※この物語は遊●王とはまったくの無関係です
地中の朝
2030年、約80億人とされた世界中の人類、その僅か0.1%に及ぶ800万人の人類が長い眠りについた。
2021年に国際環境会議で示唆された『地球環境激変の可能性』を信じた者が少なかったためだ。
『星屑の願い』『未来への思い』『Sin-Selector』、世界中の組織、団体、投資家が人類維持計画に乗り出した結果、クローン技術、遺伝子組み換え、コールドスリープ、人類電子化計画……。
1万年以上に渡るとされる氷期を如何にして乗り切るか、空想のような議論と技術革新は各メディアに面白可笑しく取り上げられ、人々の注目は自然と集まった。
2年後の2023年。少なくとも15年以内に地球に約1万5千年ぶりの氷期が到来することが世界的に発表され、ヒトに限らず、多くの生命は停滞を余儀なくされることとなった。
2029年8月27日
まるで宇宙人が到来したかのようにみんなが空を見上げていた。
しんしんと降る雪は、人の世など知らぬといった図々しさで、みるみるうちに積もった。
次の春、地球はすっぽりと雪に覆われた。
夢を見た。どんな夢だったかは忘れた。
『おはようございます。柊木萌芽さん。4年6ヵ月8日振りの目覚めです』
目覚めてまず最初に聞こえたのは、機械の声。
そして、懐かしいお父さんとお母さんの顔。
お父さんは多くを語らない人だった。外に出るのが好きで、夏は気がつけば日光に当てられて顔を真っ赤にして帰ってくる。
白く、痩せ細った父の手が、冷たい冷たい私の手を握ってくれていた。
熱い。眼前に太陽があるみたいに目を開けていられない。
声が出ない。喉が割れるようだ。堪らず息を吸うと肺が爆発したくないと拒絶して、行き場を失くした空気に咽る。
クモが喉にしがみついているような厭な感覚に、全身の毛が一斉に逆立つ。
4年半ぶりの刺激に身体は震えるどころか暴れ回った。
腕をいっぱいに振るって、足でジタバタともがこうとする。身体が言うことを聞かない。
動こうとするたびにハチに刺されたような痛みが四肢を巡り、痛みに息を呑むと喉が裂けそうになり咽た。
空っぽのはずの胃が、必死に何かを吐き出そうと痙攣し、嘔吐く。
動きたくても動けない。
痛くても訴えられない。
少し首を捻っただけで頸動脈がビリビリと破れるような感覚がする。
呼吸さえもままならず、このまま死んでしまいたいと心の中で喚き出したくなる。
両親が私の名前を呼ぶ。その音さえも曖昧だ。
ここはどこ。
私は誰。
ねえ、教えてよ。