ポケモン世界に転生したと思ったらミカンちゃんだったのでジムリーダーになることにした。【完結】   作:木入香

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 ハッピーハロウィンって何ですか?(真顔)

 第3試合、ナツメvsツクシ始まります。

 ステージ上でのツクシの口調は、あえて丁寧口調を外しています。
 特に理由はありませんが、まぁ、戦いに出る為の覚悟ということに、そんないい加減な感じに考えておいて下さいw

追記:誤字報告ありがとうございます。


第16話 vs アメモース

 第2試合目は無事にアカネさんが勝利を収めたことで、1勝1敗となりました。次の第3試合は、ジョウト側はツクシさん、カントー側はナツメさんの戦いです。

 試合開始前までに、先程のザングースとハブネークの一連の流れを振り返ります。

 最後の攻撃の前、お互いにゲームで言う所の積み技を使用して準備を整えました。ザングースは【つめとぎ】。ハブネークは【とぐろをまく】。

 ザングースの方は分かりやすく、両手の爪を(こす)り合わせることで技名通り、爪研(つめと)ぎと行って爪を(するど)くし、攻撃力を上げると同時に相手へ狙い定める為に命中率も上がります。

 一方でハブネークの【とぐろをまく】ですが、蜷局(とぐろ)を巻くことで弱点である前面を隠して背部の硬い(うろこ)で身体を守って防御を上げると同時に、精神が落ち着かせることで攻撃に集中出来るようになる為に攻撃力と命中率が上がるものです。

 しかし、蜷局を巻いた状態でなら守りは問題ないでしょうが、攻撃の為の移動が出来なくなってしまいます。自ら攻撃を行う為には、尻尾や牙が届く範囲にまで相手に近付いてきてもらう必要があるということです。

 蜷局を巻いたままでは移動出来ないので当たり前ですが、ハブネークから接近して攻撃を行うならば、元の状態に戻る必要がありますから、攻防一体の体勢を自分から崩すことになりそれは明確な(すき)となってしまいます。ですが、動かなければ隙のない完璧な形です。少なくとも並の物理攻撃では突破出来ないでしょう。しかし、それをアカネさんのザングースは一瞬で相手の防御を突破して一撃で仕留めてみせました。

 練度(れんど)の差もは勿論(もちろん)あるでしょうが、それよりもあの時の接触時に聞こえた2つの音。ザングースは左手の爪で攻撃しようとしていました。しかし、右側から来る尻尾の攻撃を右手の爪で(はじ)き返したのです。そうしてほんの僅かに(ゆる)んだ防御の隙間を見逃さず、すかさず左で一気に切り裂いたのだと思われます。

 【ブレイククロー】。攻撃時に相手の防御を崩すことがある技。それを1回目の右で受けた時に行い、そして崩された所に2回目の左をねじ込んだのでしょう。これは手数の差ですね。ハブネークが尻尾の一刀流だったのに対して、ザングースは二刀流で挑んだ訳ですから。

 いずれにせよ、1試合目も2試合目も、最後の最後に緊張する激しい試合でした。

 

「おめでとうございます」

「おぉ、ミカン! ありがとな!」

「アカネさんが引き戻した勢いに乗って、ボクも頑張ります」

「次はツクシ君やもんな。応援しとるで!」

「はい!」

 

 元気に返事をして、彼はステージへと駆けていきました。

 

≪お待たせしました! それでは、第3試合! ヤマブキジムのナツメさん対、ヒワダジムのツクシさんです!≫

「よろしくお願いします」

「……」

≪試合、開始です!≫

 

 宣言と共に場にポケモンが現れます。

 ナツメさんはバリヤード、ツクシさんはアメモースです。

 

「アクアジェット!」

 

 これまた先程のアカネさんと同様に先手を取って、その勢いのまま優勢を取ろうという算段でしょうか。しかも、アメモースの大きく発達し、巨大な目のように見える触覚(しょっかく)を直視してしまったバリヤードは、ほんの僅かですが動きが(にぶ)くなりました。

 

「【いかく】か……だが」

「そこだー!」

「無駄だ」

 

 ですがすぐに反応してどうにか水をまとった突撃を回避。そこから距離を置くような形で、ステージ上をパントマイムのような仕草をしながら走り出します。これは、ポケスペでも見た【バリアー】の家を建築しているのでしょうか? しかし、速度の乗ったアメモースはすぐに追い付いて攻撃を仕掛けます。

