ポケモン世界に転生したと思ったらミカンちゃんだったのでジムリーダーになることにした。【完結】   作:木入香

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 ゲームの世界では、何曜日何時に行ってもジムリーダーもジムトレーナーもいますが、明らかな過重労働ですね。
 ということで、それなりに変更させてもらいました。
 後、ミカンちゃんの両親の職業はオリジナル設定です。ご了承下さい。


第2話 vs レアコイル

 朝になりました。

 いつも通り5時に設定したポケギアのアラームが鳴る前に目が覚めた私は、上体を起こして軽く伸びをしてからベッドから出ます。そして、パジャマからランニングウェアに着替えて一階へ降り、水を一杯飲んでから外に出ました。そして、簡単に準備運動を行った(のち)に早朝の街へと走り出します。

 40番水道へと繋がるアサギ海岸へと到着しました。まだ朝も早く、また春先ということで若干冷えることもあるのでしょう。海岸沿いに人は誰もいなくて、細波(さざなみ)の音が静かに聞こえます。

 これは1年半前から続けている日課です。旅をしていた頃は、船での移動もありましたが、基本徒歩での移動ですので運動量はそこまで問題なかったのですが、ジムトレーナー、そしてそれを経てジムリーダーとなって地元のアサギシティに腰を()えた今では、運動不足は解決しなければならない問題です。

 ポケモントレーナーとは、ポケモンの後ろで指示を出すだけが仕事ではありません。トレーナーとは、そのままの意味で練習の指導者、もしくは競技者の肉体的コンディションを整える担当者、あるいは動物を訓練する人、訓練士、調教師などと表現出来ます。一括(ひとくく)りにすると指導者となりますが、いずれもポケモンを正しく導く存在でなければなりません。その為には、より多くポケモンとコミュニケーションを図り、お互いの信頼関係を高める必要があります。私が行う体力作りはその一環(いっかん)です。

 

「みんな、出て来て下さい」

 

 私は6個のモンスターボールを出すと、軽く放ります。中からは手持ちのポケモンが飛び出して来ました。みんな元気な様子で、体調不良といった感じは見受けられません。

 

「レーちゃん」

 

 まず呼んだのはレアコイルのレーちゃんです。

 私の最初の相棒で、まだ6歳の頃に父の務めるアサギ鉄鋼へ遊びに行った時に、フワフワと移動していたコイルを、両手でハシッと捕まえたのが最初の出会いです。

 いきなり野生のポケモンを素手で触れたことに周囲の大人は驚いていましたが、人の出入りの多い会社の近くに生息しているだけあって人慣れしているからか、いきなり攻撃をしてくることもなく落ち着いてこちらに視線を投げてきた覚えがあります。

 のんびりとしているように見えますが、意外と冷静な子で、捕まえたのが幼い私と見ると仕方ないなぁとでも言うように目を閉じた時はつい笑ってしましました。

 それから、父からモンスターボールをもらって交渉開始です。

 コイルから手を離して、私は彼か彼女か、性別がないので表現が難しいですが、その子の正面に座って、友達になって下さいといった思いを延々と語りました。呆れたのか諦めたのか分かりませんが、とにかく一緒に来てくれるという意思を感じたのでモンスターボールを差し出すと、自ら入ってくれました。これが初のポケモンゲットとなります。

 

「ルーちゃん」

 

 次に呼んだのはハガネールのルーちゃんです。

 10歳で旅に出てちゃんとポケモンバトルをして捕まえた、最初のポケモンです。

 私は、旅の始めにアサギジムに(いど)んでバッジを入手し、それからどうするか検討(けんとう)してからジョウト地方を回るのではなくまずカントー地方に行こうと思いました。思い立ったらまず行動です。すぐに高速船アクア号に乗り込んでクチバシティへと移動しました。チケット売り場で働く母と遭遇(そうぐう)した時は、呆れられてしまいましたが、(こころよ)く送り出してくれました。

 クチバシティ到着後は、まずジム戦の前にクチバシティ近くにあるディグダの穴へ移動し、そこでイワークを捕まえました。

 ゲームでは登場しない場所ですが、地中や洞窟(どうくつ)に住むという生態ですからいたのでしょうね。最初遭遇した時は驚きました。クチバジムに挑むなら地面タイプが必要と考えて訪れてみれば、まさかの大当たりです。

 ポケモンバトルに関しては4年間ずっと一緒にいたことで意思疎通(いしそつう)も完璧で、かつ練度(れんど)も高いコイルを相手に(ひる)むことなく勇敢(ゆうかん)にも向かってきて……見事に【ラスターカノン】を食らって返り討ちにされていました。

