異世界はスマートフォンとともに。if   作:咲野 皐月

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#16. 腕輪、そして内密会談。

「ねぇ、ロゼッタ……少し話があるんだけど」

 

「何でありまスか?」

 

 

僕は自宅へと帰還した後、直ぐ様《工房》に居るロゼッタの元を訪ねた。訪れた目的はと言うと、帝国で出会ったバズール将軍が付けていた、あの二つの腕輪に何か心当たりが無いかと思ったからだ。

 

その二つの腕輪の事をロゼッタに話したら、腕を組んでロゼッタは何やら難しい顔をして考え出した。

 

 

「うーん、その腕輪でありまスか……」

 

「何か心当たりが?」

 

「確か《蔵》にその様な能力を持った、アーティファクトがあった様な気がするんでありまスよ」

 

 

……何と?じゃあ何か?《蔵》から流出した腕輪が巡り巡って、将軍の所へ行ったって事か?

 

 

「なにせ5000年も経っているでありまスから、《蔵》が今も無事とは限らないでありまス。何かのトラブルで墜落し、そこからアーティファクトや財宝等が流出したと言う事も……」

 

 

僕はロゼッタから返されたその答えに、少し考えを巡らせる。……バビロンの《蔵》は『古代文明の財宝等を管理・保管する』遺跡なのか。

 

もしあの腕輪二つが《蔵》に元々あった物なら、そこの管理人が何らかの弾みで落としたか、本当にトラブルで墜落した事でその財宝等を紛失し、現代に居る人の手に渡ったかのどっちかになる訳か。……また難しいなぁこれは。

 

……ん?そう言えば。

 

 

「……ね、ねぇロゼッタ」

 

「どうかしたのでありまスか?」

 

「その《蔵》って所には、例えば[不死の宝玉]みたいな物もあったの?持ち主に《不死》の属性を与えて、アンデッドを操る物とか」

 

「ああ、そんな物も確か《蔵》にあった様な気がするでありまスな」

 

 

……やっぱりかい!これで<イーシェンでの武田軍との騒動>も《蔵》絡みだった事がハッキリした訳だ。こうなって来ると、確率としては後者の方が高くなって来るね。……となると、まだまだ沢山のアーティファクトが流出した可能性も捨てきれ無い訳か。

 

 

「《蔵》を管理してる子は、その後どうなったんだろうね……」

 

「我々にはごく短距離の転移能力があるので……墜落する前に脱出する事は可能でありまスが……、《蔵》の管理者はうっかり者なので断言は出来ないでありまス」

 

 

そうなんだね……。散らばってしまったアーティファクトや《蔵》の管理者の事も気になるけど、今は帝国のクーデターを止める事を最優先事項に動かなきゃ。

 

先ずは何日かかけて、戦えるメンツに出来る限りの《アインクラッド流剣術》を教え込まないとね。相手を無力化するだけなら、僕が【パラライズ】を軍人全員にかければ一発なんだけどね……完助の前例があるからなぁ。

 

 

「取り敢えず夕方になったし、そろそろ屋敷に戻ろっかロゼッタ」

 

「はいでありまス」

 

 

僕はロゼッタを連れて、ベルファストにある自宅のリビングへと戻る事にした。そろそろ夕方頃だし、少しゆっくりしないとね。……そう思っていると、アヤナさんが僕に気付いて駆け寄って来た。

 

 

「颯樹くん!」

 

「あ、アヤナさん!?何があったんです?」

 

「皇帝陛下の意識が戻ったんだよ!」

 

 

……なんと。

 

──────────────────────

 

アヤナさんにその話を聞いてみると、体調も安定していて、話をしても大丈夫なまでに回復しているとの事だ。皇帝陛下の回復力、恐るべし。……結構早かったね。まだ治療してから、そんなに時間は経ってないはずなんだがな。

 

アヤナさんに付いて来て貰いながら、僕は皇帝陛下に当てがった部屋へと入る。そこには娘と穏やかに話す皇帝陛下の姿があった。……本当に大丈夫そうだね。

 

 

「颯樹様!お父様がお目覚めに!」

 

「……そなたが盛谷颯樹殿か?」

 

 

