これは、この世界の【逢魔響】が14歳の誕生日を迎えるころの物語。
私の名前は【
そんな私は今現在、恐れ多くも我が魔王と同じ屋根の下で暮らしている。いや、屋根の下と言う表現はあまり正しくないかもしれない。正確には、同じ空間の下で暮らしている。
この空間は我が魔王の住処である空間だ。現世とは完全に隔絶されており、この場に行きつくためには空間転移を可能とする【オーロラカーテン】の使用が必要不可欠だ。私や我が魔王はもちろん使える。
そんな私と我が魔王だけの居城に、なんでもお客が来るとのことらしい。
「―――お客、ですか?」
「そう。この世界とはまた違う異界の商人なんだけどね、その人たちがココに来るんだ」
相手は、異界の商人。私たちの住む世界とはまた別の世界の商人が、世界の壁を越えてやってくる。普通なら耳を疑うような話だが、我が魔王の言葉に間違いなどないだろう。それに私自身、既に他の世界が存在していることは認識している。だから特に驚く要素はない。
「ほら、そろそろ響の誕生日だろう?あそこは美味いものを取り扱ってるから、どうせならパーッとやろうかなと思って」
「我が魔王…」
驚きだ。同時にとても嬉しい。まさか一従者である私の誕生日を覚えていてくれていたなんて…。感激だ、いや、この気持ちをそれ以外で表せない!!
我が魔王の前であるため、表情を崩すことはないが心の中で悦びに浸っていると、我が魔王の小さな呟きが耳に届く。
「だが、その…」
「――どうかなさいましたか?」
「え、あ、うん。……言った方が早いか。響、そこに座ってくれ」
「か、かしこまりました…」
私は我が魔王の座るソファーの向かい側のソファーに座り、長机を挟むように座った。
同じ目線になって初めて気づいた、我が魔王の表情。アレは、例えるならそう、重要な秘密を打ち明ける際に見せる悩みの顔だ。あんな我が魔王の表情、珍しい。
いや、我が魔王は強大な力をお持ちだが、感覚は非常に庶民的でこの家にもその感覚が現れている。夕飯
に悩むときにも見るこの表情だが、その時とは違う“真剣さ”が感じられた。
我が魔王がしばらく考え込む動作をした後、決意したのか私の目を鋭い目で見てきた。同時に、私の体も強張る。一体、どんな話をされるというのだろうか。
「――響。単刀直入に言おう」
「なんでしょうか?」
「注意喚起は直接言った方が早いからな」
「注意喚起、ですか?」
注意喚起とは、一体なにに対してだろう。今までの話から導きだされるのは、その商人に関してだが、一体なにが――
「
「―――はい?」
私は我が魔王の言葉に思考を停止した。我が魔王がわざわざ注意喚起をするのだからよほどのことかと思ったが、まさかこれから出会う予定の人物に関わるなと言ってきたのだ。驚かないわけがないが、それよりも前半の言葉の方が気になった。
「イカレキチガイ…ですか?」
「あぁ。ヤツらは怒り狂ってるんじゃない。イカレ狂っているんだ。イ行じゃないんだ、エ行なんだ」
「はぁ…」
我が魔王は両手の指を交差させて両肘を太ももの上に置くと、その手に自分のオデコを乗せた。これ、悩んでいる人がよくやるポーズだ。
「まぁ…キチガイと言っても全員じゃない。マトモなヤツも少ないがいるし、戦闘員に限定されるからな。まぁ戦闘員の95%がイカレキチガイだと思っておけ」
「それほとんどじゃないですか」
「そうなんだよ。それでだ、俺が知っている限りだが、ヤツらの特徴を言うから、憶えておいてくれ」
「はい、わかりました」
正直言って我が魔王がここまで言う連中には会いたくはないが、我が魔王の命である以上完遂するのが従者の務め。私は我が魔王の話に耳を傾け、我が魔王の言う情報を全て脳にインプットすることに努めた。
――そして、我が魔王の話は長く、とても長く続いた。結論から言うが、確かにとんでもないイカレキチガイだ。さらに会いたくなくなった。まぁ我が魔王なら負けることはないだろうが、それとこれとは話が別である。
我が魔王の言う、イカレキチガイどもの情報はまとめるとこうだ。
天を貫く髪
・文字通り髪の毛が一直線に天を貫いているらしく、その長さは1784m以上ある
・二メートルの長身に筋骨隆々、子供用の服と緑色の半パンを着用している
・第一印象:【勝てる気がしない】
・年齢:13歳
・よく猫耳の銀髪女性を
総悟「毎回あの女性が
伝説の超(スーパー)野菜人
・とある星の戦闘民族の生き残り
・脳筋
・得意なのは“気弾”“岩盤”“
これで相手はほとんどの確率で【デデーン】(死)するらしい
・老若男女関係なく血祭りにあげる“癖”があるらしい
総悟「気に入らないことがあるとすぐ気弾ぶっ放すから、困るんだよなぁ…」
不滅の神の才能
・種族:バグスター
・神の才能を持つ自称神の天才ゲームクリエイター
・ウザさの最大レベルが10だとすればアイツは100
・言動の0から100まで全てがウザい
・ライフが【9610】あり死んでも復活する
・私服がクソダサイ
・【天を貫く髪】のいる世界のゲームを再現しているとか…
総悟「アイツは何度殺しても蘇るからキリがない。俺、アイツの力も使えるからメッチャ敵視されてるんだよな…」
ドM天人
・種族:天人
悟りを開いたり、高い業績によって神霊化した人々が成るもの(神々と呼んで相違ない存在)
・生粋のドM(変態)
痛みを快楽に変える正真正銘の変態
・物理・精神・自然環境耐性持ち
ありとあらゆる苦痛で快楽を得ようとしたらいつの間にかこうなっていたらしい
・師匠は【S級ヒーロー:ぷりぷりプリズナー】
全裸で戦う戦闘スタイルのヒーローらしい。本当にヒーローなのだろうか。
総悟「あの女、俺を攻撃を気持ちよさそう――ていうか実際気持ちいいって喘ぎ声上げながら爆散したよ。まぁ生きてたけどさ」
ハイラルの厄災勇者
・金髪碧眼の好青年(約120歳)
・古代技術ととある国の初代王の右腕(比喩的な意味ではない)を使い非常識なことをしている
・よくいろんな場所をパンツ一丁で駆け回る
・やることが毎回派手
前に「リンゴの森をバクダン矢で
総悟「アイツの行いは勇者じゃなくて厄災だよ厄災。なんでアレで問題にならないんだろう」
サイコパスクラフター
・全てが四角い世界の住人
・素手で木を破壊できる
・面白半分で森の洋館を海の洋館に変えた
・村を発見するたび勝手に拠点を作って強敵の卵を孵化させたりスポーンさせたり、ついでに村の土すべてを耕したらしい
総悟「アイツはクラフターじゃなくてブレイカーだ」
トゥルーヒーロー/フォーエバーヒーロー
・とある喫茶店の
喫茶店の
・基本的には無口
接客はほとんどバイト任せで自分は本を読んでる
・デート服が一昔前のロックシンガー
なお周りの女性からは好評らしい
・数少ないマトモ枠
それでも変人であることには変わりないらしい。
・ペットに機械の鳥とある巨大生物を飼っている。
総悟「彼はまぁ…メンバーの中ではマシ、な部類、なの、か?それに彼にはウラの顔が……いや、やっぱりなんでもない。あと彼のペット、鳥はいいとしてアレは別作品の…これもいいや」
暴食ピンクボール
・一頭身のピンクボール
・とても可愛らしい
・非常に暴食であり、口の先がブラックホールに繋がっているのではないかと言われるほど
・コピー能力と言う能力を持ち、吸い込んだものの能力を使えるようだ
・商会の長ととても仲が良いらしい
・イカレキチガイと言うよりは純粋無垢
総悟「この子もマシな部類。子供みたいに純粋でいい子なんだけど、如何せん食欲が怪物並みでよく
シューズコレクター
・種族:ウサギ(二足歩行)
・元マフィアのボス 現在死刑囚
・囚人番号004 囚人服の色は赤
・銃撃、刃物、毒物が無効
・常軌を逸脱した身体能力
・シューズコレクター
・マイペース
・自身のペースを崩されるとキレる
・さらにブチギレるとさらにヤバい
総悟「一回ブチギレたアイツを見たことがあるんだが…あれもう人じゃないよ。元々人じゃないけどさ」
でんぢゃらすキャット
・種族:猫?
