「《帝国十二剣》?」
僕は先程気になったワードを、キャロルさんに聞いてみる。するとその疑問に答えてくれたのは、アヤナさんだった。
「ベルファストでは、あまり知られてないかもなんだけど、帝国を建国した初代皇帝、それを支えた忠臣の十二人の事なんだよ」
「私の御先祖である「双剣のキール・リエット」が、そのうちの一人です」
「ちなみに私の御先祖様も、キャロちゃんのご先祖様と同じだよ!」
「アヤナの所の御先祖は鬼の様に強く、全盛期は《漆黒剣のターナ・カーディナリア》と言う二つ名がありました」
……ス、凄いなぁ……。後々に話を深く聞くと、建国当初はかなり力もあったらしいが、今では殆どが名ばかりの貴族なのだとか。
話を聞く限りだと『没落貴族』が近い…のかな。まあ、そこまでは行かないにしても、既に帝国の重要なポストには居ないんだろうね。家の紋章をライムさんも知らないって言ってたし。
「そうですか…、姉上は亡くなったのですか…。父上も亡くなる直前まで姉上と喧嘩別れした事を悔やんでいて……。向こうで二人とも仲直りしているでしょうか……」
「キャロちゃんのお父さんが厳しいのは、帝国内でもかなり有名で、私によく泣きついて来てたよ……ね、キャロちゃん」
「アヤナ……恥ずかしい事を思い出させないで下さい」
そう言ってキャロルさんは、バツが悪そうに顔を紅くして下に俯く。キャロルさんがそんな状態になるって、余っ程の事だよなそれ。……まあ、キチンと治まっていたら良いが。
「あー……っと。そのお姉さんなんですけどね、実は娘さんが一人居ましてね。その子が今ウチに居るんですが……」
「……え?」
「え?それって、どう言う事なの颯樹くん」
キャロルさんが目を丸くして絶句し、疑問に思ったアヤナさんが僕の方へと質問を返して来る。……どう説明したもんかと悩んでいると、グッドかバッドか分からないタイミングで、レネが廊下を駆けて来た。
「颯樹兄ちゃ……旦那様、お食事の用意が出来ました」
「ありがとう、レネ。後で頂こうかな」
僕とお客さんのキャロルさん、アヤナさんに頭を下げると、レネは来た時と同じ様に廊下を戻って行った。キャロルさんの眼が、レネを只管追い掛ける。
やがてレネの姿が見えなくなると、キャロルさんは『もしかして』と言う視線を僕に向けて来た。
「あの子ですよ。名前はレネって言って、ここに来る前は貧乏街でスリをしていました」
「そんな……!」
「酷い……!」
「と思うでしょうね……。だけど、彼女はそれをしないと生きて行けなかった。父親は冒険者で、魔獣討伐の依頼を受けた先で帰って来なかったそうです。お母さんの形見であるペンダントを、大切に持っていました」
僕の言葉を聞いたキャロルさんは、この騒動が終わった後に、レネをキャロルさんのお母さんに会わせたいと言ったので、必ず何処かでタイミングを見つけてそうさせます、と約束を取り付けた。
キャロルさんの母上って事は、レネからして見れば祖母に当たる訳か。何時かちゃんと会わせてあげられると良いな……。なんて事を考えていると。
「颯樹さん、お父様と皇帝陛下がお呼びになってます」
「?何だろ」
背後のドアからひょこっと顔を覗かせたユミナに連れられ、僕は部屋の中へと入る。そこにはベッドに腰掛けている皇帝陛下と、椅子に座っている国王陛下が居た。
二人とも穏やかな顔をしている事から、話し合いは終わったのかな。
「颯樹殿、昼間の話なのだが……」
「もちろん覚えてますよ。……ええ、バズール将軍を何とかする事ができますよ。もうこの際ですから、軍人全員も無力化してしまいましょうか」
「か、可能なのか……そんな事が」
「はい。しかし相手としてみれば、昨日今日と連戦になれば辛いでしょう。……そこで、僕の方でも少し策を講じさせて下さい。決行は三日後の朝方と言う事にして」
驚きのあまり唖然とする三人の横で、ユミナは当然とばかりに小さな胸を張っていた。……まだまだ成長期だからね。
「ただ、少し聞いておきたかったんですが……、もし鎮圧が完了したとして、今回反乱に関わった軍人たちはどうするつもりですか?」
「そうだな。将軍を始めとした、主だった幹部は死刑もやむを得ないが、ただ従っただけの者は軍務を解き、帝都を追放するに留めるつもりだ」
将軍や主だった幹部は死刑もやむ無し、従っただけの者は軍務を解いて帝都追放か。……まあ、妥当な線なのだろうね。帝都に居るのは全体の一割半程だろうし、痛手には変わらないが立て直せる範囲か。
「マップ表示。レグルス帝国帝都」
『了解。マップ表示しまス』
僕がそう言った瞬間、機械的な声の持ち主……ウチのロボ子メイドであるシェスカの声と共に、部屋の中央にレグルス帝国の帝都、ガラリアの地図が映し出される。
「な、なんだ、これは!?」
「帝都の地図ですわ……。それもこんなに細かい……」
「僕の無属性魔法です。便利でしょう?」
僕は未だに驚いている、皇帝陛下とルーに『これくらい大した事ないですよ?』と言う感じを含ませて答える。その傍では国王陛下も驚いていたが。
……そう言えば。国王陛下にはまだ一度も見せてなかったな。驚くのも無理無いか。
「検索。騎士団員を青色、軍人を赤で表示」