嬉しそうに僕の方へ振り向くルーと、静かな表情で僕の方を見つめて来る帝国の皇帝。長く白い髭と痩せた顔から、何となく《仙人》の様な印象を受ける。

 

 

「先ずは礼を言わねばな。余の命とルーシアの命を救ってくれた事、感謝しても、し足りぬ……」

 

「どうかお気になさらないで下さい。僕はあの時偶々買い出しに出ていただけですので」

 

 

……ま、これは事実だわな。何処かでおちおち帝国の方には顔を出すつもりでは居たが、それが少しばかり早くなっただけだ。そこに関しては何の問題も無い。

 

 

「そう言って貰えると助かる。此度の騒動は余の不徳と致す所だ。誠口惜しい……」

 

「ですよね……。あ、それでどうします?」

 

「どう、とは?」

 

「亡命先ですよ。このまま帝国に戻ったとして、貴方はもう既に《死んでいる者》として扱われるだけです。何処かご希望があれば、その国まで【ゲート】でお送りしますが?」

 

 

僕がそう答えを返すと、皇帝陛下は驚いた様に目を丸くして此方をしげしげと眺めて来た。……ま、言いたい事はよく分かる。

 

 

「いや……颯樹殿はベルファストの人間では無いのか?」

 

「《住んでいる》と言う意味では、確かにその通りですね。けど国に仕えている訳ではありませんから。王家とは親しくさせて頂いてますが、国家間の争い事となるとまた別問題ですからね」

 

 

このまま行く宛てがあるのであれば、その国へ亡命した方が断然良くはある。ルーのお姉さん二人が行っている国ならば、ゴタゴタとする事は無いと思うし。

 

皇帝陛下は暫く沈思黙考に耽っていたが、間を置いて自身の考えを述べ始めた。

 

 

「いや……ベルファスト国王に会わせて欲しい。できるのであれば内密に話をしたいのだが、どうだろうか?」

 

「えぇ?……それは全然良いですよ?……でも、其方としては大丈夫なんですか?」

 

「もうこの際だ。今までの事や、これからの事を話し合いたいのでな」

 

 

んー……まだ夜も更けたばかりだし、今の時間帯なら王様も時間があるかな。取り敢えずユミナに付いて来て貰おう。……うん、そうしよう。

 

その後僕は皇帝陛下の居る部屋を退出し、自室に居るであろうユミナを連れて、ベルファスト王宮へと向かう事にした。

 

──────────────────────

 

「……すまん、もう一度言って貰えるか?」

 

「あー……、実はレグルス皇帝陛下と第三皇女をウチで匿ってました。すみません」

 

 

国王陛下は僕の言った言葉に衝撃を受けたのか、その場で頭を抱え始めた。……何と言うか、騙す様な真似をして申し訳無いです……。僕は心の中で国王陛下へと謝罪する事にした。

 

 

「レグルス皇帝が我が王都に居るだと?全く今日は驚きの連続だ……一体どうなっている!?」

 

「め、面目無いです……。と、取り敢えず。皇帝陛下は国王陛下と内密に面談を望まれてますが、如何しましょうか?」

 

「皇帝が?」

 

 

僕の言葉を聞いた王様はふーっと息を吐き、椅子に深く凭れて腹の上で指を組み合わせる。暫く考えていた様だったが、意を決した様に立ち上がった。

 

 

「ここで逃げる訳にも行くまい。その対談、乗ってやろうでは無いか」

 

「じゃあ直接、ウチに転移しますね」

 

 

僕は【ゲート】を開いて、王様とユミナを連れて皇帝陛下の居る部屋へと転移した。

 

ベッドで横になっていた皇帝陛下は、突然開いた【ゲート】に驚きつつも身体を起こし、目の前に現れたベルファスト国王に目を向ける。互いに視線を外さず無言で居たが、やがて皇帝が目を伏せ、頭を軽く下げた。

 

 

「この様な姿で申し訳無い、ベルファスト国王。此度の事、御国にも迷惑をかけてしまった様だ」

 

「いや、あまり自分を責められますな、レグルス皇帝。事情は颯樹殿から聞いておりますので」

 

 

そう言って王様は、ベッドの横にある椅子に腰掛ける。さて……ここからは国のトップ会談だからね。部外者は席を外そうか。部屋の中にベルファスト国王とレグルス皇帝、そして互いの娘であるユミナとルーを残して、僕は部屋の外へと退出する。

