それではどうぞご覧下さい。
窓の外を見るとだいぶ積もって居た雪山に更に大きく被さるようにして雪が降って居た。
そろそろ十二月も後半に入り後一週間もすれば今年が終わる。
俺はしんしんと積もる雪を眺めながらぼーっとして居た。
「はぁ……今年も一人か」
今年も一人、この単語を聞けば何かのイベントに参加する者だとすぐに分かるがなんのイベントだか分からない人たちも多いだろう。
だが、この日付を言えば皆すぐに分かるだろう。
十二月二十四日
この日に行われる行事といえばあれしかないだろう。
そう、クリスマスイブだ。
毎年一人なのは変わりないが、両親からはクリスマスには帰れるかも知れないと先月連絡があったので少々期待したが、やはりというべきか仕事で帰って来れなくなった。
友人を呼ぼうにも家族や彼女と過ごす人達なので容易に誘う事もできない。
故に一人クリスマス。
だが、今年の我が家は少し違う。
「ミャ〜」
「ん?蘭か。どうした?腹減ったか?」
今年は俺と蘭、そして友希那や香澄。こころや彩を含めた計一人と五匹でのクリスマスとなる。
うん、でも一人なんだよね。五匹居るけど。
まぁ賑やかになるのは変わりないし楽しいからそれはそれでいいだろう。
ただ今の時刻は18:00。
そろそろ買い出しに行ってクリスマスパーチーの準備に取り掛からなければいけない。
だが、一つ問題が発生する。
「街中に居るカップルが……カップルがぁ……」
『?』
さっきまでは蘭しか居なかったがいつのまにか全員揃っている。
が、そんな事は置いておこう。
今は街中のカップルをどうするかだ。
クリスマスやクリスマスイブは聖なる夜又は聖夜なんて言われているらしい。(言われているとは言って居ない)
そしてその聖夜に湧くのがカップルというわけだ。
外に出ればカップル、カップル、カップル、カップル……もう嫌になっちまうぜ……はぁ。
取り敢えず、家から出なければ良い話なのだが昨日まで色々勉強して居たので完全に忘れていた。
「背に腹は変えられないか。よし、買い出しに行くか」
『ニャ〜!』
え?蘭達も付いてくるの?寒いよ?というか風邪はひかないで欲しいんだよなぁ。
出来れば元気にクリスマスイブをすごしてほしいが……しょうがないか。
俺はいつも通りのフード付きのコートを着てフードの中に蘭達を招き入れる。
え?どうして五匹も猫が入るのかって?それは俺もよく知らない。ド●エモンの●次元ポケットみたいな物だろ。
「って、早くしないと売り切れちまう」
俺はそそくさと財布と必要なものだけ持って商店街に向かった。
「はぁ……はぁ……あ〜、危なかった」
ただ今俺は買い出しを終えて玄関にへたり込んでいる。
率直な感想はマジでしんどかったのみ。
まぁ唯一の救いが沙綾ちゃんやつぐみちゃんが話しかけて来てくれた事だな。
二人が話しかけてくれなかったら孤独死してた気がする。
「ニャ〜」
「あぁ、すまんな友希那。考え事だ」
他の猫も集まって来たので俺はテレビの前のテーブルにいろいろな料理を持ってくる。
勿論、クリスマスイブという事で特別に猫用のケーキを五つ買ってきた。
思ったより高い値段して財布が傷付いたけどこれは我慢だろう。
一通り料理を出したところで手を合わせる。
「いただきます」
『ニャ〜』
まずは適当に作ったペペロンチーノ。
普通に美味かった。そもそも俺は濃い味付けの方が好きだったのでドレッシングを少し多めにかけたから味が濃くて美味かった。
その間に蘭達を見ると猫の中でのお話が始まったのかニャ〜ニャ〜言っていた。
可愛い。
しかも蘭は黙々とケーキを食べているがその姿も可愛い。
まぁ可愛い尽って感じだな。
幸せだなぁ。
その後はバラエティー番組を見たり蘭達と戯れたりなどして楽しく過ごした。
気がつけばもうすでに23:30になっている。
「そろそろ寝るかな」
一応風呂や歯磨きは終わらせていたので後は寝るだけだろう。
俺は蘭達を抱えて自室に向かう。
自室に着くと蘭達をベッドの上に乗せてオルゴールを取り出す。
「今日はこれを聞いて寝るとするかね」
『ニャ〜』
全員の許可が降りたところで俺は数回ネジを回してオルゴールの音楽を流す。
その音楽はよくショッピングモールで流れているようなクリスマスソングだ。
俺は布団に入り蘭達を招き入れた後ゆっくりと目を瞑る。
オルゴールの音が丁度眠気を誘って来た。
「おやすみ皆」
「ミャ〜」「ニャ〜」「ミャァ〜」「ニャァ〜」「ミャ〜ァ」
そう言い終わると俺は意識を手放した。
クリスマス、クリスマスイブ。
それは人々が笑顔になれる不思議な一日。
さて、明日からまた忙しくなるかもしれないからな。
ここでみんなに言っておこうと思う。
メリークリスマス。良い一日を。
こちらからも。
メリークリスマス
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