 そんな彼も今ではハガネールとなって、立派に育っています。

 ちなみに、ディグダの穴ではもう一匹ポケモンをゲットしていたのですが、その子はすぐに旅立ってしまいました。

 

「クラウン」

 

 三番目に呼んだのはエンペルトのクラウンです。

 ニックネームから察することが出来ますが、交換で手に入れました。ジム戦を終えてポケモンセンターへ行った際に、シンオウ地方から来たというトレーナーさんが、私の色違いの赤いサイホーンを見て是非(ぜひ)交換してくれと持ちかけられ、それで交換して手に入れたのが当時まだポッチャマだったクラウンです。

 交換したポケモンはバッジがないと言うことを聞かないというのはゲームでありますが、ようは、いきなり主人が替わったことで信頼関係も築けていない、新しい主人の指導力、胆力(たんりょく)も分からず不安で疑ってしまう。そして前の主人のことを思い出して反発してしまうことが原因と考えています。

 そこで私が行ったことは単純です。ただ愛情を込めてしっかりと正面に向き合ってコミュニケーションを取るというだけです。

 言葉だけでなく、身体を撫でたり、一緒に遊んだり、食事も睡眠も一緒にして、時間を掛けて焦らずゆっくりと。そうして関係を繋いできました。

 元々穏やかな子だったのか、割と早く(なつ)いてくれたように思えます。

 クラウンというニックネームは元々付いていたので変えられませんが、女王らしい気品も感じられますのでむしろこのままの方が良いですね。

 

「ムーちゃん」

 

 クラウンの次に呼んだのはエアームドのムーちゃんです。

 相変わらず羽毛がゴワゴワです。

 ジョウト地方に戻る途中、トージョウの滝近くの草むらでアリアドスの糸に絡まって動けなくなっていた彼を助けたのが出会った切っ掛けです。しかし、元々は脳天気な子なのか、糸に絡まれながらも気にする様子もなく、のんびりぐっすりと眠っていたのは呆れてしまいます。そもそも何故糸に絡まっていたのか、未だに不明です。

 羽が生え替わっても古い羽が抜け落ちない体質なのか、普通のエアームドと違ってすごく見た目がゴワゴワしています。冬場はそれで良いのかもしれませんが、夏場は暑そうです。

 羽が多く邪魔なのか、上手く飛べなかったり動きが遅かったりしますが特に問題ありません。

 バトルになると意外な一面が見られるので面白いです。

 

「クーちゃん、ラーちゃん」

 

 続けて二匹の名前を呼びます。

 クチートのクーちゃんとココドラのラーちゃんです。

 トージョウの滝から真っ直ぐアサギシティまで歩いて来てから再びアクア号に乗って、今度はホウエン地方へと行きました。そしていくつか船を使って辿り着いたのが、ムロタウンの北、石の洞窟です。

 そこで仲良く遊ぶ二匹のポケモンと遭遇、ダブルバトルを挑んで勝利を収め、仲間になったのがクーちゃんとラーちゃんということです。

 クーちゃんは女の子、ラーちゃんは男の子で一見カップルのように見えますが、タマゴグループが違うのでタマゴは出来ません。それに、見た感じカップルというよりもすごく仲の良い親友という感じで、いつも元気に遊んでいます。

 今もモンスターボールから飛び出したと思えば、真っ先に波打ち際を競争してしまったので呼び戻します。

 無邪気なクーちゃんとやんちゃなラーちゃんで相性が良いのか、何をするにも一緒にいることが多いです。時々悪戯(いたずら)に巻き込まれてしまうのが悩みの種ですが……とはいえ、仮に悪戯を仕掛けられたとしても、すぐにレーちゃんが見破ってくれますので大事(だいじ)に至ったことはありません。流石(さすが)相棒です。

 以上が私の手持ちです。

 しかし、旅の中で、そして旅を終えてからもしっかりと鍛錬(たんれん)と育成を続けてしまったことで、生半可(なまはんか)な相手では負けない子達になってしまいました。その為、私のジム戦は倒せなくてもしっかりと実力を見せることが出来ればバッジを差し上げるという形を取っています。

 ジム戦用のポケモンを用意するか、ポケモン協会から借りるというのも手ですが、やはり自分のポケモンで向き合ってあげないと、ポケモンバトルも立派なコミュニケーションですので、そういう小さなことも(おろそ)かにする訳にはいかないのです。

 

「準備運動しますよー」

 

 そう声を掛けて、思い思いに身体を動かしていく。レーちゃんだけはフワフワと浮かんでいるだけですが、動かす関節などがないので仕方ないです。一応特殊能力みたいな感じで、磁石やネジは分離して一定の距離以内なら遠隔操作出来るので、体操もどきは出来ますが意味あるのでしょうか?