・現在は飼い主のじーさんとその孫の家で暮らしている
・北海道を滅ぼせるほどの力を持っている。
・口からミサイルを放ち、耳からパンチを繰り出す
・人の言葉を喋る
・防御力:無敵
総悟「とりあえずアイツは【猫】と言う言葉を返上すべきだと思うんだ」
22世紀の青狸
・22世紀産の猫型ロボット
なお現在はネズミに耳を齧られ狸っぽくなってる
・【ひみつ道具】を駆使して戦う
・ネズミが大の苦手
・一年に一回宇宙を救ってる
総悟「基本的には良い奴だけど、ネズミが出たとき躊躇いもなく【地球破壊爆弾】とか【銀河破壊爆弾】を作動しようとするから苦手なんだよな…」
オカマ魔女
・二人組の魔女
肩書は“魔女”だが二人とも男であり、オカマである
・衣装はバレエの舞台衣装
片方は全身タイツとスリングショット、もう片方はレオタード、チュチュ、トゥシューズを着用
・二人ともオネエ口調
総悟「前にあの二人に追いかけられたことがあるんだが…「「待ちなさーい!」」ってさ…。あまりにも壮絶過ぎてアイツ等の城ごと吹っ飛ばしたことあるんだよな…」
橙色の武神
・魔界で放送されている大人気教育番組の主人公
・顔は子供向けの可愛い人形なのだが、首から下が橙色の筋肉マッチョの等身大
・食べ物は茶碗蒸し
・好きな色はヤニで汚れし愚かなる人間の歯色および茶碗蒸し色
・勝敗を気にしない純粋な戦闘狂
総悟「あの戦闘狂、男女問わず股間を連続パンチしてくるんだよなぁ…だから変身が解けない」
――以上が、我が魔王から聞いたイカレた戦闘員メンバーとのことだ。
「―――――」
ちなみにさっき聞いたのは我が魔王が把握しているメンバーだけであり、他にもいるらしい。
話は1から全て聞いたが、改めて思い知った。その商会の異常さを。話を聞いただけでも鳥肌が収まらない。メンバー一人一人が異常すぎて寒気がする。例外っぽいのはいたが、そのほとんどがイカレキチガイと言って相違ないだろう。
「彼らの他にも、常識人はわずかにだがいる。だけどそれも説明していると時間ないからスキップするぞ」
「はい…」
「まぁだが安心しろ。今回今挙げたキチガイどもは来ない。商人のヤツからそう聞いている」
「なら安心ですね…」
「代わりに一人、新人を連れてくるそうだ」
その言葉に部屋の空気が一気に氷点下まで凍る。我が魔王の説明だけでその戦闘員たちがどれだけトチ狂った変人なのかが理解できてしまった手前、その新人が常識人とはとても考えずらい。むしろキチガイが一人増えたとすら思う。
「だが聞いた話によるとちゃんとした常識人のようだ。貴重なツッコミ役が増えて助かってると聞いてる」
「ツッコミ役…」
「長続きしそうだと喜んでいたよ」
本当に大丈夫なのだろうか。私はそれが不安でならない。そんな魔境で適応できている時点で普通とは到底言えない上に将来ソイツが狂ってもおかしくなさそうだ。
「その…本当に大丈夫なんですか?今からでも縁を切った方がよろしいのでは…?」
「キチガイの割合だけ考えるとその方がいいんだろうけど、あそこって結構いい商品取り揃えてるから、難しいんだよなぁ…。それに、こちらから会おうとしなければ特に問題はない」
―――。我が魔王はそう言って私に笑顔を向けてくれた。だが、今回そんなキチガイ集団に合わざる負えない理由が、私にあることが凄く心が痛い。私なんかのために、そんな身を削らなくてもよいというのに。だが、それは我が魔王の御好意を無碍にすることに他ならない。従者の立場である私がそんなこと、言えるはずもなく、私は口を紡ぐ。
「―――それで……その商人の方はいつ頃お見えになられるのでしょうか?」
「あ、えーと……じ、実は、“今日”なんだ」
「――え」
「ご、ごめん…。とても言い辛くて…」
「い、いえ!!我が魔王が謝るようなことではありません!私のことなど気にせずともよいのです!しかし……それなら何故今になって…?」
私のことなど気にせずとも良いのに、何故当日に話すことを決意したのだろうか。私はそれが気になった。
「やっぱり何も言わないのは不味いと思ってさ。それに昨日の集まりで――ってこれはいいか…」
(昨日の集まり…?)
確かに昨日、我が魔王は一日中いなかったが今の話となにかしら関係があるのだろうか。
だが我が魔王が「いい」と言っているのだからこれ以上深堀する必要はないだろう。
「響。これだけは覚えておけ…あの商会の中で、一番ヤバイのはそのキチガイ共をまとめ上げられるトップの存在だということをな」
「――は、はい…」
この話の中で、一番重圧感の言葉に私はたじろぎながら返事をした。
そうだ。我が魔王が頭を悩ませるほどのキチガイの巣窟。そんな魑魅魍魎蔓延るイカレたチームをまとめ上げる存在が、普通なワケがない。
私が冷や汗をかいていると――、
「ていうか、そろそろ来るはず――」
その時、とても都合のいいタイミングで家のベルが鳴った。何気にこの家のベルの音を聞いたのが今回が初めてだ。
「なんというタイミングで…じゃあちょっと迎えに行ってくるよ」
「いえ!!我が魔王のお手を煩わせるわけには!ここは私がいくので、ここでお待ちください」
ソファーから立ち上がろうとした我が魔王を静止し、代わりに私が立ち上がり玄関へと向かう。
何度も思うが、ここに住むことになってから相手を出迎えるのも初めてだ。今の私に、我が魔王以外の誰かを、出迎えることなどできるだろうか?
