衝撃的な一日のその後、僕はユミナと共に武器を買いに出かけた。ユミナはどうやら『集中性』よりも『速射性』を重視するみたいで、同じ弓でも軽めの《コンポジットボウ》を選択した。
その後、女子用の白い胸板とお揃いのブーツを購入し、依頼へと向かう事にしたのだが。
「いきなり『キングエイプ討伐』って……初心者からしたら、結構ハードなクエストだけど…」
「私の実力を知って貰うには、これくらいがちょうど良いかと」
「まっ、危なくなったら颯樹が助けてあげれば良いのよ」
……また勝手な事を…。さっき僕が言ったのは、このクエストのランクの事である。基本は『受注者のランクと該当するランクのクエストのみ』受注できるが、今回の場合は、パーティーメンバーの過半数が上級ランクになっていれば、高ランクのクエストを受けられると言う仕組みだ。
今回の『キングエイプ討伐』のクエストは、三流冒険者の意味合いである《緑》ランクの依頼なのだが、ユミナがそれで良いと譲らなかった為、このクエストを受注している。
「すみません、少し召喚魔法を使っても良いですか?」
「え?この大きな森の中で?」
「見てて下さい、颯樹さん♪」
ユミナが僕にその提案をして来たので、僕は他の3人に断りを入れて許可を出す。するとユミナは、持っていたコンポジットボウの発射口を上にして、魔法の詠唱を始めた。
召喚魔法って、確か【闇属性魔法】の別名だっけ。そんな事を考えている間にも、ユミナは魔法を使って行く。
「【闇よ来たれ、我が求むは誇り高き銀狼、シルバーウルフ】」
「こ、これは!召喚魔法?」
リンゼがユミナの発動した魔法に、驚きにも似た声を挙げる。……先程の道すがらで聞いた話なのだが、ユミナは風・土・闇の3属性の魔法を使えるのだと。リンゼと同じ巷では珍しい3属性の使い手だ。
少しして闇属性の魔法陣から現れたのは、大きさにして1mくらいの毛並みが銀色と青の獣である、シルバーウルフだ。
「じゃ、皆お願いね?」
『ウォンっ!』スタスタスタ
「彼らが見つけてくれると思います」
森の中へと駆け出して行ったシルバーウルフを見て、ユミナは僕たちにそう教えてくれた。……へぇ、召喚魔法って便利なモンだなぁ〜。…と思っていたら『私が教えましょうか?』と名乗り出た為、クエスト完了後に頼む事にした。
その前に少し細工を、ってね♪そう思いながら僕は、適当な位置にある細工を施した。……暫くすると、先程のシルバーウルフの鳴き声が聞こえてきた!
「良い?戦闘態勢、準備!」
シルバーウルフの鳴き声を聞いたユミナは直ぐ様反応し、僕の掛けた声で全員が戦闘態勢に入った。……今回は刀で行きますか!まっ、一応の予備として弓も入ってるけど♪
そんな事を考えていると、5頭のシルバーウルフが此方に向けて駆けてきた。その後ろにはご丁寧に7体のキングエイプが。……何匹か罹ったね、今だ!
「まずは小手調べだけど、倒れてくれるなよ〜?【マルチプル】!【炎よ来たれ、紅蓮の炎槍、ファイアスピア】!」
僕の放った火属性の魔法が、何匹かのキングエイプに突き刺さる。……えっ?こんなにあっさり?と思ったのも束の間、先程の攻撃を見た2匹のキングエイプが、僕へと襲いかかって来た。
……なるほど、それなら!
「エルゼ、任せた!」
「分かったわ!【ブースト】!」
僕はその場にいた1頭をエルゼに任せると、もう1頭へと斬り込む。そこをユミナが放った矢のサポートを受けて、首の頸動脈を切り落とす事が出来た。
エルゼの方は【ブースト】を込めた一撃を喰らわせ、その後に2頭の狼(召喚獣)がキングエイプへと喰らいつくのだった。……あと何匹だ?
「【雷よ来たれ、白蓮の雷槍】……」
「【炎よ来たれ、紅蓮の炎槍】……」
ふと思って横を見てみると、2頭のキングエイプを相手にリンゼとユミナは、魔法で迎撃をする様だ。……ん?待て。さっき僕は何匹キングエイプを倒した?最初の魔法で2匹、先程の斬り込みで1匹、エルゼが1匹、八重が1匹、……なるほど。アイツらで最後か!
「【サンダースピア】!」
「【ファイアスピア】!」
そんな事を考えている間に、ユミナとリンゼの魔法が2頭のキングエイプに命中する。そしてグラりと地面に倒れ込んだのを確認した僕たちは、少し息を整える事にした。
「何とか片付いたね」
「あ、あの〜、どうでしたか?」
「うん!実力は問題無さそうね」
「魔法も中々の物、です」
「後方支援は助かるでござる〜」
3人から賞賛の言葉を送られるユミナ。……確かに、僕は初依頼の時は魔法で攻撃するだけだったけど、後方支援が有るとここまで安定して来るんだからな〜。
僕はそう思いながら、労いの意味を込めてユミナの頭を撫でた。すると気持ちが良かったのか、ユミナは僕の腕に抱き着いて来た。…また始まったよこれが。
「相変わらず、仲良いわねアンタら」
「……」ピキッ!
