我が家の五匹の小ちゃな家族   作:猫又侍

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我が家の猫のとある日常Ⅲ

あたしの名前は氷川日菜!

 

Pastel*palettesって言うアイドルバンドのギターをやってるんだ〜。

 

猫になった理由はね〜、また今度にする! なんだか、そっちのほうがるん♪ってするし。

 

ちょっと話は変わるんだけどね〜? 今、あたしの目の前で寝息を立てているのは、あたしを拾ってくれた冬夜くん!

 

前に、一緒に天体観測もしたんだ〜。

 

あの時は彩ちゃんとか友希那ちゃんとかが、猫になってたんだって〜。

 

なんであたしは気づかなかったんだろ?

 

「こら日菜、冬夜さんが起きてしまうでしょ」

 

「ちぇ〜、どうせおねーちゃんも見てるんでしょ?少しくらいいいじゃん」

 

そう言うと、おねーちゃんはあからさまに焦る。冬夜くんには申し訳ないけど、こういう時に焦るおねーちゃんは面白い。

 

とは言っても、冬夜くんは疲れて寝ちゃってるし、おねーちゃんも日向ぼっこしてるし……モカちゃんはどうしてるんだろ?

 

あたしは、冬夜くんの部屋を出てリビングに向かってみる。

 

すると、そこにはモカちゃんが居た。

 

「あ! モカちゃん! なにしてるの?」

 

「あ〜、日菜先輩〜、あたしは今ご飯を食べてるんですよ〜」モッモッモッ

 

そう言いながら口を動かすモカちゃん。

 

よくみるとモカちゃんのお皿にだけまだご飯が残っている。

 

「なぁんだ、おねーちゃんもモカちゃんもダメなのかぁ〜……そうだ!」

 

あたしは冬夜くんの部屋に戻って、冬夜くんの机に登り器用に窓を開ける。

 

最近まで開けられなかったけど、つい昨日開けられるようになったんだよね〜。

 

あたしはそこから外に出て屋根を伝って塀に飛び移る。

 

この体になって分かったことはいくつかあるんだ〜。一つは体が小さくてもちょっと高い所ならピョンって飛び越えられること。

そして、着地した時もそこまで痛くないんだぁ〜。

 

そして食べ物はキャットフードが意外に美味しい事。

 

家は猫飼ってなかったから分からなかったけどるん♪ってする味だった!

 

「ふんふふ〜ん、それじゃあまずは彩ちゃんの所に行こっかなぁ」

 

今はパスパレ自体の活動は休止してるみたい。

 

それでも個人で出演するレギュラー番組とかはしっかり出てるみたいなんだよね〜。

 

え? あたしが出演する番組? それはよく分かんないけど、あたしが居なくてもふつーにやってるよ?

 

「まぁいいや、それじゃぁ彩ちゃんの家にしゅっぱーつ!」

 

そこから彩ちゃんの家には、色んな家の塀や

屋根を伝ってそこまで行く事にした。

 

****

 

「この体だと人目も気にしなくてもいいし、涼しいからるん♪ってする!」

 

今までは可愛がって撫でていた猫の言葉も、この体だとなにを言っているかも分かるしここに来るまでにも色んな猫と会って話した。

 

あたしが考えてる猫の喋り方とは全く違ったりしてて色んな発見があって面白かった〜。

 

そして今、あたしは彩ちゃんの家に来ている。

 

来てるって言っても、彩ちゃんの部屋の窓の近くの屋根についた所だ。

 

部屋の中を覗くと、彩ちゃんがなにか台本を持ちながら練習をしていた。

 

「彩〜ちゃ〜ん!」

 

あたしは彩ちゃんを呼びながらドアを叩く。

 

でも、彩ちゃんは練習に集中してるみたいでこっちに気付いて居る様子ではない。

 

「ちぇ〜……冬夜くんの所に戻ろっと」

 

そう思って暫く歩いていた時。

 

「ねぇ見て! あそこに変な猫がいる〜!」

 

「っ!」

 

背後から子供数人がキャッキャッとはしゃぎながらこちらに向かって走ってくる。

 

普段ならこれが普通の状況で、そのまま横を通り過ぎていくのかも知れない。

 

けれど今は違う、『変な猫』つまりはあたしの事だ。

 

「!」ダッ!

 

あたしはここに居てはいけない、逃げなければいけないと理解し、その場から走り出した。

 

「あ! 待てー!」

 

それでもなお子供達は追いかけてくる。

 

おかしいなぁ、猫って意外と速いよね? そう考えていた時足がガクッとなりその場に倒れ込んだ。

 

「あ、やばい」

 

側溝に足が挟まってしまった様だ。

 

早く抜け出さないと、そう考えている内に子供達があたしを取り囲む。

 

「ねぇ! これテレビに出したらどうなるの?」

 

「水色の毛の猫なんて見たことないから、ちゅーもくされるんじゃない?」

 

「なら、家に連れて帰ろうよ!」

 

そう言ってははしゃぎながらあたしに手を伸ばす子供達。

 

「助けて! 冬夜くん!」

 

その時だった。

 

「こらー! 人ん家の猫になにしてんだー!」

 

「うわっ! あれ飼い主だよ! 早く逃げよ!」

 

「えっ、でも……」

 

そう子供が戸惑っている内に、その声がどんどん近づいてくる。

 

それに焦ったのか、子供たちはすぐにその場から立ち去っていった。

 

そして、その後にあたしの元に駆け寄ってきたのは冬夜くんだった。

 

「ふぅ……危なかった〜、大丈夫か? 日菜」

 

「………」

 

あたしは、初めて感じた恐怖と助けてくれたという嬉しさで冬夜くんに抱きついた。

 

「おぉ、怖かったな日菜」

 

「うん……怖かった」

 

「ふふっ、大丈夫だよ。俺が必ず守るから。あ、でも散歩に行く時は今度から俺も行くからな?」

 

「うん」

 

冬夜くんからしたら、あたしは「ニャァー」としか聞こえないだろう。

 

でも、冬夜くんは頑張ってそれを理解しようとあたし達に寄り添ってくれてる。

 

「彩ちゃんの言ってた通り、冬夜くんはるん♪

ってするね!」

 

今までも、これからも、もしかしたら元に戻っても迷惑をかけてしまうかもしれない。

 

でも、冬夜くんなら構ってくれるよね?

 

その日のあたしは、おねーちゃん曰くずっと冬夜くんの側に居たらしい。

 

あたしは眠くてあんまり覚えてないけどね。

 

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