「――――」
いやいや、なにを弱気になっているんだ。私は我が魔王、【逢魔総悟】の従者。あの方のことを考えれば、このくらいのことできて当然だ。何を悩む必要がある。
私は顔を上げて玄関に向けて歩き出す。靴を履き、扉の取手に触れ、ゆっくりと扉を引いた。
「こんにちわー。マホロア商会でえ……す……」
「お待ちしておりまし……た…」
この時、私は失念していた。私は普段外に出るときフードを被っている。あの惨劇からもう1年ほどだが、それでも唯一の生き残りと言う私の顔はある程度知れ渡っている。
だからこそ、家にいるときはフードを被る必要性もないため、取っている。それが悪手だった。
だって、あの、この、男、は――
私のかつてのクラスメイトで、私を迫害してた一人なのだから。
* * * * * * * *
今、玄関のドアを隔てて、そこには一人の男がいた。その顔を見るまで今までずっと忘れていた一人の男。――【佐藤】、かつての私のクラスメイトで、私を迫害していたうちの一人。
その男が今、私の目の間にいる。
「何故、お前が、ここに…!?」
「それはこっちの台詞だアホンダラ。まさかお前とこんなところで会うとはなぁ…!!」
「それこそコッチの台詞だ。なんてお前がここにいる。ここは私と我が魔王しか来れない場所だぞ」
「――我が魔王?」
佐藤は首を傾げ、気軽にその呼び名を口にする。お前がそれを口にするな!それは、私だけの特権だ――!!
「出ていけッ!ここはお前が来ていい場所じゃないッ!!」
私は佐藤に向けて右手を突き出すと、その瞬間黄金色のエネルギー波を繰り出し佐藤ののことを追い出そうと力を放った。
「―――ッ!?」
佐藤は咄嗟のことで自身の顔を守るために両腕で顔を塞いでいた。
勝利を確信した私だったが、私は見た。佐藤の懐から一枚のカードが飛び出し、そのカードの絵柄が実体化して黒い狐となって佐藤の盾となり、私の攻撃を防いだのだ。
「コォンッ!」
「クロス…!――あんがとよッ!!」
あの狐、一体何者…!?私が驚愕していると、佐藤の両手に突如として黒と青の二振りの剣が出現した。その時私は気づいた。コイツ、普通じゃない。なんらかの能力を会得している!
この一年で一体なにがあった!?―――いや、そんなの関係ない、この邪悪を、今すぐにここから追い出さなければ!!
幸いまだ私の攻撃はあの狐が防いでいる状況で、完全に無力化はされていない。ここから追撃すれば――
「――バカなッ!?」
だが、私の予想は打ち砕かれた。佐藤は狐の前に出るとその二振りの剣を用いて私の攻撃を弾いて無力化したのだ。我が魔王より与えられし力が、こんなヤツに敗けるなんて――!!
「やってくれたな高慢チキ女……。上等だかかってこいッ!」
「いいだろう!!お前の全身引き千切って鯉の餌にくれてやるッ!!」
私が手を佐藤に向けて掲げた瞬間――
とても慣れた感覚、時間が止まる感覚が私を襲った。そのまま動けなくなった私の背後で、重厚感のある声が響いてきた。
体が動かすことができない。やつの、佐藤の疑念の顔が視界に映る。だがそんなことは今はどうでも良く、私は後ろにいる存在に声を掛けた。
「我が、魔王…」
『そのものは私の客人の一人。何の真似だ?』
コイツが…!?私は目の前にいる佐藤を睨みつける。まさかコイツが異界の商人!?こんなヤツが!?
私が内心で驚いていると、突如知らない声が聞こえた。
「ちょっとチョット。コンナところで固まってどうしたノサ、黒竹クン。
よく見ると、佐藤の後ろ側で影が動いている。その影がゆっくりと佐藤の前に現れると――私は呆然とした。その理由は、目の前にいるのが二頭身の謎生物だったからだ。
茶色い卵型の体を黄色い歯車模様の青いフードで包みそこから黄色い目が見える。口元を覆うベルトを通して白いマントを羽織り、頭には円錐形の耳のような何かが生えている。
そしてなにより特筆すべきは、手。薄い黄色の手袋をしている手が体から離れて浮いている。なんだこの生物は。
『【マホロア】…来たか』
「お待たせしまシター……って、ナニやってるノ?時止めプレイ?」
『そんなに死にたいのか?』
「ごめんゴメン。冗談ダッテ」
私の後ろにいる我が魔王から、【マホロア】と呼ばれた謎生物が我が魔王と気軽に会話をしている――。まさか、コレが商人?
困惑していると、突如として動けるようになり、前によろめいた。咄嗟にバランスを立て直し、私はすぐに後ろを振り向いて金色の魔王となった我が魔王に向かって片膝を付いた。
「我が魔王…騒ぎを起こし、申し訳ありません」
『ふむ……マホロア、その男が貴様の言っていた新人か?』
「そうダヨ。とアル世界で拾ってネェ」
拾った…?佐藤を、この謎生物が?気になる単語が出てきたが、私を無視して会話は進んでいく。
『……響、先ほどその男と言い争っていたが、なにがあった?』
「それは…――」
言い淀んだ私だったが、あの謎生物が私に近づいてくる。今の私は片膝を付いて背を低くしているため、二頭身ほどしかないこの謎生物とは今は高低差があまりない。
謎生物は私の前に出ると、じーっと私の顔を見てきた。
「な、なにか…?」
「……やっぱりキミ、【立花響】だよネェ…?」
「―――ッ!?」
この謎生物、何故私の名前を…!?
