ポケモン世界に転生したと思ったらミカンちゃんだったのでジムリーダーになることにした。【完結】 作:木入香
ということで、本編をどうぞ。
「アイツ……自分のポケモンを……」
「ゴールドさん、今はそっとしておきましょう」
ヤナギさんが”
気付けば
「
「……どうするとは?」
「まだ扉は開かれています。今なら、まだ間に合いますよ?」
「……まだ、やるのか?」
「はい」
「あんな強いのにか?」
「はい」
「もう、この時間にいないのにか?」
「はい」
「勝てなかったのにか?」
「まだ負けていません」
「オレは……弱い……全力で戦って、全力で守って、それでも1匹抑えるだけで精一杯だった。ミカンが助けてくれなかったら、オレは……」
「大丈夫です。私がいます。それに……」
私は言葉を句切り、ゴールドさんの後ろを見ます。そこには、まだ目が諦めていない、彼を主人として
私の視線に気付いたのか、彼も後ろを見て驚いた様子です。
「お前ら……だけど、勝てるのか? あんな強い奴に?」
「強いからと悪を許すことはありません。あくまで私のジムリーダーとしての
「オレだって許せねぇ。仲間を、ポケモンを、道具と言い切りやがったアイツをぶっ倒したい。だけど、オレにはその力がねぇ」
ゴールドさんはすっかり心が折れてしまっているようです。何度も何度もぶつかっては立ち上がり、そして諦めずに突き進んできた彼ですが、ここに来て、ヤナギさんが野望を達成してしまったことを受けて、いつもの
そこへ、私の背後から声を掛けられました。
「ゴールドじゃないか! それと、あなたは?」
「アサギジムでジムリーダーを
「おお、あなたが」
話し掛けてきたのは、2人の高齢の男女と、その内の女性をおんぶしている中年の男性でした。格好からして、釣りなどを行うような
「ワシらは、”育て屋”を
杖を突き、眼鏡を掛けた高齢の男性が事情を説明してくれます。立派な白い
「事情は分かりました。よくご無事で」
「ハッハッハ、まだ若いもんには負けんよ。それと、少しゴールド、良いかな?」
「え、オレ?」
「うん。ほれ、ばあさん、アレを」
「おぉ、そうじゃった。ほれ。これを」
「手紙?」
高齢の女性が取り出したのは手紙のようです。
「オーキドからの預かり物じゃ。お前と会う時があれば、渡して欲しいと以前預かっていたものじゃ」
「一体何が……」
確か、オーキド博士とこの2人の老人は昔馴染みでしたね。そこにガンテツさん、キクコさんも。そして……
そう思いを
「ゴールドさん?」
「オレには、トレーナーとしての能力がねぇってのか? 他の図鑑の持ち主達と、肩を並べることが出来るような、そんな能力がオレにはねぇってのか!」
手紙の内容は、恐らく戦いのアドバイスではなく、図鑑を
少ない時間ですが、彼と接する内に気付いたことと言えば、彼のトレーナーとしての能力は並です。生まれながらにして、多くのポケモンと過ごしてきたことから、ポケモンと仲良くなることに関しては高い能力を持っていると思いますが、それでも一般トレーナーの域を出ないと思います。
主人公ならではの、トラブル体質と言いますか、悪運の強さなどはありますが、
ただ1つ。彼が他と違うと思うことは、彼は人並み外れた強い心を持っていることです。そして、その熱い心で救われたポケモンもいます。そんな燃えるような心を持つゴールドさんですが、先程の戦いで、その心に
「大丈夫です」
「え?」
「ちゃんと届いていますよ」
私の言葉に、視線が1つの所へ集中します。それに気付いたゴールドさんも、ずっと手の中にあったタマゴへと目を向けると、それまでただの真っ白なタマゴだったそれに、黒いギザギザの模様が浮かび上がって、
そう、あの時のゴールドさんの思いは、ちゃんと届いていたのです。
「お、おい! これ、封筒の中にオーキド博士からの手紙が残っていた! 『ワシが
その瞬間、タマゴが割れ、中から2匹のピカチュウの子供、ピチューが誕生しました。
彼の熱い心はタマゴを
「う、生まれたじゃと……まだ予定日よりかなり早いはずじゃが」
「ゴールド、お前いつからこのタマゴを?」
「いや……ついさっき、
「そうか。だけど、お前が手にしたことでタマゴは孵った。それは間違いないようだぜ?」
生まれたばかりのピチューは、親
するとピチューはゴールドさんの頭に乗り、自身とゴールドさんを電撃で包んで浮かべます。
「オイオイオイ、何だ! どうする気だ! もしかして、アイツを、ヤナギを追うってのか!」
それに答えるように、電撃が更に強くなります。
「では、私も行きましょうか。
連れて行くのは、私が最初に仲間とした
これから飛び込む空間の中で、もし
本当なら私1人で行きたいですが、私だけが飛び込んだだけでは何も出来ないでしょう。ならば、1番付き合いの長く、私の考えていることを1番理解してくれている
それらを全て分かっているのでしょう。
「よっしゃ! 行くぜぇぇええええ!」
「彼に続いて下さい!」
ゴールドさんが扉へと飛び込んだのに遅れて、私も扉を
「ここは……」
「何だこりゃ……」
この空間が”時間の狭間”……? 何でしょうこの感覚。不思議な感じです。