 

「逃がさないよ! 【あやしいかぜ】!」

「ほぅ」

 

 ゴーストタイプの技はエスパータイプにとって効果抜群です。風の勢いもあってか、大きく吹き飛ばされます。しかし、さほどダメージがないのかすぐに立ち上がります。

 

「【フィルター】……」

「ご名答」

 

 ナツメさんのバリヤードは【フィルター】でしたか。効果抜群の技を受けても威力を弱める特性でしたね。

 

「でも、まだまだぁ! 【アクアジェット】!」

 

 威力は弱いですが、確実に相手よりも素早く行動出来る技を選択することで、常に次の攻撃へ仕掛けられるようにしているようです。

 アメモースは、【いかく】にも用いることが出来る巨大な触覚を持っていますが、その大きさはそのまま弱点になっています。あの触覚は水に()れてしまうと重くなってしまって、空中で姿勢を保持することが出来なくなってしまうのです。しかし、ツクシさんのアメモースは機動力が落ちる様子もなく、連続して【アクアジェット】で機動戦を仕掛けています。

 

鱗粉(りんぷん)ですか」

「ミカン?」

「あ、いえ、何でもありません」

「何か気付いたって感じ丸わかりやで?」

「あー、まぁ、そうですね」

「何に気付いたん?」

「はい。アメモースは、触覚が塗れると重くなってしまい、飛び続けることが難しくなってしまいます。ですがツクシさんのアメモースは【アクアジェット】を使い続けているのにその様子がありません。きっと、自身の鱗粉で触覚を保護しているからではないでしょうか」

「そうなんか。そんな弱点があったんや……」

 

 ポケモン図鑑の知識ですので、知らない人は知らないでしょうね。ちなみにエメラルド版が初出(しょしゅつ)です。

 

「【あやしいかぜ】!」

 

 また鋭い突風で攻撃を仕掛けます。

 しかし、それはとある場所で突如向きを変え、霧散してしまいます。

 

「これは……まさか!」

「残念だったな」

「【ひかりのかべ】……いや、違う。あれは、ダメージを軽減しても、なかったことにすることは出来ない。しかも【ひかりのかべ】なら光に反射して視覚出来るはず。なのにこれは無色透明で(さかい)が分からない。見えない壁が間にあるようだ」

「……そう。これは、ただの見えない壁だ」

「何?」

 

 あのバリヤードのパントマイムの動き、私では知覚出来ませんが、細かく指先を震わせることで出る波動によって空気中の分子の動きを止めることで、見えない空気の壁を作り出しているようです。しかも空気をその場で固定していることで、激しい攻撃にも耐えることが出来る……技ではないですが、限りなく技に近い技術(スキル)。それが、バリヤードという生き物です。

 とはいえ、野生や並のポケモンでは、ここまでの完成度の高い壁は作れません。ナツメさんのポケモンだからとしか言いようがありません。

 

「えげつないなぁ」

「えぇ、ですが、見て下さい」

「あん?」

「ツクシさん、楽しそうですよ?」

 

 ツクシさんは、どこに壁があるのか分からないので無闇に動くことが出来ない状態。完全にアドバンテージはナツメさんにある訳ですが、この状況でも笑っています。どういうことでしょうか。

 ちなみに、本来ならステージ上の声はこちらには届きません。音は空気を振動させることで伝わりますが、今、あちらは空気を固定した壁で囲まれています。震える空気がなければ音は聞こえません。が、彼等の会話は筒抜けです。何故なら、観客にバトルの状況が分かりやすいよう、私達ジムリーダー達にはそれぞれ試合開始の直前にピンマイクが装着されます。ここから発する電波は壁を通り抜けるので、無事何事もなく会話を聞くことが出来るということです。

 

「舐めないでもらいたいな? 見えないなら、見えるようにするまでだ!」

「む?」

「全方向に向かって【ぎんいろのかぜ】!」

「何?」

 

 (はね)をばたつかせ、鱗粉を乗せた風をばらまきます。あれでは、威力がないので壁を破壊することが出来ないはず。しかし、ツクシさんの狙いは、壁を壊すことではなかったようです。

