超絶コントロール姫と天才やる気なし男   作:亀さん

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3月第3週

「私がピッチャーで、克にぃがキャッチャー。コウシエンにいっしょにいくの、やくそくだよ?」

日が暮れ始め、だんだんボールが見えづらくなってきたのもあり、親に怒られる前に帰ろうとキャッチボールの相手をしていた幼馴染の少女を連れて家に帰る途中、少女が真夏の太陽を思わせるような笑顔で少年(オレ)にそう言ったのだ。

 

たぶんそれが、めんどくさがりな俺が野球を続けてきた理由だと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

『次のニュースです。恋々高校の野球部員を中心とした署名活動により今年から女子高生の出場が認められました』

今朝昔の夢を見たせいでいつもの起床時間前に起きることになり、春とはいえまだ肌寒い独特の空気に目が覚めたこともあって、二度寝をする気にもならず少年がのんびりと朝食をとっていた時だった。

何気なしにつけていたテレビの液晶画面に映し出された有名な女子ニュースキャスター(クラスメートが美人だのと騒いでいた)が伝えるニュースを聞きながらふと少年は隣の家に住む野球バカともあだ名されたこともある一つ下の幼馴染の少女の顔を思い浮かべていた。

 

「そういえばあいつはうちの高校に来ることになったんだっけ?」

 

小、中と野球漬けの日々を送っていたためにお世辞にも勉強ができるとは言えない少女はもう一人の面倒見の良い幼馴染にほんとに泣きながら泣きついて勉強を教えてもらうことでこのあたりでも中の下程の学力水準であるパワフル高校に合格が決まり、十五年連続の後輩となることが決定したばかりだ。

それと同時についこの間、高校生になるのだから新しい練習メニューを考えてと少女にせがまれていたことを思い出した少年はめんどくさいなぁ、と一人文句を呟きながらも朝食を口に運びつつ、頭の中で少女用のメニューを組み立てていく。

 

「おっと、そろそろ時間か」

 

そんなことをしているうちに結構な時間が経っていたのか、時計に目をやってそろそろ家を出る時間が迫っていることに気が付いた少年は食べ終わった食器を片付け、洗顔などを済ませユニフォームに着替えると野球道具と教科書などを入れたカバンを持って家を出た。

 

「あ、おはよ克兄ぃ」

「・・・・・・いつもこんな朝早くから走るなんて感心するわ」

まだ親は寝ているためにいつも通りドアのカギを閉め、少年は学校までのアップダウンのあるサイクリングに嫌気がさしつつ自転車の荷台に荷物をくくりつけていると、まさに先ほど思い浮かべていた幼馴染が日課のランニングから帰ってきた。

 

「私はピッチャーだからね。走って足腰を鍛えなきゃいけないの。克兄ぃは今から朝練?」

「めんどくせえけどな。普通の高校生ならまだベットの中で寝てられる時間だぜ」

「もう、そんなこと言ってるとナマケモノになっちゃうよ。四月からは私の先輩になるんだからもうちょっとしっかりしてよね」

「はいはい。やる気出してみるわ、一厘くらい余分に」

「克兄ぃのやる気の一厘じゃほとんど変わんないじゃないのよっ!!」

「おっと、俺はもう行かなくては。じゃあまた後でな」

「もうっ!!まだ話は終わってないってばっ!!」

少年は説教を続けようとする少女から逃げるように自転車に乗ると足に力を込めて漕ぎ出していった。

 

 

 

 

 

 

「今朝は災難だったよ矢部君」

「何がでやんすか?またあの可愛い幼馴染の娘に怒られたでやんす?」

「その通りだよ。俺はこんなにもやる気を出しているってのに、由多加のやつやる気がないって言うんだよ。今日だってさ」

 

 

「日頃の克也君を見て、やる気があると思う人は多分いないわよ?」

朝練後、HRが始まる前の教室で机にうつぶせになりながら前に座る眼鏡をかけた特徴的なしゃべり方をする少年に熱弁(本人比)を振るおうとした少年は後ろから聞こえてきたため息交じりの声に首だけを動かして振り返ると、多くの本を抱えた黒髪のショートカットの少女が立っていた。

 

 

「菜実、お前まで俺を裏切るのか~」

「あら、私は今までも由多加ちゃん側だったけど?」

「そういえばそうだったような気もするな。まぁ、いいや」

また少年がうつぶせの態勢に戻ってしまうと、少女は手に持った本を少年の隣、自分の席に置くと椅子を引いて横向きに座りため息を吐く。

 

「克也君、昔っからいつもそんな感じでやる気なさそうにして。唯一真面目にこなしてるのは野球の練習だけじゃない」

「オイラからするとめんどくさがり大魔王の克也君が野球だけは真面目にやってることに驚きでやんす」

「・・・・・・・・・。すぅーすぅー・・・・・・・」

二人から冷たい目線にさらされた少年は形勢が不利と見るや狸寝入りを決め込もうとする。

 

「こら、寝たふりするな」

「アイタっ!?」

少女が机の上に置いていた本の一冊を手に取ると、寝たふりをして逃げを図る少年の頭に振り下ろす。

そこそこの厚みを持った本で殴打され、しぶしぶ上体を起こした少年はその少女の机の上に積まれた本の山に目を向けて信じられないといったような顔をした。

 

「またそんな辞書みたいな本を読むのか?」

「ええ。面白いわよ?これなんか・・・・・・・・・・」

「また始まったでやんす。菜実ちゃんは容姿端麗、成績優秀、野球部の一切を仕切る敏腕マネージャーとしてうちの学校では一番二番を争う人気者なんでやんすが、ただこうやって本を語るときは誰もついていけなくなるでやんす」

「菜実はこうなったら俺たちじゃ止めれないしなぁ。先生がくるのを待つか」

「やんすねぇ」

「二人とも聞いてるの?」

「「聞いてる(でやんす)」」

本のことを熱心に語り続ける少女に適当な相槌をつきつつ、HRの先生が入ってくるまでひたすら聞き流すのに徹する二人だった。

 

 

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