異世界はスマートフォンとともに。if   作:咲野 皐月

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第2話:リフレッシュ、そして新作制作。

「昨日は酷い目に遭いましたね……」

 

「全くだよ……。思い出すだけでも頭が痛くなる」

 

 

天気が良い日の真昼間から、溜め息を吐きながら僕とユミナは街中を歩いていた。……どうしてこうなったのかと言えば、原因は昨日の依頼にあった。

 

昨日受けた依頼は『スライム研究家の調査』と言う物で、僕とユミナ、エルゼとリンゼ、八重と琥珀の5人と一匹でその依頼を受けた。

 

だが、そこで待っていたのは……(第9章《寝坊、そしてスライムキャッスル。》を参照)後は察して欲しい。そんな訳で、リフレッシュを兼ねて街中へと繰り出している訳だ。

 

 

「……よし!溜め息吐いたって何も始まんない!だったら、今日は目一杯遊ぶか!」

 

「はい♪」

 

「とは言うけど、この先はどうしたら良い物か……ユミナ、何か考えはある?」

 

「私、ですか?……そうですね…」

 

──────────────────────

 

「ほうほう、そうか!ユミナが遂に颯樹殿を落としたか!これはめでたい!」

 

 

僕たちが訪れたのは、ベルファスト王国の王宮である。何でも「出来る事は出来るうちにやって置きたいんです」と言う事らしく。……ユミナって、結構策士だよなぁ……先々の事を考えて行動に移してんだもん。正直感服するよ。

 

期限の一年にはまだ早い、一週間でこんな事になるなんて……。まあ、ユミナを受け入れるって決めたから、これは有り得た事だろうけどさ……。

 

国王陛下は上機嫌で身を乗り出して笑っていた。ユエル王妃はユミナの手を取り、娘に笑い掛けている。

 

 

「よくやりましたね、ユミナ。これからはさらに一層、颯樹さんに尽くし、妻として支えて行くのですよ?」

 

「はい、お母様!」

 

 

国王陛下が椅子から立ち上がり、僕の肩を叩いて爽やかな笑顔を浮べる。……テンション高すぎません?いや、自分の愛娘が結婚すると知ったら…ねぇ?分からんでもないけどさ……。

 

僕は何とも言えない表情を浮かべながらも、国王陛下からの言葉を聞くのだった。

 

 

「後は孫の顔を一刻も早く見せて欲しいものだな!なあに、ユミナは初ちょ……」

 

「……」ニコニコニコニコ

 

「……颯樹殿、少しその笑顔が儂にとっては恐怖すら覚えて仕方ないのだが……」

 

「え〜?何の事です〜?可笑しいな、これでも平然を保ってるつもりなんだけどな」

 

 

国王陛下が僕の笑顔を見て、引き攣った笑みを浮かべた。……いくらこの国の国王陛下で未来の義父であったとしても、今のセクハラ発言は頂けないかな?かな?かなぁ?

 

隣のユミナに至っては、先程の発言が癪に触ったのか、眉を吊り上げて怒りの表情を見せている。

 

 

「颯樹さん」

 

「合点承知」

 

 

僕とユミナは国王陛下の両腕を掴むと、戸惑う国王陛下を後目に別室へと連行した。謁見の間に残されたユエル王妃は、ただクスクスと笑いながらその場を見守っていた。

 

その後の別室からは、何かをお経のように呟く国王陛下と僕とユミナの叱責が飛んでいたのだとか。例え父娘とは言え、セクハラ発言はダメだよね♪

 

──────────────────────

【一時間後】

 

「……」

 

「少しは反省して下さい」

 

 

僕とユミナが国王陛下を別室に連行してから一時間後、国王陛下はと言うとその場に頭を垂れていた。……セクハラ発言を軽々しくするからですよ。

 

その姿を見たユエル王妃は、困ったように笑い掛けながら僕にある事を伝えてくる。

 

 

「ゴメンなさいね、この人嬉しさの余り暴走してるのよ。……でもどうしましょうね。既に知っている人も結構居るけど、正式に颯樹さんをユミナの婚約者として発表すると、色々大変かもしれないわ」

 

「ああ、なるほど。確かに大変ですね。ユミナとの婚姻を考えていた貴族からは、確実に目の敵にされますね。逆に取り入ろうとして来る輩も居そう……」

 

「後は、颯樹さんが何らかの実績を示さないと……ユミナとの婚約を認めない、と言う頑固者も居るでしょうし」

 

 

……確かに。一国の姫君を娶るのだから、それくらいは想定できた事だよね。やはり簡単には行かない、という事で。

 

しかし実績って言ったってなぁ……。国の為になる、何か大きな利益を挙げろ、とか?

