキャロルさんにアヤナさんを、皇帝を移動させた部屋へと案内した。

 

 

「……と言う訳で」

 

「……全くもう…何だって颯樹は、こう面倒事に首を突っ込むのかしら……」

 

 

僕から帝国での出来事の説明を聞いたエルゼが、呆れた様に溜め息を吐く。一応先にしょうもない言い訳(弁明)だけはして置くと、別に首を突っ込みたくて突っ込んだ訳では無い。

 

 

「…それにしても帝国がそんな事に……皇太子はどうなったんでしょうか……」

 

「僕が助けた騎士の中に、その人物が居たかどうか分からないし、その人が今も無事で居るかどうかは、明確には分からないかもね」

 

 

僕はリンゼにそう言って説明する。王宮に行く前に助けた騎士や、アヤナさんとキャロルさんくらいなら覚えてるが、その他を助けたか……って言われたら、素直に頷けない所だ。

 

それに僕は皇太子の顔を知らない。一緒に転移できたら良かったのだろうが。こればっかりはどうしようも無いのだ。

 

 

「颯樹殿が無力化出来たのは、せいぜいその将軍の魔法による力のみ……でござるか」

 

「颯樹さんなら、特に力を使わなくても……」

 

「いや、一番面倒なのはそっちだ。生身の人間と戦争をするんだ。双方無傷で終わらせる事なんて、先ず不可能に近い」

 

 

八重とリンゼの言葉に、僕は即座に否定で返す。結局この前イーシェンで武田兵(正確には完助&仮面兵だけどね)と戦った時、直接的にでは無いにしても、何らかの傷は与えてるからね。

 

そして今度は帝国の軍人……生身の人間とやる事になるのだ。かなり状況を考えて戦わないと、後々に取り返しがつかない事にもなりかねない。

 

取り敢えず、まずは国王陛下に状況の説明をしますか。帝国でのクーデターの事は話そうかと思うが、ルーシア姫や皇帝陛下の事に関しては……また機会があればにしようかな。

 

──────────────────────

 

「取り敢えず峠は越えた様ですな。後は安静にして体力の回復を待つばかりです」

 

「ありがとうございます、ラウル医師。此方もその報告が聞けて一安心です」

 

 

ライムさんが呼んで来たラウル医師が、そう言って聴診器をテーブルの上に置く。それを聞いた僕は、ラウル医師にお礼を言った。……ホントに一安心だよ全く。

 

あの後に話を聞いてみると……皇帝陛下が患っていた病気の、発症する兆候すら見られなかったのだとか。え?【リカバリー】って、単なる『状態異常回復魔法』だったはずだよね?そこまで直せるの……?凄い。

 

 

「それにしても……帝国の皇帝陛下を診る事になろうとは……。人生面白いものですな」

 

「お、お手数お掛けしました……」

 

 

苦笑しながらラウル医師がそう言う。……一応、この事は王宮には《秘匿》として扱って貰う事にした。皇帝陛下が目を覚まし次第、僕の方から国王陛下にお話しますよと言う事で。

 

医者の考え方は基本的に『あまり患者に負担を掛けすぎてはならない』と言う事なので、ラウル医師は何とか納得してくれたみたいだ。

 

……さて。《一難去ってまた一難》なこの状況。どうした物かね〜。傍らに居るルーシア姫はと言うと、あれからずっと皇帝陛下の看病を続けている。その隣にはキャロルさんにアヤナさんも付き添っていた。

 

 

「ルーシア姫。そろそろ少し休んだ方が、良いかもしれないよ。君まで倒れたら元も子も無いよ」

 

「はい……あの、私の事は《ルー》とお呼び下さいませんか?」

 

「わかった。じゃあ……ルー。これで良い?」

 

「はい、嬉しいですわ」

 

 

恥ずかしそうにもじもじと、上目遣いでルーはそんな事を頼んで来る。僕がそれに応えると、ルーは微笑む様な 笑顔をしていた。何とかご期待に添えられた様で……。こっちもとても嬉しいよ。

 

その後ふと視線を扉の方に移すと……。……!?ドアの外から見てるのって……ゆ、ユミナ!?何で覗き魔みたいな事をしてるのキミは……。

 

扉を開けて中に入って来たユミナは、ルーの前に立つと優雅に一礼をした。

 

 

「お初にお目にかかります。ベルファスト王国国王、トリストウィン・エルネス・ベルファストが娘、ユミナ・エルネア・ベルファストでございます」

 

 

ユミナが名乗りを上げると、ルーとキャロルさんにアヤナさんの顔が、目を見開いて驚いていた物になっていたが、やがてルーが慌てて立ち上がり、同じ様に優雅に一礼をした。

 

 

「初めまして、ユミナ王女様。レグルス帝国皇帝、ゼフィルス・ロア・レグルスが第三皇女、ルーシア・レア・レグルスですわ」

 

「お、おぉ……」

 

 

ユミナとルーの間で交わされた自己紹介に、間に立っていた僕は終始呆気に取られていた。……お、おぉ……、まさにお姫様同士の挨拶だなこりゃ。何方も《美しい》と言うよりは、とても《可愛らしい》姫ではあるが。

 

 

「この度は大変でしたね。ご無事で何よりです」

 

「はい。颯樹様に助けて頂いて、窮地を脱する事が出来ましたわ」

 

 

ユミナから投げ掛けられた言葉に、花が綻ぶ様な笑顔を見せたルー。そ、そりゃあ……ね。実際にルーを助けた時は、本当に《一瞬でも遅れてたら死も有り得る》って感じだったからね。それで間違っては居ない。

 

 