『了解。…検索終了。表示しまス』
シェスカがそう言うと、ぶわっと帝都に赤い点が広がって行く。昼間に見た時よりも、かなり増えているなぁ。恐らく他の町からも呼び寄せたのかな。
そして肝心の騎士団員はと言うと、ある一点に集まっていた。……城の隅の一角?……と言うと…。
「騎士団員が居るのって、もしかして……地下牢とかですか?」
「そうだな。恐らく騎士団の者は捕らえられているのだろう。だが全員では無い……少ないな。他の者は逃げたか、或いは殺されたか……」
悔しそうに拳を握り締める皇帝陛下。……確かにこの状況を見ていると、少なくとも良い状況では無いのがよくわかる。余計な手が打たれない様に、その行動に出る危険性のある者を捕らえているのか。そう考えると、この状況に説明がつきそうだ。
「あ、あの……颯樹、様?」
「何」
「少し……よろしいですか?」
おずおずと投げ掛けられたルーの言葉に、僕はフッと我に返る。後に話を聞くと『今の僕からは人を威圧で殺せる様な殺気が出ていた』のだとか。……マジですか。
ルーに指摘されて我に返った僕は、逸る気持ちを抑えながらルーに話し掛ける。
「どうしたの?ルー」
「あの……、颯樹様。お兄様を探す事はできますか?」
「うーん……、出来なくは無いと思うけど……。皇太子様って何か特徴とかある?ひと目で『皇太子様だ』って分かる様な」
この検索機能は【サーチ】を元にしているので、僕がそれを見てどう判断するかで検索される。軍服を着てるから軍人……と判断できるなら《軍人》で検索できるんだけどね。
それ故に『一度も会った事が無い人』は、検索する事が出来ないのだ。例えば、八重のお兄さんの様に<頬に刀傷>とかあるなら、ひと目でその人物だとわかるんだけどね。
「特徴……ですか?えっと…髪は銀髪で、えっと……あら?特徴…特徴……」
思い出せる限りの特徴を述べた後、ルーは考え込んでしまった。それを見た皇帝陛下はと言うと、軽く苦笑いを浮かべて居た。
……な、なるほどね。その皇太子様って余程普通の顔立ちをしてるんだ?仕方無い、記憶を貰う事にしましょうか。
「ルー。ちょっと手を出してくれる?」
「?はい……?あ……」
ルーから差し出された小さな手を僕は軽く握る。それを見たルーの顔が忽ち紅くなるが、僕は成る可く平常心を持って語り掛ける。
「目を瞑って……お兄さんの事を思い浮かべて。なるべく最近の物を」
「は、はい」
目を瞑って集中しているルーのおでこに、僕は自身のおでこを当てる。正直に言ってしまえば、皇太子の記憶を貰うなら皇帝陛下でも良かったのだが、そこら辺はまあ気分だ。……一番の理由はと言うと、リーフリース皇国に居るリリエル皇女……彼女に知られたくないと言うのがある。
もしこの事が、何らかの弾みで彼女に伝わって、そこからまたややこしい事になれば、前回の様な主張は絶対に通用しないだろう。……考えるだけでも恐ろしい。
「ふわわわっ!?」
「集中して」
「は、はいぃ!」
狼狽えるルーを短く窘めて、此方も魔力を集中させ始める。記憶譲渡魔法【リコール】だ。これで皇太子の詳細な容姿とかが掴めれば良いのだが……。
そんな事を頭の隅で考えながらも、僕は魔法を発動させた。
「【リコール】」
そう詠唱すると、ルーの頭の中にある……皇太子に関する記憶が伝わって来た。最初はボヤっとした顔だけだったが、次第に少しずつ像を結ぶ様に、全体の容姿がハッキリとして来た。
銀髪でさほど《特徴》と言う物は無いが、優しそうな青年の顔が浮かび上がって来た。……ん?この人って確か……。
「この人が皇太子なら……僕、会った事がありますよ……?」
「「「「え!?」」」」
驚きの表情をする4人を他所に、僕は少しずつ記憶を手繰って行く。……そうだよ、間違いない。帝都が襲われていた時に、二人の軍人に詰め寄られていた若い黒騎士だよ。
……え?あの人が皇太子?!ひょっとして……、逃げる為に変装とかしてたのか……?そう思った瞬間、僕の額からは冷や汗が滴り落ちた。
「……やべ、置き去りにして来たかもしんない」
今回はここまでです!如何でしたか?
執筆が遅くなって申し訳ありません(^_^;)言い訳ですけど、コラボ作品である<演者と奏者>の方の内容提案にプラスして、仕事や家庭でもやる事が満載……それで執筆の方が全く進んで居なかったんです。
ここから少しずつ……本調子に戻して行きたいと考えていますので、変わらずの応援よろしくお願い致します。
次回の投稿は、執筆に少〜し余裕を持たせて……3月30日(月)午前0時と言う感じにしたいと思います!あくまでもこれは予定なので、今回みたいに変更になる恐れがあります(^_^;)
今回も感想を是非!高評価やお気に入り登録も、何時もの様にお待ちしております(。ᵕᴗᵕ。)
【追記】
https://twitter.com/llight_hikari/status/1239794043728449537?s=19
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回答するのは、その小説内の<メタ回>みたいな所でしますね。オリキャラに関する質問でも、何でも構いませんので是非!