ポケモン世界に転生したと思ったらミカンちゃんだったのでジムリーダーになることにした。【完結】 作:木入香
展開に悩みましたが、こうなりました。
ほのぼの試合編は終了し、今回からいよいよクライマックスへ向けて動き始めます。それでは、どうぞ。
追記:誤字報告ありがとうございます。
それは突然起こりました。
≪この会場にロケット団残党が侵入したッス! オレの活躍で最悪の事態は回避したッスが、コントロールルームのプログラムが工作されてて、リニアの安全装置が働かねぇ! 事故が起こるかもしれねぇから! 全員早く逃げてくれ! 以上!≫
試合後の互いに健闘を
「ロケット団だって!」
「そんなどこに!」
「観客の安全が第一だ。避難させよう!」
「今の少年の
「馬鹿野郎! こんな所でこんなくだらない悪戯するかよ普通!」
「逃げるったってどこに!」
「落ち着いて下さーい! 現在、状況を確認中ですので!」
「そんな
「お母さん!」
「迷子がいる! 大丈夫か! おい、この子の母親はどこだ!」
「一体どれだけのロケット団が……!」
「誤報に決まっているだろ!」
「しかし!」
観客スタッフ、そして私達ジムリーダーが混乱し怒号が飛び交う中、私は、ジッと巨大モニターを見つめ続けます。
「ミカン! 何をボーッとしてんねん! どうすんねん!」
「いえ、あれを……」
私が指差した方向へアカネさんが、そしてそれに釣られて他のジムリーダーが、続いてスタッフ、観客が再びオーロラビジョンへ目を向けました。そこには、再建したばかりのスズの塔の上空でデリバードに乗ってホウオウと戦う、
すると、今の今まで騒然としていた会場内がピタリと声が
しかし、それもすぐに混乱の波へと飲み込まれ、新たな騒ぎの原因となって
その状態に追い打ちを掛けるように、ステージが真ん中で2つに割れて広がり、リニアのレールが露出していきます。直後、リニアが減速しながら会場へと突入してきます。
≪皆さん落ち着いて下さい! システムの手違いの可能性があります! 現在確認を……≫
「そんなこと言っている場合か! ゴールド君の言った通りならば、あの中に!」
真っ先にハヤトさんが飛び出し、ワンテンポ遅れてツクシさんも後を追います。
リニアは何事もないように私達の目の前で停止し、ドアが開かれました。
そこには、黒ずくめで胸に”R”の文字。顔の半分が仮面で
「あれはっ」
「ロケット団残党員!」
反対側のドアも開かれたのでしょうか。こちらからではリニアが壁となって向こうの様子が分かりませんが、タケシさん、カスミさん、エリカさんといった正義のジムリーダーならば、見過ごすことはしないでしょう。ほぼ同時に対処をするはずです。
すると、ロケット団残党は、一斉にけむり玉を投げ付けました。リニア周辺を超え、ステージ全体、そしてステージ下のジムリーダー席にまで煙が充満し、周りの様子が分かりづらくなっています。
ヤナギさんがこの騒ぎと煙に
この日の為に、
と、リニアが動き出したようです。ジムリーダー達を
「見つけました」
誰にも気付かれないように気を付けていますが、つい
「
ボソボソと指示を出して、煙の中でボールから出します。すると、コクリと
さて、私もジムリーダーとしての責務を果たすことにしましょう。いつまでも子供達に任せてばかりでは申し訳ありません。
そう決意をしている間にも、事態は進んでいきます。
『計画通り……いや、計画以上かな。今ここで最後の邪魔者を始末出来るのだからな! そして紹介しよう! 新たな我が
ステージ上の煙が晴れて、そこに
『いと高き空、
会場全体に動揺が走りますが、私は空気を読まずにゆっくりとステージへと上がります。
「では、私がお相手しましょう」
『む? 貴様は……』
「お久し振りですね。仮面さん」
私の登場に、仮面の人の動きが止まります。
『てっきり、あのリニアに他のジムリーダーと一緒に隔離されたと思っていたのだが?』
「ふふふ、私どんくさいので、乗り遅れちゃいました」
『……』
相手のイライラがすごく伝わってきます。まぁ1度だけでなく2度もこうして邪魔をしてくる訳ですし、おまけに今の言葉は明らかに
そこに、マンタインを
「おい、ミカン!」
「あら、ゴールドさん、お元気そうで何よりです。そちらの方は初めましてですね」
