ポケモン世界に転生したと思ったらミカンちゃんだったのでジムリーダーになることにした。【完結】   作:木入香

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 この世界の教育機関ってどうなっているのですかね?
 10歳で小学校を卒業って設定は知っていますが、そこから中学、高校はどうなっているのでしょうね。
 ミニスカートは制服を着ていますし、見た目的に高校生っぽいですから、多分あるのでしょうね。
 この物語では、中学校を4年制としています。小学校を仮に5歳で入学としても5年で卒業ですから、学習期間が足りないのではと思って4年にしています。高校は普通に3年です。
 しかし、中学からは行きたい人が行くというのは……自由なのは良いことですが、職に就く際に、最終学歴が小学校卒業ってだけでは中々厳しいのではないでしょうか?
 ポケモントレーナーの夢が絶たれたら、ニート一直線ですか? それとも夢を諦めた時点で中学に通い始めるんですかね? 分かりません。
 その点、ミニスカートは多分ですけど高校まで進んでいる訳ですから、結構優秀で真面目な子ばかりなんじゃないかなと思っています。


第3話 vs ケーシィ

 午前の部、最後の挑戦者さんの相手をしてお昼休憩に入ります。

 休憩時間は11時から13時までの2時間。長いと思いますが、この中には私の食事だけでなくポケモン達の食事やコンディションチェック、ジムの点検や必要とあらば身だしなみを整えるなどやることが多いです。

 午後の部は13時から18時までです。

 

「初めまして。アサギジムのジムリーダー、ミカンです。本日はよろしくお願いします」

「エンジュシティのクリオです。お願いします」

「バッジを確認しますね」

「はい」

 

 ファントムバッジ一つですね。相手のポケモン次第ですが、エンジュジムのマツバさんの人を見る目は本物です。きっと良いトレーナーなのでしょうね。楽しみです。

 

「それでは両者用意して下さい。ポケモンはそれぞれ2体ずつ、入れ替え制です。よろしいですね?」

「「はい」」

「では、始め!」

 

 レミさんの号令と共にお互いにポケモンを繰り出します。

 

「頑張って下さい、ココドラ!」

「行け! ケーシィ!」

 

 ニックネームを呼ばなかったのは、相手トレーナーさんへの配慮(はいりょ)です。初見でいきなりニックネームで呼んで、どんなポケモンを出すのか(まど)わせてしまってはフェアではありませんからね。

 しかし、相手はケーシィ、エスパータイプですか。ゴーストタイプのマツバさんとは相性が悪いようですが、どのようにして突破したのでしょうか。気になります。

 

「ココドラ、ダッシュです!」

 

 指示を受けてココドラがケーシィに向かって走り出す。

 

「っ! ケーシィ、【シャドーボール】!」

 

 なるほど、ゴーストタイプにはゴーストタイプの技ですか。流石(さすが)勉強していますね。

 

「右へ!」

 

 しかし目前に迫った相手の技もしっかりと見極めて、ラーちゃんは指示通りに右へジャンプし(かわ)します。

 

「くっ、もう一回【シャドーボール】!」

 

 続けざまに放たれた技も、今度は左へ身体をズラすことで見事に避けました。

 ココドラの大きさは大体体長40cm前後。この子は36cmと更に小柄です。的が小さいので早々に当たりません。無論、本来のココドラの素早さであれば当たってしまいます。何せ普通のココドラは体長40cmに対して体重が60kgもあり、とても重いです。そして短い四本の脚で全身、主に最も比重の高い頭部を支えていますのでアンバランスで、動きが(にぶ)くなります。私のココドラも例に漏れず、平均よりも小さいとはいえ重いです。と言いますか、平均よりも重いです。このサイズで70kg近くあります。

 それでも機敏(きびん)に動ける理由は単純ですが、(きた)えているからです。

 毎朝の海岸の砂浜ダッシュを行っていることで、不安定な足場で安定した瞬発力、持久力を身に付けることが出来ているのです。

 

「て、【テレポート】!」

 

 物理アタッカーであるココドラに遠距離戦を挑んだのは正しかったですが、それも当たらなかったことで接近を許してしまいましたね。ゲームであれば意味のない【テレポート】ですが、この世界では活用法があります。それは、瞬時に相手と距離を離すなどが出来ることです。

 

「なるほど」

 

 しかし、それは距離を離すよりも相手の死角に入るなどで使用した方が良いと思います。やはり指示通りに動くといっても、相手の姿を視認していなければ若干のタイムラグが発生し、ワンテンポ遅れて行動することになります。これも普段からの鍛錬やコミュニケーションによって、様々な場面を想定することで対処出来ます。

 トレーナーはただ指示を出すのではなく、ポケモンの第三の目となってフィールドを俯瞰(ふかん)、つまり全体を見つめ、正確に素早く指示を飛ばす必要があります。

 

「ここは追い詰めてみましょうか」

 

 相手に聞こえないように呟き、すぐに「ココドラ、走って相手を翻弄(ほんろう)させて」と声にします。

 それからは繰り返し、相手との距離を詰めようとするココドラと、距離を稼ぎつつ【シャドーボール】で迎撃するケーシィ。しかし、次第に壁際へと追い詰められたケーシィに挑戦者さんも焦っているようです。

 さぁ、ここからどうしますか?