『――何故貴様が響の名を…?響の存在を知らせたのは昨日の話だが、名前までは出さなかったはずだぞ…?』
このことには、我が魔王も驚いていた。私と言う存在がいることは“昨日”伝えたようだが、私の名前は知らせていなかったらしい。と言うか、“昨日の集まり”ってこの謎生物と会っていたのか…。
「何故ってナニモ、ソコのカレに関係シテいることだからネ」
そう言い謎生物は後ろにいる男――佐藤を浮いている手で指さした。
佐藤は既に手に持っていた二振りの剣をすでに持っておらず、しゃがんで黒い九尾の狐の顔をわしゃわしゃしていた。そこ戯れるな。
「ナニやってんノ?」
「クロスが不安がってたから…慰めないと」
「一応キミの話してるんダケド」
「俺よりクロスだろ」
「エェ…」
再び黒い狐をモフる佐藤。――アイツあんなキャラだったか?その光景を呆れて見ていると、我が魔王からお声がかかる。
『――とりあえず、あがれ。話はそれからだ。響もいい加減に立て』
「ウンそうだネ。そうさせてもらうヨ。ホラ、黒竹クンもそんなトコロでしゃがんでないで、コッチ来てヨ」
「ふーい」
「かしこまりました」
佐藤は黒い狐を抱えて立ち上がると律儀に(と言うか当たり前だが)靴を脱いで入ってくる。我が魔王と謎生物は既にリビングへと向かっており、佐藤はそれに続く形で私の横を通り過ぎる。――その際、佐藤は私をとても冷めた目で見てきた。当然私も、それに負けないくらいに冷めた目をしていただろう。
「―――」
私は、佐藤に着いていく形でリビングへと脚を進めるのであった。
* * * * * * * *
「――――」
「――――」
リビングにて。机を挟むように置いてある二つのソファーに、それぞれ私と我が魔王、謎生物と佐藤と黒狐が座っている。まぁ正確には黒狐の方は佐藤の膝で寝っ転がっているが。
そして私と佐藤は向かい合う形で互いに睨んでいる。何故コイツとこんな不毛な時間を過ごさなければいけないのだろうか…。我が魔王の客でなければこんなことしていないのに。ていうかその撫でる手を止めろ。視線と行動がミスマッチ過ぎて力が抜ける。
「……で、結局その人誰?」
変身を解除し、私の隣に座っている我が魔王が謎生物に問いかける。
そうだ、まず真っ先にコイツが何故いるのか、それを知らなければいけない。
「まぁマァ。その前にボクから自己紹介させてヨ」
「まぁ…いいけど…」
「オッホン。それじゃあ、改めテ…」
謎生物はソファーから立ち上がり(脚はないため浮いているが)私と視線があった。
「ボクは【マホロア】!故郷は【ハルカンドラ】で第二の故郷は【プププランド】!初登場は【星のカービィWii】。今は商人として世界を旅シテ周ってるンダ、よろしくネ!」
「――――よ、よろしく…」
謎生物――マホロアから自己紹介をされ手を差し出されたため、私はその手を握る。手袋越しではあるがとても柔らかい感触がする。見た目なだけにプニプニしている。
それよりも、なんだこの自己紹介。
ハルカンドラってどこだ
プププランドってどこだ
初登場ってなんだ
いろいろな思考が錯誤するが、頭からすぐさま払拭する。私には関係のない話だ。
「それで…どうして佐藤がここに…!」
もう埒が明かないので、私の方から話を切り出した。自己紹介は終わったんだ、話を遮るものはなにもない。
だが、マホロアから出た言葉は、予想とは斜め上のものだった。
「エ、彼は黒竹クンだよ?」
「は?」
こいつは、佐藤ではなく黒竹と言うらしい。いや、あり得ないだろ。私のクラスメイトに黒竹なんてヤツいなかったし、それにコイツは100%佐藤だ。髪が伸びて左目が隠れている上にその左目を眼帯で隠してはいるが顔は全く変わらないためすぐにわかった。
それでも、マホロアの説明は続く。
「彼ネェ…とある要因で“自分の名前”ダケって言うピンポイントな記憶喪失みたいでネェ…ソレでボクが付けたんダ」
自分の名前だけ忘れる記憶喪失…だから佐藤の名前――ていうか苗字が違っていたのか。
「それでドウ?キミ佐藤って言うらしいケド…名前思い出しタ?」
「うん?いや、なんか頭に引っ掛かりがある感じがするけど、ぶっちゃけどうでもいい」
マホロアが隣にいる佐藤に質問をしたが、佐藤は相変わらず黒狐をモフモフしながら一蹴した。
「自分のナマエなのニどうでもイイんダネ…」
「嫌な思い出しかないからな、コイツ含めて…」
そう言い佐藤は黒狐を撫でる手を止めることはないが私を睨みつけてくる。
「それはコッチの台詞だクズが。私もまさかこんなところで二度と拝みたくないツラの一つを見ることになるとは思わなかった」
「あぁん?そりゃコッチの台詞だ。クソアマが」
互いに暴言を言い合い、睨み合う。コイツ、馬鹿だとは思っていたがまさかここまで逆恨みされるとは思わなかった。結局コイツがとんでもないクズだということが分かっただけだった。
そんな私たちを見て、マホロアがため息をついた。
「あぁウン…。コレ、事情がとてもややこしいんダヨネェ…」
「どういう事情なんだ?それはお前が響のことを知っていることと関係あるのか?」
そうだ。そもそもマホロアが何故私のことを知っている。コイツは私の存在は知っていても私の名前は知らないはずだ。私はマホロアに視線を送り、マホロアの口が開くのを待つ。
「――えっとネェ…一言で言うと…彼は【立花響】たちから迫害を受けた世界から拾ってきたんダヨ」
「「―――は?」」
私と我が魔王の困惑の声が、重なった。私が、佐藤を迫害した世界から?――“私”が?
