もしもACfAの世界が特異点だったら... 作:山猫さん
「凄いですね...」
「ああ、まるで秘密基地だ」
テルミドールに先導され立香達が踏み入れたのは、先程アーラシュが言っていた『塔の様な建造物』の地下。
そこには巨大な格納庫と様々な弾薬や工廠、そしてこの場所全体を守るための管制防衛施設が複合した軍事基地。
「ここが我々ORCA旅団のもう1つの基地、『エーレンベルク地下基地』だ」
「ん? もう1つという事は、まだあるのか?」
「旧GA社本社、『ビッグボックス』だ。 今はどうなっているか分からんがな」
テルミドールはそう言うと、人数分の飲み物を持ってくる。
「飲むと良い。 地下水脈から汲み上げて浄水してあるから、汚染については問題ない」
「あ、ありがとうございます」
「ふぅ...温かいですね」
テルミドールが持ってきたのはホットココアだった。
ひと息つく事が出来た立香は、改めてテルミドールに問題を切り出す。
「テルミドールさん、ここってどういう世界なんですか?」
「ふむ...簡潔に言えば、『国が解体された』世界だな」
「えっ?」
「国が国の役割を果たせなくなった結果、企業が国を解体した。 ここはそういう世界だ」
『ちょ、ちょっと待ってくれ! 【国が解体された】だって⁉︎』
「ほぅ、珍しい幽霊がいたものだ」
『幽霊⁉︎』
「あ、すいません。 これ、カルデアからの通信です」
通信ウィンドウに映るダウィンチが、テルミドールの言葉に白目を剥く。
だが立香もそう変わらない。
「...この世界はどういう過程があって、この様な道を辿ったんですか?」
「まあ話せば長くなるが...」
そうテルミドールは話を始めた。
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始まりは、君達が来た時間からもう少し未来の事だ。
人口爆発による、食糧およびエネルギー資源の慢性的な不足などによって統治能力の低下した国家に対し、新しい秩序の構築を目指す巨大企業グループによって引き起こされた、企業対国家の全面戦争が発生した。
これが【国家解体戦争】だ。
企業側の一方的な奇襲によって始まった、人類史上に類を見ない大規模クーデターは、短期間の内に企業側の圧倒的な勝利によって決着した。
これにより、国家はその統治能力を完全に失い、以後の世界は企業による統治、すなわち
そしてこの世界における環境汚染の原因が、その数年後に起きた【リンクス戦争】とコジマ兵器システムだ。
コジマ兵器システムとは、今から数十年前にコジマ博士によって発見された特殊な粒子、【コジマ粒子】から作り出された最悪の兵器群の事だ。
コジマ粒子は他に類を見ない程の強力な安置・還流能力を持つ。
そのため、これらが利用された兵器は既存の兵器とは一線を画す性能を持つようになった。
各企業はそれを様々な特色溢れるロマン兵器にも利用したため、【変態の素】と呼ばれることもあったが...まあ、それはいいだろう。
これだけ言えば夢の様な物質だが、コジマ粒子は非常に強い毒性を持っており、前述した強力な安置能力によって長期間土壌や大気に残留する。
つまり長期間の環境汚染を引き起こす訳だ。
そして【リンクス戦争】...まあこれは【GAアメリカ社】と【GAヨーロッパ社】の対立から発生した、2つに分かれた企業群の【オーメル社側】と【アクアビット社側】による大戦争、と覚えてくれれば良い。
国家解体戦争より長引いたこの戦争は、各企業の弱体化とコジマ兵器における最強の個人戦力【アーマードコア・ネクスト】のパイロット達【リンクス】の危険視を招いた。
最終的には【オーメル社】が傭兵として活動していたリンクス2名を雇って、【アクアビット社】と【レイレナード社】を強襲して壊滅させた事により、【リンクス戦争】は終結した。
長期化した戦争により汚染された地上、という結果を残して。
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「...とまあ、こんな感じだ」
「......」
テルミドールの話に、立香達は絶句するしかなかった。
明らかに今までの辿って来た特異点とは一線を画す程の衝撃。
自分たちの未来が辿る行く末の一本が、この様な結末を辿るとは思っていなかった。
『ちょっと待って、じゃあ地上はほとんど...そのコジマ粒子、だっけ?に汚染されたって言うのかい?』
「大まかに言って4分の3以上だろうな。 地上に人はほとんど住んではいないし、更に言うと汚染は未だに拡がりつつある」
「え...?」
「では、その事について今の時代を交えて話そうか」
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【リンクス戦争】後に企業は自ら汚染した地上を見限り、高度8,000m付近に正常な生活空間を見い出した。
それが現在、一般人が生活をしている航空プラットフォーム【クレイドル】だ。
【クレイドル】は地上のコジマ発電施設【アルテリア】から送られた莫大な電力によって、コジマ汚染のない清潔な空を飛んでいる。
だが、これがどう言うことか分かるか?
