ポケモン世界に転生したと思ったらミカンちゃんだったのでジムリーダーになることにした。【完結】   作:木入香

15 / 26
 第1試合、マチスvsイブキ決着。
 そして第2試合のアンズvsアカネ、始まります。

 ポケスペ本編では対抗戦は13巻の3分の2のページ数で終わってしまいます。
 その中で回想や会話のシーンが挟まれますので、実際のバトルは非常に短く、また本当にジムリーダーですか? みたいな一方的な展開のバトルだったりします。
 ジムリーダーの中でも実力差があるのは仕方ないことですが、それにしてもあんなに一方的だったり、一瞬だったりするのはどうなのかと思った次第です。
 第1試合はいかがでしたでしょうか? こんな感じを後6試合(カツラさん棄権の為)続きます。バトルだらけです。お楽しみに。


第15話 vs ミルタンク

 光が収まると、いつの間にかステージ上で風を()き散らせていたいくつもの竜巻は消え、静寂(せいじゃく)が辺りを(つつ)んでいました。

 ステージ上は技が交錯(こうさく)したことによる爆発によって発生した煙で、試合結果がどうなったのかまだ分かりません。

 

≪激しい技と技のぶつかり合い! 果たして、どうなったのでしょうか! 煙が濃く、詳細が分かりませんが……いや、煙が晴れてきました。そして……あ、あれは!≫

 

 クルミさんのアナウンスを聞いて改めてステージへ目を向けると、そこにはフラフラになりながらもどうにか浮いているコイルと、地面に倒れているキングドラの姿がありました。

 

≪キングドラ、戦闘不能! 勝者、マチスさんです!≫

 

 結果が告げられた途端(とたん)、静かに様子を見守っていた観客から一斉に歓声(かんせい)が上がります。

 ポケモンをモンスターボールに戻した2人は、目を合わせることなくステージを降りていきました。

 

「お疲れ様です。イブキさん」

「あぁ、すまない。負けてしまったよ」

 

 真っ先に声を掛けるのは、主将であり、同じジムリーダーという仲間であり、友人である私の役目です。

 しかし彼女は疲労の色こそあるものの、落ち込んでいる様子はなく、むしろ笑みを浮かべていました。

 

「どうかしましたか?」

「いやなに、最後の最後までしてやられたなって。相手の言葉に翻弄(ほんろう)されっぱなしだったよ」

「とてもそうには見えませんでしたが? それに、どのように決着が付いたのでしょうか?」

 

 あの爆発と煙のせいで、どうしてコイルが勝ち、キングドラが負けたのか分からない私は疑問を投げ掛けます。

 

「あぁ、それはな。相手の【マグネットボム】は不発弾ではなかったということだ」

「え?」

「あの技の本当の狙いは、【でんじほう】を確実に当てる為の誘導(ゆうどう)用の金属の役目を持たせたものだったのだ」

「そんな……」

 

 【マグネットボム】の不発弾を身体にまとわりつかせることで、動きを制限する。その目的は確かにあったのでしょう。しかしその裏では、高威力(ゆえ)に非常に当たりにくい【でんじほう】を確実に相手へと届けさせる為のポインターとして、電気を通しやすい金属で目印をしたということらしいです。

 

「あの男にそのような知恵があったとはな」

 

 マツバさん、完全にマチスさんを馬鹿にしていますよね? 表情からして明らかに冗談を言っているのが丸わかりですので、アカネさんは思わず吹き出してしまっています。

 

「しかし、不発弾が不発ではなかったということはどういう?」

「【でんじほう】は、あくまで電気の(かたまり)だ。そしてキングドラの身体に無数にある金属。確かに電気は届くだろうが、その金属を辿(たど)ってキングドラには表面にしかダメージがないはずだ」

「確かに……はっ」

「気付いたか。流石(さすが)だな」

「いえ……つまり、相手は【マグネットボム】を(おとり)に本命の【でんじほう】を放った。しかし、それすらも囮で、その実は、その電気によって一斉に身体に貼り付けた【マグネットボム】を誘爆させることにあったということですか」

「のようだな。今思えば、最初のエレキブルの強引なまでの力押しは、そういう戦い方であると印象付ける為のものであったかもしれない」

 

 何か、ポケスペ本編よりもえげつないことになっていませんか?

