エンジュシティのハイカラ=さん   作:弟子初号

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HGSSが10周年らしいので、新作に期待を込めつつ、ポケモン小説を投稿します。

唯一解決してない疑問は、「スーパーマサラ人」は果たしてマサラだけのモノなのか否か…。

また設定としては、

無印小説のようにトウキョー(東京)もあり、「君に決めた。みんなの物語」世界と同じように他地方のポケモンも認知されている。映画の町もある系世界観です。
バトルルールはポケスペ(29巻)準拠=公式戦では技4つ です。



VS イーブイ①

 目が覚めたら、知らない天井だった。という不思議体験はこれで2回目だ。

 

 初めての体験は引っ越しを行った翌朝。家具は一切無くて、使いなれてない布団で起きた日のことであった。

「アニメみたいなことが本当に有るんだ!」そんな風に当時は感動したけれど、2度目となる今回は違った。困惑だ。

 

 ──なんでここにいる? 

 

 少し恐怖もあった。昨日のことを直ぐには思い出せないけれど、旅行も引っ越しも漫画喫茶で夜を明かした記憶はなかった。

 前回は、原因がハッキリと理解していた。旅行の宿や実家に里帰りした時でも同じように困惑することもあるけれど、それとは話が違う。

 だからこそ、理由が解らない。「何故?」と自問していたら、身体が何時もより重たいのを自覚した。布団の中に違和感を感じたのだ。

 ちょうどお腹の上辺りで膨らんでいる()()は、もぞもぞと動きだし、顔を出した。

 布団に耳が引っ掛かってしまったらしく、尻尾を器用に使いながら布団を持ち上げていた。

 それと目があった。つぶらな瞳から目を離せなさった。

 重たかった原因が、「ブイッ!」と元気な声をあげた。

 

「おはよう、()()()()

 

 反射的にそう返答した。

 ワシャワシャと撫でるように小さな手を伸ばせば、フサフサな毛と触れ合った。

 その感触が堪らなくなり、何度も繰り返していると、イーブイは気持ち良さそうに眼を閉じていた。

 

 ──あぁ、最高

 

 思わずにやけてしまった。

 しんかポケモンのイーブイは知名度とその人気に反し、野生では非常に珍しい個体だ。乱獲とかではなく、そういう設定だった。

 そう、設定だったのだ。ゲームの中の一キャラクターでしかない筈だ。

 

 ──これは夢だ

 

 最高の。という冠付きではあるが、これ以上に良い夢は存在しない。あって良い筈がない。こんな天国はある訳がない。

 なんと言っても、ポケモンと触れあえる夢なんだから。神に祈ろうとも叶わない夢が、夢で実現していたのだから。

 

「ブィ~?」

 

 撫でるのをやめたからか、ペタペタと身体の上を歩いて心配そうに覗き込むイーブイの姿に視界の大半を奪われた。

 ──もっと堪能しよう

 これがダークライのナイトメアであっても構わない。なおのこと今を満喫しよう。そう結論付けたのもポケモン好きにとっては必然だった。

 

「なんでもないよぉ~」

 

 普段以上に明るく高い声で唄いながら、イーブイをそっと抱き上げる。

「……いよっと!」

 思わず声が出てしまうくらいには、凄く重たかった。しかも大きい。

 

 ──これが、『()()』ということか

 

 間違いなくイーブイは生きていた。抱きしめたことで身体でもイーブイを感じることができた。一層、体温を感じた。ぬいぐるみではない、一つの生命体が腕の中にいた。

 そこには犬や猫とは違う感触がはあった。同じようにフサフサしていて、モフモフしているのに違うのだ。

 

 ──これが、ポケモンである。ということなのかな? 

