ポケモン世界に転生したと思ったらミカンちゃんだったのでジムリーダーになることにした。【完結】   作:木入香

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 初めまして、木入香です。
 初投稿です。
 「小説家になろう」や「カクヨム」でオリジナル小説を投稿していましたが、ネタ切れで休止。気分転換で二次創作に手を出しました。
 世間ではポケマスが流行らしいですが、流行の波に乗れない、乗らない、乗っても落ちますのでやってません。
 タイトルの通りです。ただ結構設定をいじくっていますので、面倒くさい話になっています。ご了承下さい。
 後、ミカンちゃん可愛い。鋼タイプ格好いいです。
 ストックは4話分しかありません。以降続くかは、作者次第。


第1話 vs コラッタ

 アサギシティのとある大型施設。この中で、今日も激しいポケモンバトルが繰り広げられていました。

 

「コラッタ、スタミナ切れ(・・・・・・)により戦闘不能。勝者、ジムリーダー、ミカン」

 

 フィールドの中央で審判(しんぱん)を行っていた女性トレーナーさんが、その姿に似合わない真剣な眼差(まなざ)しで公正にジャッジを(くだ)します。

 

「ありがとうございました」

「あ、ありが、とう、ぐすっ……ございま、ひっく、ました……」

 

 私は相手に頭を下げます。相手の男の子もまだ駆け出しなのでしょう。悔しさで涙を流しながらも、賢明(けんめい)に私を見てお辞儀(じぎ)をして下さいました。

 この瞬間、私達の戦いを見守っていた周囲の観客からざわめきが聞こえてきます。

 口々に、私が全く攻撃をせずに勝ったとかで話題に上げていますが、むしろ、攻撃どころか一切の技を繰り出すことなく今回の試合を終えていることに、果たしてどれだけの人が気付いているのでしょうか。常連の人は何となく分かっていると思いますが、その真意まで見通すことは出来ていないはずです。

 

「では、まだ少し時間がありますので、それまで論評(ろんぴょう)に入りましょうか」

「え?」

 

 キョトンとした表情を浮かべた駆け出しの新米トレーナーである男の子に、私は首から()げられた腕時計のような形をした高性能機器、ポケギアで時間を確認して告げます。

 

「通常のポケモンバトルでは、戦って賞金のやり取りをして終了かもしれませんが、せっかくのジム戦という貴重な機会です。何が良くて何が悪かったのか。ここでそれを学んで、そのことを次に生かし、そしてまた一回り成長して挑戦して下さい。これでもポケモンバトルのプロです。教えられることは沢山あると思います。是非(ぜひ)、私をあなたの成長の(かて)として下さい」

「は、はい!」

 

 多少回りくどい表現になってしまいましたが、ようは「アドバイス送るので次頑張って下さい」です。

 こうして、残り時間を使って、私は出来る限りの意見を述べて授業の真似事(まねごと)のようなことを行いました。この時には、目の前の少年だけでなくバトル直後にザワザワしていた周囲の人達も、私の話に耳を(かたむ)けているようでした。

 

「お疲れ様でした」

「お疲れ様です。レミさん」

「飲み物をどうぞ」

「あ、ありがとうございます」

 

 論評、もしくは感想戦を終えた私は、次の予約の時間までまだ時間があることを確認しながら、女子高生トレーナーのレミさんから携帯飲料を受け取ります。ゲームではミニスカートの分類に入るのでしょうが、実際にそう呼んでしまうとセクハラに該当(がいとう)しますから、気を付けないといけません。肩書きが職業やそれに近いものならともかく、服装で肩書きが決まるって嫌だと思いますし、私も嫌です。海パン野郎って……冬はちゃんと服着ているはずですから、海パンじゃないはずです。そうなりますとただの野郎になってしまい、ややこしいですし失礼です。

 私がこのアサギジムのジムリーダーに就任してから1年が経ちました。ようやくジムリーダーらしくなってきたかなと思い、これまでの自身のことについて少し振り返ります。

 

 

 私の名前はミカンです。

 現在はアサギジムのジムリーダーをしているのですが、実の所、転生者です。それもこの世界ではなくポケモンがゲームやアニメなどのコンテンツを広げている世界からの転生だと思います。それも、ミカンになったということで憑依(ひょうい)転生ではないかなと思っています。

 生まれた時から記憶のあった私は、特に何か行動を起こすということもなく、ただただポケモンの世界に来たのだと感動しながら過ごしていました。ポケモンの知識もガチ勢ではなかったことからにわか程度にしかありませんでしたし、そもそも記憶にある知識を生かして無双するようなことも考えていなかった私は、幼少期をただのほほんと過ごしていました。

 それが変わったのが5歳で小学校に入学した頃です。自身がミカンという名の少女であること、ここがジョウト地方のアサギシティという街であることに思考が(いた)った時「私将来のジムリーダーじゃないですか」と気付き、一人悶絶(もんぜつ)してしまったのは今思えば良い思い出です。多分。

