ポケモン世界に転生したと思ったらミカンちゃんだったのでジムリーダーになることにした。【完結】 作:木入香
また少し長くなりました。戦闘描写と説明を入れると必然長くなっちゃいますね。
まさか日間ランキング入りしているとは思わず、三度見くらいしてしまいました。
私自身、二桁話数も続けるとは思っていませんでしたので、皆さんの評価やコメントなどのおかげです。
私はいつでも打ち切りの準備は出来ていますので、無事に完結まで向かうかどうかは皆さん次第です(丸投げ)。
追記:誤字報告ありがとうございます。まさか初っぱなからミスっているとは……
追記2:日間8位ですと!?(唐突な死)
ロケット団の団員とその幹部を拘束した私は、
「すげぇ、1人で全員捕まえちまった……」
「……これがジムリーダーの実力か」
「ありがとうございます」
取り逃がしがないことを確認し、私は首から
「もしもし? ミカンです」
≪ミカンさん? は、はい。ハヤトです。突然どうしましたか?≫
≪あれ? グループ通話なん? 珍しいなってもう1人はハヤトかいな。どうしたんミカン?≫
「お忙しい所すみません。本当はマツバさんにも連絡を入れたかったのですが、不通でしたので緊急でお2人のみに連絡を入れています」
≪緊急やと≫
≪何がありました?≫
私は息を吸い、ゆっくりと吐きます。
「エンジュシティでロケット団と遭遇しました」
≪なっ≫
≪は?≫
「マツバさんが不在の時を狙われました。偶々私が現場に居合わせましたので対処しました。現在はこの場にいた関係者全員を拘束中です。ですが人数が51人と多いので、アカネさんには現場の収拾の援助を。ハヤトさんにはロケット団の団員の逮捕、連行をお願いしたいです」
≪エンジュシティっちゅうと、震災の現場やな? ミカンは大丈夫なんか?≫
「私は大丈夫です。そして、詳細は
≪分かった。マネージャーには言ってすぐ向かうわ≫
≪こちらも了解です。
「はい。よろしくお願いします」
ピッとポケギアを切って、周囲を見渡す。
「あ、あんた本当にすげぇな……」
「ありがとうございます。あ、えぇと……」
そういえば、私はまだ直接彼等から名前を聞いていませんでした。まぁお2人の会話を聞いていましたので問題ないと思いますが、ここは礼儀です。
「あ、忘れていたぜ。オレの名前はゴールド。コイツはシルバー。助けてくれてありがとな。えぇ、ミカンさんで良いのか? いや、ですか?」
「ふふ、無理して敬語にしなくても良いですよ? ゴールドさんですね。よろしくお願いします。そちらのシルバーさんも、よろしくお願いしますね」
「ふん」
「あ、てめぇシルバー。そういや
「それを言うならキングドラもオレの手持ちだ」
2人の少年が再びポケモンをトレードしていた所に、どこからか冷気が
『指定時間になっても連絡がないと思えば、こんな所で油を売っていたのか』
「そ、その声は!」
「まさか!」
真っ先に反応を示したのは、ロケット団の幹部の2人。ということは、まさか来ちゃったのですか? こちらに?
周囲が霧で
声もボイスチェンジャーを通しているのか、機械的なものに変換されており、こちらも性別の判断に用いることは出来そうにありません。
『目的は達成したようだが、その後に邪魔が入ったということか』
周りの様子を眺めながらも、こちらの、というか私を警戒した感じの視線を感じます。
「あなたが親玉ですか?」
『アサギのジムリーダーか。なるほど、道理で計画が進まない訳だ。それにシルバー、やはりお前か。アリゲイツを連れた私を付け狙うガキがいることは知っていたが。それに、いつかのガキもいるな。たった3人にこの大人数で、しかもシャム、カーツ、お前達がいながらやられたということに怒りはあるが、そこのジムリーダーが関わっているとなると、多少は仕方がないと思うべきか』
「ゴチャゴチャとうっせーぞてめぇ!」
「ゴールドさん、抑えて下さい。ここは私が。ジムリーダーとして街は違えど市民を守るのは当然。それに、目の前に組織のトップがいるのでしたら話が早いです。あの人を捕まえます。ゴールドさんとシルバーさんにはお願いがあります。私が戦っている間、ロケット団が逃げ出さないように見張っていて下さい」
すぐに熱くなりすぎる性格のゴールドさんに注意しつつ、相手の様子を
「お、おぅ。分かったぜ」
「……」
「シルバーさん?」
「……ちっ、分かった」
「ありがとうございます」
お礼を言って私は1人、仮面の人と
位置的には、私達3人の背後にロケット団がまとめて
『ふむ、1人か。いや、この場合1人の方が都合良いか、ジムリーダー?』
「出会ったばかりのトレーナーさんと連携が取れる程、私は完璧ではありませんから」
『ククク、よく言う。行け、デルビル、アリアドス、デリバード、ゴースト』
タイプに
「お願いします。
『見たことのない大きさだな。だが、大きければ良いというものでもない。的が大きくなり、身体が重くなったことで動きも
「それは、どうですかね? やってみなければ分かりませんよ?」
『フフフ、それもそうだな』
そして、その会話が途切れたと同時、合図らしい合図もなく戦いは唐突に始まりました。
「
『ゴースト』
「
再び名前を呼ぶと、今度はネジや磁石が分離し、周囲を
『むっ』
「「なっ」」
私の