 

「それでは、よーい、ドン!」

 

 運動の後は走り込み。砂浜という不安定な足場でいかに素早く移動するかですが、レーちゃんとムーちゃんは空中にいるのであまり意味がないですね。ムーちゃんは一応走ることも出来ますが、羽毛の関係上、走るというより歩くという感じになってしまいます。

 しっかりと身体を動かした後は、軽めのスパーリング。ちなみに私はやりません。どの子と組んでも鉄を殴るのと同じですからね。一人寂しく合気道の型を行います。私自身が戦ったりする訳ではないのですが、精神を落ち着かせ、呼吸を整え、思考を真っ白にする意味も込めて続けています。

 

「ふぅ、それでは、家に帰りましょうか」

 

 時間を見ると6時を過ぎた頃。鍛錬の終了を告げ、モンスターボールに入れていく。

 そしてまた、私は来た道を走って家まで戻る。これが毎朝欠かさず行う日課です。

 帰宅してからは、シャワーを浴びて汗を流し、着替えを行った後に朝食を食べます。ポケモン達のご飯はジムに行ってから行います。クーちゃんやラーちゃんのような小型サイズのポケモンなら家で食べさせることも出来るのですが、ルーちゃんのように大きくて重い子となりますと、家へのダメージが深刻なものとなってしまいます。そして食事時間に違いを作らないように配慮した結果が、ジムでの食事ということです。そして、ジムでの食事は休日であっても行います。他の大型のポケモンを持つトレーナーさん達は、普段どこでポケモンに食事を与えているのか、不思議です。

 食事を終え、身支度を調(ととの)えたら時計は7時半。出勤です。

 ジムに到着したら鍵を開けて、ポケモン達を出して食事。その間、私は室内を軽く掃除を行い、書類の整理。ポケモン協会への報告書などをまとめます。

 

「おはようございます!」

「レミさん、おはようございます。今日もよろしくお願いします」

「よろしくお願いしまーす」

 

 8時になりますと、ジムトレーナーのレミさんが来てくれます。そして二人でジムの点検や予約の確認、ポケモン達のご飯の後片付けなどを行います。そしてそれが終わると、私の化粧や髪型いじりが始まります。

 私も女性ですから、身だしなみはしっかりしたいと思っていますが、こう毎朝忙しいと中々メイクに時間を作ることも出来ませんので、簡単な下地だけ作った後はジムへ行って、そこでレミさんに手直しや仕上げを行ってもらうというのが日常です。

 しかし本当にレミさんのメイク術は素早くてでも繊細(せんさい)です。流石現役女子高校生です。私も一応高校生なのですが、ジムリーダー業務の他にも二つ仕事を(かか)えていますのでとても通う時間はなく、通信教育で単位を取得しています。ちなみに中学の単位も旅をしながら通信教育で行い、レポートをポケモンセンターのパソコンで送信したり配達を依頼したりすることで提出していました。

 レミさんはジムトレーナーを務めていますが、単位を落とさない程度にはちゃんと高校に通っています。というか、ジムトレーナーを務めていることで、ある程度の単位は免除されているそうです。なので毎日という訳ではないですが、週6日の営業の内4日もジムトレーナーとして活躍してくれています。水曜日と金曜日は、午後から別の業務がありますのでジムは午前のみ。ですので、レミさんとは別にジムトレーナーを雇っています。まぁ、母ですが。ジェントルマンのカーネルさんではないです。あの人は時々ふらっとアサギの灯台に現れては、ヨルノズクと(たわむ)れて帰って行く謎の存在です。

 ちなみに、ジムの営業時間はジム(ごと)に違います。週に2日しか開いていないジムもあれば、午前のみ毎日開いているジム、私の所と違って予約なしで飛び込みのみ受け付けているジム、不定期で場所問わずジムとして活動しているジムリーダーや、深夜まで営業しているジムなど全国には多種多様なジムがあります。

 

「それでは、そろそろ9時になりますのでジムを開けますね」

「はい。レミさんお願いします」

 

 ジムの運営時間は月曜日から土曜日までの6日。水曜日、金曜日、土曜日は午前のみ営業。水曜日と金曜日は午後から別の仕事を入れいて、土曜日の午後と日曜日は休みです。基本完全予約制で、前日までに予約をしたトレーナーさん1組当たり30分の枠を設けて相手をします。

 挑戦者が勝てばバッジと賞金を差し上げます。負けてもお金をもらうことはありません。ここはゲームと違う所ですね。技マシンも渡しません。ここもゲームと違う所です。

 

「挑戦しに来ました! よろしくお願いします!」

「はい、お願いします」

 

 今日もジムリーダーとしてのお仕事、頑張ります。

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