マホロアから、さらに詳しい話を聞く。
今目の前にいる佐藤のいた世界は私の生まれ育った世界と“ほとんど”なにも変わらない世界だったようだ。佐藤は生まれた直後に捨てられ孤児として孤児院で育った。
そこで佐藤にはとある3人のクラスメイトがいたらしい。と言ってもクラスメイトと言うだけで何の関わりもなかったらしいが。その3人が【立花響】【小日向未来】【
そしてそんな中学生のある日、その世界の“私”が私と同じようにツヴァイウィングの惨劇の唯一の生き残りとなり、生死の境を彷徨った。その時の佐藤は“私たち”とは他人だったため、少し心配する程度だったらしいが――そこで変わった。
とある日に、“惨劇の生き残り”というレッテルが突如として佐藤に張り付けられたらしい。当然佐藤は何も分からないまま困惑したが、なぜか反論はできなかったようだ。その世界の佐藤は孤児、当選確率の低かったあのライブのチケットを入手するのは困難を通り越して不可能なはずだ。宝くじで当たるか、誰かに貰わない限り不可能。だが世間や周りは佐藤がその日ライブ会場にいたことになんの疑いも持たなかった。ライブの日、佐藤はずっと孤児院にいて、何人も証明者がいるにもかかわらず、だ。
そしてそのライブで生き残るために“私”を突き飛ばしてなんとか生還したことになっていた。その世界での“私”はどうやら完全な被害者だったようだ。そこからは殴る蹴るの暴行はもちろんのこと、食事すらまともに与えられず、恥をかかせられたそうだ
放課後の際、学校裏で“私”と“小日向未来”、世創狐白が見守る中、同級生の男たちから
そこで自らの生命を諦めかけたその時、黒い狐――今目の前にいる狐に出会ったそうだ。その狐の発した救難信号によってマホロアがそれを受信し、佐藤の命を救った。で、なんやかんやあって今はマホロアのお世話になっている――とのことらしい
「詳しくハ【PROJECT NIYARI】で確認シヨウ!」
と、最後の最後でマホロアが訳の分からないことを言って締めくくった。
―――とりあえず、違和感の正体ははっきりと分かった。コイツが私にあんなふざけた態度を取っていたのは、コイツの世界では私とは逆の立場だったから、と言うわけか…。だが――、
「なるほど……道理で……。響、辛いことを思い出させるようで悪いが、【世創狐白】と言う名に聞き覚えは?」
「いえ…申し訳ありませんが聞き覚えがありません。なにより珍しい苗字ですのでいたら覚えているかと。別のクラスだったら流石に覚えていませんが…」
「そう、ソコ。ボクも色々調べたケド【世創狐白】なんて人居なかったし、確実にイレギュラー。ソレにソイツが結構厄介な能力持ってるんダヨネェ…」
「厄介な能力?」
「仮面ライダーギーツⅨ。創世の神の力だよ」
「―――ッ!」
創世の神!?名前からしてトンデモな能力を持っていることが伺い知れる。我が魔王には敵わないだろうが、それでも強力で恐ろしい力であることには間違いない。
……待てよ、創世の力、佐藤の周りの意識改竄……まさか
「ソイツがねぇ…創世の力で黒竹クンに“生き残り”のレッテルを押し付けたんダヨ」
「「――――」」
私と我が魔王は二人同時に佐藤を見る。佐藤は相変わらず黒狐のことをモフモフして全然気にしている様子はなかった。
「チョット、黒竹クーン?」
「え?あぁ……気にしなくていい。アイツ等に地獄見せることには変わりねぇし」
佐藤はそう淡々と言ってのける。非道なところは変わらないな、本当に。まぁコイツのこういうところは後天的だろうが。それにしても、いくら別世界の私に地獄を見せると言われても、全然何も思わない私がいる。まぁそれほど我が魔王への忠誠が厚いということだ。ここは自分で自分を褒めるべきだろう。
だが、気に食わないのは―――、
「で、この話から察するに、この世界のお前は俺を含めたクラスメイトのヤツらか迫害を受けてたってわけか…」
私の思考を遮り、佐藤が私の境遇を一言で簡潔にまとめた。合ってはいるが、コイツに同意するのはなんかムカつく。
「まぁそうだ。それにしても擦り合わせくらいはすべきだったな…。別人とはいえ、まさかこんな偶然があるとは…」
我が魔王は私の隣でため息をついて、顔を地面に向けた。
「お待ちください我が魔王!あなた様が気にすることではありません!」
「……つーかよ、立花。お前そんなキャラだったか?」
「【立花】じゃない!!私の名前は【逢魔響】だ!!」
私はソファーから立ち上がって佐藤に向けて言い放つ。私の訂正を聞いた佐藤は「は?」と呆けた顔をしていたが、すぐに無表情に戻った。
「逢魔…?あぁ、お前も訳アリね…。だったら俺のことも黒竹って呼べ、交換条件だ」
「言われなくとも」
ちょうどいい。正直言って佐藤の名を口にするだけでも腹が立っていたところだ。この顔が目の前にあるだけでストレスものだが、少しでもストレスの原因が減るのであればそれでいい。
「ハイハーイ。じゃあコレで辛気臭い話はオシマイ!ソウゴ!!商品の確認してもらうからコッチ来て!」
「え、ちょまッ!!」
と、マホロアが無理やりこの話を切り上げて突如マホロアが指を鳴らした瞬間、リビングからマホロアと総悟の二人が一瞬にして消えてしまった。
「我が魔王!?」
「マホロア!?俺を置いてくなぁ!!瞬間移動するなら俺も連れていけぇ!」
なんというだ。よりにもよってマホロアはこの空気に耐えられなかったために瞬間移動でこの場から去った。焦ったのか、テンパったのか、どちらにせよ相性最悪の私とコイツを置きっぱなしにして言ってしまった。
流石に焦ったのか黒狐を撫でる手を止めて立ち上がった佐藤――いや、黒竹。黒竹の傍ではあの黒狐が心配そうにヤツを見ている。
「コォン…」
「クロス…気にすることはない。アイツの上げてから下げるところはいつものことだ…。もう慣れっこだ…。慣れたかないけどな…」
脱力しながら天井を仰ぐ黒竹を、私は無表情で見る。――気まずい。気まずすぎる。どうしてコイツと二人っきりにならないといけないのだろう。我が魔王の客人でなければ今すぐコイツを追い出したい衝動に駆られる。
――だが、ちょうどいい機会なのかもしれない。
「クッソ。まぁ玄関辺りにいるだろうし今から行って―――」
「おい、佐藤」
「――さっきその呼び方やめろって言ったばかりだよな…?」
その瞬間、佐藤から放たれる強烈なまでの殺気。一応コイツ、私と同い年だよな…?我が魔王から力をもらっている私だからなんとか耐えられるが、前の私だったら心臓発作で即お陀仏だったに違いない。
コイツが短期間でどれほど力を得たのか伺い知れたが、今はどうでもいい。
「――佐藤。お前さっき言ったな。お前の世界の私たちに地獄を見せると」
「――あぁ、言ったが。ソレがどうかしたか?……まさか、違う世界のとは言っても“自分”だから止めろってか?」
「違う。その私と私は何の関係もない。復讐したければ好きにすればいい。【立花響】だろうが【小日向未来】だろうが【世創狐白】だろうが好きに地獄に叩き落とせばいい。だが、私が気に食わないのはそこじゃない」
「―――?」
口を“へ”の字に曲げて気に食わなさそうな顔をする佐藤。あぁ、これが復讐で視野が狭まった人間の顔か。私も我が魔王に出会わなければきっとこうなっていただろう。つくづく我が魔王に感謝だ。
私はあの話を聞いてから気に食わなかったこと、すべてを話す。それは――、