 

 

「おっ、皇帝陛下の警備お疲れ様です。キャロルさん、アヤナさん」

 

「これくらい大丈夫だよ。颯樹くんの方こそお疲れ様だったね」

 

「ありがとうございます」

 

 

そう言って僕は頭を下げる。実際はと言えば…、昼間からずっと警護していた二人の方が、僕よりもかなりキツかったとは思うのだが、アヤナさんはそれを乾いた笑いで返した。……本人曰く『何時もの事だから』と言う事らしく。大変だなぁ全く。

 

予めこの二人には、【ゲート】の事を事前に話しているので、扉から僕がいきなり出てきた事に関しては、驚きを見せていなかった。

 

 

「キャロちゃ〜ん……?中でベルファスト国王と皇帝陛下が会談中なんだから、邪魔しちゃメッ!だよ?」

 

「な!?何時の間にそんな事になったのです!?……しかも、私はもう子供ではありません!その様な事をする訳がありません!」

 

 

……相変わらず察しが良いなぁ、アヤナさんは。それに『邪魔しちゃメッ!だよ?』……って。何それ……めちゃくちゃ可愛いんですけど。それを見たキャロルさんの顔がかなり紅くなってるし。

 

アヤナさんは事ある毎に、キャロルさんの制止役に入ってたんだろうね。彼女からの言葉を受けたキャロルさんは、顔を真っ赤にしながらも大人しくなったし。……と言うよりも、あれ?

 

 

「キャロルさん、すみません。その剣に付いている紋章なのですが……」

 

「我がリエット家の紋章ですが……何か?」

 

 

僕はキャロルさんに断りを入れて、その紋章をよく見せて貰う。月桂樹に双剣……前面にはグリフォンの紋章。……間違い無い。以前レネに見せて貰った、風の魔石の嵌め込まれたペンダントにあった物と同じ物だ。

 

 

「この紋章と同じ物が彫られているペンダント、見た事がありますよ?」

 

「ッ!それは風の魔石が嵌め込まれたヤツですか!?何処で!?その人は!?」

 

「落ち着いてー。どうどう……」

 

「私は犬ではありませんよアヤナ!」

 

 

目の色を変えて僕に迫って来るキャロルさんを、アヤナさんが軽く窘めていた。……だがその方法が余計に癪に触ったのか、アヤナさんに飛び火する事となった。……本当に仲良いですねぇお二人は。

 

僕の言葉を聞いて慌てるって事は、余っ程の理由があるらしい。まだ其方の事情が分からないので、レネの事は伏せて話す事にした。

 

 

「そのペンダントの持ち主の方は、残念ながら亡くなられたそうです。病気だったそうですが」

 

「そうですか……」

 

「私、そのペンダントの持ち主……知ってるよ」

 

 

……えぇ!?さっきの国王陛下じゃないけど、今日は驚きの連続だよ本当に!そう思った僕は、アヤナさんからその事について聞く事にした。

 

その持ち主と言うのは、キャロルさんのお姉さんだったらしく、実家に居た厳しい父親に反抗して家を飛び出した、たった一人の姉妹だったのだとか。

 

 

「……そりゃあ心配にもなりますよね……。ん?そう言えば《リエット家》って、帝国では有名な貴族なんですか?」

 

「有名かどうかは分かりませんが、一応《帝国十二剣》の末席に居ります」

 

 

……《帝国十二剣》?




今回はここまでです!如何でしたか?


……何だか区切りが悪くなってしまいましたね。次回はこの話の続きからお届けしたいと思います!キチンと繋がる様にしますので、楽しみにしてて下さいね(あー、戦闘描写に入れるの何時になるんだろ)!


次回の投稿は3月16日(月)午前0時を予定しています!今回も感想を是非!高評価やお気に入り登録も、何時もの様によろしくお願いいたします(。ᵕᴗᵕ。)

最後に。私と「llight」さんのコラボ作品の二作目が公開されています。もう一つの「肆点決集」と交互に投稿されますので、其方もどうかよろしくお願いいたします。
↓[演者と奏者]のリンクはコチラ。
https://syosetu.org/novel/216803
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