「へ? あ、は、はい! クリスと言います。よろしくお願いします」
「はい、よろしくお願いします。ご存知だと思いますが、ミカンです」
「は、はい……」
「だあああ! 今はそんな場合じゃねぇだろ! 前見ろ前! 敵のボスがいるんだぞ! 何
「それもそうですね。では手短にお伝えします。お2人には逃げ遅れた観客の避難誘導を行って頂きたいです。その間、この場は私が抑えます」
「1人でやるってのか!」
「危険です!」
2人には反対されましたが、私は笑顔で後ろを振り返ります。すると、
「大丈夫ですよ。何て言ったって、仮面さんは……」
そして、ポトリと私の手の上に落ちたそれは、何かの古い巻物のようでした。
「これが欲しいのですよね?」
『貴様……何故それを……!』
「あなたにはあなたなりの情報網があるのでしょうけども、私にもそれなりの情報が入ってくるんですよ?」
完全に前世知識ですが、どうせ言っても信じないでしょうし、ハッタリに使えますのでこのまま嘘を突き通します。
ポケスペ知識で、この会場の避難者の中に仮面の人が求める特殊なモンスターボールの設計図を記した秘伝書を所有している人、モンスターボール職人のガンテツさんがお孫さんと一緒にいることは知っています。そして、彼はその秘伝書を常に肌身離さず持ち歩いていることから狙われてしまいました。
そこを私が前もって
大丈夫です。ちゃんと後で返しますよ。
『どこまで行っても邪魔をするかぁぁあああ! ホウオウ! ルギア! 奴らを始末しろ!』
「だから私1人でやるって言っているじゃないですか。ほら、2人は早く行って下さい」
「は、はい!」
「オレは!」
「駄目です」
「ミカン!」
私はゴールドさんに取り合わず、残り5匹のポケモンを全て場に出します。
「クリスさん、彼をお願いします」
「はい! ほら! ゴールド行くよ!」
「あ、こら離せ!」
2人が遠ざかっていくのを感じつつもジッと前を
「さぁ、簡単には通しませんし、これも渡しませんよ?」
『小娘ぇ……
その言葉を合図に、ホウオウとルギア、それぞれが攻撃を仕掛けてきます。ホウオウは【せいなるほのお】、ルギアは【エアロブラスト】ですね。それらを同時に同位置から発射することで、より大きくなった炎が私へ向けて襲い掛かります。
しかしそれは、1本の巨大な水流とぶつかったことで防がれます。巨大な炎と水がぶつかったことで、一気に熱せられた大量の水が蒸気となって一時的に視界が悪くなりました。
『何っ! そうか、そのエンペルトか! だが、たかが1匹で、伝説のポケモン2匹相手にどうやって!』
「気付きませんか?」
『何だと? これは……雨? まさか!』
「【あまごい】です」
炎タイプの技の威力を大きく低下させつつ、水タイプの技の威力を上昇させる天候変化技です。これによってホウオウとルギアのコンビネーション攻撃を弱め、
『
ここで2匹を倒すことが出来れば一番良いのですが、そう甘くはないですよね。ですが、出来る限りダメージを与えて弱らせ、次にバトンタッチするトレーナーさん達の負担を軽くしようと思います。それに、付け入る隙はあります。相手は、私がこの秘伝書を持っている為に、本気で仕掛けられない様子です。
邪魔者である私を殺したいでしょうが、その攻撃の余波で肝心の秘伝書まで
だからなのでしょう。相手の攻撃は私を狙いつつも、結構到達点は雑だったりしますので、対処が楽です。
「
『しまった!』
そして、その隙間を見逃す程私は甘くありません。雨を降らせている雨雲が突然雷雲へと姿を変え、そこから放たれた
雨状態での【かみなり】は必中技です。そして相手はルギアもホウオウも飛行タイプ。効果は抜群ですので、直撃させれば大ダメージは
『周りのポケモンを片付けろ!』
そうなると、私を守るポケモン達を集中して狙うようになりますね。
私個人としては、この秘伝書さえ燃やしてしまえば戦略的勝利になると思っています。ただ、
まぁ、その時に
「
そこを突破されてしまえば他の観客を人質に取られるなどの危険がありますから、割と重要任務です。
次に、上空を飛び回る
「
そして次に目を向けるのは、やんちゃコンビです。
「