「佐藤。お前はその【世創狐白】とか言うヤツに『創世の力』で現実を書き換えられ“生き残り”のレッテルを貼られたそうだな」
「……それがどうした?」
「それでその世界の“私”、【小日向未来】、【世創狐白】が主軸となりお前を迫害した……ここまでは合ってるな?」
「あぁ。だからそれがどうしたって―――」
「じゃあ書き換えられてなかったらお前は“私”にどうしていた?」
「―――は」
佐藤の呆けた顔が私の瞳に映る。はっ、滑稽だな。やはりその可能性を考えていなかったか。
「お前の辿った歴史はソイツに歪められたいわば偽物の物語。だが、本来の歴史では?“私”が迫害されていたら、お前はどうしていた?見て見ぬふりをしたか?加担したか?それとも……私を助けてくれたか?」
「――――」
「……一つ、話をしよう」
私は【逢魔降臨歴】を取り出し、語り始める。これから語る内容は、この本には一切書いていない。すべて私のオリジナルだ。ただ本を見ながら話すのは風情があって、コイツの目を見ないで済む。それだけで理由は十分だ。
「一人の男の話。その男はとあるライブの生き残りの一人の少女を仲間とともに迫害していた。その男たちは少女の教科書を破き傷つけ、机に落書きをした。これなどは序の口。男は、仲間とクラスメイトとともに少女の精神を追い詰めた」
「――――」
「そして男の、男たちの暴動は少女だけには飽き足らず、少女の家族にまで被害を及ぼした。少女の家の壁には悪口や罵倒をスプレーで書き、酷い時には窓ガラスを割ったりもしました。
「――――」
「そして一番最悪なことに――少女の家は燃やされ、母と祖母は亡くなりました」
「――――ッ!」
その時聞こえた、家の前にいた男女たちを、その声を、少女は今も忘れていない。『もう死んだかな?あの人殺し』『きっと死んでるぜ。もし生きてたら俺達で袋叩きにすればいいだけだ』『確かにそうね。人殺しに人権なんてものは存在しないんだから』『おい、周りの家にだけは燃え移らないようにしとけよ!!』。少女は恐怖しました
あぁ、心が痛い。自分で言っておいて、自分でやると決めておいて、でもトラウマを自分で抉るのは痛い。でもやり遂げて見せよう、コイツの顔が曇るのを見るためならば。
「そんなときでした。夜中の住宅街に、突如
私は【逢魔降臨歴】から顔を上げ、佐藤に指さした。
「――――」
「話は、コレでお終いだ。人のこと散々追い詰めておいて、いざ自分の番になったら醜く叫び散らかす…そんなバカな男の末路」
「コォン…」
「――――」
佐藤はずっと固まったまんまだ。立っていたはずのソファーにはいつの間にか座っており、脱力したままなにも言葉を発さない。隣で黒狐が佐藤を心配そうに見ている。
無様、だな。
「――結局私がなにを言いたいのか。それはお前が一方的に被害者面しているのが気に食わない。それだけだ」
「――――」
「それじゃあな」
その言葉を最後に、私は佐藤に背を向けてリビングを後にした。私が恨んでいる佐藤本人ではないが、とてもすっきりした。実質アイツ自体に恨みはないが、感情の抑えが効かなかった。まぁ別に罪悪感とかはないのだが。
そして私は、我が魔王と合流するために玄関へと速足で向かった。
* * * * * * * *
―――1か月後
あれから一か月。10月中旬になり肌寒くなったこの頃だというのに、一月前のことがつい最近のように感じる。
あの後、我が魔王とマホロアと玄関先で合流した私は、我が魔王がマホロアから大量に仕入れた食材を見てとても驚いたことが印象に残っている。
その際マホロアから佐藤がなにかしてないかと聞かれたが、別にアイツ自体に恨みはないしあの時の八つ当たりでかなりすっきりしたから「ない」と答えてやっておいた。
それにあのあと我が魔王からも心配された。心配をおかけして申し訳ない…。と言うより、そもそもマホロアが我が魔王を連れていったことが原因だ。何故そんな凡ミスをし、戻ってこなかったのか問い詰めたが、うまく躱されたのは納得がいかなかった。
代わりに佐藤のことをこき使っていいと許可を貰えたので、無問題だが。
アレからすっきりした気分のまま私は我が魔王に誕生日を祝われ、14歳を迎えた。本来祝う立場であるはずの私が我が魔王に祝われるとは……幸福を通り越して、なんて言えばいいのか分からない。
そして話は変わり今へ。今私は近くのビルの屋上から、地上を観察している。何故かって?それは―――、
『ふんッ!!』
我が魔王が
そして、ノイズどもと我が魔王が現れれば、必ずと言っていい確率で現れるハエどももいる。それは――、
「指令、【アポカリプス】を確認しました」
「今日こそついてきてもらうぜ」
ツヴァイウィングの【天羽奏】と【風鳴翼】。我が魔王の周りをウロチョロするハエどもの代表格の二人。アイツ等は本当に何度追い払ってもキリがない。何度我が魔王に敗けても立ち向かうその様は憐れでありながら賞賛ものだ、一種のな。
『また貴様らか…しぶといな。何故理解しない?貴様ら如きでは我に勝つことなど、ましてや一撃を入れることすらできない』
「おうおう言ってくれちゃって…。まぁ事実だから反論のしようがねぇけどな」
「何度やられようと私の使命は変わらない。いざ、
『はぁ…。―――せっかくだ。アイツの力を試してみるか…』
「……アイツ?」
天羽奏が怪訝そうな顔をすると、我が魔王が自身の右手を右横にかざす。するとその方角からオーロラカーテンが出現し、天羽奏と風鳴翼の警戒度が一気に増す。
あの二人はオーロラカーテンの先にいるものに対して武器を向け、冷や汗を流している。アイツ等も今まであのオーロラカーテンで召喚されたライダーたちに何度も苦渋を飲まされてきている。特訓はしているのだろうが、無駄な努力としか思えない。
『いでよ』
「今度はどんな奴が来るんだ…?」
「どんな敵が来ようと、今度こそ勝って見せる!」
そしてオーロラカーテンから現れる人影が濃くなっていき、全貌が露わになっていく。オーロラカーテンが消えて召喚が完了したその瞬間、遠くにいるはずの私の耳に聞こえたのは―――
『「「――――」」』
オーロラカーテンの奥から現れた謎の人物は、周りの異変に気付いたのかようやく静かになった。
―――なんだろう、アレ。なんて言えばいいんだろうか。
――ナレーション開始
逢魔響の思考が停止したため、思考停止の状態が回復するまでの間、俺がナレーションを担当する。
――俺が誰だって?俺はフォーエバーヒーローともトゥルーヒーローとも呼ばれている。まぁ短い間の関係だから気にしないでくれ。
オーマジオウが出現させたオーロラカーテン。そこから現れたのは――オタクだった。
言い方が悪く、多方面に喧嘩を売るかもしれないが、これしか表現が思いつかない。
・【白上LOVE】と黒い文字で書かれた白い鉢巻き
・白く光るペンライト
・黒いシャツの上に白い
――と言うオタク感満載の恰好をしている人物が登場すれば、誰だって言葉を失うだろう。ちなみに左目は前髪で隠れているが右目の瞳孔ガン開きであり、それが余計に氷河期の空気に拍車をかけていた。
オーロラカーテンから現れたオタク感あふれる男性は、自身の異変に気が付いたのかペンライトを持った両手を下げて、周りの状況を確認している。
その際に男性自身の情報も読み取れた。それなりに整った顔立ち、左目を隠すように伸びた髪にその髪は青竹色のメッシュがかかっている。
