我が家の五匹の小ちゃな家族   作:猫又侍

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我が家の猫のとある日常Ⅳ

 私の名前は瀬田薫。

 

 ハロー、ハッピーワールド!のギターを務めている。

 

今は訳あって猫になっている……嗚呼、儚い。

 

 みんなに忘れないでいて欲しいのはいつものわたしは瀬田薫を演じている。

 

 しかし、猫の状態では演じる演じないはそこまで関係がなくバレていない。

 

「それにしても、やはり君は凄いね」

 

「ん? どした薫」

 

 私の頭を撫でているのは、以前こころが話していた笹原冬夜。

 

 今の私を保護してくれている人でもある。

 

 そもそもこの体になったのは理由があって……いや、それはいずれ話そうか。

 

 こころは冬夜の事をとても良く話してくれていたし、今もこうして不自由なく暮らせている。

 

 そしてキャットフードが意外にも美味しいことに気づいた。

 

 今度ちーちゃんにも教えてあげよう。

 

 なんて考えて居ると急に体が宙に浮き暖かい何かが私の下に来る。

 

 抱き上げられたのだ。

 

 私もこの手のハプニングには慣れていない。

 

 こうして平然と話して居るが実はかなり動揺して居るんだ。

 

 嗚呼、儚い

 

「薫は大人しくて可愛いなぁ」

 

「っ!」

 

 彼の悪い所は平然と人に可愛いと言う所だ。

 

 こころも話している時は恋焦がれている様なとても儚い顔をしていたよ。

 

 事実、わたしもこうして冬夜の優しさに触れてこころの気持ちがよく分かったよ。

 

 さて、今日は訳あって他の子猫ちゃん達は居ない訳だが……わたしはなにをすればいいのだろうか。

 

 普段どおりとなれば演劇の練習や、ハロハピの打ち合わせ(殆ど雑談)をしている筈だが今の状況が状況……身動きが取れない。

 

 だからこうして冬夜の膝の上にいる訳なのだが……

 

「よし、映画でも見るか」

 

「映画?」

 

 すると冬夜は立ち上がり上の階に上がっていった。

 

 ホラー系の映画でないことを祈ろう。ホラーは劇ではまだ大丈夫なのだが映画などになると中々見る勇気が湧かない。

 

 そんな事を考えていると、冬夜が二階から降りて来た。手にはDVDを持っていて、それをテレビの下のプレイヤーにセットして改めてソファーに座った。

 

「薫、このビデオなんのビデオだと思う?」

 

「ほ、ホラー映画じゃないだろうね?」

 

 不安になりながら聞こうとするも、わたしの今の状態は猫。つまりはニャーとしか聞こえないのだ。まぁ、この手の話は聞き飽きたかも知れないけどね。

 

 冬夜は会話での意思疎通が出来なくても、一生懸命わたし達の事を理解しようと頑張ってくれている。 

 

 恐らく、こころも冬夜のこういう所に惹かれたのかも知れない。

 

 それは、こころしか知らない事だ。

 

 けれど、わたしは彼のこういうところが良いと思う。彼のこういう所にいつの間にか惹かれてしまうものも多いのだろう。

 

「さて、再生するぞ」

 

「あぁ」

 

 冬夜はリモコンを手に持ち、再生ボタンを押した。

 

 その映像に、わたしは思わず見惚れてしまった。

 

 輝く舞台、作り込まれた道具や背景。

 

 そして、なによりわたしが目を引いたのは……

 

「あの子は、冬夜かい?」

 

 届くわけの無い質問をするが、冬夜は恥ずかしそうに頭を掻きながら話す。

 

「いやぁ、この時父さんと母さんが劇にハマっててな? それで俺が学校で劇をするんだ〜って言ったら死ぬ気で色々叩き込まれたよ。役者じゃ無いはずなのに色々知ってるのには驚いたなぁ……」

 

 それを聞いて再度テレビを見る。

 

 舞台の上で一際輝く冬夜。しかし、幼い時のしかも劇を教えられたばかりの冬夜は感情などが所々入ってはいないもののその中では一番輝いて一生懸命に演じていた。

 

「これを見ていると、懐かしく感じるよ」

 

 ちーちゃんに憧れて一緒に練習をしていた日々を思い出す。

 

 あの日々がとても輝いて居て、とても掛け替えの無い思い出だ。

 

 けれど今のちーちゃんと過ごす日々も、ハロハピのメンバーと過ごす日々も、冬夜と過ごす日々も--

 

 何もかもが今のわたしにとっての掛け替えのない、なによりの宝物だ。

 

「こんなのを見せられてしまったら、わたしもウズウズしてきてしまったじゃないか」

 

「ん? どうした?」

 

 わたしは冬夜の膝から降りて、冬夜が作ってくれた小さな薔薇の猫用クッションを咥えてテーブルの上に立つ。

 

「まさか、劇でも始まるのか?」

 

「ふふっ、わたしの自慢の演技を見ててくれ。冬夜」

 

****

 

 その日は久しぶりに演技をした。

 

 『瀬田薫』として、小さな舞台で薫ではない役者として演技をした。

 

 今はベッドの上で冬夜を囲む様にしてみんなが寝ている。

 

 辺りを静寂と闇が包み込む。ただ一つ、窓から差し込む月の光を除いてまるで別の世界にいる様な不思議な感覚になっている。

 

 冬夜の家に来て早三日。

 

 まだ三日しか経過して居ないはずなのに、一日一日が濃くとても記憶に残る一日で、まるで数週間もこの家にいる様な----

 

 でも、そろそろ時間が来てしまいそうで……離れてしまいそうで、寂しくも思ってしまう。

 

 ちーちゃん、今なにしてるんだろう。

 

 演劇部は今頃次の劇の準備をしているかもしれない。

 

 そんな事を考えながら窓の近くに立ち星空を眺める。

 

「さて、そろそろ夢の時間は終わりなのか」

 

 この夢の時間は後一週間。

 

 それまで、今過ごす時間を大切にしていきたい。

 

 

 

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