ポケモン世界に転生したと思ったらミカンちゃんだったのでジムリーダーになることにした。【完結】 作:木入香
ですが、まさか1話では収まりきることが出来ませんでしたので、次回に続きます。が、仕事の都合で執筆時間が中々取れませんので、遅れると思います。ご了承下さい。
ということで、前回の続きでミカンちゃんvsハヤトです。どうぞ。
ポケモン協会主催のジムリーダー連絡会を終えて、場所を移した私達。私とハヤトさんは互いに向かい合うような形で、それぞれバトルフィールドの両端に立っています。
「それじゃあ、両者見合って見合ってぇ」
「アカネさん、それは相撲じゃ……」
「ツクシくん、冗談や冗談。そんじゃあ、始めるで? 2人共準備はええな?」
アカネさんの確認に、私とハヤトさんは頷きます。
「大丈夫です。こうなってしまった以上は、全力でお相手させて頂きます」
「お手柔らかにお願いします。オレも自分の実力がしっかり示せるよう、頑張ります」
「よっしゃ、使うポケモンはそれぞれ2匹。入れ替え制で、先に2匹とも戦闘不能になった所で終了や」
今回の試合会場となる場所ですが、ポケモン協会の屋内にあるフィールドです。しかし、屋内でありながら地面は土で、ディグダなどの、地面タイプのポケモンにも対応したものとなっています。水タイプのポケモンを使用する場合は、また別のフィールドを用いることになります。
これから始まる試合は、新米ジムリーダーのハヤトさんの実力を観るものとしていますが、私はジムリーダーとしてではなく、1人のトレーナーとして勝つつもりで
「それじゃあ、始め!」
「行け、ピジョン!」
「頑張って、クーちゃん!」
場に繰り出されたのは、相手がピジョン、こちらはクチートのクーちゃんです。
クーちゃんは身体をこちらに向け、頭のツノが変形した大きなあごを相手に向けています。
「っ! 【いかく】か」
ハヤトさんはすぐに気付きましたね。【いかく】はゲームでは相手の攻撃力を一段階下げる特性でしたが、相手を怖がらせることで手を遅くしたり
実際に相手のピジョンは、クーちゃんのあごを直視しないように、目を逸らしているように見えます。
「クーちゃん」
名前を呼んだだけで彼女はくるりと振り返り、相手へ向けて
クーちゃんに特殊技があればそれを使いましたが、こちらの攻撃手段はいずれも物理技、つまり接近しないと戦えません。
「速い! ピジョン、距離を取れ!」
「させません。動きを封じて下さい!」
すると、彼女の大あごの牙が、ピキピキと音を立てて冷気をまとっていきます。試合開始早々の正面からの奇襲。ピジョンがクーちゃんのあごを見ないように視線をチラチラとさせていた為、ハヤトさんの指示にもコンマ数秒ですが、反応が遅れてしまいます。
一気に距離を詰めたクーちゃんは、羽ばたいて高度を上げようとするピジョンに
並のトレーナーのポケモンでしたら今ので羽にダメージを受けてしまい、飛ぶことが出来なくなっていましたが、
「ピジョン! そうか、【こおりのキバ】!」
「はい」
翼の一部が凍り付いたことで飛びにくそうにしていますが、それでも高度を保っていますね。飛行タイプに相性の良い氷タイプの技で奇襲を仕掛けた訳ですが、半分失敗になってしまいました。
「しかし、最初の行動の動き出しが早かったのは、何かカラクリがあるのですか?」
「えぇと、内緒です」
何故クーちゃんは名前を呼んだだけで私の思考を読み取って、行動に移すことが出来たのか。そのカラクリは簡単です。彼女は場に出てから、ずっと相手に背を向けていました。それは私とずっと目が合った状態であったということです。
場に出てからもずっと相手に背を向けるポケモンは、ポケモンの数が600種以上いると言われている中でも数少ないです。それも、背を向けることで相手の攻撃の意欲を奪うという特性を持ったポケモンは、私が知る限りではクチートだけです。
それからも、目線でいくつかのやり取りをし、私はチラチラと相手のピジョンのある一点を見つめます。
「まぁ、そうでしょうね。オレも油断しないようにと気を付けていましたが、まさかオレのピジョンが少し目を逸らした隙を突いて飛び込んでくるとは……勉強になります」
「いえ、それは私もです。油断はしません。力も抜きません。突然の流れで試合をすることになってしまいましたが、戦う以上は全力で頑張ります」
「ははは、これは厳しいですね。でも、オレも全力ですよ。【ねっぷう】!」
「っ! クーちゃん!」
ピジョンの翼が熱を帯び、それを激しく羽ばたかせることで
鋼タイプのクーちゃんに対して、飛行タイプであるピジョンは有効打が
想定はしていましたが、いざ対策を取るとなると難しいです。まぁ想定内である以上、最初に取る手段としてはクチートのクーちゃんではなく、エンペルトのクラウンを出すべきでしたが、私は今回あえてクーちゃんを選択しました。
物理技しか持っていないクーちゃんでは、どうしても接近する必要があります。対して相手は、距離が離れていても攻撃が出来る特殊技。それもこちらに対して相性が良い技。素早さも瞬発力なら負けませんが、やはり
それでも勝てると踏んでの選択です。私は私の判断を信じますし、と同時に相棒であるポケモン達を信じています。
「【かぜおこし】【ねっぷう】!」
「離れて!」
クーちゃんが距離を取ったことで【ねっぷう】の範囲から逃れたと思ったのですが、【かぜおこし】でその距離と稼いで範囲もカバーするとは……しかも風によって威力も上がっていますね。
冷気をまとったあごで防御しながら相手から離れていますが、このままではジリ貧です。流石飛行タイプのエキスパートです。あそこから技が当たる所まで接近するのではなく、その場から当たる手段を執る。ですが、道は残されています。
「クーちゃん、ちょっとの熱さは我慢して下さいね」
そう言って私はウィンクをします。それを見て笑顔で
「これは、【ゆうわく】!」
「正解です」
異性が相手であれば、その色気で誘惑することで攻撃の意欲を奪う。つまりゲームで言う所の、特攻をガクッと下げると言った感じです。
元々
「くっ
技のキレが落ちていますし、狙いも甘いですね。突破口、見つけました。
「呼吸を合わせます」
この場面、焦らずしっかりトレーナーである私は、クーちゃんの呼吸に合わせて意識を一体化させます。
私の行動を見たあの子は、次に半身の姿勢を取り、指をしゃぶって片目で相手に視線を送ります……ってやり過ぎです! そんな知識どこで覚えたんですか! あ、もしかしてまた私の知らない所で勝手にボールから出て、パソコン使いましたね! というか、何を検索したらそういった仕草が出来るようになるんですか!
