我が家の五匹の小ちゃな家族   作:猫又侍

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我が家に来た新たなギタリストⅢ

季節は春。

 

雪も完全に溶けて、暖かい風が頬をなでる。

 

今日は3/11

 

今日は、俺達三年生の卒業式。

 

今、壇上では代表生徒が卒業証書を受け取り階段を降りている。

 

周りにはちょくちょく泣いているひとが見受けられる。

 

「まぁ、卒業だしな」

 

先生の方を見ても、いつも熱血指導をして居た先生も涙を流して居た。

 

卒業は、別れが訪れる。

 

だが、俺の場合は出会いがあるかも?ってな。

まぁこの発言がフラグにならない様に気を付けるよ。

 

なんて事を考えているうちに、閉会式が終わり。卒業式は幕を閉じた。

 

****

 

卒業式の後は、クラスごとに教室に戻りそこで卒業証書を受け取る。

 

そっから先生のありがたい言葉をいただいた後に在校生に門出を祝われ、校門前でワイワイと喋っている。

 

「よう、我が息子よ!」

 

「げ、親父」

 

そりゃぁ、家の親も子供を祝う為に卒業式に来ている訳だが流石に大声は出さないで欲しい。

 

めっちゃ見られる。

 

「ほらお父さん言ったでしょ。冬夜はお年頃なんだから騒がないで頂戴って」

 

いや、あんたも十分声でけぇよ。

てか二人揃ってオーラ出しすぎなんだよ。

なに? そのセレブ感、海外で仕事するとそうなんの? あれ? 家族の中で大物感出てないの俺だけじゃね?

 

「相変わらずお前の親すげぇな」

 

「親が凄くても自分じゃねぇから嬉しくねぇ」

 

そう答えると隣で笑う俺の友人、山崎康介。

 

こいつは俺と違う医療大学に進む様で、今までの悪ガキみたいな態度からは想像出来ない様な夢を持っている。

 

「お前は何処の大学行くんだっけ?」

 

「ん?俺? 俺は羽丘総合大学」

 

「そっか……頑張れよ冬夜」

 

「あぁ、お前も頑張れよ康介」

 

俺と康介が話し終わったのを見計らう様に、ほかのクラスのやつが康介を呼んだ。

 

「じゃぁ、俺行くわ」

 

「おう、またな」

 

そう言って手を振り別れる。

 

「彼、山崎くんだっけ? 彼はいい子ね」

 

「そうだぞ。あんないい子はそうそう居ないからな、大切にするんだぞ。冬夜」

 

この親は自分のこどもの年齢を幾つだと考えてんだよ……

 

なんて事を考えていると足に何かがしがみ付いた感覚があった。

 

まぁ、こんな事をする奴は家に三匹しか居ないから分かるけど。

 

下を向くと案の定モカ達がしがみ付いて居た。

 

「すまんすまん、流石に卒業式にお前達は出せないから」

 

「ミャ〜」「ニャ〜」「ニャァ〜」

 

「あらあら、モテモテね冬夜」

 

でも、いいだろ? 母さんと父さんは卒業式なんてそっちのけでずっとモカ達を撫でてたのは誰だよ……

 

まぁ、モカ達にまだ会ってなかったみたいだからそれはそれでいいんだけどさ。

 

小中って卒業式で大泣きして恥ずかしい思い出を高校では残さなくて済んだ。

 

****

 

いくら卒業したとしても、俺の日課は変わらない。

 

あの後、家に帰ると親父と母さんは仕事でまたあっちに行った。

 

まぁ、小中って同じ事の繰り返しだったからもう慣れた。

 

「しかも今はこいつらも居るしな」

 

そう言うと、いつも返事が返ってくる場所が頭の後ろだったのが足元から聞こえて来た。

 

「よかったな、もうあったかいから歩けるぞ」

 

「ミャ〜」

 

こいつらが居るだけで大分賑やかになるから、俺は十分だ。まぁ、両親がいないってのもあれだけどな。

 

「っと、今日はめでたい日だしいる訳……アッハイそうですね居るんですね分かります」

 

「ミャァ……」

 

うん? 今回の猫は大人しいな。

 

今回発見した猫は、瞳が赤く紫色の毛をしている。

 

宝塚志望してんのか? さっきからめっちゃオーラ放ってるけど……

 

「まぁ、どうせモカ達と似たようなもんなんだろうなぁ」

 

もうここまでくると前回同様もう一匹増える様な感じである。

 

欲を言えば増えて欲しいが、流石にそれは無理な話だろう。

 

すると、後方からとても元気な声がして来た。

 

「冬夜〜!」

 

「ん? この声は……やっぱりこころか」

 

後ろを振り向き声のヌシを見てみると、案の定とても眩しい笑顔のこころがこちらに走って来た。

 

うん、それにしてもこのまま突っ込んできそうな勢いだね。

 

ねぇ、なんで止まらないの? ねぇ

 

「ダーイブ!」

 

「ゔっ!」

 

は、腹ガァ! ……ま、まぁいいだろう。純真無垢な少女のタックルだ。

意外と痛いんですがそこらへんはカバーしようね。

 

「それで、ここに来たってことはこの猫の事か?」

 

「そうよ! 今度は薫が猫になったみたいなの!」

 

か、薫? え、あの新世紀迎えてそうなロボアニメのカヲルくん? あ、違うのね。

 

って、どう考えてもうちの学校の瀬田薫って雰囲気してるもんなぁ……まぁ、殆ど知らんけど。

 

「取り敢えず、こころの方に預けとくか?」

 

「いいえ! 薫には冬夜の事を知ってもらうために冬夜に預かって貰うわ!」

 

「相変わらず無茶を言いよるわ。まぁ、うちにはもう三匹居るし諦めるしかないのかね……ところで親心配すんじゃねぇの?」

 

いや、こころさん? なに分からない雰囲気出してるんですか? 一番大事よ?

 

俺がこころにツッコミを入れようとおもったが、後ろの気配でそれを止めた。

 

この気配って、黒服じゃね?

 

「ご安心ください笹原様。説明は我々からしております。それと、こころ様の件で安心も得られておりますので大丈夫かと」

 

「ところでなんでこうなってるか知ります?」

 

「……それでは、わたしは用事がありますので」

 

ねぇ、いま目逸らしたよね? 絶対なにか知ってるよね? こころも帰るの? ちょっと、絶対弦巻家関わってんじゃん。

 

「ミャァ〜」

 

「はぁ……取り敢えず連れて帰るしかないのか」

 

今回ばかりは拾わないの選択肢はないと思う。だって、拾わない選択を少しでもしてみろ。俺の命がない。

 

まぁ見る限りモカと何かやってるみたいだし大丈夫だろ。

 

「さてと、それじゃあ家に帰るか。行くぞモカ、薫」

 

「ミャ〜」「ミャァ〜」

 

うん、文字に表すとめっちゃ分かりにくいね。

一応『ァ』を付けてる付けてないで判断出来るようにはしてるけど初見の人は絶対分からないよ? 

 

って、なに一人で考えてんだろ。

 

取り敢えず家に帰ったら親父と母さんに知らせないとなぁ……

 

そんな事を考えながら家に帰るのであった。

 

因みに薫を紹介したら何故か紗夜と日菜がしばらくピッタリくっついて離れなかったのは実に不思議でならなかった。

 

 

 

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