腰のベルトの両脇のホルダーにぶら下がっている上が色とりどりのボールがそれぞれ四個ずつ付けられており、左手首には長方形の何かがベルトで固定されており、右の一の腕にいは【ライドウォッチホルダー】に似たなにがが巻かれており、その二つの枠には上が赤、下が白の謎のボールが
男性は全体を見渡した後、その右目がアポカリプス――オーマジオウへ向けられた。その黒い瞳はオーマジオウを映してはおらず、漫画的表現で言うところのグルグル目玉になっていた。
「おい…」
男性が言葉を発する。その声はとても重く、苦々しかった。
「なにこれ?」
『―――』
「俺、ライブ会場にいたはずなんだけど」
『―――』
「それなのになんで閑静な場所にいるのかな?」
言い方は優しいが、着実にオーマジオウを問い詰める言い方に、オーマジオウはなにも言えなかった。自分が勝手に呼び出した上に、しかも相手は(おそらくアイドルの)ライブの最中だった。100%自分が悪い状況。それに加えて常識人ポジションだった知り合いの知りたくもない一面を知ってしまったと言う気まずさが、オーマジオウを無言へと追いやる。
この状況に、アイドル二人も唖然としている。
「ていうかなに勝手に呼び出してんの?せっかく推しの番が来たところで一番始めの歌、しかもボルテージマックスになりかける最後のところで呼び出すって、ホント、マジで、ナンナン?」
『――――すまん』
オーマジオウは、あまりの気まずさに謝罪の言葉を口にした。まぁオーマジオウにしか非がないからしょうがない。
こればかりは彼のプライベートに土足で踏み込んだオーマジオウが悪いだろう。
『済まない。もう帰ってくれて構わない。今送り返すから』
「は?もうこの時間で一曲目終わってるんですけど?ボルテージマックスから一気にダウンなんですがコレは。このボルテージを観客のみんなと共感しあうのが楽しみの一つなんだよ俺にとっては。周りは知らないヤツらだらけで話したこともないわけだ。だけどそんな奴らと唯一共感できるところが“推し”なんだよ。“推し”が歌い終わったあとの笑顔、興奮する観客たち。俺はこれが楽しみでライブにわざわざ通う理由なんだよ。でもそんな楽しみをお前に邪魔された。だから俺はすごく怒ってる。OK?」
『あの、すみません。ほんとにごめんなさい』
早口でまくし立てる彼にオーマジオウ状態であるはずの彼が素に戻り、謝罪の言葉を口にしている。補正が強制解除とは、よほど気まずかったんだろうな。
――おっと、そろそろ逢魔響の思考能力が戻るころ合いだ。俺はそろそろお暇しよう。まだ営業時間中だし。カンペ読むだけの楽な仕事だけど、それより今はあの漫画の続きを確認しないといけないから。
それじゃあ、【PROJECT NIYARI】のどこかでまた会おう
「―――ハッ!!」
いけない。あまりの急展開に長時間も思考停止してしまった。なんと情けないんだ私は!
私は驚きのあまり我が魔王がオーロラカーテンで召喚した男見たとき、その男にとても見覚えがありすぎて一か月前とのギャップがさらに強調されて長い時間思考停止してしまっていた。
(あの顔……どう見ても佐藤だよな…?)
そう。召喚されたオタク男の正体は、佐藤であった。遠目越しだが一か月前に会ったときよりなぜかかなり成長しており、微妙に勝っていた私の身長が大幅に越されている。成長早すぎやしないかアイツ!それに見た目も結構変わってる。佐藤の左目を隠していた髪がさらに伸びている上にその部分が青色――
『―――(響か)』
「―――ッ!?」
「なんだアイツ、急に別の方向向いて怒りだしたぞ…?」
なんで私の思考を呼んでツッコんでくるんだアイツは!?なんだ、少し見ないうちにそういう能力でも会得したのか!?なんて面倒な…。クソッ、視線が完全にこちらを向いてる。私がここにいるのがヤツらにバレるのは少々不味い。
私は着用しているマフラーの力を使い瞬間移動をし、我が魔王たちのいるところとはそう離れていない別のビルの屋上に転移した。
―――気を取り直そう。
佐藤の左目を隠している髪は青竹色のメッシュが施されていた。イメチェンだろうか。
―――いやそれよりも問題なのが、アイツ、なにがあった!?
あの意気消沈ぶりからたった一か月でどうしてああなる!?どこでどう転べばアイドルオタクに転身するんだ!?
(ダメージを与え過ぎたのか?まさかアイドルオタクになるなんて…。いや、アイツがどうなろうが私の知ったことではないが、いささかショックが大きすぎるなコレは…)
私が顔に手を当てて悩んでいると、どうやらアッチで進展があったようだ。
「なるほどォ。つまり俺を勝手に呼んだ理由は
『そう、そうなんだ。お前の実力も見てみたいと思っていたから、ちょうどいいかと思って…』
「だとしてもなんつータイミングで呼び出してくれやがったんだ。コッチはこの前
『あの……本当に、申し訳ありません』
我が魔王!我が魔王!!敬語、敬語になってます!!キャラ崩壊してます!戻ってください、威厳のあるいつもの我が魔王に!!
ていうかアイツの証言から察するに【天を貫く髪】と【伝説の超野菜人】に殺されかけた後に【不滅の神の才能】に煽られまくった挙句【ドM天人】にその感想を聞かれたって、どんな地獄のコンボだ。我が魔王が低姿勢なのも、そいつらの異常性を理解しているからなのだろうか――?
「おーい、アタシ等のこと無視すんなー」
「そろそろ話を切り上げてほしいのだけれど」
「あん?」
アイツ等!ナイスタイミング!!いつもはウザイアイツ等だが今回ばかりは助かった!もうこれ以上我が魔王に醜態を晒させてなるものか!!
「……【ツヴァイウィング】…お前らに興味はない。失せろ」
「おーおー。一応アタシ等のこと知ってはくれてるのか。うれしいねー」
「まぁな…。ただそれだけだ。アイドルは“推し”以外興味はない」
と、佐藤のヤツはバッサリと切り捨てた。今私のいる位置からは佐藤の背中側であり、そこから白い狐耳の女の子の全体像がプリントされている。アレが佐藤の推しだろうか。名前もローマ字でプリントされてはいるが、見たことも聞いたこともないため、どこかの世界のアイドルなのだろう。そもそもこの世界にケモミミなんていないからな。
――今なぜかイラッとしたのは何故だろう。
「まぁまぁそう言わずにさ。話は聞いてたよ、アンタ、ライブ中に無理やり連れてこられたんだって?中途半端に聞いて残念だろうよ。だからさぁ…アタシ等の“歌”で満足させてやるよ。いくぞ、翼」
「奏……えぇ。とことん付き合うわ。聞きなさい、防人の歌を!!」
互いに武器を構える天羽奏と風鳴翼。なに勝手に熱くなってるんだか…。
「だったら……八つ当たりついでだ。お前らぶちのめす。【クロス】!」
「コォン!!」
佐藤が懐から謎のカードを取り出すと、そこから光の玉が飛び出し大きくるとあの黒狐が姿を表した。あの狐、普通の狐ではないとは思ってはいたが、やっぱりそうだったか。まぁ九尾の時点で普通ではないが。
「狐…?しかも九尾…」
「今、カードから…」
「いくぞクロス」
「コン!!」
佐藤は懐から黒い物体を取り出すと、腰に装着した。そうするとベルトが展開され、佐藤の腰へと装着される。
アレは、変身ベルト?あのベルトの中心には黒くて青い――
――黒くて青竹色の、禍々しい狐のマークが刻印されていた。面倒くさいなアイツ!!なんで私の場所を把握してるんだ!!