 

 初めて尽くしで混乱しつつも、しばらく堪能していると全身がポカポカしてきた。

 ノーマルタイプであっても、イーブイの平熱はかなり高いらしい。また発見だ。その理由は、ブースターに進化するから。だろうか? 等と学者気取りで考察もしてみる。

 思案し続けているとイーブイはもぞもぞと暴れだした。ここから出たいらしい。

 力を緩めて腕から脱け出したイーブイは、ちょとだけ湿っていた。

 

「あはは……ちょっと濡れちゃったね」

 

 そう言ってる間にも、イーブイのいた感触はずっと残っていた。布団の中でワチャワチャと遊んでいたら、余計に汗をかくのは無理も無かった。触れていたという記憶が離れることがないけれど、離れたくなかった。

 もっと触っていたい。という思いはあるけれど、これまでに堪能した分だけでも胸いっぱいになっていたし、タオルを探しにいかなければならない。

 そう思って立ち上がると、ぐらりと視界がぶれた。

 立ち眩みだ。

 

 ──あれ? 

 

 不思議に思うだけで、身体が受け身を取ることはなかった。

 

「ブイ!?」

 

 心配そうに駆け寄ってくるイーブイに、「大丈夫だよ」と、声をかけるが、顔で頬を撫でてきた。

 思わず笑みを浮かべながら、撫でようとするも、手は空を切るだけであった。

 直ぐに離れて狼狽していたからだ。

 

 ──あれ? 

 

 これで何回目の疑問だろう。30分も経ってないような短い時間の出来事なのに、記憶が曖昧だった。

 まるで熱に魘されたように、思考が上手くいかなかった。思うように身体が動かせなかった。

 

 ──……待って。まだ()()()()()()

 

 まだ夢から覚めて欲しくは無かった。けれど、何かが可笑しい。

 余りにもリアル過ぎた。

 どういうことだろうと思いながら、顔に手を当てる。ベタであるけれど頬を抓ってみようと触れると、

 

「……あつい」

 

 熱だ。痛み以前に体温を感じたのだ。腕の感覚もあった。

 あぁ、どうして気づけなかったのだろうか。直ぐに気づけた筈だが、夢だと思い込んでいたのだろう。

 これは()()()()()! 

 

「夢だけど、ゆめじゃないんだ!」

 

 テレビで頻繁に見ていた台詞と似たことを叫んだつもりでいたが、最後まで言い切ることなく、私は意識を手放した。

 

 私を見つけた母は、寝坊したのにも関わらず満面の笑みを浮かべて顔を真っ赤にしているので、酷く困惑したという。

 

 しかし、今の私はまたイーブイと遊べるという事実だけで、幸せ一杯であったのだ。

 

 

 

 * * *

 

 

 

 それから三日三晩、()は熱で魘された。残念なことに、悪夢(ダークライ)はみなかった。

 本当に残念だ。

 その間に解ったことは、やはりここがポケモンのいる世界である。ということだ。とはいえ、布団に潜っていたので余り実感が湧いていなかった。ふとした瞬間に、やはり夢なのではないかと考えてしまうのだ。

 見たポケモンはイーブイくらいだからだろうか。後は、窓際までやって来たホーホーやポッポといった鳥系ポケモンたち。彼らは飛んできたのに、病人の私から話しかけることは出来なかった。

 他のポケモンはテレビの中でしか見たこと無い。

 それから、この身体は以前とは違うということは直ぐにわかった。転生していたのだから当然。ではあるけれど、直ぐに理解は追い付かなかった。

 色々と残念ながらこともある。けれど転生させてくれた神様には大感謝であった。どの神様かは不明だ。アルセウス様かもしれない。真偽が解るまでは、存在する多くの神に感謝することにした。

 

 そんな拝んでいた私を眺めて、ヒソヒソと話す女性が二人いた。

 

「せっかく熱が冷めたのに浮かない顔だわ」

「変な行動もしていらっしゃいますし……」

「まだ体調が悪いんじゃないかい?」

 

 最初の不安そうに話していたのが、滅茶苦茶怒ってきたこの世界での"おかあさま"。かなり恐かった。

 私の体調を気遣うのかと思えば変な物を観る目で私を見ているのは、待女である。最後に心配をしてくれたのも待女であった。

 そう、我が家にはメイドがいるのだ。当然執事も。なんと私は、エンジュシティの名家の娘であったらしい。

 そりゃイーブイもいる訳だ。と納得したけれど、不満がある。

 