 そんな私の動揺(どうよう)余所(よそ)に、試合は続きます。

 

≪さぁ、続きましては第2試合! セキチクジムのアンズさん対、コガネジムのアカネちゃんです!≫

「よろしくでござる」

「負けへんでー」

≪それでは、試合開始です!≫

ミルたん(ミルタンク)!」

「ベトベター!」

 

 両者のポケモンが場に出ました。

 すると、すぐに動きがありました。

 

「【ころがる】や!」

 

 先手必勝(せんてひっしょう)を体現するかのような速攻です。【ころがる】は連続して当たる程、速度が増して威力も上昇する技です。そして、その1発目をベトベターはまともに受けてしまい、勢いに押されて後退します。

 

「まだまだ行くで!」

「【ちいさくなる】」

 

 しかし、連続で当てなければ意味がなく、ベトベターは【ちいさくなる】で非常に見づらいサイズにまで縮小してしまったことで、【ころがる】は(はず)れてしまいました。

 

ミルたん(ミルタンク)! ブレーキ! ブレーキや!」

「【どくガス】」

 

 上手いですね。ミルタンクが減速した(すき)()いて【どくガス】を浴びせました。視界を(うば)うと共に、ミルタンクを毒状態に(おちい)らせます。

 

「あぁ! ミルたん(ミルタンク)! しっかり!」

「【ベノムショック】」

 

 相手が毒状態の時に威力が倍増する【ベノムショック】。この一連の流れが綺麗に運ばれていてすごいですね。流石忍者です。

 ですが、【ちいさくなる】で回避率、【どくガス】で毒状態と視界不良と、ミルタンクの攻撃が当てづらく、また動きにくい状態ですね。ゲームの【どくガス】に命中率低下の副次(ふくじ)効果はありませんし、本来のガスも透明なのですが、ポケモンの技だからなのか薄紫色(うすむらさきいろ)のような色が付いていて、それが結果視界を(さまた)げることとなっています。

 

「あーもう! ちまちまちまちまと鬱陶(うっとう)しいねん! ミルたん(ミルタンク)! 【いやしのすず】!」

「ほぅ」

「それから【ころがる】や!」

 

 【いやしのすず】にて状態異常を回復したミルタンクは、今度は攻撃というよりもベトベターの位置を特定する為の行動のようです。これはまだ決着が付かなさそうでしたので、先程の試合でのもう1つ聞きそびれた疑問を解消することにしましょう。

 

「そういえば、【オーロラビーム】はコイルには届かなかったのですか?」

 

 アカネさん達の試合を見守りながら、アカネさんの代わりに隣に座ったイブキさんに気になっていたことを聞きます。

 

「いや、届いた。届いたが【ひかりのかべ】によって威力が若干(じゃっかん)弱まってしまい、ギリギリで耐えられてしまった」

 

 ゲームと違いこの世界の【リフレクター】や【ひかりのかべ】といった壁は、急所技でも貫通せずに威力減衰(げんすい)の役割を果たします。

 急所に命中と言っても、壁を無視して通り抜けて相手に当たる訳ではないので当然です。

 一方で、壁があるからと全方位の攻撃を弱める訳ではなく、あくまで壁がある方向のみというのもこの世界ならではです。

 つまり、壁のない所を狙って技を放っていたら、イブキさんが勝っていたか、もしくは相打ちで引き分けだったのかもしれないですね。

 本来ならそれが出来たかもしれませんが、周囲にある竜巻が【オーロラビーム】の最適なルートを(つぶ)してしまったことで、正面から撃ち合うことになってしまったということのようです。

 

「なるほど。まさかそこまで読まれていたとは思いませんが、上手く試合を運ばれてしまいましたね」

「だが、次は負けない」

「はい、それでこそイブキさんです」

 

 落ち込んでいる様子も強がっている様子もなく、ただひたすら強くなることを目標に掲げる彼女に安心しました。

 

 「見つけたでぇ!」

 

 すると、試合が動いたようです。

 戦いに意識を向けると、ずっと【ころがる】を維持したままステージの上を縦横無尽(じゅうおうむじん)に転がり続け、その勢いで【どくガス】も霧散(むさん)してしまっています。

 ここからベトベター側から何らかのアクションを起こすと、その発射点から位置を特定されると踏んだのか、ガスの霧が消えた今、ベトベターからの攻撃の様子はありません。

 にも関わらず、アカネさんはベトベターの位置を掴んだと言っています。どういうことでしょうか?