「それは良かったです。私も颯樹さんのフィアンセとして嬉しく思いますわ」

 

「えっ……そ、そうなのですか……?」

 

 

あれま。先程の咲き誇ってた花々の様な笑顔が、一瞬で萎れた様な表情になっちゃったな。……ま、ユミナの時と同じ反応だったし、ルーが僕の事をどう思ってるのかは大体察しがつく。

 

 

「ルーシア様、少しお話があるのですが、私の部屋へおいで下さりませんか?」

 

「?ええ、構いませんが……」

 

 

頭の中に疑問符を浮かべながらも、ルーはユミナの後に付いて行く。実際に《私の部屋》とは言うが、とどのつまりは《僕の部屋》でもあるのだ。簡単に言えば『同棲状態』になっているのだ。……その部屋のもう一つの使われ様は、残念ながら僕の知る所では無い。

 

部屋の扉が静かに閉められた後に、ラウル医師が僕の元へと来てボソッと呟いた。

 

 

「……修羅場ですかな」

 

「やめてくださいよ……縁起でもない」

 

 

全然笑えない冗談だ。まあ、あのユミナが「この泥棒猫ッ!」なんて言って怒ってる姿は、想像は出来ないのだが。……だが、それはそれでアリだな。可愛すぎるし。

 

 

「それより先生、王宮に帰るならば【ゲート】でお送りしますよ?僕もちょうど、王様に帝国の事を報告しに行きたいので」

 

「なら、一緒に送って貰いますかな」

 

 

後の皇帝陛下の警護は、キャロルさんとアヤナさんのコンビにお任せして、僕はラウル医師を連れて【ゲート】を潜って王宮へと向かった。

 

──────────────────────

 

「帝国がその様な事になってるとはな……」

 

「私もビックリです。未だに信じられません」

 

 

僕は国王陛下に帝国でのクーデターを報告して、帝国の領土と接している、砦の強化をする様に進言した。可能ならば魔法使いを多く送り込んだ方が良いか。此方との連絡を密に出来る様に、幾つか作った《ゲートミラー》を渡して置く。

 

《ゲートミラー》を使えば、王都と砦間での連絡がすぐ取れるからね。活かさない手は無いでしょ。

 

 

「しかし……良い報せと悪い報せを、同時に聞く事になろうとはな……。今日はなんて日だ」

 

「?悪い報せは僕が伝えた事ですが、良い報せと言うのは……?……はっ!まさか!」

 

「颯樹殿は、もう気付いていたのか?」

 

「ただの勘です」

 

 

その後に話を国王陛下から聞くと、見事にその予想が的中する事になった。ユエル王妃が現在身篭っている子供が、ユミナの弟or()妹になると言う事だ。それを伝えた本人は、照れ臭そうに顔を横に向けながらも、口許がかなりニヤニヤしていた。

 

 

「おめでとうございます。跡継ぎだと良いですね」

 

「少々複雑な所ではあるがな。颯樹殿がこの国を継いでくれたら安心なのだが」

 

「あのですね…。もし仮に男の子が生まれたら、その子がベルファスト王国を継ぐのが筋でしょうよ」

 

 

結局の所は、産まれるまでその事は分からないのだが、一応国王陛下には釘を指しておく。その後に屁理屈で返して来たので、それは軽く流しておく事にした。……自分の子供を使って変な言質を取らないでくださいよアホらしい。

 

 

「にしても、帝国の皇帝はその後どうしたのだろうな……」

 

「あ〜……第三皇女と共に《殺された》とも《逃げ出した》とも言われていますね。ハッキリした事は分からないのですが」

 

 

……なんか、ルーを勝手に居ない人扱いにしてる様で、胸が痛くなるな。と言うよりも、実際は自宅で匿ってるんですけどね。20年ほど前まで戦争をしていた国同士、変な所での険悪ムードは何としてでも避けたい所だ。

 

まあ、皇帝陛下の意識が戻り次第、きちんとお話しようとは思っているのだけれども。

 

 

「とりあえず、その反乱を起こした将軍を何とかしようとは、考えてます。その人さえ止めれば、他国への侵略は止まると思うので」

 

「ほう。随分と自信ありげだが、何か策でも?」

 

「ええ。まあ《百聞は一見に如かず》ですから。その時にならないと分かりませんよ」

 

 

僕の漏らした言葉に、国王陛下が頭に疑問符を浮かべたので、僕の方で軽く説明をする。そして自宅へと戻る道すがら、少し考えを巡らせる事にした。

 

多分バズール将軍の魔法を止めれてなかったら、今頃はもっと酷い状況で迎え撃たないと行けなかったと思う。でも今回はそれを防げているから、割く戦力はなるべく最小限の方が望ましいかもしれないな。

 

そんな事を思いながらも、僕は帝国の重鎮(じゅうちん)の人たちを匿っている自宅へと帰還する事にした。




今回はここまでです!如何でしたか?


さて!次回からは戦闘Partに入る予定でいます!【2nd season】になって初めてなので、若干ブランクが有るかもですが……頑張りますので、楽しみにしていて下さいね!

そして今話は前回よりも少なめにしたので、若干読みやすいのでは無いかな〜と思います(最低字数は3000字〜4000字って決めてますから)。まあ、原作準拠の内容は基本的に(推しの初登場orメイン回は除く)4000字〜5000字後半くらいで作るつもりですからね。


次回の投稿は3月13日(金)午前0時を予定しています!今回も感想を是非!高評価やお気に入り登録も、何時もの様にお待ちしております(このペースで行けたら3月下旬or4月上旬にはオリジナル回が出来るかな〜なんて見積ってます)!
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