 当初は、憑依で彼女の人生を(つぶ)してしまっている罪悪感こそ(いだ)いてしまったのですが、だからといって私がジムリーダーを目指さなければならないという理由もありませんし、そして心の優しい彼女もそれを認めてくれるだろうと思っていました。

 ですが、ジムリーダー云々(うんぬん)は別としても、ポケモンには関わりたいと考えていた私は、両親にお願いをして地元のポケモントレーナーを養成する塾、トレーナーズスクールに通わせてもらうことになりました。そこで学んだことは、タイプの相性こそは前世と同じではありましたが、レベルや種族値、個体値に努力値などのゲームシステムに必要なパラメーター類が存在しないということを認識しました。あるとすれば健康診断をした際にポケモンセンターのジョーイさんから告げられる、健康度を示す数字くらいでしょうか。

 知ってはいたと言いますか、予想はしていました。この世界で生まれて多少なりともポケモンと関わる生活を送っていますと、そのような数字の集合体ではなく、あくまで生き物で、私達人間と同じように意思があって生きているということを強く実感しました。その為、そのことをスクールで確認することが出来て安心したのです。

 この手に触れる体温と鼓動(こどう)は決してデータではないと、そう感じられたのです。

 それから私は10歳で小学校を卒業し、ポケモントレーナーの資格となるトレーナー免許が卒業生に配られました。トレーナーズスクールも卒業し、私はいよいよポケモントレーナーの道を歩むこととなりました。

 そして月日は流れ現在15歳。ジムリーダーとして活動を始めて1年が経ち、様々なトレーナーと関わる機会を得ることが出来、新しい発見の毎日で、とても充実した生活を送れていると思います。

 

「しかし、こうしてミカンさんの戦いを何回も観ていますが、本当に驚くことばかりです」

「そんな……というかいつも言っていますが、レミさんの方が年上なんですから、無理して敬語にしなくても良いんですよ?」

「いえ、これは私なりにあなたへ敬意を払っているということで」

「でも、その格好で敬語ってすごく違和感(いわかん)があると思うのですが……」

「え? そうですか?」

 

 そう言って彼女は自分の制服姿を見直します。

 彼女の姿は……その、所謂(いわゆる)ギャルというものでしょうか? 肌は焼いていないですし髪も黒いままですが、着ている高校の制服は着崩していますし、アクセサリーなどの装飾が所々光っているのも目に映ります。ネイル何かもポケモンを傷付けないよう配慮(はいりょ)しつつも、キラキラと輝いていてとても綺麗(キレイ)だと思います。原作(ゲーム)のように全員同じ姿形ではなく、あくまで生きた人間である為、その格好も身体付きも性格も千差万別(せんさばんべつ)です。

 そんなギャルな彼女が、ジムリーダーとジムトレーナーという立場の差こそあれど、年下の私に対して敬語を使うというのは何だかくすぐったく感じてしまいます。まぁ、1歳差ですので、そこまで気にする必要もないのかもしれませんが、学校生活での一学年差は結構大きい差だと思いますので、通う高校は違えども同じ高校生としてつい学年での上下を付けてしまいます。あ、だからといって、私が年上だったとしても偉ぶるつもりはありませんよ? 本当ですよ?

 ちなみに私の見た目は原作に近く、薄い茶髪のロングヘアをオールバックにして(ひたい)を出しつつ、私の名と同じミカンをモチーフにしたヘアアクセサリーで二房にまとめたもの。服装に関しては原作と若干違い、白いワンピースの上から緑色のジャケットを羽織り、なんとワンピースの下にはスパッツを履くという邪道(じゃどう)も邪道なファッションをしています。理由としては、動き回った時に下着が見られるのが恥ずかしいからです。靴もサンダルではなく動きやすいようにスニーカーなのですが、このファッションセンスは同僚のレミさんには不評です。衣装がちぐはぐで何とかしたいとよく言われます。

 私も一応そのことは自覚していますが、出来るだけ格好を原作のミカンに近付けつつも、実用性も考慮(こうりょ)した時に、どうしてもこういった変な組み合わせとなってしまうのです。というか、スカートをヒラヒラとさせて走って跳んでって、私にはそんな勇気ありません。ですので、せめてもの保険としてのスパッツなのです。

 服装に関しては、私なりのこだわりを理解も納得も出来ていないようですが、私の熱意が伝わったのかどうにか飲み込んでもらえました。ただ、髪型に関してはいつも同じなのは女子としてどうなのよということで、時々いじられます。三つ編み、ツインテール、ポニーテール、お下げ、ヘアバンドやカチューシャの時も……

 