「ちょっと待って!1回落ち着こ?ね!」
僕がそう静止すると、怒りの籠ったオーラを発していた3人は何とか気を鎮めてくれた。……はぁ、毎度毎度こんな形になってたら、連携どころじゃない気がするな。
……と、ここで僕はある事を思い出し、頭を抱えるのだった。
「はぁ……これで女の子4人に、男が1人か〜。ますます何か言われそう…」
「何か問題でも?」
「3人とも気が付いてないかもだけど、ギルドとかではかなり目立つんだよ?それに対する僕への視線が突き刺すように痛い……」
「何ででござる?」
無自覚なのがまた怖いよ……。僕は思った事を全て4人にぶちまけるのだった。
「そりゃあやっかみも受けるよ……エルゼにリンゼ、八重も皆、特に可愛いんだから」
『え?』プシュー
僕がそう言うと、ユミナを除いた3人の顔が紅くなり、顔からは沸騰するかの様に湯気が立ち昇って居た。少しして我に返ったエルゼが、僕の言葉に反論する。
「な、何言ってんのよ、颯樹!可愛い、とか……その気にしちゃうじゃない////」
「さ、さあ……帰りましょう////」
「か、帰るでござるよ///」
「そ、そうね!そうしましょ////」
リンゼが苦し紛れに発した言葉を受け、エルゼと八重は先程止めて置いた馬車に向かって歩き出した。……僕は素直な事を言ったつもりだけどな…。
そんな事を考えていると、コートの袖を引っ張る人が居た。それは先程の3人では無いが、少し顔を赤らめたユミナだった。
「私は?私は可愛いですか?」
「可愛いよ?当然じゃん」
「えへへ///」
ユミナをそう諭した僕は、馬車へと歩き出そうとしたのだが、ユミナは照れ隠しのつもりだろう……僕の背後に顔を埋めていた。仕舞いには後ろから抱き着かれる始末だ。……あの、女の子としての大事な部分が、服越しだけど当たってるんですが!
……このまま狩場に固まられるのもアレだったので、僕はユミナをその場から背負うと、3人の待つ馬車へと向かった。……大分我が儘なお姫様で。
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【宿屋『銀月』:裏庭】
僕はクエストが終わって直ぐに、ユミナに先程の召喚魔法のやり方を教授してもらっていた。呼び出される個体はランダムであり、本人の持つ魔力の量や質によっても変化するらしい。
僕は両手を合わせて、闇属性の魔力を目の前の魔法陣へ集め始める。そして暫くした頃、中から威圧感のある声が聞こえて来た。
『……我を呼び出したのはお前か』
「おっ、呼び出せた」
「本番はここからです。召喚獣と契約して、初めて成功です」
「よし」
『我と契約だと?随分と……舐められたものだな』
そう言い終えた後に、魔法陣の上にある獣が現れた。それは白き毛並みに黒いシマシマの猫型の動物で、古き伝承にあまり関心の無い僕でさえも、その名前だけは耳にしていた物だった。
「ま、まさか……《白帝》!?」
「え?《白帝》って?」
「召喚できる最高クラスの獣……。魔獣では無く、神獣です!」
「……はい!?…それで、契約はどうすれば」
ユミナから目の前の獣が『神獣』の1体である《白帝》と教えてもらった僕は、改めて《白帝》と向かい合う。すると白帝は僕の方を見ると、言葉を発し始めた。
『ふむ……お前の魔力の質と量を見せてもらう。生半可な力では、使い物にならんからな』
「神獣ともなると、扱いも難しい…と言う事か」
『話が早くて助かる。……?奇妙だな。精霊の加護か…それとももっと高位な力を感じる……』
僕の答えに納得した白帝は、僕の身体の匂いを嗅ぎ始めた。……何か問題でもあったかな?