 

 

「まあ、もう暫くは伏せて置きましょう。早めに発表して厄介事を引き込むよりも、後で一気に婚約、結婚と畳み掛けた方が良いかもしれないわ」

 

「そうですね。そこら辺はお任せします」

 

 

そこら辺はもうお任せするしか無いわな。僕はその辺りはあまり上手く調節できないからね。僕とユミナはユエル王妃に一言述べてから、王宮を後にした。

 

……時間的にはお昼を過ぎたくらいかな…。久しぶりに彼処に行ってみよっかな♪

 

 

「……儂は間違っていたのだろうか…」

 

「そんな事はありませんわ、アナタ。颯樹さんやユミナにはキチンと伝わってる筈です。元気を出して下さいな」

 

「ウム、そうだな」

 

──────────────────────

 

王宮を後にした僕とユミナは、王宮の外で【ゲート】を使ってリフレットの街へと戻って来ていた。時間はお昼を過ぎたくらいなので、昼食を取りに戻っていると言う訳だ。

 

因みに行き先はと言うと、何時もの喫茶店の【パレント】である。

 

 

「いらっしゃいませ〜。あ、颯樹さん!こんにちは」

 

「こんにちは、アエルさん」

 

 

僕とユミナを出迎えてくれたのは、以前女性ウケするスイーツを教えて欲しいと依頼をして来た、ウエイトレスをしているアエルさんだ。彼女の話に寄れば、アイスクリームを出したその日から、かなりの人気が出たとの事で。

 

ここもザナックさんのお店同様に、ちょくちょくスイーツのレシピとかを提案して居たりする。八重に至っては新作のお菓子が出たら、購入するのと同時に食べて来たりもしている程だ。

 

 

「今回は彼女さんもお連れですか?」

 

「ええ、そんな所で」

 

「そうでしたか。……あれ?そちらの方、何処かで見覚えが……」

 

 

アエルさんは隣に居たユミナに目を向ける。あ、これって何処かで……デジャヴ?

 

 

「結局こうなっちゃいましたね……」

 

「反応が見た事があるもん。分かるさ」

 

 

結局無事に席に着いたのは、入店してから10分した頃だった。その後に僕たちは注文を行ない、料理が出来るまでの少しの時間を話しながら潰していた。

 

そして料理が運ばれ、僕たちは昼食を取るのだった。少しして食べ終わった頃に、僕たちの所にアエルさんが歩いて来た。

 

 

「あの〜、宜しければ……また手伝って貰っても良いですか?」

 

「メニュー考案ですか?良いですよ、協力します。ユミナも構わないよね?」

 

「はい♪」

 

 

ユミナの了承も得られた事で、僕たちはアエルさんの付き添いの下厨房の中へと入って行った。今回は何を提案しようかな……。

 

 

「ジャンルはこの前と同じで?」

 

「はい!」

 

「……そしたらば…パンケーキ、とかどうですか?粉物のスイーツなんですが」

 

「良いですね!作り方を教えて貰っていいですか?紙に書きますので」

 

 

アエルさんのその言葉を聞き、僕はスマホでパンケーキの作り方を調べて、材料の所から説明を始めた。料理行程の所々を僕とユミナで手伝い、少しした後には3枚のパンケーキが一枚のお皿に積み重なっていた。

 

 

「さてと。あとは仕上げだけだけど……あっ、アエルさん。生クリームってあったりします?」

 

「え、ええ……ありますけど…どうするんですか?」

 

「トッピングを考えようかと思いまして」

 

 

そう言って僕は、手渡された生クリームやフルーツを使って盛り付けて行く。そして少しした後、僕はアエルさんに声を掛けた。

 

 

「どうでしょうか?こんな形で纏まりましたが」

 

「……おおー!凄く綺麗です!」

 

「見ているだけでも美味しそうだし、色とりどりで綺麗ですね〜」

 

「颯樹さん、これは一体何を使ったんです?」

 

 

アエルさんが漏らした疑問に、僕は丁寧に答える。ま、フルーツをパンケーキの上に盛り付けた後、その周りにも何個か置き、そしてフルーツの間に生クリームを落とし込んだ形だけどね。

 

 

「取り敢えず、こんな形で纏まりましたが……大丈夫ですか?」

 

「はい!ありがとうございます!」

 

「凄いです!……しかし、こう言うのをよく知ってましたね」

 

「まあ、僕にはこれがあるからね」

 

 

ふと漏らしたユミナの疑問に、僕は手に持ったスマホを見せて答える。ユミナにはキチンと「僕にしか使えない魔道具みたいな物」と説明はしておいたが。

 