後で説教をする必要が出て来ましたが、今は置いときます。それに、半身になったことでもう片方の目は相手からは見えないので、何をしているか分からないはずです。特に特別なことをしている訳ではありません。私と呼吸を合わせて動きを減らし、私側の目を閉じているだけです。
そして、私は両目を閉じてゆっくりと呼吸をしながら聴覚に集中します。
1秒、2秒、3秒、4秒……
「何かをするつもりかは知りませんが、この距離でそちらが取れる手段はそうありませんよ。ピジョン、いい加減に」
相手の言葉をシャットアウトして、1つの言葉にのみ意識を向けます。
7秒、8秒、9秒……
「【ねっぷう】!」
「クーちゃん!」
指示はほぼ同時。
クーちゃんはすぐさまダッシュします。
「なっ速い!」
誰かの叫びがフィールドに響きますが気にしません。
技を繰り出そうと大きく翼を広げたその瞬間、一気に
多少の熱い風。冷却が追い付いたクーちゃんには意味がありません。そしてそのままの勢いで、一気にジャンプして接近。相手の
その攻撃によって吹き飛ばされたピジョンは、フィールドの壁まで飛ばされ、叩き付けられてしまいました。
派手に飛ばされた上に、喉を突かれたことで咳き込みはしていてようですが、体調に問題はなさそうです。しかし、戦闘続行は不可能と思います。
それをアカネさんも察したのか「ピジョン、戦闘不能!」と判定しました。
「まさか攻略されてしまうとは……流石にお強いです」
「ありがとうございます」
「今のは【ふいうち】ですか? 技を言わずに指示が出せるとは、しかもタイミングもピッタリと。恐ろしい相手です」
「ふふふ、ありがとうございます」
【ふいうち】は相手が攻撃技を仕掛けた時に、相手の不意を突いて攻撃をする技です。技を繰り出す瞬間、自身の技に意識を向けて相手に当たるように集中します。その小さな意識の隙間に入り込んで攻撃を仕掛けることで、相手は攻撃態勢に入っていて防御が追い付かないことから、高い威力を発揮します。
そして、ハヤトさんの指摘は半分不正解です。【ふいうち】だけでは倒しきれないかもしれないと思った私は、保険として【とぎすます】を使用しました。
本来なら、動きを完全に止めて両目を閉じてしっかりと集中する技。行動が制限されますが、その極限まで高まった集中力から繰り出される技は、相手の急所を
あの時クーちゃんと呼吸を合わせたのは、あの子の意識に合わせる為。相手の技のタイミングを読んで素早く指示に繋げるには、トレーナー自身が集中していないといけません。でないと【ふいうち】は失敗に終わってしまいます。ゲームのように順番に技を繰り出す訳ではないのですから、刻々と状況が変わる中で使用するには難しい技です。
【とぎすます】を私が一部肩代わりしましたが、では、相手の急所はどうやって指示したのか。それは【こおりのキバ】が掠った最初の行動の後、あの時に視線で狙う場所をあらかじめ教えていました。
「ふぅ」
一気に集中力を開放したので、一呼吸入れます。
すると、トコトコと笑顔で私の所まで向かってくる姿があります。
「クーちゃん、良く頑張りました」
私の意思を全部汲み取って、それを信じてその通りに動いてくれた彼女に
クチートは、鋼タイプの技のデパートと言われることもあるくらいに使える技のレパートリーが広く、器用なポケモンです。それなら【れいとうビーム】【だいもんじ】または【かえんほうしゃ】。【ソーラービーム】に【チャージビーム】と、特殊技だけでもまだまだあります。
本来ならそれらを覚えさせて、それを用いて距離を保つ相手と戦うのが定石なのでしょうが……それでは”ポケスペっぽくない”と考えたのです。ゲームなら使い道がなかったり下位互換だったりと、使われない技が多くあります。しかし、ポケスペの世界では、どのような技でも使う場面があり、使い道があります。それを生かし、ポケモン自身の潜在能力を引き出すことがポケモントレーナーの役目だと思っています。
「さぁ、次に行きましょうか」
「あぁ、オレも負けませんよ? 次のコイツで、君のクチートももう一匹も倒して、勝ってみせます」
「でしたら、万全を期してクーちゃんには一回休んでもらいますね。油断はしません。このまま疲れたこの子をぶつけてもし負けてしまえば、そのままの勢いで押し切られてしまう可能性がありますからね」
「少しは手を抜いても良いと思うんですけどね」
そう笑いながらも、お互いにモンスターボールを出してそれぞれピジョンとクーちゃんをボールに収めます。そして、2個目のボールを出して投げました。