コジマ汚染の影響から逃げるために、コジマ粒子を利用すると言う矛盾が生まれている。
つまりは根本的な解決にはなっておらず、いずれコジマ汚染は空高くまで到達し、人類は死に至る。
なら宇宙に逃げれば良い?
そうもいかない理由が、企業達にはあった。
それが企業達の罪であり、全ての元凶となった【アサルト・セル】だ。
かつて宇宙開発競争を繰り広げていた企業達は、相手の開発を妨害するために、地上から宇宙へ上がる物体を攻撃する衛生兵器を軌道上に打ち上げた。
その総称が【アサルト・セル】。
その結果、軌道上は【アサルト・セル】で埋め尽くされ、人類は自ら宇宙進出への道を閉ざしてしまった。
分かるか?
企業達は【国家解体戦争】と【リンクス戦争】を行うことで、無辜の民達へその事実を隠蔽した。
それを白日の下へと晒し、その罪を精算させようとした企業があった。
それがかつて私が所属していた企業、【レイレナード社】だ。
【レイレナード社】の思惑は【リンクス戦争】によって潰えたが、その意思は消えることはなかった。
それが我々、最大最悪の反動勢力【ORCA旅団】というわけだ。
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沈黙が場を支配する。
再びテルミドールが話した事は、彼らの気力を削ぐには十分過ぎた。
『じゃ、じゃあ企業は自らの罪を隠蔽するために、国家解体戦争を起こしたって言うのかい⁉︎』
「そう考えれば辻褄があう。 第一にレイレナードが設立された理由は【アサルト・セルの全破壊】だったからな』
『っ...それと君はテロリスト...だったのかい?』
「ふむ...どちらかと言えば【革命家】だろうな。 でないと座に導かれる理由がつかない」
『なるほど...あくまでも君はその名の通り、
「そういうことだ」
そう言うとテルミドールは自分のカップに口を付け、顔をしかめる。
「やはり銀翁やメルツェルの様にはいかんな...」
カップを机に戻し、右手を見る。
「...私は1人迎えてくる。 君達はこのままくつろいで貰って構わない」
テルミドールはそのまま席を立つと、外へと歩いて行った。
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「っ...!」
『チッ...!』
始まりから既に長い時間が経つ中、ストレイドとホワイト・グリントは未だに雌雄をつけられずにいた。
ストレイドが奥の手として持っている射突ブレードは、ホワイト・グリントの二段クイックブースト回避の前には役に立たなかった。
当てられたのは不意をつけた最初の一回のみ、しかしそれもレイヴンの見せた超反応の前に小さなダメージしか与えられなかった。
既にミサイルの残弾は無く、残るのは互いの右手に握られたアサルトライフル1マガジン分。
しかし
互いにダメージを与える手段を持たないまま、状況は千日手へと突入する。
ホワイト・グリントが右手を動かすと同時に、クイックブーストで右へとズレようとする。
が、そこへ何処からともなくホワイト・グリントとストレイドにミサイルが叩きつけられた。
「何っ...」
『ぐぅっ...』
そしてそこへ黒い機体が飛び込んできた。
『そこまでだ、アナトリアの傭兵に首輪付き。 これ以上エーレンベルクの近くでドンパチするのは止して貰おう』
テルミドールとかホワイトグリントとかのマテリアル
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いる
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いらない