『アリアドス!』
「糸に気を付けて下さい」
非常に見づらい程に細い糸をかいくぐりながら、
『これは!』
音の発生源は、コイルの本体だけでなく、分離したパーツの1つ1つが小さなスピーカーの役割を持って、広い範囲にばらまきます。音の向きも規則性はないので、敵味方関係なく効果があるのが玉に
「ぐおぉぉおおお……何だ突然気分が……おぇ……」
「何だこれは……くそっ、何が起こって……まともに立っていられない!」
当然、ゴールドさんやシルバーさんにも効果があります。ごめんなさい。
『ぐ……こ、これは……【ちょうおんぱ】!』
「正解です」
【ちょうおんぱ】は聞いた相手を混乱状態にする技です。しかし混乱と一言に言っても様々な状態があります。幻覚が見えていたり、極度な興奮状態によって前後不覚になったり、
そして、【ちょうおんぱ】によって引き起こされる現象は、三半規管へ働き掛けて、
また、ポケモンの技の【ちょうおんぱ】にはポケモン
現実で超音波を浴びたからと言って、直接人体にすぐにでも影響が出ることはないはずですが、あくまでポケモンの技としての【ちょうおんぱ】ですので効果が現れるということです。
「
私はただ名前を呼ぶだけですが、それだけで私の意思を汲み取ってこの子は判断して行動をしてくれます。長年一緒に過ごし、また厳しい修行も行ってきたことで、私の考えていることは多分、ほとんど
私が名前を呼ぶ時は、ただそのタイミングを告げる時のみ。そして、今の呼び掛けによって
『ぐ……くそ、避けろ!』
【ちょうおんぱ】によってまともに立っていられない状態。そんな状態では当然回避するだけの力もなく【ほうでん】の
霊体のゴーストや昆虫がモデルのアリアドスに筋肉あるのか疑問ですが、まぁ、神経も電気信号を伝える線を【ほうでん】によって誤作動を起こさせているという
ちなみに、この【ほうでん】もまた分離した各パーツから放たれています。しかし、本体から離れていることでどうしても威力が弱くなってしまうので、決定打にななりえません。
これが私の
『ちっ、ビリリダマ!』
「
仮面の人が次に出してきたのは、【ぼうおん】に電気タイプを持つビリリダマ。この音麻痺戦法を人前で使う機会は滅多になかったはずですが、やはり1回でも使うと何らかの手段で目の前の相手に情報が伝わり、それによって対策が立てられるということですか。少なくともポケスペでは登場しなかった手持ちです。
私は
『ポケモン1匹にこの対応。少々警戒し過ぎなのではないかな?』
【ちょうおんぱ】と【ほうでん】がなくなったことで余裕が出たのか、強気な発言が飛んできます。
「そうかもしれませんが、元々素早さが低い子が多い鋼タイプを扱う以上、そちらのように足の速いポケモンは十分に警戒に
『ほぅ、それは光栄だな』
「あなたが悪の首領ではなく、1人のトレーナーとしてであれば、ですが」
『ふむ、残念だな。で、どうする? こちらは混乱が解け、麻痺もしばらくしたら回復する』
「続けますよ? 何せ悪の組織のトップが目の前にいるのです。捕まえないという選択肢は、最初からありません。
名を呼んだ瞬間、ずっと私の
『何をするつもりだ?』
「答える必要はありませんよね?」
『なっ!』
相手からしたら突然
『これは、【うちおとす】!』
「さっきのは【たたきつける】。【うちおとす】をするに瓦礫を破壊して準備をしていたのか」
シルバーさん、あまり敵に聞こえるような解説は避けて頂きたいですね。出来るだけ情報は相手に渡したくないですし。
「
『くっ、デルビル! 【かえんほうしゃ】!』
確かに鋼タイプに対して炎タイプの技は効果抜群です。しかし、こちらの身体が大きいということは、当然尻尾も長いということ。しかも指示を飛ばす速さの違いによってラグが
「降参して自首して下さい。このままでは勝ち目はありませんよ? 私は応援として2人のジムリーダーと警察を呼びました。近い内に到着するはずです」
『なるほどな。あくまで時間稼ぎということだったか。この私がジムリーダーとはいえ、1人のトレーナー相手に時間稼ぎをされた……くくく、これ程の
「……何が
『いや何、必ずしも時間稼ぎをしていたのはそちらだけではないということだよ』
「? ……先程よりも周囲の霧が濃く? まさか!」
慌てて振り向くも、ゴールドさんもシルバーさんもキョトンとした様子。しかし、その奥、音もなく静かに行われた犯行に私は目の前の敵に夢中になり過ぎて周りが見えていなかったことを自覚します。
「逃げられました」
「は? 何言って……はぁ!」
「嘘……だろ?」
「んなはずねぇ、だって、つい今までいたはず……」
そこにいたのは、アリアドス1匹のみ。先程の【うちおとす】で当たったのは【かげぶんしん】で、本体は霧の中を【かげうち】で回り込んで団員と幹部を逃がしたということでしょうか。
『ククク、実力は高いがまだまだ甘さがあるな。だが、今の私では負けることもないが勝つことも出来ないだろう。そこは評価しようではないか。こちら側の人間でないことが非常に悔やまれるが、精々
ハッとしてつい今まで対峙していた仮面の人の方へ向き直りますが、既に霧に
待ち合わせ時間になっても誰も来ないし連絡もないから、待ち合わせ相手の家までお迎えに行くマスク・オブ・アイスさん……もとい、仮面の人です。