わたしの名前は氷川紗夜。
Roseliaのギターを担当しているわ。
けれど、今は訳あって猫になっていますがその理由はまた今度にしましょう。
話は変わりますが、今わたしはとある人の膝の上に乗って居ます。
「ん? どうした? 紗夜」
彼の名前は笹原冬夜。
猫のわたしを拾ってくれた優しい人。
けれど、一度彼と面識があるんです。
確か、あの時はポテトを分けて貰いました。
何故ポテトを分けて貰ったのかは深く話しません。聞かないで下さい。
それと冬夜さんは、以前湊さんも拾ったとの事で、家に帰ると親に迷惑をかけてしまいそうなので、現在はここに住んでいます。
冬夜さんは、わたしの一つ上の三年生らしいです。
三年生といえば、そろそろ、大学に進学する人達は受験が間近に迫り、就職する人は、就活に忙しい時期。
けれど、冬夜さんは、わたし達の面倒をしっかり見てくれています。
流石に、少しは勉強して居るようですが、わたし達を心配する余り、勉強の時間が少ない様な気もします。
ま、まぁわたし達の遊びたいという衝動を解放してくれるのはありがたい限りですけど。
「ニャ〜」
「おぉ、腹をむけるとは珍しい事もあるんだな」
ここは、ベストポジションといっても過言ではありません。
例えるなら、わたしの妹が炬燵に入ったまま、殆ど出てこなくなる様な感じですね。
妹が、炬燵から離れたくないと言って聞かない時はどうしたらいいかわからなかったけれど、この膝の上と照らし合わせればなんとなく分かる気がしますね。
それにしても、冬夜さんは人を甘やかし過ぎです! ……わたしも甘えるという事を覚えてしまうじゃないですか///
「ニャ!」
「うおっ! 今度はどうした?」
はぁ……はぁ……危うく何かに取り込まれそうになりましたが、ギリギリ抜け出せました。
取り敢えず、今から冬夜さんの勉強を見る事にします。
わたしは、冬夜さんの膝の上から降りて冬夜さんの自室に向かう。
自室に着くと、机の上に座る。
「お〜、紗夜さんは、今日も冬夜くんのお勉強見るんですか〜?」
「青葉さん」
ベッドの上に蹲っていた、わたしより先に冬夜さんに保護された猫、青葉モカさんが居た。
青葉さんが猫だと言う事は、美竹さんが両親に伝えたようで、両親の方も承諾したそうです。
わたしの両親も同意した様ですが……妹の反応がないのがおかしいですね。
「何事もなければいいのだけど……」
「? どうしたんですか、紗夜さん」
「……いえ、なんでもないです」
わたしは、冬夜さんが来るまで夕日が沈んで行く空を眺めていた。
それから待つこと数分、下の階から誰かが登ってくる音が聞こえて来る。
恐らく冬夜さんでしょう。
ガチャっと、扉が開くと同時に冬夜さんが部屋に入って来る。
「待たせたな、紗夜、モカ。どれ、勉強するとしますかね」
そう言いながら冬夜さんは教科書を開き、机と向き合う。
湊さんも言っていましたが、冬夜さんの横顔は……その……見てて飽きませんね。
べ、別に深い意味はありません……本当にありませんから!
っと、そんな事をしている場合ではありませんね。
「ニャ!」
「ん? ここか? そういや、なんか違う気が……あ、こう言うことか」
「ニャ〜」
たとえ、口から発される言葉の意味が通じなくても、こうして彼が理解しようと頑張ってくれている。
だから、わたしも、青葉さんもそう言った所に惹かれてしまっているのかも知れませんね。
わ、わたしは別にす、好きとか、そんなんじゃないですよ……そんなんじゃ……こ、この話はおしまいです!
取り敢えず、今冬夜さんが勉強しているのは、二年生の復習。
少なからずわたしもお手伝い出来ます。
それはそうと……
「青葉さん! いつまで冬夜さんの膝の上にいるつもりですか!」
「え〜? いいじゃないですか〜」
くっ! 羨まし……いえ、なんでもないです。
それより勉強の方を……
そう思い再度教科書に目をやると、体が宙に浮いていた。
「ほ〜ら、どっこいしょ」
「ニャ!」
なっ! なんで布団に寝転がるんですか! それと青葉さんはいつの間に寝てるんですか?!先程話したばかりですよ?!
「飯も食ったし、今日はもう寝るか……」
「ニャ〜!」
それはいけません! 受験生たる者、勉強を怠らずにですね……
そうやって冬夜さんに伝えようとしましたが、途中で口が止まる。
どう伝えようとしても、この声は届かない。
たとえ冬夜さんが頑張って居ようと、それはなんとなくでしかない。
なら、無駄な事は止めよう。
そんな事を考える。
すると、頭になにか暖かい物が乗せられる。
上を見ると、冬夜さんの手が頭の上に乗せられていた。
つまりは撫でられている。
「別に、そんな考えなくてもいいんじゃないのか?」
「っ!」
「確かに、俺はお前達の言葉はわからない。どれだけ聞こうとしても「ニャ〜」とか「ミャ〜」とか、そんな感じでしかない。けどな紗夜」
冬夜さんはそこで手を止め、此方を向く。
「お前達の心は、思いは、少なからず届いてるからな」
あぁ、やはりこの人には敵わないですね。
どれだけマイナスな考えをもっても、どれだけ否定しようとも、冬夜さんはプラスの考えにして、肯定してくれる。
「ニャ〜」
「おやすみ、紗夜」
だから、わたしはこの人に体を預ける。
この温もりを少しでも長く感じられるように。
目を閉じて、意識をゆっくりと手放す。
さて、明日も勉強のお手伝いをしないといけませんね。
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