エンジュシティのハイカラ=さん 作:弟子初号
(「レッツゴー」タグを追加しました。ジョウト地方だけど、イーブイがパートナーならこれ、ですよね。また、主人公に知識はないです)
それは、私にとっての一大事であった。
最近、イーブイの様子が少し変わっていたのだ。
私の体調はすっかり良くなり、イーブイとは一日中遊び尽くせる程に元気は有り余っている。けれどイーブイの体調が悪くなってしまった。かもしれない。
というのも、外で遊ぶと何故か元気をなくすからだ。しかし室内ではケロリと元気にしているので、病気ではないだろう。単純に外嫌いなポケモンなのかもしれない。
レアポケモンだ。
勿論夜行性のポケモンもいるけれど、外で暮らしていることには間違いない。ポケモンなのに外嫌いというのは、由々しい問題である。
ポケモンが外嫌いになったのであれば、その責任は多くの場合トレーナーにあるので、間違いなく私のせいだ。
勿論、まだ子供なのでお母さん預りではあるけれど、御世話しているのは間違いなく私だ。監督不行きの責任からは逃れなれない。
──何があった! 昔の私!!?
早急に解決せねば。具体的には母親たち大人にばれて、怒られる前に。
対応をうんうんと考えている私とは引き換えに、問題のイーブイは呑気に日向ぼっこをしている。なんて奴だ。
しかし、タランと垂れている耳も、丸くなっている尻尾も画になっていた。
全くもって罪な子である。怒るに怒れない。
私には今から出かけねばならない用事がある。本来はイーブイも連れていかなければいけないのに、出たがらない。
これでは親元を離れたくない幼稚園の園児以下の行動である。単なるニートポケモンだ。
仕方無いのでイーブイを置いて出かけようとすると、観念したように私の後を追い掛けてくる。
耳が少し垂れているので、申し訳なくなるが心を鬼にするしかない。
──どうせ嫌がっても、お母さんが無理やり連れていくんだし
*
私の家はスズの塔が正面に見れる場所にある。エンジュジムとは反対側だ。
敷地から出てすぐの通りは、中心街からは離れているので人通りは少ない。
人目もくれず石畳の道路を下駄をパカッ、パカッと鳴らしながら歩くとちょっと楽しい。
靴とは違い早く走れないし、歩くのも大変だけど、エンジュシティの町並みを観るには子供の歩幅であっても早いくらいだった。とはいえ、長時間歩くのは辛い。もし目的地までの距離が離れていたら、草履で歩くのは拒否していた。許してはくれないだろうけど。
「見てっ、イーブイ!」
「わぁー。あの娘の着物、可愛いわねぇー」
「ヒノォ―」
人通りが多くなってくると、私とイーブイには注目が集まる。珍しいイーブイを連れた、これまたエンジュでも珍しい和服を着たの女の子がいれば観光客やトレーナーたちの目を集めるのは必要であった。
正直慣れないし、あまり好きではない。褒めてくれるのは嬉しいけれど、とても気恥ずかしかった。
「ブイィ~」
対照的にイーブイの尻尾は揺れていた。チヤホヤされるのは好きらしい。
「お、抑えて……ね?」
「ブィ」
小声で注意する。軽く会釈をしてこそ一人前なのかもしれないが、そんな度胸は無いし目指してもいない。イーブイのように露骨に反応するのも駄目なので、難しい。
どうしてもすれ違うので、ここを駆け足で通り過ぎたい。けれど歩き辛い恰好なので不可能だ。
代わりに俯いて歩けば母から怒られる。それ以上にすれ違う人の注目を集めてしまうのであった。背筋を伸ばし、おしとやかに歩く方が、街に溶け込む。というのは、私になってから初めてこれから会う先生から教わったことである。
「私は、街の一部」そう思いながら歩けば目的地は直ぐにたどり着く。お出かけの目的は、お散歩でも観光用でもなくて、お稽古だ。
街並みに合うようにデザインされているフレンドリーショップの向かい側にある
私の家とは比べ物にならない敷地があり、複数の家屋が建っていた。
私たちが入るのは、観光客の入る正面の立派な門ではなくて裏口。それでも立派な裏門をくぐれば、玄関までの道を飛び石やコケ。木々で装飾された日本庭園が出迎える。
その道を着崩れさせずに歩くのはキツイので、折角の風景も楽しむ余裕は無かった。
引き戸を開けて、履物を揃えて膝をつき、母と共に一声。
「「失礼いたします」」
「ブィー」
隣では、イーブイも私たちの真似をしていた。一段低いので見えないけど。
「それじゃあ、足をあげてね」
「ブイ!」
イーブイがそのまま廊下を歩いては汚れてしまうので、母が持ってきているウェットティッシュで足を丁寧に吹く。着替えや練習道具をもっていかなければならないので、母は洋服だから荷物が多くても問題ないから預けていたのだ。
和服用の鞄が大人サイズでも小さいのがいけないのだ。
「気持ちいい?」
「イッブイ!」
わしゃわしゃとタオルで肉球を吹けば、気持ちよさそうにしていた。
ちょっと面倒な作業は、モンスターボールに入れて行けばわざわざ他所様の玄関先で足を拭く必要もない。しかしボールに入れないのがエンジュマナーであり、ここへ来るときの作法であった。