 

「け、ケーシィ! ココドラの背後へ【テレポート】!」

 

 合格です。まぁその指示はココドラにも聞こえていますし、私もそれに合わせて行動させることも出来ますので、もっと相手に分かりづらいように言うべきですが、そこはこれからですね。

 

「【シャドーボール】!」

「打点をズラして!」

 

 背後に回られ、しかも至近距離。この場面での【シャドーボール】は本来なら(・・・・)必中コース。ですが、全てを読み切っていた私のココドラなら躱せます。しかしあえて(・・・)躱させずダメージを最小限に出来るよう身体を(ひね)らせます。また、当たる瞬間に後ろへ跳んでいますね。これではほぼダメージはないようなものですが、この場面で技が当たったというのが重要です。

 焦りながらも集中力を切らさず、反撃に打って出る。まだ冒険に出て日も浅いはずですが、良い判断です。

 

「やった、当たった!」

「よい奇襲です」

「よーし、ケーシィ! あれ? ケーシィ!」

「スタミナ切れのようですね」

 

 散々技を繰り出したことで、スタミナを消耗(しょうもう)させてしまったのでしょう。【シャドーボール】を放ってから力が抜けたようで、地面に倒れてしまいました。

 この世界では技ポイントなどもなく、全部がポケモン本体の体力、スタミナに依存しています。なので、同じポケモン、同じ技を使ったとしても、何年も鍛錬を積み重ねたポケモンと、タマゴから(かえ)ったばかりのポケモンとでは、威力(いりょく)勿論(もちろん)ですが、使える技の数にも限りがあります。

 こればかりは一朝一夕(いっちょういっせき)で身に付けられるものではなく、日頃からの積み重ねが必要なのでルーキートレーナーさんでは難しいと思います。

 

「では、2匹目にしましょうか。私のココドラも散々走りましたので、一度ボールに戻しますね」

 

 まだまだスタミナには余裕がありますが、ここで2タテする程大人げなくないです。

 

「レアコイル、お願いします!」

「い、行け! バリヤード!」

 

 エスパータイプで固めていましたか。しかもバリヤードはフェアリータイプも入っていますね。ただ、今回の相手は鋼タイプなので相性は悪いです。さて、どのように立ち回るのでしょうか。

 今度は真っ向勝負を仕掛けてみますが、さて、あのバリヤードはどちら(・・・)ですかね?

 

「レアコイル、【ちょうおんぱ】」

「効かないよ! バリヤード、【きあいだま】!」

「左に避けて」

 

 やはり【ぼうおん】でしたか。

 バリヤードの特性の一つ【ぼうおん】。音に関する技を無効化するものですが、これにより私のレーちゃんの【ちょうおんぱ】と【きんぞくおん】が封じられた形となります。残りの技は【ほうでん】と【ラスターカノン】ですね。フェアリータイプが入っているので鋼タイプの技である【ラスターカノン】は効果抜群です。

 また、レアコイルは言わばコイルが3匹くっついているだけのポケモン。ですので、コイル3匹に分離させることも出来ます。そして3方向から相手を囲んで技を繰り出せば、勝負が付いてしまいます。ついでに【ほうでん】で相手の足を止めてしまえば完封(かんぷう)出来ます……が、それでは意味がありません。せっかくのジム戦です。ただ奇策かつ力業(ちからわざ)でゴリ押すのはフェアプレイに反します。勝つだけが目的ならそれでも良いのですが、あくまで相手の力を見るバトルですので、そこは妥協(だきょう)しません。

 まずは相手の技を見極める所から始めましょう……

 

「違いますね」

「?」

 

 相手トレーナーさんには聞こえていなかったようですが、審判のレミさんには聞こえていたようで、首を傾げられてしまうが気にしないです。

 私は今、油断をしていました。というより、相手をまだバッジ1個の新米トレーナーさんだと、相性も良いからと(あなど)っていました。そんな弱い心を(いまし)めます。

 この状況、確かに私が有利です。ですが、有利だからと相手を下に見て気を(ゆる)めるなど、先達者(せんだつしゃ)としてあるまじき行為です。

 例えばヤマブキジムのナツメさん。ポケスペでもヒワダジムのツクシさんと戦った際にバリヤードで、奇策を仕掛けて見事に勝利を収めていました。実際に私自身一般トレーナーだった頃に手合わせして頂いたことがありますが、そのような立ち回りではなく、あくまでジムリーダーとしての戦いをしていましたが、随所(ずいしょ)であっと驚くような仕掛けをしてきました。

 

「距離を取って下さい」

「今度は当たるよ! 【きあいだま】!」

「伏せ!」

 