 

「これは?」

「どうかな? これで壁の場所は分かった」

 

 鱗粉を見えない壁に付着させることで、少なくともツクシさんの周囲の壁の様子が見えました。ただ、鱗粉が内側から付着していますので、中の様子を見ることが出来ません。

 

≪おおっと、ツクシさんは【ぎんいろのかぜ】を使って、見えない壁を見える壁にしました! しかし、周りの鱗粉で私達からは中で何が起こっているのか、音声で想像することしか出来ません!≫

 

 そして、その音声も、次第に聞こえづらくなってきました。鱗粉を拡散させたことで電波障害を発生させ、ピンマイクの電波を阻害させるようになったのです。

 

≪音も分からなくなった今、中の様子が全く分かりません! 果たして、どちらが勝つのか……!≫

 

 次の瞬間、ドゴン! と空気を振るわせてステージ上で音がしました。そして……派手な破壊音と共に、箱の中からバリヤードがボロボロの状態で吹き飛ばされてきました。しかし、かろうじて受け身を取ることで地面に叩き付けられることを回避した上で、更に立ち上がりました。

 遅れて、箱の中からはナツメさんが悠然(ゆうぜん)と歩いてきて、バリヤードの様子を確認してボールに収めました。

 

「驚いたな」

「危なかったけどね!」

 

 そして、続けて箱の中から飛び出して来たのは、ヘラクロスとツクシさんでした。アメモースと入れ替えたんですね。

 

「空気の分子を固定して作られたとしても、あくまで物質を固めたものだ。そして、それが”壁”であるなら、破壊出来ない道理はない!」

 

 ヘラクロスの【かわらわり】ですか! 壁を破壊しつつ、その壁を張った張本人……張ポケモン? (ごと)殴り飛ばしたということみたいです。

 しかし、バリヤードはエスパーとフェアリータイプを持っています。格闘タイプの技である【かわらわり】では、そこまでダメージを与えられないはずなのですが、現にあのバリヤードは立ち上がることが出来る程度の体力は残っていたものの、身体中の傷は相当強力な攻撃を打ち込まれた証拠。ツクシさんのヘラクロス、一体どれだけのパワーがあるんですか?

 

「仕方ない。あれで終わらせるつもりだったが……」

 

 そう言って繰り出されたのは、風鈴ポケモン、チリーンでした。

 

「もう少し付き合ってやる。ただ、退屈なものになるな」

 

 と、チリーンが口を大きく開けて眠そうな声を出しました。【ちょうはつ】……ではないですね? あ、ヘラクロスが釣られて……【あくび】ですか!

 欠伸(あくび)連鎖(れんさ)し眠気を誘うと言いますが、あれはポケモンの技、眠気を誘う所か本当に眠らせてしまいます。そのカウントダウンが今、始まりました。

 ヘラクロスが眠る前にチリーンを倒せればツクシさんの勝ち。眠ってしまえば、そこに追撃をしてナツメさんの勝ち。ですが、これは圧倒的にナツメさんが有利です。時間稼ぎをすれば、勝手に眠ってくれるのですから。

 

「くっ! 急いで倒すよ! 【メガホーン】!」

「【なきごえ】」

「ヘラクロス!」

 

 攻撃が当たる瞬間、大声で鳴き声を上げて攻撃の勢いを弱める技、【なきごえ】。【メガホーン】を当てようと、姿勢を定めたその瞬間をピンポイントに狙いました。それによって、一瞬(ひる)んでしまい重心移動がスムーズに行えず、十分な威力の技を繰り出すことが出来ませんでした。それでも、パワーのあるヘラクロスの一撃。チリーンは大きく後ろへ突き飛ばされます。

 

「それは危険だな。封じさせてもらう。【かなしばり】」

「しまった!」

 

 直前に使った技を封じる【かなしばり】。これによって、ヘラクロスのメインウェポンが使えなくなってしまいました。

 

「まだまだぁ! 【つのでつく】!」

「【なきごえ】」

 

 猛攻が始まりますが、その(たび)に絶妙なタイミングで【なきごえ】を行うことで、打点をズラしたり、勢いが弱まった所を躱したりして、極力ダメージを食らわない戦いをしています。しかし、同じことを繰り返せば慣れてきます。実際に、時折声を出す素振りを見せるだけで身構えてしまい、結果攻撃が遅くなって躱されてしまうということも出て来てしまった。

