もしもACfAの世界が特異点だったら... 作:山猫さん
「そうか...そんな事が」
「えぇ。 最初は偽者かと思ったんだけど貴方に伝えてくれって、彼が言っていたから」
「多分、本当に彼自身だろうな...」
格納庫で1機のネクストがシャッターをぶち抜き、オーバーブーストで脱出を始めようとした頃、それと真反対に位置するオペレーティングルームでは1組の男女が会話をしていた。
「本当に?」
「生前の彼と裏で親交があったのは、俺たちとセレンとその弟子の首輪付き、そしてORCAのリンクス達だ。 それ以外だと...アスピナのマーシュ位だろう」
「それと大艦巨砲主義の社長さん、でしょ?」
「そうだな。 多分彼なら彼奴らにも—」
彼がそう呟いた瞬間、ポケットに入れてあった通信機から音が鳴る。
「どうしたの?」
「いや、案の定ってやつだ...おう、どうした?」
『どうもこうもない。 何が起きている?』
『いやぁ...流石のマーシュさんでもこれは予想できないねぇ』
「という事は、彼奴から連絡があったか」
画面に映ったのは、白毛のやたらフリーダムな天才アーキテクト【アブ=マーシュ】と、GA傘下の温泉企業、有澤重工の社長リンクス【有澤隆文】。
彼が口を開くと、途端に彼らは嘆息をついた。
「ともかく、事実確認を急ぎたい。 マーシュも有澤も特に彼奴から何か聞いたわけじゃないんだろう?」
『そうなんだよねぇ、僕んらのプライベートアドレスから連絡入れて【なんか蘇ったんだが...】の一言だけだし』
『ああ、儂の所もそう変わらん...と、なると奴のいる所まで行かねばなるまい』
マーシュは溜息をつき、有澤の眉間には軽く皺が寄る。
「そうなると多分本拠地、だろうな...」
『『ビックボックスか?』』
「...いや、エーレンベルクの地下にもネクストを5機ほど密閉格納できる基地があったはずだ」
『じゃあ、どっちも行った方が良さげだねぇ』
『だが儂は仕事で動けんぞ』
「...マーシュは?」
『僕も試作ジェネレーターの最終調整があるから無理だねぇ...』
「...仕方ないか。 どこかの依頼ついでに見てこよう。 そうなるとエーレンベルクの方が先になりそうだ」
『そこはお前のセンスに任せよう、レイヴン』
『よろしくねぇ〜』
「ああ、わかっ—」
その瞬間、ラインアーク中を普段は聴くことのない、けたたましいサイレンが鳴り響いた。 彼は即座に只事でないと判断すると、即座に壁のインターホンの接続を入れた。
「こちらレイヴン! 一体何が起きた!」
『...ミスターレイヴン、上層部から貴方に首輪付きの追撃が命じられました。 即座に格納庫へいらして下さい』
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「何だ、ここ...」
見渡す限り草木一本生えない荒野が広がっている。 立香がそう呟くのも無理はない。
「先輩、ここは...?」
「こんなん初めて見るぞ...本当に地球かよ?」
立香に話しかけるのはデミ・サーヴァントとなった後輩【マシュ・キリエライト】と、サーヴァント・セイバーの叛逆の騎士【モードレッド】。 荒野と言っても、明らかに地球では見られないような状況に困惑していた。
『聞こえるかい、立香くん!』
「ダウィンチちゃん! これっていったい...」
『こちらでも状況は確認しているけど、よくわからないんだ! 何かしらの化学物質による汚染の影響かもしれない!』
「...なるほど。 なら鎧は着けていた方が良さそうですね」
「そうだな、父上」
そう言って鎧をつけるのはかつて獅子王と称された、ロンの槍を持つ騎士王【アルトリア=ランサー】。 それに倣うようにモードレッドも鎧を着けた。
「しかしこんな状況じゃ情報も集められないな...」
そう、彼らの周囲は一面の荒野。 だが弓を持った一人の青年が彼方に見える建造物を見つけた。
「なあ、マスター...」
「どうしたんだ、アーラシュさん?」
「結構向こうなんだが、何か建造物が見えるぜ」
中東の英雄たるサーヴァント・アーチャーの【アーラシュ】の言葉に、彼らの間にどよめきが走った。
「本当かよ!?」
「ああ。かなり遠いんだが、塔みたいなのが2つ3つ見えるぜ」
「そこなら、何か手がかりが掴めるかもしれませんね!」
マシュの言う通り、そこには行ってみる価値があるだろう。 立香はそう判断すると、サーヴァント達に指示を出し始める。
「とにかく今は情報が欲しいし、行ってみるしかない。みんな、周辺警戒を怠らない様に! それとダヴィンチちゃん、汚染が薄い所をナビゲート出来る?」
「う~んと、ここをこうして...OKだよ、マスターく...!?」
通信ウィンドウに映っている女性、【レオナルド・ダ・ヴィンチ】が立香の問いにそう答えた瞬間、彼女の表情が即座に変わった。
「気をつけて! アーラシュの言う塔みたいなのの方から何かが向かってきている! それもとてつもない速度だ!」
彼らの接触はすぐそこまで来ていた。
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「......」
その機体は凄まじい速度で空を駆けていく。 背中に搭載された大型スラスターからは、とめどなく圧縮された【疑似コジマ粒子】が吐き出され、ただでさえマッハを軽く越える速度が更に速められる。
「...あれか」
その機体の複眼カメラアイは、まるで前方を注視する様に細められる。 それは端から見れば人間味を覚えるだろう。 彼の目と連動して動くそれには、この時代ではお目にかかれない奇異な者達が映っている。
「...胡散臭いアレの言う通りなのは幾分か癪に触るな」
彼はそう呟くと、機体に減速をかけてその者達の前へと着地させた。 すると中心の少年を守るかの様に、大きな盾を持った少女が、特異な槍を持った騎馬騎士が、赤い剣を持った騎士が、弓に矢をつがえた青年がその前に立ち塞がり、彼に警戒心を剥き出しにする。 そんな行動に彼は別段臆する事なく口を開いた。
「君達が星見台の者達かね?」
これが彼らの始まりだ。
テルミドールとかホワイトグリントとかのマテリアル
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いる
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いらない