心地よさ、気持ち悪さ、
これに一番近い感覚ですと……【トリックルーム】が
しかし、今感じているこの状態は何か変です。
私自身は良い悪い全ての感覚を引っくるめて不快感しかないのですが、一方でそれとは別に、この空間に何も感じていない私がいます。
まるで、船に乗り続けて船酔いにならなくなったような……以前にも体験して慣れてしまったような感覚です。
1人の私に2つの違う感じ方……まさか、本来の
「ここまで追ってくるとは、本当にしつこい奴らだ」
そんな違和感について考えていると、突然何もない空間からヤナギさんが現れました。
「テメェ! どっから!」
「ここは時間も空間も
「ベラベラとありがとよ! つまり、テメェの近くにいりゃ、問題ねぇってこったろ! ピチュー! 突撃だ!」
「ふん、諦めの悪い奴だ!」
「
それから空間内を飛び回って、いくつもの
「うぉぉおおおお【ボルテッカー】!」
「ふん、【こなゆき】!」
「くそぉ!」
「そこです! 【ちょうおんぱ】!」
「甘いわ!」
中々内側へと飛び込ませませんね。私は何故かまだ余裕がありますが、羽で守られていないゴールドさんはどこか苦しさを
根本的に、この空間の中で距離というのは意味を成しません。物理的な距離があったとしても、そこへ到達するまでの時間が
あくまで例えですので、実際にどのような作用がこの中で起こっているのかは、私では知ることが出来ませんが、体感で、1つの動作が若干ラグというか長く感じることもあれば、判断が遅れて直撃されると思った攻撃が余裕を持って
しかし、それは私だけでなく相手も同じです。
「【げんしのちから】!」
「なっしまっ!」
「ゴールドさん!」
「大丈夫だ! まだまだぁぁああああ!」
「
「ミカン! おっしゃ行くぞ! 【じゅうでん】!」
気合い、やる気十分なピチューです。しかもレッドさんの
しかし、どれ程才能があろうとも、まだあの子は生まれたばかり、電気の制御が上手くいかずに、せっかく溜めた電気も漏れ出してしまうことがあって、十分な威力が出ていない時があります。そこを
「くらえぇぇええええ! 【10まんボルト】ぉぉおおおおお!」
「ぐあああああああああ!」
その激しい電撃、まるで
それを直視してしまったヤナギさんは、キョロキョロと辺りを探るような仕草をします。
「視力が……よくも!
「おっしゃ! 攻撃が通った!」
「気を抜いてはいけません!」
「見えなくとも、分かるぞ! そこだ! 【フリーズドライ】!」
「何っ! うわっ!」
「ゴールドさん!」
一瞬の気の緩みもありましたが、何よりもすぐさま対応してきたことに気付くのが遅れてしまい、ゴールドさんも攻撃を食らってしまいました。そして彼の周りに冷気が霧状となって姿を隠してしまったことで、中の様子が分かりません。
「大丈夫ですか!」
「おう! 大丈夫だ! だけど、何だ身体が上手いこと動かねぇ!」
霧が晴れた時に見た彼の姿は、一枚のガラスの中に投影されたような二次元の人物となっていました。
「フハハハハ! どうだ! かつてスイクン達を封印した時と同じ手法だ! この空間の中で私の氷の壁に挟まれるとこうなる! 完全なる冷凍保存だ! この空間の苦しみからは解放されるが、動くこともままならないだろう! そして、次は貴様だ! ミカン!」
「くっ!」
更に相手の攻撃は激しさを増しますが、
「ちぃ!
「あ、待ちなさい!」
しかし、私の制止の声も意味はなく、彼は再び空間の歪みの中へと姿を消してしまいました。恐らくこの空間から出て、ウバメの森の
「ゴールドさん、大丈夫ですか?」
「あぁ! だが、どうにも出られねぇ! そっちから何とかならねぇか?」
「そうですね……」
氷の壁をコンコンと叩いてみますが、これは物理的に破壊することは難しそうです。それに仮に破壊出来たとして、中にいる彼が無事に脱出出来るという保証もありません。
「やはり、あの羽がないとなんとも出来ないみたいですね」
「やっぱそうか……」
それから私達はお互いにどうすることも出来ず、ただこの何もない空間をフワフワとしています。ただ、私の中では次の戦いについて考えていました。彼は「後で決着を付ける」と言いました。つまり、セレビィを捕獲して時を手に入れてから再び戦うということです。
ヤナギさんにとって、私の存在は余程邪魔なのでしょうね。
エンジュ、セキエイ、ウバメ近郊、そしてこの空間で4回戦い、いずれも私の負けでした。ですが、5度目があるというのであれば、今度こそ彼を倒しそして、生きて帰ってきたいと思います!
以前どこかで書いたと思いますが、本作のミカンちゃんはポケスペのHGSS編を知りませんので、この戦いの後、ヤナギは時間の狭間に落ちて死ぬと思い込んでいます。
ですので、絶対に救い出し、そして罪を償わせることを信念に行動しています。
中途半端に知識のある主人公です。
これでポケスペ本編14巻終了です。
ゴールドの登場シーンが少ないこともあって、ゴールドと一緒に行動させるとあっという間に終わりましたね。
次回か次々回でエンディング予定です。
長々と続けるつもりはありませんので、無事に完結まで行けましたらそこでスッパリ終わります。