そうではなくとも、ジョウト地方全域でポケモンをモンスターボールから出すことを推奨していた。リメイク版のHGSSを思い出す習慣だった。
特にこのエンジュでは、手持ちポケモンをボールから出していることが多い。それが、ボールが誕生する前からの「伝統」であるからだった。お京都様が伝統にうるさいのは当然のことかもしれないが、守られていくべき伝統である。そもそもモンスターボールというのは、半世紀程度の浅い歴史なので無い歴史の方が長いし、当たり前だったけど。
──楽しかったなぁ
開発的な都合もあるからから、連れ歩き機能は復活しにくいが、他のふれあい要素はあった。けれどポケモンと触れあえるので最高の習慣であった。
それも全て、今となっては遠い思い出だ。それ所か、この世界がゲームの創作であったことさえ忘れてしまう。
──だって一日中御世話なんてしないもの。
ゲームである以上、簡略化される。糞の掃除。という行為があるゲームであっても、ボタン一つで終了だ。
それと比べて二度吹きしなければ不衛生な、イーブイへの足の掃除は、前世で犬の散歩後には必ずやるべき行為である。それを面倒と称するのも間違っている。
──面倒だけどね。
それでも、省きたい要素に変わり無い。ボールに入れることで横着したかった。二つを天秤になければ、連れ歩くとしても……。
「ようこそ、おこしやす」
部屋から出てきたのはまいこはん一家の長女、タマオ。普段は彼女の一族が中心となった舞台でお客さんに舞踊を披露しているけれど、私の舞台の先生もある。舞踊教室を地元の子どもたち向けに開講していた。
他にも華道や茶道、お琴教室も広い敷地の中で開いているので兼業だ。
その中でも、エンジュ舞踊を撫子の嗜みとしてやらされていた。
「本日もよろしくお願いします」
「ふふっ、よう出来たなぁ」
再び頭を下げた。そのまま稽古場へ向かう。
私に練習着というものは無かった。私の練習は、終始着物だからだ。
立ち姿の確認のために短パン半袖の体操着姿で行うのが主流であるのに、練習でも着ている。
しかし本番は、誰もが着物だ。日頃から意識して着付けした状態で美しく舞える方が良いので、練習から着物で行うのは理に叶っている。
本気でやらされている証拠であった。
しかし、ほとんどの子どもは運動着だ。今時の家庭はエンジュであっても、そう何着も着物を持っていないのだ。保護者は着ているけど。
しかし子どもでは、私以外に着ているのは一人しかいない。
私と目が合うと、手を振ってきた女の子。一族末っ子のサクラだ。私より1つの彼女も着物だ。
サクラにとっては従妹である先生が私たちの正面に座ったので、振り返すことはせず笑顔で微笑むだけだった。
「よろしゅう、おたのもうします」
「「「お願いします」」」
* * *
練習は一時間程で終わった。週に二回あるこの時間は、かなり憂鬱だ。
何故なら、舞踊のお稽古が終わっても稽古は終わりではないからだ。ポケモンバトルの稽古が残っている。しかも、一対一だった。彼女たちは一家に伝わる伝統の舞踊を伝えるだけでなく、エンジュ優秀のトレーナーでもあった。
ポケモンバトルはバトル道。華道や剣道のように、心身を鍛え技術を磨く立派な習い事の一つであった。
知識はあるので、別にやらなくても知ってる。とは思うのだけど、このお稽古では、一つだけ魅力がある。バトルの稽古時は動きにくい着物(しかも汗をかいて更に重たい)を着て無くても良いだ。ラフな洋服である。けれど最近、和服ばかり着ているので洋服に違和感を感じてしまう。それに、スカートを履かなくても良い。というのは魅力だった。
和服でいればスカートを履かなくても済む。服の柄はともかくとして、妥協案としては最高なのだ。
しかし今はスカートだ。
──転生後も合算すれば普通にオッサンなオレが、"ミニスカートちゃん"になんなるて……
軽く絶望だった。今の姿は、ゲームやアニメでもみたモブキャラの「ミニスカート」の女の子そのものであった。普段は短パンなのに……(当然、女の子用だけど)
恥ずかしい。という次元の問題じゃない。
──ポケモンと入れるのだから受けれ入れるべきなんだろうけどねぇー……
折角ポケモンのいる世界に転生出来たのだから、違和感があっても、女の子として暮らすべきだろう。しかし、女の子になってまだ一ヶ月も経っていないこの身ではそこまでの度胸も耐性も無いのだ。
「あんさん、聞いてはります?」
「はっ、はい! 先生」
嘘である。話半分にしか聞いてない。
「そうどうか。……では、ポケモンバトルの公式ルールについて話してくれますね?」
「はいっ!」
去勢から来た覇気ある返事ではない。覚えていた。
記憶にあったルールと相違無いかも確認済みである。
「最初に、持っているポケモン6匹。これを対戦相手に見せます。これが多くの大会で採用されています。その6匹の中からシングルなら3匹で、ダブルバトルは4匹を選びます!