 

「そこや! 【のしかかり】!」

「何っ!」

 

 転がった勢いのまま飛び上がり、そこから一気にステージに向けて落下していきます。そして、その先にはアカネさんの言う通り、小さなベトベターと思われる影が落下予測点から逃げようと必死に動いているのが見えました。

 

「くっ【とける】!」

「押し潰せぇえ!」

 

 ミルタンクがステージへと落ち、少ししてゆっくりと腰を上げたミルタンクの下からは、のそのそと移動する小さなベトベターの姿がありました。

 

「直前の【とける】でギリギリ耐えられてもうたか」

「戻れ」

 

 危機一髪(ききいっぱつ)の所で耐えたベトベターをボールに収めるアンズさん。

 

「何故、場所が分かった?」

「あんた、まだジムリーダーなりたてやろ? 経験が浅いねん」

「それが何か?」

 

 口元を布で隠しているので、アンズさんの表情は分かりづらいですが、目元を見るに明らかにムッとした様子です。

 

「目で追っとるんのがバレバレやったで?」

「何?」

「相手から姿を隠していても、トレーナーだけは絶対に見失ってはあかん。そのことに意識を向けすぎたな。おかげであんたの視線の先をヒントに、ミルたん(ミルタンク)を転がらせてみて、視線が動けばそっちに移動したと予想したんや」

 

 アカネさん、すごいです。

 しかもミルタンクの使った【のしかかり】は、相手が【ちいさくなる】を使った状態で行うと、ダメージが倍増するものです。普通ならそれを食らった時点で戦闘不能で試合終了のはずでしたが、直前になってアンズさんは【とける】を指示しました。身体をドロドロにすることで、相手の物理攻撃を柔軟(じゅうなん)に受け止めることが出来る、防御を上げる技です。それによって、ほとんどペチャンコでしたが、何とか戦闘不能にならずに済んだということです。

 

「ただまぁ、こっちも大分(だいぶ)やられたでなぁ。お疲れ、ミルたん(ミルタンク)

 

 そう言って、アカネさんもミルタンクをボールに戻しました。

 【いやしのすず】によって、状態異常を回復することは出来ましたが、減ってしまった体力まで回復する訳ではありません。それに加えてベトベターを探す為に、散々転がっていたのですから、結構限界だったのかもしれません。

 

「それじゃあ、仕切り直しや」

「はい」

 

 2人はそれぞれモンスターボールを取り出して構えます。

 

「勝負決めるで?」

「勝たせて頂きます」

「やってみぃ?」

 

 そして2人同時に投げたボールから出て来たポケモンは……

 

「やったりぃ! ザンたん(ザングース)!」

()け、ハブネーク!」

 

 ザングース対ハブネーク! これは、夢のライバル同士の戦い! すごく燃えますね。

 

「【かみなりパンチ】!」

「【ポイズンテール】!」

 

 ザングースが腕に雷をまとわせ、ハブネークも毒液が(したた)る尻尾をほぼ同時に相手へとぶつけます。

 

「へん、こっちのザングースは【めんえき】や。毒にはならへんで? それに比べて、そっちのハブネークは麻痺(まひ)ったやろ? 身体が動かんみたいやで?」

 

 互いの攻撃は浅かったものの、状態異常の付与(ふよ)の差で、若干ですがザングースが有利です。しかし、すぐにハブネークは身体をモゾモゾと動かし、皮をベロンと()がして中からツヤツヤなハブネークが飛び出してきました。

 

「残念、こちらも特性【だっぴ】だ。状態異常になっても回復する」

「振り出しかいな。やけど、燃えてきたで」

「さっさと終わらせる」

「「フェイント!」」

 

 今度は互いに相手の意表を突く【フェイント】を同時に行ったことで、場所を入れ替えて再び対面します。

 それから何度か互いに技を繰り出すも、微妙に体力を削るのみで、決定打になりません。しかし、2人とも技を2つしか出していませんので、何か奥の手があるのでしょう。

 

「あーもぅ、これもあかんか……何か隠し(だま)があるんやろ?」

「それはそちらもでござろう?」

「せやねぇ……せやっ、ほんなら、次の一撃で決めるってのはどや?」

「決まらなかったら?」

「決まるて。互いの体力はもう微妙な所。ここで大きいのを食らえば戦闘不能になるやろう」

「分かった。(のぞ)む所だ」

 

 これは、先程のマチスさんとイブキさんの試合であったようなガンマンの抜き撃ち……いえ、どちらかと言えば、刀を収めた武士同士が向き合っている、そんな感じの雰囲気(ふんいき)です。