「……イーブイと遊びたい」

 

 私利私欲に塗れた、身近であり切実な願いだ。

 私は、あれからイーブイと会ってすらいないのだ。ポケモン欠乏症である。どんな依存症よりも強いだろう。

 

「ダメに決まってます!!」

 

 即座に否定された。 

 

「それはもう少し、()()()が元気になってからですね」

 

 同調しやがったぞ、あの二人。なんてメイドだ。と悪態をついたところで何も変わらない所か、余計に起こられそうなので、黙っておく。

 

「むぅー。ケチッ!」

 

 けれど、五歳にも満たないロリボディ。一度沸き上がった不満を我慢できるほどの忍耐力など存在しない。沸点はマルマインなのだ(でんきタイプだけど)

 

「ケチではありません。イーブイちゃんに風邪を移ししては駄目でしょう?」

「……はぁーい。ママ」

 

 正論には子供でも叶わなかった。

 しかし、納得が出来ないのは大人だろうと変わらない。だから交渉をするのだ。

 

「なら! ちょっとだけでもイーブイと会いたい!」

 

 交渉に切れるカードは、「あまえる」しか無いのだ。アンコールをせずとも、それしか今の私の選択肢はない単調な、交渉とは言い難い可愛いおねだりであった。

 結果としては勝った。「ちょっとだけね」とため息交じりの許可が降りたのだ。

 当然満面の笑みで「ありがとう!」とお礼を言った。当然、心からの本心である。

 

「イーブイ!!」

 

 イーブイのいる部屋に入った直後、駆け寄ろうとするが、直ぐにとめられた。

 

「走ってはいけません!」

「……ごめんなさい」

 

 ──これでは本当に、五歳児ではないか! 

 

 流石に軽率だった。いくらなんでも子供っぽすぎる。はしゃぎすぎた。と反省していたら、向こうから駆け寄っていた。

 元気な子(イーブイ)が走ってくる分には、お咎め無しだった。

 

「ブイッ!」

「久しぶり! 中々会えなくてごめんね……」

「ブイブ」

 

 ちょこんと膝をつけば、イーブイとの背丈はほとんど変わらない。

 撫でているだけでも活力が復活した。

 

 ──あぁ。この感触。たまらない。

 

 またイーブイと触れ合えた。という現実だけでも大満足である。

 しかし、私は大人なのだ。だからこそ、身体に引っ張られることなく、どこかの名探偵気分で冷静に対応せねばならない。

 その意気込みで冷静に観察していると一つ思い出したことがあった。

 

──知らない声だ。

 

 当然だ。声が同じ人間がいないように、ポケモンだって違っている。シゲル(こおろぎさとみ)のともハルカの(林原めぐみ)とも違う。勿論、セレナの(こおろぎさとみ)とも違うし、スイレンのナギサ(美波わかな)でもゲームでも(悠木碧)ないのだから。

 

 「あの、そろそろ」

 

 もう終わりなの!?まるで、囚人の面会ではないか。と絶望した。

 しかし、私は大人なのだ。撫でるのを辞めて立ち上がり、数歩離れる。

 

「…………元気になったらまた遊ぼうね」  

 

 訂正、未練しかなかった。

 

「ブイ!」

「ブイちゃんの方が大人ですね」

 

 言われてしまった。待女の独り言に反論は出来なかった。

 認めるしかない。私は只の"美少女"で、イーブイの虜なのだと。

 

 




もふもふ(イーブイ)には勝てなかったよ by幼女オリシュ

次回も「もふもふ」させます。

■イーブイ(色々、特に、レッツゴーイーブイ)
イーブイの関連グッズやイベントはこれまでも多く存在していた。しかし遂に『ポケットモンスターピカチュウ』のリメイクではピカチュウと同じく主役になり、新作剣盾ではcvまでついたポケモン。専用Z技もあるレベルで優遇されまくっている。解せぬ

……なお本作でも、相棒です()
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