ココドラは、鋼の身体を作る為に山から鉄鉱石を掘り出して食べますが、時折人の生活圏に現れては橋やレール、車などを食べてしまう特徴があります。そして現在、周囲はホウオウとルギアが暴れたことでセキエイ高原のポケモンリーグ会場の中は半壊状態。あちこちに瓦礫が散乱し、その大半は鉄筋コンクリートです。
先程のポケモンバトルで傷付いた分を、瓦礫を食べることで回復してもらおうということです。
最後、残った2匹を私の前に置いて指示をします。
「
『さっさと倒せ! 小娘から巻物を奪うのだ!』
グリーンさんとの試合では、ある種の賭けに近い縛りプレイをしていました。相手はホウオウとルギアで乗り込んでくることを知っていましたから、それに対抗出来る手段として
同じような理由で
その為、実質3匹の中から選んで戦う必要があり、結構
まぁ、この展開を知っていて、試合に勝とうと意気込んでいた訳ですから。私って結構欲張りなんですね。分かっていましたが。実際に今も、ヤナギさんを救いつつ悪事を
「
『そう何度もやらせるか! ホウオウ! 【しんぴのまもり】! ルギア! 【じこさいせい】!』
「あらら……」
【かみなり】による
相手はポケモンをゲットしてから日が浅く、また
ですが、これだけは言えることがあります。相手は全く本気を出していません。
不用意に自身の手持ちを出して正体がバレたくないのか、他のポケモンを使用する様子がありません。あくまで、ホウオウとルギア、そして本人が乗っているデリバードのみです。
「そこまで欲しいのですか? 時を
『貴様! 知って……!』
「知っているに決まっているじゃないですか。あなたの狙いがこれだと分かった段階で、この中身に興味を示さないはずがありません」
『ならば
「出来ません。材料は
『終わらせるのだ! 全てを!』
「させません!」
私達がこうして論戦している間も周りでは戦いが繰り広げられ、互いに指示を出さずにそれぞれ思うがままに攻撃し、防ぎ、
そこへ、乱入する姿があります。
「ミカン!」
「ミカンさん!」
「ゴールドさん、クリスさん! 避難者は!」
「全員誘導終わりました! 皆さん無事です!」
「とーなるとだ! 残るはコイツだけ! さっさとやっちまうぞ!」
私1人で互角だったのです。そこにゴールドさんとクリスさんが加わることで、数的にも戦力的にもこちらが数段有利です。それを
『ガキ共が……どれだけ抵抗しようとも、どれだけ食い下がられようとも、どれだけしつこかろうが構わん! どうでも良い! 我が計画が中断されることは決してない! 10年掛かりで進めてきたのだ! ここで手を止めるものか!』
「仮面の形が変わった!」
「それに身体も大きく! 一体どういうことなの!」
「何をするつもりです?」
『正直驚いている。この私を相手に1度ならず2度も戦い、そしてこうして立っていることに! だが、絶対に計画は止めない! 止まらない! 排除が出来ないならば奪うまで』
どうするのでしょうか?
私のポケモンは優秀です。この少なくともこの前衛が突破出来なければ、私の所まで辿り着くことは出来ません。
そう分かっていましたが、相手のプレッシャーに緊張し、手に持つ秘伝書をギュッと握りしめました。しかし、次の瞬間。
「あれ?」
「ミカンさん?」
「どうした?」
「秘伝書が……ない」
「秘伝書?」
「何ですかそれ?」
「特殊なモンスターボールを作る設計図。この人の狙いはそれでした。それが……」
『それは、こういう形をしているかな?』
ハッとして声のした方を見ます。すると、目の前にいる仮面の人の手にはいつの間にかムチュールがいて、その子が
「【トリック】……」
それにいち早く気付いた私は、悔しさで
今回でポケスペ本編13巻終了です。次回から14巻に入ります。
当初は、本編通りにゴールドとクリスにマスク・オブ・アイスと戦ってもらって、ミカンちゃんには避難誘導をさせようと書いていましたが、危険なことを子供達に任せるだなんて、こんなの私の書くミカンちゃんじゃないと思い、書き直しました。
本当は、奪われた原因は次回に持ち越そうとも思いましたが、絶対に読者にはバレると思っていっそのことそこまで書いちゃいました。
一応、ルギアでも使えますけど、信頼関係も
以上、補足説明でした(だからそれを本編で出せと)。