一度嗅ぎ終えると、白帝は『これは面白そう』と言った具合に好戦的な顔を浮かべ、契約の仕方を伝える。
『さぁ……魔力が枯渇するギリギリまで、我に魔力を注ぎ込め。我の額に手を当てれば、我自身に魔力が伝わって行くからな。途中で意識を失って倒れたら、契約は無しだ』
「了解。……それじゃ、行くよ」
『来い』
白帝の準備もできた様なので、僕は白帝の額に手を添えて魔力を流し込む。……そう言えば。一日に沢山の魔法を使ってるけど、疲労感とかそう言うのがあまり無かったな…。
そう思いながらも、魔力を注ぎ続ける。
『……!何だ、この力は!』
「……凄い」
「〜?もうちょっと足してみるか」
途中でそんな事を思った僕は、注ぎ込む魔力の量を少しずつ増やして行く。すると白帝の身体が硬直し始め、髭がピンと伸び始めていた。
次第に白帝の目は瞳を映さなくなってしまい、気絶する手前まで来ていた。
『ま、待ってく……これ以上は…があっ!』
「颯樹さん!」
「ふぇ?」
そう言って僕は、ユミナの方を振り返る。すると僕の傍では、白眼を剥いて口から泡を吹きながら、気絶している白帝が転がっていた。
……このまま放っとくのもアレだったので、僕は回復魔法である【キュアヒール】で回復し、白帝を立たせる。その後に白帝は僕に頭を下げると、こう言い始めた。
『盛谷颯樹殿、主に相応しき方とお見受け致しました。どうか私と主従の契約を』
「どうすれば良いの?」
『私に名前を……それが契約の証になります』
白帝に名前を付けるように促された僕は、腕を組んで考え込んでしまう。……えっと、白い虎だから…《白虎》を音読みして、そこから捻るとするなら……。
「こ、はく……琥珀ってどうかな?」
『琥珀?』
僕の付けた名前に聞き返して来た白帝。ユミナからチョークを借りて、地面に軽く漢字を書いて行く。……これで伝われば良いんだけどな。
「これが『琥』で虎。これが『珀』で白。横にあるのは王と言う意味なんだ」
『王の横に立つ白き虎……まさに私に相応しき名前。有難く『琥珀』の名を頂きます』
「……白帝と契約してしまうなんて…」
『少女よ……もう私は《白帝》では無い。《琥珀》と呼んでくれぬか』
顕現した時とは打って変わった優しい声に、多少の驚きを見せながらもユミナは頷いた。……これで契約成立、だね。
『主よ……私が常にコチラ側に存在する許可を』
「え?うーん、僕は全然構わないんだけどね?大きな虎が街中を歩くのは、どうしても……」
『ふむ……』
そう言って琥珀は、大きな姿を変化させた。すると僕の目の前に現れたのは、さっきより威圧感が-100%され、可愛さが+100%された子供の虎であった。
……え!?めちゃくちゃ可愛くない!?何この子虎!さっきより可愛さが増してんだけど!
『この姿なら問題無いかと思いますが!』
「……ほぉ〜よく出来てるなぁ〜」
「キャーーーーッ、可愛イイーーー!」
小さくなった琥珀を見たユミナは、持ち上げていた所をひったくって自分の所に引き寄せて、琥珀に頬擦りをしていた。……まあ可愛いからね、仕方ないか。
その反面で琥珀は、何処か苦しそうで……ユミナの元から逃げ出そうと試みていた。
『ちょ、離さんか!何なんだお主は〜!』
「あっ、私はユミナと言います。颯樹さんのお嫁さんです♪」
『あ、主の奥方ァ!?』
自己紹介を終えたユミナは、とんでもない爆弾を琥珀へと投下した。それを聞いた琥珀は、冷や汗をかきながらたいそう驚いていた。……まだお嫁さん違うから。
その声を聞き付けてやって来たエルゼ達も、先程のユミナ状態になってしまった。……許せ、これくらいは勘弁して欲しい。そして救いを求める様に琥珀が頼み込んで来た。
『あ、主〜何とかしてください!』
「……耐えろ。直に治まる」
『そ、そんなぁーーーーーーー!』
太陽も元気に照り付ける真っ昼間に、琥珀の可愛さにやられた4人と、その4人からの頬擦りを喰らう琥珀、そしてそれを諦めた表情で見つめる僕だった。
……ホントにゴメン、琥珀。
今回はここまでです!如何でしたか?
今回でアニメ《第4章『婚約、そして押し掛け。』》の内容は終了です!内容にしてはオリジナル話を含めると、だいたい……4話分の話をお届けしました!第6章で8000字近く(この小説で言えば2話分に相当)描いたので、当然といえば当然ですね。
次回はアニメ《第5章『スライムキャッスル、そして新機能。』》の話に入ろうと思います!導入部分に関しては、アニメとは違う物にしようと思います!どうなるのかは次回を見てもらう事にしましょうか!
アニメ《第5章》の内容が終了した時点で、幕間劇と言う事で……閑話を何話かしようかな〜と考えてます。どんな内容が来るのかは、作者の無能キャパが導き出すまでのお楽しみです!
第6章〜第8章までは、個人的に最高傑作だと思いましたので、ぜひぜひ感想を聞いてみたいです!その範囲まででも構いませんし、今までのお話を含めても構いませんので、感想お待ちしております!
最後に……お気に入りに登録してくれた方、本当にありがとうございます!この事を一層の励みに変えて、これからも頑張って行きますので、応援よろしくお願いします!
P.S.:この話とは関係ありませんが、投稿日の9月19日はAqoursのメンバーである『桜内梨子』ちゃんの誕生日です!お誕生日おめでとうございます!