それからポケモンリーグみたいな、相手に見せない6vs6のフルバトル!」
文句は無いでしょう。と思い相手を見る。しかし、無言のままだった。
自信が無くなってきてしまい小声で「……ですよね?」と確認した。
「他には?」
舞台では見せない、稽古中の厳し時と同じ鋭い目のまま、私を「にらみつけ」ているように感じた。
しかも、さっきから京ことばで会話をしていない。普段は標準語で話す彼女だが仕事中は、
「トレーナーは試合中、両端にあるトレーナーズサークル内から出てはいけない。使える技は、事前に申請した4つまで」
「まだ、あるよね?」
「えっ!? まだ、ですか……?」
積みかもしれない。前世からの記憶にはこれ以上なかった。
その様子を見かねたように助言をくれた。
「対戦相手とすることですよ」
目と目が合ったら、ではない。それは公式試合ではない野良での話。
けれど覚えていた。二度目の記憶の中に存在していた。
──お辞儀と和解の印!
……じゃなかった。それは
「挨拶と握手、ですよね?」
古事記系だ。
その答えを聞いてか、般若は消えた。
「……ようできました。ほな、実戦といきまひょか?」
「実戦?」
「ポケモンバトルどす。イーブイはんも待ちくたびたのではありゃせんか?」
「ほんまや」
イーブイのいる後ろを見ればぐっすりと寝ていた。吞気に惰眠を貪っているのにも関わらず、可愛かった。
けれどは「したない」のは問題だ。慌てて駆け寄る。
「起きな。イーブイ。バトルするよ」
体を揺さぶって漸く、眠り姫は起きた。
「ブ、ブイ!」
「お人形さんのように眠ってはりましたのに。イーブイはん、元気やね」
結構ストレートな嫌味であった。「言われてるぞ、イーブイ」と内心で思っていても、当の本人には一切届いていない。図太い神経も強みだ。
ここは彼女の生まれ故郷。別けて頂いた卵から孵ったので、イーブイにとっては実家である。それ故の安心感、なのだろうか?
周囲の視線を気にもとめないポケモンは、軽快な足取りでバトルフィールドへと入場した。
「……やりましょか?」
「……はい」
呆気にとられていた私たちも指定のポジションへ向かう。
初めて見るバトルフィールドはとても広かった。しかしジム戦やテレビ中継で見るバトルフィールドと比べると、半分のミニチュア版であった。けれどこれも正規サイズである。トレーナーズスクールや、低ランクのバトル大会等、アマチュア向けの規格であった。
──ここから試合全てを俯瞰して、ポケモンに指示を出すんだ
それで勝敗が決まるのがポケモンバトル。その重みを私は初めて実感した。
まいこはん一家のイメージはNARUTOの一族です。本家のゲームHGSS版がホウホウを呼び戻そうと舞い続けて、分家のアニメ(金銀)版は舞台で踊ったり。
試合後に握手してる回も複数あったのでバトルルールに採用。スポーツマンシップ、大事
次回でようやくバトルします。
■タマオ(金銀・HGSS)
意味深な行動をするまいこはんの一人。その正体は、ホウオウの守り人
姉妹は全員イーブイの進化系使い(当然ニンフィア等はいない)
■サクラ(アニメ金銀編・他)
ハナダ美人3……4姉妹ではなく、イーブイ4……5姉妹の末っ子。
姉妹はアニメ版まいこはん。(黒髪は全員かつら)
本編では末っ子同士の似た境遇からカスミと仲良くなる。手持ちのイーブイは途中でエーフィへ進化。
複数回登場する準レギュラー級の扱い。