この命、君に捧げよう   作:HIKUUU!!!

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この腕で、冷たい義肢の中で安心したように眠る彼女に何かを感じる。無くした大切な何かを思い出せそうな気がする。






—――――今度は守り通して見せる。



俺は一体、何を感じた・・・?


歩くような速さで

俺の汗ばんでお世辞にも清潔とは言えないアンダーウェアを片手で握りしめたまま心底安心した様に、俺なんぞのカラダに凭れ掛かって眠るHK417を俺は起こさぬ様に背中から彼女を抱き留め、支えながらゆっくりと冷たく硬いだけのコンクリで打設された床へと一旦座り込む。

 

彼女の美しい髪を何となしに空いた左手でさらりと額に流れる髪を触れ、梳く。さらりとした心地よい手触りなのだろうが、残念ながら俺の手は何も感じない。その小さな体躯に似合わない大きな胸部が俺の腹部で潰れ、むにゅりと、いや、グニグニと面白い様に形を変える。不思議と欲情はしなかった。ただ、得も知れぬ安心感が俺を包み込んでいた。

記憶にはないが母の抱擁とはこうだったのだろうか・・・。と言っても彼女は寝ていて、俺が一方的に抱き留めているのに抱擁も糞もない、か・・・。

何故か湧く一抹の寂しさに、すっと瞳を閉じる。所詮俺はこの世界では、現状ではヒト型の兵器。愛など、感情など有って無い様なもの。

死ぬまでの些末の夢。一時の希望、言い方は数あれど、俺は起きてから殺し過ぎた。排除しなけらばならない屑共だろうと、命を奪ったのは事実。命の価値に貴賤はないはずだ。それなのに俺は・・・、自分の身勝手で、俺の過去を、真実を知りたいがために回り道をしようがこんな、他者を排除してまでも生き延びる生き方をしているのを知って何処かで俺を待っているはずの友人や家族はこんなに変わり果てた俺を見て、どう思うのだろうか。

 

郷愁の念は正直捨てきれない。だがそれが強いがために、命に手を掛ける事に何も感じないのかと言われればそれは否だ。感じる事はある。食う物もなく、飢えた我が子を食わせる為に暴徒となるしかなかった子の両親を手に掛けた任務だってあった。この基地から派遣されて、自ら望んだとはいえ、少しでも俺を助けてくれる彼らに何かを返すべくコネや金銭、物資という形で返すべく戦地へと赴むき、報酬や物資をほぼ手渡し、微々たるもののコネを繋いできたが、この腕の中で眠る彼女の受けた状況に思うところがないわけではない。元々キナ臭かったI・O・Pの連中やグリフィンの一部の指揮官や、上層部の役員共の腐敗化が進んでいるのではないかと疑念が強くなっていく。

最近では傭兵仲間の一団が謎の武装集団に成す術もなく壊滅したとの噂も聞く。

 

こんな酷い世界で、一目見た時から何かを感じるこの娘・・・。願わくば、守りたいものだ。そうすれば俺の失った記憶に繋がる、そんな気がする・・・。

漠然と、何故と聞かれても勘としか言えないが、俺は確信めいた予感をひしひしと腕の中で眠るこの娘の熱から心地よさを感じつつ、脳裏で静電気が帯電しているかの様なぞわりとした感覚を味わっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

羽毛の様に・・・は言い過ぎだが、俺の膂力的に言えば微塵の負担にもならない彼女をそろりと横抱きにして、振動を与えぬ様にナマケモノの様にのそりとゆっくり起き上がりながら(アンダーウェアは結構しっかり握られているのでこのままにした)照明が効いても尚、薄暗い寂れた雰囲気の地下射撃場から階段を使って基地内部へと戻ってみれば、そろそろ皆が起き出す時間からか、早番のスタッフや深夜警戒組の戦術人形達が帰投し始め、チラホラと姿を現している。

もうそんな時間か、と思いつつ、何かとパワフルな此処の奴らにやっかまれたら寝ているこの娘が起きてしまうなと考えつつも、そもそも俺の義肢は動く度に駆動音が鳴る為、諦めて進む以外に無く俺は小さく溜息を吐きながら廊下を進む。

 

「あ、おはよう。デッドマン」

 

「ああ、おはよう。今帰投したらしいな?襲撃は?」

 

「スクランブルの連絡がなかったでしょ?そういう事よ」

 

「ああ、まぁだろうな。だが一応、な・・・」

 

「ちょっと心配しすぎじゃない?ま、私もみんなも無事よ」

 

「そうか、主任にはもう会ったか?」

 

「いえ、今から行くところよ。早く無事な所見せなきゃね。あなたも無理はだめよ?」

 

「ふ、した覚えがないな。おい、FAL・・・俺を睨むな。心当たりがないのって?悪いな、ない。悪いがもう行く、この娘ベッドに運ばなければ・・・」

 

対面からお互いに歩み寄る様に、帰投した今回の夜襲警戒メンバーを代表してか先頭に立っていたイサカと軽い会話を交わしつつ、彼女の後ろでこちらの腕に抱くHK417の眠る姿に興味津々の彼女らを静かに躱そうと試みる。イサカはこちらの気持ちを組んでくれたのか微笑んで小さく手を振りこちらを見送ってくれたが、何が気に入らないのかFALにお小言を貰ってしまった。

全く、俺に構うなど無駄な時間だろうに。そんな事よりディーノに構えディーノに。あいつああ見えてお前らの前ではまだボロ出してないが結構、裏では片付いてない仕事黙ってやってるからな。お前らが止めてやれ。というか今度こいつらにチクって強制的に休ませるか・・?