ともあれ、パンケーキはメニューとして出してくれるみたいで、僕とユミナは先程作ったパンケーキを食後に頂いた。……ただし、持ち帰りとかは出来ないという話だったが。当然でしょうなぁ。

 

──────────────────────

 

「美味しかったですね♪」

 

「ホントホント。戻ったら教えないとね」

 

 

あの後僕たちはリフレットの街中を歩いていた。結局パンケーキのお代に関しては、まだ商品化もされてないと言う事で、払わなくても良いと言う形になった。その代わりに何時もの3人に伝えておいて欲しい、とだけ伝言をする事になった。

 

気晴らしに街中を歩いていると、何やら騒ぎが起こっているみたいだ。

 

 

「?何かあったのかな?」

 

「行ってみましょう」

 

 

そう言って僕とユミナは、騒ぎの中心へと向かう。そこで起こっていたのは、屈強な男2人が一人の女の子を路地裏で追い詰めている場面だった。

 

 

「これは……!」

 

「誰か!通報をお願いします!……ユミナ、ちょっとこの状況を片付けるよ」

 

「分かりました」

 

 

僕の声で僕たちの近くにいた女性が、警備兵を呼びに走り出した。そして僕たちは意を決して、男たちの所へと向かう事にした。

 

 

「そこまでです!」

 

「あぁん?何だテメェらは。ガキがこんな所に来てんじゃねぇよ」

 

「何の用だァ!?」

 

「いや、一人に寄って集って男が女に手ぇ出すって、普通有り得ないでしょ」

 

 

僕は男の一人に事実を言ってのける。目の前の女の子は歳はユミナと同じか一つ上位で、背は平均的で整った顔立ちをしていた。今その顔が恐怖に歪んでいる事から、相当怖い目に逢ったのだろうと推測できる。

 

 

「ユミナは女の子の所へ向かって。僕はあの男2人を捻り潰す」

 

「了解です」

 

「捻り潰す、だってよ」

 

「ガキ一人に俺たちが負けるわきゃねぇだろ」

 

 

そう言って2人の男は、僕の所へと歩いて行く。それを見たユミナは、追い詰められていた女の子の方へ駆け寄っていく。……どうやらユミナに気付いてる様子はなさそうだ、よし。

 

 

「覚悟しな、ガキ。俺たちの邪魔したらどうなるか、思い知らせてやる」

 

「あ、そう」

 

「ナメタ真似を!オラァ!」

 

 

足元が……お留守だよ!そう思って僕は、殴り掛かって来た男の足を蹴り飛ばす。男のよろめきを躱した僕は、更にもう一方の男の腕を掴み、そのまま一気に路地裏の入り口まで投げ飛ばす。

 

 

「なぁにしやがる!」

 

「このガキ……痛い目を見ねぇとわからねぇようだなあ!」

 

「死ねぇ!」

 

 

……あ、そういう事。僕は迫って来る2人の男の顔面に拳を入れ、路地裏の外へと放り出した。そしてその後に【パラライズ】を男2人に掛けて、警備兵へと突き出した。

 

その後に追い詰められていた女の子からお礼を言われ、僕たちはそれに応対をしていた。そして少し歩き回っていると、夕方に時間が迫って来ていた。

 

 

「今日は楽しかったですね〜。お父様たちに結婚の挨拶もできましたし」

 

「まあ、婚約の発表は延期して貰えるみたいだから……少しは気にする事無く生活出来るね」

 

「はい♪」

 

 

そう言って僕たちは、宿屋である『銀月』へと向かって行った。その後にエルゼたち3人に、パンケーキと言うスイーツが新商品として出る事と、それを先にユミナと食べて来たと言う事を伝えると、何時ぞやの状況になってしまった……。更に今回は八重も居るので、僕は正直肩身の狭い想いをする羽目になった。

 

……まっ、リフレッシュ出来たし、これくらいしても罰は当たらないよね?……雷は絶対にごめんだけどさ。




今回はここまでです!如何でしたか?


月曜日に予定投稿できなくて、すみませんでした!ですが、今回は幕間劇と言う形で補う様にしました!次回は本編に戻りまして、ミスミド王国Partをお届けします!

それではまた次回!金曜日にしっかり投稿できるように支度しますので、楽しみに待ってて下さいね!


ちなみに、今回の話の中で『アイスクリーム』の話題が出ましたが、第2章と第3章の間で提案をしているという形を取っています。紛らわしくしてすみません……。原作との相違点が今後も何処かで出て来るので、そこら辺はご愛敬として見てくださいな。

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