 レーちゃんの頭上を【きあいだま】が通過して行きます。

 ナツメさんなら、【ぼうおん】で音系の技を封じつつ、私が不用意に指示した【ちょうおんぱ】を【アンコール】で固定してくるはずです。その後は得意の”壁張り”でこちらの動きを封じ込めるか、更に補助技を重ねるかしてレーちゃんの手段を奪っていくでしょう。

 そういったことを想定してって……

 

「えー……」

「バリヤードっ!」

「えぇと、バリヤード、スタミナ切れで戦闘続行不能。勝者、ミカン」

 

 【きあいだま】は原作でもポイントが少ない威力の高い技です。つまり、それだけ精神力や体力を奪うということ。それを短時間にこれだけ撃てば、元々スタミナに(とぼ)しいバリヤード、力尽きてしまうのは自明(じめい)()でしょうか。

 とにかく、私としては不本意ながらこれからという時に相手側の自滅によって、勝ってしまった訳で……とりあえず時間はありますし、いくつかアドバイスを送ることにします。

 

「お疲れ様でした」

「はい……」

 

 論評を終え、トボトボと帰って行くトレーナーさんを見届けた私は、レミさんから飲み物を受け取って口にする。

 1戦目のケーシィとココドラの戦いでは、追い詰められた時に見事に私の期待通りの動きをしてくれたことで、次の戦い次第では負けてしまってもバッジを渡そうと考えていましたが、2戦連続でスタミナ切れというのは、ちょっと駄目ですね。

 消耗の激しい技を繰り出すなら、確実に当てられるように立ち回ったり、スタミナを管理したりするようにして、ポケモンのほんの少しの疲れを敏感(びんかん)に感じ取って的確に指示を出さなければならない。特にトレーナーのことを信頼しているポケモン程、そういった管理をトレーナーに任せて自身は戦いに集中する傾向にあります。

 仲が良いことは良いのですが、ポケモンはトレーナーの信頼に応えようと頑張りすぎてしまうので、そこをちゃんとコントロールをしてあげるのがトレーナー(指導者)としての役割だと思います。

 

「また技を出さないで勝ちましたね」

「いえ、一応【ちょうおんぱ】を出しましたよ?」

「無効化されましたのでノーカンです」

「そういうものですか?」

 

 観戦者の皆さんも(おおむ)ねそういう考えのようで、私が攻撃技を繰り出す瞬間を見ようと毎日やってくる大人の男性の方もいる……仕事、していますよね? 大丈夫なのでしょうか?

 とりあえず先程のトレーナーさんは、次回のバトルで改善が見られましたらバッジを渡すこととします。勉強熱心な男の子でしたから、問題ないはずです。

 それからもジムリーダーの業務として挑戦者さんとのバトルを行いましたが、本日のバッジ取得者はいませんでした。

 何故か最近、新米トレーナーさんはまずアサギシティ(ここ)に向かう傾向にあるらしく、バッジがないか1個のトレーナーさんが遙々(はるばる)やってきて、ジム戦を挑むというのがちらほらあります。遠い所ですと、ヨシノシティからというトレーナーさんもいました。

 その理由を同じジムリーダー仲間であるコガネジムのアカネさんに相談したことがあるのですが「そんなん簡単やわ。ミカンちゃんのとこで修行した方が成長早いねんってもっぱらの噂やで? 実際に、あんたんとこのバッジを持ったトレーナーは、同じ数のバッジ持っているトレーナーと比べても強かったで? それよりも聞いてや、この間、新しくオープンしたタコ焼き屋に行ってきたんやけどな……」という話を延々と聞かされました。

 相変わらず元気そうで良かったです。アイドルって忙しそうですので、電話取れないかもと思って駄目元で連絡を入れたのですが、まさかそこから1時間ずっとタコ焼きの中にタコが入っていなかったという話をされるとは思いませんでした。

 

「では、本日の報告書をまとめちゃいましょうか」

「はい、お手伝いします」

 

 ジム戦は18時で終了ですが、それからは書類整理、ジム内の清掃にポケモン達の夕食と、やることはまだまだあります。結局、全てを終えてジムを出るのが20時を回ることも珍しくないです。

 ここから家に帰って夕食と入浴を済ませた私は、0時まで通信教育で高校の勉強を行います。将来はタマムシ大学へ行って、ポケモンの研究をしたいと思っていますのでサボる訳にはいきません。

 原作ではエリカさんと交流があるようでしたので、私も繋がりを作るべくカントーへ行ってジム戦を挑みました。ジムリーダーになってからでは、とてもではないが会いに行けるとは思っていませんでしたからね。ではどうしたら別地方のジムリーダーと交流を持てるのかと考えた時に、一般トレーナーならジム戦で繋がりが持てると考え、行動に移したのです。

 結果、幸いにも私がジムリーダーを目指していること、そして実際に会ってみて彼女のジムリーダーとしてのあり方に憧れた私は、かなりどもりながらも何とか思いを告げた所、無事に連絡先を受け取ることに成功したのでした。

 以来、ジムリーダーの先輩として、そしてタマムシ大学の教授としてアドバイスを頂きながら、日々精進しています。

 私、夢に向かって頑張ります。


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