 そういったフェイクを混ぜつつ、絶妙に時間を(けず)っていきます。

 

「よし!」

 

 そして、刻一刻(こくいっこく)と制限時間が(せま)る中、ついに【かなしばり】を破ったヘラクロスがチリーンに向けて突撃します。

 

「【メガホーン】!」

「時間だ」

「あぁ! ヘラクロス! しっかり! 起きて!」

 

 しかし、ツノが届く直前に、急激な眠気がヘラクロスを襲ったのか、これまでの激しい動きが何だったのかその場に深い眠りに()いてしまいました。

 

「残念だったな。【サイコキネシス】」

 

 格闘タイプもあるヘラクロスにとって、エスパー技は効果抜群です。しかも眠っている状態で防御態勢も受け身も取れない状況で、直撃を食らってしまい、そのまま戦闘不能とされてしまいました。

 

≪勝者、ナツメさんです!≫

 

 やや落ち込み気味に戻ってくるツクシさんに、(ねぎら)いの言葉を(おく)ります。

 

「お疲れ様です。残念でしたね」

「いやー、あの戦い方はえげつなかったわー。流石の強さやわー」

「オレは、あの透明な箱の中で何があったのか、知りたいな?」

「え、あ、はい。それはですね……」

 

 マツバさんが切り出したことで、ツクシさんが鱗粉で内側から染め上げられた箱の中での出来事を語り出します。

 中が見えない程に撒かれた鱗粉でしたが、ある程度ムラがあったようで、特に上部に光が差し込む穴がいくつも()けられていたそうです。そこから入り込んだ光が鱗粉で反射し、そこそこ明るかったのだとか。

 

「ボクは、壁を突破する為に、それを行ったバリヤードを倒すことにしました。まず動きを封じようと。ただ、相手はかなりの強者です。そうなると、正攻法では駄目だと思い、【しびれごな】を混ぜた【ぎんいろのかぜ】で攻撃しました」

 

 1回目は成功したそうですが、効果は薄く、またすぐに見破られてしまったことで2回目は防がれた所か跳ね返してきたそうです。

 

「【マジックコート】ですか」

「はい」

 

 状態異常にさせる技を相手へと返し、相手を状態異常にさせる技です。それによってアメモースは(しび)れてしまい、そこに【でんげきは】が撃ち込まれたことですかさずヘラクロスにチェンジ。

 ヘラクロスの格闘技も、タイプの相性で問題なく受けられるはずだったのでしょうが、アメモースとの戦闘で思いの(ほか)にダメージをもらっている上に、少量でも【しびれごな】を受けていたことで行動にほんの僅かな遅れが生じ、そこを見逃さずに【つっぱり】で壁に押し付けたのだそうです。あの傷はその時に付いたものだったのですね。

 そして、後のことは私達も見ていた通り、バリヤード毎【かわらわり】で壁を突破してみせたヘラクロスは、チリーンと戦い負けてしまったということです。

 ポケスペでも、ナツメさんとツクシさんの試合はナツメさんの一方的な試合運びによって、ツクシさんは惨敗してしまいます。この世界でのツクシさんも、同じ負けとなってしまいましたが、実際にこの目で見て、ツクシさんの話を聞くに、十分健闘(けんとう)したのではないかと思います。ポケスペではバリヤードに敗れたヘラクロスでしたが、今回は逆にヘラクロスがバリヤードを追い詰める展開となりました。

 次は第4試合ですね。果たしてカツラさんは出てくるのでしょうか?

 私は、ステージを挟んで反対側のカントー地方ジムリーダー達が座る席へ目を向けました。




 鱗粉って、あんな(本文参照)こと出来るんですかね? 分かりません。
 まぁポケモンの技だからということでご容赦をw

 以前も出したバリヤードですが、別に私は特にバリヤードが好きという訳ではありません。
 初代から大好きなのはコイル、レアコイル(ポケモン総選挙は知りません。4コマ漫画も知りません。知らないことにさせて下さい)です。
 2代目に鋼タイプが追加されて、鋼という響きだけで格好いいと興奮し、以降鋼タイプ統一パーティを組むようになりました(一時期砂パに浮気しましたが)。
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