我が家の五匹の小ちゃな家族   作:猫又侍

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ナチュラル犯罪回


我が家の猫と猫吸い

 みんなは猫吸いと言うものを知っているだろうか。

 

 主に猫の腹部に目掛けて顔をダイブさせ、猫の匂いを堪能するものらしい。

 

 しかしながら俺はそう言うのを全く知らないタイプの人間だ。

 

 そして、何故そんな俺が猫吸いについて軽く説明出来るかと言うと今朝の学校でこんなことが起きたからだ。

 

****

 

「猫吸いぃ?」

 

「そ、猫吸い。お前猫飼ってんのに知らないのか?」

 

 俺が授業終わりに最近よく話す山岸と言う奴に言われたことがきっかけだった。

 

 山岸は俺と同じ猫を複数匹飼っているらしく、悩みどころも似たり寄ったりと随分と似ている奴だった。

 

 初めて会った時はチャラい奴だと認識していたが話しているうちに結構いい奴なのだと判明し、それ以来は講義で会うたびちょくちょく話す様になっている。

 

「って言ってもなぁ……うちの猫がそれを許すのかどうかが問題なんだよ」

 

「長い事居ると許すんじゃないか? しかも一緒に寝てるんだろ? なら大丈夫だって」

 

「そこまで言われるんならやってみるよ。結構うちの猫モフモフするし」

 

「おう、絶対逝くぜ」

 

「うん、ここでその発言は止めようか。文字なら伝わるけど普通に会話してたら誤解をうむからな?」

 

 そんな事を話していると、山岸の友人らしき人物が山岸を呼び山岸もそちらに行ってしまった。

 

 取り敢えず必要な猫缶とキャットフードを購入して家に帰ることを決め、ペットショップに向かう事にした。

 

  ****

 

 目的の物を買うのに加えて、暇なので本屋に寄り小説を三冊ほど購入してしまった。

 

 別に金銭面がヤバイとかそんな事はないのだが、親の送る額がたまにヤバイので使うのを躊躇ってしまうのだ。

 

 とは言えこの世の中はお金がないと生きていけない世界。

 

 ジャングルであれば別だろうが、こんなジャングルと比べて発展しまくってる場所でサバイバルはできない。

 

 よって、少なからず使っているのだ。

 

「まぁ、そのおかげでモカ達の餌も買えてるしな。感謝しても仕切れないって奴だ」

 

 取り敢えず早く帰らないと、猫達のヘブンズナックルが飛んで来そうなので早く帰らなければ。

 

 ヘブンズナックルなんか食らった日にはデビモン様もビックリの行動不能になる時がある。

 

 主に日菜のジャンプのしなさすぎで金的された時が本当に死ぬほど痛かった。

 

 一生分の金的されたね。

 

「面倒は嫌だし、さっさと帰ろっと」

 

「やぁ!今日はいい天気……だね///」

 

 ……今目の前の小学生に女子高生が教育番組の着ぐるみがやりそうな挨拶してたぞ。

 

 ここはあえてスルーしよう。それが一番の情けって奴だ。

 

 一瞬、こっちをガン見された気がするがそちらを見たら負けな気がした。

 

「人は見かけによらんな」

 

 今の子は花咲川の制服を着ていたので恐らく女子高生。それに加えて、見た目は結構真面目そうだがさっきのあれだ。

 

 これからは人を見た目で判断するのをやめよう。

 

 そう心に誓った。

 

*****

 

 しばらく歩いていたので腹が減った。

 

 そして商店街には甘いパンの誘惑が潜んでいる。

 

 そう、ここ『山吹ベーカリー』こそが誘惑の根源であり言い方はあれだがモカの食料調達場でもある。

 

 取り敢えず二つ三つ買っていこうと思い、店の中に入ると珍しく男の人が接客している。

 

「らっしゃいやせ〜」

 

 なんだろう……チャラい。チャラ過ぎる!

 

 ネームには『山吹』と書いてあるのでここの家の人に間違いはないはずなのにチャラいオーラが半端ない。

 

 ここまで来たら生命エネルギーの星プラチナ出て来るレベルである。

 

 まぁ、先ほど人を見かけで判断しないと決めたのでちゃらっと買って帰ろうと適当にパンをトレイに乗せ会計をした。

 

 ふと気になって店員に聞いてみる。

 

「ここの家の人なんですか? 失礼ですが初めて接客しているのを見たのでバイトかと思ってしまいましたけど」

 

「あぁ、最近店番してなかったんでしょうがないですよ」

 

「は、はぁ」

 

 うん、チャラい。けど、悪い人ではなさそうなので会計を済ませて出ようとする。

 

 そんな時店員さんに話しかけられた。

 

「最近ここらのバンドメンバーが居なくなるって話聞きますんで、見かけたら教えて下さい」

 

「っ……分かりました」

 

 そう受け答えをして、店の外に出る。

 

 春の暖かい風が頬を撫でる。

 

 それなのに俺にはその風は余りにも冷たく感じてしまう。

 

「……来たか」

 

 一人……いや、三人程の足音がカツカツと、聞こえてくる。

 

 来て欲しくないと心の中で願っても、時間がそれを許さない。

 

 世の中は理不尽だ。

 

 だってそうだろ? わざわざペット用品買って、猫吸いやろうって思って張り切ってたのにこれだぜ?

 

「笹原冬夜様、お迎えに参りました」

 

「……あぁ」

 

 黒服が来たと言う事は、アイツらとのお別れの時間が近づいて来たのだろう。

 

 そろそろだと思ってもまだだと否定し、それを避けて来たがもうここまで来れば開き直るしか他にない。

 

「一度、家に帰らせてくれないか?」

 

「かしこまりました」

 

 そう言い残すと、黒服は商店街の人混みに紛れ姿を消した。

 

「……帰るか」

 

 俺は重くなった足を動かし、ゆっくりと家に向かった。

 

****

 

「ただいま……」

 

「ミャ〜」

 

 帰って来てすぐに俺の元に来たのはモカだった。

 

 今の五匹の最初の住人。

 

 もっと言えば六番目だけど。

 

 つまりこいつと過ごした時間が五匹の中では一番長いのだ。

 

「……よし」

 

 俺は意を決し、モカを抱き上げ顔を埋めた。

 

 瞬間、もふもふ感に顔が包まれ今までの苦労が洗い流されていくようになった。

 

「……よし、それじゃ行くか」

 

 外に車のエンジン音が聞こえ、ドアを開ける。

 

 舞踏会の閉会式が始まる。

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