「しかし、相手のスタミナ切れを狙うとは……普通のポケモンバトルでは見られない光景ですね」

「そうですね。他のジムでも早々ないことだと思います」

「それを一日に1回は少なくとも入れてくるって、すごいですね」

「すごくないですよ。挑戦して下さるトレーナーさん、そしてポケモンの力を全部出し切らせて上げるのがジムリーダーの務めです。それを見ないでただ上から叩き潰してしまうのは、指導者として失格です」

「私が思うに、そういうジムリーダーがほとんどだと思うのですが」

「否定はしませんよ。それに擁護(ようご)する形になりますが、彼等は彼等でちゃんとした物差しでトレーナーの実力を(はか)っているのですから問題ありません。もし問題があればジムリーダー同士の連絡会で話題に上がりますし、最終的にはポケモン協会からの厳重注意、もしくはジムリーダーの免許剥奪(はくだつ)がありますからね」

「そういうものですか」

「そういうものです。私はただ長く相手の実力を見たいので、どうしてもあぁいった立ち回りになってしまうのです」

「それにしても技を一切使わないって……観客からも今日は技が出るのかと、別の注目のされ方をしている人もいますよ」

「あ、そうなのですか?」

 

 それは気付きませんでした。

 アサギジムのジムリーダーである私の手持ちは鋼タイプで構成されています。ただ、先代のジムリーダーさんのタイプは岩タイプでした。

 一般的な認識としては、防御面は高いが素早さが低いという弱点を持ちます。ただしそれは、あくまで一般論ですし、ゲームでもそういう認識のはずです。アニメやポケスペでは、割と自由に動き回っていたと思います。

 そういえば、この世界についてですが、アニメ世界なのかポケスペ世界なのか、それとも全く関係ない世界なのか考えたことがあります。トレーナー時代にジョウトを含めて、カントー、ホウエンを旅したことがありますが、多分ですがポケスペ世界に近いかなという印象です。シンオウは縁がなく訪れることが出来ませんでしたが、機会があれば行ってみたいと思います。と言っても、ジョウトもカントーもホウエンも、本当に一部を、ジムも三つずつ巡っただけですので全部を見て回れた訳ではありません。

 ちなみに、ポケスペ世界に”近い”と表現した理由としては、この私がいる世界では、既に鋼タイプどころかフェアリータイプも浸透(しんとう)していることからです。ポケスペではジムリーダー対抗戦に()いて、初めて鋼タイプが認識されたような描写がされていましたので、その違いからそう考えました。

 しかし、それだけでしたら全く別の関係のない世界だと思えたのですが、カントー地方を回った時に、クチバジムとヤマブキジムに挑戦する機会があり、その時に対峙(たいじ)した際に、何となくロケット団と繋がっているのではないかと思えなくもないような、そんな感じがしたのです。非常に根拠(こんきょ)(とぼ)しいのですが、ポケスペを知っているだけに、その言動を観察していると、いくつか共通点があるように思えて、それでロケット団ではないのかもしれないが、繋がっている可能性がある。つまり、ポケスペ世界ではないかと(なか)ば強引に結論付けた訳です。

 そこまでして、無理矢理世界を確定させたい理由としては一つ。ポケスペ世界ですと、割と人命含めてポケモンの命も危ない場面が多いので、ジムリーダーとなるのであれば少なからず関わる必要が出て来ます。アニポケですと、大体が一回出て終わりですのでそこまで気にしないのですが、ポケスペは油断すると死んでしまうなんてこともないとは言えませんので、対策は……難しいかもしれませんが、心構えだけでもしておこうと思った次第です。

 

「戦い方についてですが、もしよろしければ時間がある時にお教えしますよ?」

「本当ですか! ありがとうございます! いやー本当にアサギジムの、というかミカンさんのいるジムのジムトレーナーになれて良かったー……あ、です。ジムトレーナーはジムリーダー程ではなくても、周囲から実力が認められている仕事ですので、募集があった時には真っ先に飛び付いちゃったのですが、まさかあんなに倍率が高かっただなんて……」

「ふふっ、私自身、まだ新米のジムリーダーですし、一度に多くのトレーナーさんを(やと)っても上手く意思疎通(コミュニケーション)などが出来るか不安でしたので、出来れば1人か多くても2人に絞って考えていたのですが……32人も来ましたので驚きました」

 

 ほとんどが男性の希望者だったのは、私が女子高校生だったからでしょうか。いえ、当時は中学生でしたね。

 今思えば、中には(よこしま)な考えを持つ人がいたかもしれませんが、あの頃は、ただポケモンとトレーナーに真摯(しんし)に向き合える心の優しい人という基準で面接を行いましたので、レミさんが合格したのは本当に偶然です。合格を通知して改めて挨拶をした際に、原作でもジムトレーナーとして在籍(ざいせき)していたことを思い出しましたので、これも運命だと1人で感動していました。

 

「そろそろ次の予約の時間ですね。準備に取り掛かりますので、レミさんもお願いします」

「はい、分かりました」

 

 こうして、今日も変わらないジムリーダーとしての日常を過ごすのでした。


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