 

「下準備といくで【つめとぎ】」

「ではこちらも【とぐろをまく】」

 

 攻撃と命中を上げる【つめとぎ】。そして先の2つに加えて防御も上げる【とぐろをまく】。この次に繰り出される技はいったい……

 

「泣いても笑ってもこれで(しま)いや」

「泣きも笑いもせん」

「そうか? んなら……【ブレイククロー】!」

「っ! 【つじぎり】!」

 

 ザングースは一気に加速して接近。相手の(ふところ)へ飛び込みます。そして、そのままの勢いで大きく左腕を振りかぶり(するど)(とが)った爪を、勢い良く相手に向かって叩き付けました。それに合わせてハブネークも、負けじと鋭利(えいり)な刃物のような尻尾で斬り付けます。

 接触はほんの一瞬。しかしほんの(わず)か、ほぼ同時ですが2つ(・・)の音が聞こえました。

 ザングースは腕を振り切ったまま通り過ぎ、ハブネークも尻尾で切り裂いた姿勢で静止します。

 どちらが先に倒れるのか、それを見守る時間が1秒か2秒か、それともまだ一瞬のことなのか、緊迫(きんぱく)した空間が辺りを支配していた所に、ぐらりとハブネークが崩れ落ち、そのまま動かなくなりました。

 

≪ハ、ハブネーク戦闘不能! よって、勝者、アカネちゃん!≫

「やったでぇ!」

 

 喜び飛び跳ね、そのままザングースに抱き付くアカネさん。それを困ったようにオロオロするザングース。

 おめでとうございます。

 この言葉は、アカネさんが戻ってきたら改めて(おく)ることにしましょう。




 誰やこのトレーナー! コガネのジムリーダー、アカネさんや!
 ポケスペ本編では、スイクンの氷像相手に中々の戦闘を見せていたアカネですが、対抗戦でのカスミとの試合では一方的に(2ページで)やられてしまい良い所ありませんでしたので、こちらで活躍させました。
 これなら立派なジムリーダーですよね?

 ザングース対ハブネークは、ポケスペ本編でも互いにライバルとしてルビーの前で決闘をしていましたが、あみだくじの結果でノーマルタイプのアカネと毒タイプのアンズがぶつかると分かったので、是非ともやりたいと思いました。

 所で、本作の主人公のミカンちゃん。出番がないので仕方ないのですが、完全に解説者ポジションですね。


 以下、技について
 ポケモンの二次創作をしていて思いましたが、色々妄想出来て面白いですね。その中でも技について、PPのことなどでご指摘を頂きましたので、私なりの見解を改めて記しておきたいと思います。

・PPについて
 ゲームなどでお馴染みの技の使用可能回数のことです。
 オンラインで使用するような主力ポケモンには、とりあえずマックスアップで上限を引き上げる作業を行いますよね(まぁ、PP切れを起こす前に決着が付くことがほとんどですが)。
 ポケスペでも、PPの設定は反映されています。PPだけでなくHPも表示されたりしており、ここの所はゲームの設定に沿っているものですね。
 本作に於いてはそのPP設定をあえて排除し、ポケモンの体力、スタミナによって使える技の数に(大雑把ですが)制限を設けています。理由としては、ポケモンをデータの集合体、デジタルの存在ではなく、あくまで息のある生物であると考えた場合に、このPPという表現は不釣り合いだと勝手に判断したまでです(まぁスタミナとは別に、ポケモン独自の何とかエネルギーとかからエネルギーが供給されるという考えもしましたが、そうなると仮にスタミナ切れで息も絶え絶えで地面に倒れ込んでも、【かみなり】はPP10なのでその状態でも撃てるというのは、何か違う気がしただけです。あくまで独自解釈です)。
 本作では、第1話から述べていますが、スタミナ切れで行動不能で敗北という表現がある通り、そういう勝敗の決め方もあるということにしています。自身のエネルギーを振り絞って技を放っている訳ですから、使いすぎれば消耗が激しくて倒れてしまうのは、生物としては普通だと思います。機械制御されたロボットなら別ですが(コンセントに繋いでいる場合に限ります)。

 他にも、技の練度や使用出来る技が4つなどに関することも一応、妄想しましたが、長くなりすぎましたので、今回はこれだけです。お目汚し申し訳ありませんでした。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。