逢魔時王と一人の歌姫の従者   作:龍狐

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久しぶりなので、今回もかなり短いです。


平行世界の事情を知った響たち 

前回、逢魔響の世界に来た原作世界の響たちは響の母親と祖母の墓標がその場にあったことに驚愕した。

 

 

 

「あれから、今日で二年……二人は元気にしてるかな?」

 

 

 

響はいつものトゲのある言葉づかいではなく、一人の女の子と同じようなしゃべり方だった。

 

 

「お母さんと…おばあちゃんの名前が…どうして…?」

 

「この世界の立花の親族はもう……」

 

「でも、どうして…?」

 

「響さんが元気がないのは、これのせいだったのデスね…」

 

「………」

 

「…………」

 

 

翼たちは目の前の衝撃に口を動かすだけ。

マリアとクリスは事情を知っているために何も言えなかった。

 

 

「………殺された」

 

「…え?」

 

「私のお母さんと、おばあちゃんは…あのゴミどものせいで……!!」

 

「それって……――」

 

 

その時……

 

 

 

―ザッ……―

 

 

 

誰かの足音が聞こえた。

そして全員が後ろを振り向くと、そこには以外な人物がいた。

 

 

「つ、翼が二人…ッ!?それに……」

 

「わ、私が二人……ッ!!?」

 

 

この世界の【天羽奏】と【風鳴翼】だった。

この世界の響は二人を忌々しげに睨みつける。

 

『どうしてここにきた』と言いそうになったが、響は奏の持っている一つのものに目が留まった。

奏の手には花束があった。

 

 

「か、奏と、この世界の、私…!」

 

「貴様ら…何をしに来たッ!!」

 

 

響は周りの驚愕を無視して叫ぶ。

ここには墓が二つ。そして天羽奏の手には花束。

何をしに来たのかは容易に想像できたが、響はそれを許そうとはしない。

 

 

「……墓参りだ」

 

 

この世界の翼が小さな、力のない声で言う。

 

 

「墓参りだとッ!?ふざけるな!」

 

 

響は怒りの籠った声を叫び、奏に近づいたと思いきや、花束を無理やり奪い、黄金のエネルギーでそれを消滅させた。

 

 

「ちょッ!?」

 

「な、なにやってんだよお前ッ!?」

 

 

平行世界の装者たちはもちろん、この世界の翼と奏も驚く。

 

 

「二年前のあの日……あのライブの日。あそこで何があったのかを、私は知っている。あんなことをしなければ、たくさんの人が犠牲になることも!あのクズどもから迫害を受けることも!あいつがいなくなることも!お母さんとお祖母ちゃんが死ぬこともなかった!!全部お前らのせいだ!!」

 

「「ッ!!」」

 

「そんなやつらが墓参り……?笑わせるなッ!!助けようと思うなら今まで何をしていた?何もしていないクセに!なにもしなかったクセに!力があると分かった途端に目の色を変えてくるようなお前らに、助けを求めても助けようとしなかったやつが、人の命を思っていいわけがない!!!」

 

 

「……………」(ダッ)

 

「奏ッ!!!」

 

 

響が叫び終えた後、奏は涙目になりながらその場を去った。

そしてそれを追いかけるこの世界の翼。

 

 

「どうして……?どうしてそんなこと言うの?」

 

「は?」

 

 

そこで、反論したのは平行世界の響だった。

 

 

「確かに、私もあの二年間、つらい思い、悲しい思いもたくさんした。でも、死んじゃった奏さんの言葉で、私は今も生きてる。皆と楽しい毎日を送れてるのに……」

 

「それはお前らの世界の事情だろ。私の世界と一緒にするな「でもっ!!」?」

 

「人の命を思っていいわけがない?そんなことないよッ!!誰だって、命を大切に思ってるんだよッ!!」

 

「そうだっ!!大切に思っちゃいけねぇ命なんてねぇよ!」

 

「そうだぞ!誰だって命を大切に思っている!」

 

「そうよ!だから、この世界の天羽奏の行動だって、あなたを守るためなのよッ!?」

 

「そうデスッ!あの人だって、命を大切に思っているのデスッ!」

 

「うん。だから、この世界の響さんも、二人の気持ちを分かってあげて……」

 

 

平行世界の装者たちは一斉に響に言う。

だが、響の反応は……。

 

 

「じゃあ……」

 

「え?」

 

「じゃあ、私の家を燃やした奴らは?」

 

「え…?」

 

「私の家を燃やした奴ら。私のお母さんとおばあちゃんを殺した奴ら。私を殺そうとしたやつらは、私たちの命を大事に思ってるの?そんなわけないよね?」

 

「そ、それは……」

 

 

「………『もう死んだかな?あの人殺し』」

 

「え……?」

 

「『きっと死んでるぜ。もし生きていたら俺たちで袋叩きにすればいいだけだ』」

 

「な、なにを言ってるんだ…?」

 

「『確かにそうね。人殺しに人権なんてものは存在しないんだから』」

 

「ま、まさか……」

 

「『おい、周りの家にだけは燃え移らないようにしとけよ!』……だったなぁ…」

 

「そ、それって…」

 

 

「……察ししてるやつの通りだよ。忘れたくても忘れられない、あの日の出来事……こんなこと言うやつらを、救う価値はあるの?」

 

「そ、それは…」

 

「まぁ、結果的に言えば、そのあとノイズが現れてそいつら全員死んだけど……私も変わったなぁ。あなたを見ていると昔の私そっくり。でも……あの日のことで私の考えは180°変わった。人なんて救う価値のないただのゴミだと。そして、唯一信用できるのは我が魔王のみ……。では聞こう。家族を失った辛さ。それがわかるか?平行世界の私…?」

 

「…………」

 

「分からないだろ?そりゃそうさ。家族を失った点については、最初に会ったお前ら二人は、よくわかっているんじゃないか?」

 

 

「「ッ!!」」

 

 

確かに、【雪音クリス】は幼いころに両親を、【マリア・カデンツァヴナ・イヴ】は小さいころに妹を失っている。血のつながった家族を失った辛さは、実質この二人が一番経験している。

 

 

「なんで……知ってるんだよ……」

 

「それは、あなたには一度も話して、いえ、この世界の人間は知らないはずなのに…どうして……。……まさか」

 

「……猫耳は察したか。我が魔王にかかれば、世界が違かろうと情報はすべて知れる」

 

「猫耳ってのは不服だけど……それなら辻褄は会う…」

 

「……もうここら辺でいいだろ?さっさと帰ってもらヴヴ――――――――――ッ!!ヴヴッ―――――――――ッ!!

 

 

 

響がオーロラカーテンを出そうとした瞬間、ノイズの発生音が鳴る。

それに響が舌打ちをすると、すぐにその場所に向かっていく。

 

 

「あ、ちょっと待って!!」

 

 

そして、それを平行世界の響たちは追っていくのであった。

 

 

 

 


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