 

そんな事を考えつつ、軽く首だけで会釈をして俺達は別れて、俺も医務室への道を再び歩みだす。

 

 

 

ぐぅーー・・・

 

 

 

数歩進んだ先で、俺の腹から情けない音が鳴る。ここしばらく任務続きで碌なモノ食ってなかったせいか、気づけば結構腹が減っていた。昨夜はスプリングフィールドにああは言ったものの俺もヒト、か・・・。

 

「ん・・・」

 

「お?起きたか・・?」

 

「えっと・・・うん・・・」

 

俺の腹の虫が五月蠅かったのか、先程会話中も起きなかった彼女が目を覚ます。ぱちくりと大きく綺麗に輝くライトグリーンの瞳を瞬かせてしっかりとした様子で起きた彼女の顔を覗き込む。顔色は、寝落ちる時よりはマシ。何やら顔が赤いが、それ以外は特に問題はなさそうだ。

 

「立って歩いてみるか?辛いなら悪いがこのまま俺に運ばれてくれ」

 

強面の傷面で良ければだが。HK417に尋ねてみれば、「ちょっとまだ気持ち悪いから、できればこのまま運んでくれる方が、嬉しいです・・・」との事だったので不肖ながらこの俺が変わらず彼女の華奢な体を運ぶ手筈となった。

 

くーー・・・

 

 

小さな腹の音・・・。まぁ、栄養剤の点滴と、ここ何日も碌な食事には有りつけていなかったろうからな。先程の謎の赤面とは別の羞恥心からの赤面かと何かにつけて此処の戦術人形に鈍いと馬鹿にされる俺でもそれは判断でき、彼女に提案する。俺を鈍いと彼女等は言うが、義肢のレスポンスも反応速度だってこの基地では上から数えた方が早いくらい高いのに、何がそんなに鈍いというのだろうか?まぁ、そんな事は一旦起きつつ・・・

 

「もしよければこのまま食堂に行くか?向かえば丁度料理は・・・今日はパン食の日か。それなりに揃ってると思うが、どうする?」

 

「多分、食べれると思う」

 

「ああ、食べれなさそう、とか違和感を感じたら俺に伝えてくれれば良い。最悪また様子見で栄養剤を使おう。今度は浸透注射タイプか、錠剤を用意する」

 

「あの、何から何までありがとう」

 

「気にするな。困った時はお互い様だ」

 

彼女の気に負った様な様子に首だけでそんな事気にする必要はないと過振りを入れ、食堂に続く廊下を歩くべく来た道を引き返す。

歩く度に彼女の、入院用の薄い救護衣の下で胸が振動でぶるん、ぶるんと視線をやらないようにしていても視界の端で大きく揺れ動く胸に遂迂闊な発言をしてしまう。

 

「その、揺れて痛くはないか・・・?」

 

「え?あ、その、あんまり・・」

 

俺の発言にぼーっと何故か俺の顔を眺めていた彼女がはっとした様子で返し、お互いに気まずさから沈黙してしまう。迂闊な発言だった。いや、だがああもこう、上下左右に縦横無尽にあのわがままボディがっと・・・煩悩だな。はぁ、彼女は被害者だぞ。何を考えているのか・・・。

 

自分のふと思いついてしまった事に嫌気が差し、首を左右に振り考えを再度改める。

 

「どうかしたの?私は気にしてないよ。そういう目でずっと見られてきたし・・・私も自覚あるもん。おっきいもんね・・・」

 

「違う。俺は、君をそういう目で見たいがために助けたわけではない。それは・・・本当だ・・・」

 

不意に俺に更に身を寄せてきたHK417の柔らかさを胸板や腹部で感触として、お互いに薄着なのも相まってダイレクトに受け取った俺はびくりと体を硬直させて立ち止まる。

 

「うん、大丈夫。分かってるよ。あなたはそんな人じゃないって、最初に抱きしめてくれた時から・・・」

 

彼女のそんな言葉に何処かでほっと安心した俺は、身を寄せて俺に密着する彼女の体をぎゅっとこの鋼鉄製の義肢の冷たさに負けない、肉体の熱を感じさせる様に抱きしめた。

まだ知り合って間もないのに不思議と、この娘と居ると、俺はどうにもHK417を優先させてしまうようだ。

 

 

食堂の方向からふんわり香る焼き立てのパンの良い香りを鼻腔に感じ取りながら俺は彼女を、無意識に親が子を守るように大切に抱きすくめながら食堂へと歩を進めた。

今日は、バターロールとかが食べたい気分だな。

 

 

 




こいつ417に抱きしめるしかしてねぇなぁ?????
すいません許してください。幸せにしますんで(や・き・ど・げ・ざ)
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