「たくッ……」
佐藤はそのまま右手をかざすと、黒い
佐藤はその物体のグリップ部分を持って、左手で物体を引っ張ると、物体が二つに分離した。
物体から流れる不協和音に、思わず顔を顰める。佐藤はそのまま左右に持った物体をベルトにセットする。
そこからさらに酷くなる不協和音。ここまで離れているのに聞こえてくる辺り、やかましい。遠くのものも見て聞こえるというのも考えモノだな。
ベルトが百八十度回転すると、ベルトにセットした物体が展開し黒と青竹色の九尾の狐となり、中心の狐の目が紫色の光る。そのまま右側のグリップ部分を押すと、9本の尻尾の部分から紫色の炎が噴射される。
瞬間、黒い煙と共に佐藤の背後に円形の機械のようなものと右側に【X GEATS】とロゴが浮かび上がる。そしてそのままそのロゴが消えると上半身の鎧へと変化する。
さらに佐藤の左側にいた狐が突如遠吠えを上げると黒と青竹色の炎を纏って空中を走り、二色の炎に焼かれるとその姿をロボのような見た目へと変化させた。佐藤の周りをグルリと一周すると、それと同時に後ろの機械と連動するかのように上半身の鎧が左側に移動し下半身の鎧へと変化する。
狐が――姿を変える。それは、まるで上半身の鎧。
黒狐が変化した上半身の鎧と、下半身の鎧。その二つを佐藤の背後から現れた9本に枝分かれした黒い尻尾のようななにかが佐藤とともに鎧を包み込むと、一気に爆ぜる。
そこにいたのは――黒い狐だった。
黒と青竹色の炎を纏いながら、それが沈静化すると姿が鮮明に見えた。黒と青竹色に、紫色の複眼の狐の全身鎧。さっき尻尾のように見えた、9枚に枝分かれしたマント。両手に持った二振りの剣。
ここからでも感じる、危険な気配。アレは、一体―――
「黒い、狐…?」
「貴方は、一体…?」
ツヴァイウィングの二人が問いかける。その質問に佐藤は――こう答えた。
『【仮面ライダー
右手に持った剣先をあの二人に突き付けて、派手に自己紹介をする。
『それじゃあ…行かせてもらおうか!!』
初手を取ったのは佐藤――クロスギーツだ。クロスギーツは右手に持った武器のレバーを引っ張り、右手の剣で左手に持った剣についているボタンを押し、二振りの剣に黒と青竹色の二色の炎と電撃が纏われ――
『おらッ!!』
斬撃として、放った。
「「―――ッ!!!」」
クロスの字で放たれた斬撃はあの二人を襲うが、二人は間一髪で回避。だがその代わり斬撃はそのまま通過し、後ろの建物に直撃。その結果――後ろの建物は一瞬にして崩壊、爆破した。
「うそだろ…」
「あの一撃で…」
『おいおい避けるなよ。建物が可哀そうだろ。仕方ねぇな…』
クロスギーツが右手に持っていた剣を地面に突き刺し、右手を崩壊した建物に向けると、鐘の音が鳴り響くと同時に瓦礫が青色の光に包まれ時が戻るかのように崩壊前のビルがそこにあった
「はっ!?ぶっ壊れた建物が、一瞬で…」
「こんなの、まるで…アポカリプスーー」
『違う。コレは神の力』
クロスギーツが速攻で拒否し、訂正する。
神の、力…冗談だとは思いたいが、目の前で起きたことは間違いなく神の所業の一端と言えるだろう。アイツ、いつの間にこんな力を…。
『驚いたな…まさか神の力……【ギーツⅨ】の力を習得しているとは…』
『習得?違うなぁ。奪ったんだよ。化けの皮被った狐の神様からなぁ…』
『――――』
奪った…?神から、力を?なるほどな、道理でこんな短期間であんな力が手に入るわけだ。自分の者じゃなかったというのなら納得だ。
―――だが、あんな力を持っている神から力を奪うなど…並み大抵のことではないはず。アイツも、強くなったということなのか?
「へぇ~……話はよく分からねぇけど、お前の力じゃないってか…。んなニセモンの力に敗けてたまるかってんだ!!」
天羽奏が地面を蹴って槍をクロスギーツに向けて振るう。だが、アイツは右手の剣でその攻撃を軽くいなし、天羽奏の腹に蹴りを入れる。
「グハァッ!!」
「奏!!」
『偽物の力、か。だったらこの力、その身で確かめてみろ!!』
今度はこちらの番と言うようにクロスギーツの方からあの二人の方へ突進していく。まだ体制の立ち直っていない天羽奏の代わりに風鳴翼が前に立ち、刀でクロスギーツの攻撃を防ぐ。
「お、重い…ッ!」
『はいバーン』
「ウッ!!」
バキュン!と銃撃音が鳴り響く。風鳴翼は片膝を付いて、焼き焦げたアーマーの一部に手を当てる。
「今、のは…?」
『この剣は超電磁砲の役割も兼任しててね。腹がガラ空きだったから、つい』
「貴様…!!」
「てめぇ!!」
天羽奏が怒りながら槍を振るい、その攻撃を後方に跳んで避けるクロスギーツ。
「これでも喰らいやがれ!!」
天羽奏が槍の穂先を回転させ竜巻が発生し、クロスギーツの全身を飲み込んだ。しかし――
『効くかよぉおお!』
「嘘だろ!?」
まさかのまさかで竜巻をそのまま突っ切って天羽奏に近づく。そのまま両手に持っていた武器を投げ捨てると、左側のベルトについていたバックルのハンドルを一回回した。
クロスギーツの全身から紫色の炎が噴き出し、その炎が全てクロスギーツの右拳に集約する。そしてその拳を容赦なく天羽奏に向かってぶち込んだ。
天羽奏は咄嗟に槍でガードしたようだが、その槍も貫通して天羽奏の腹に直接拳がめり込む。
「アガ…!?」
天羽奏の体が後方へと吹き飛び、ビルの壁へと直撃した際再び鳴り響く鐘の音。天羽奏がぶつかったビルの壁が青い光とともに再生をし始め、元通りになるころには天羽奏の四肢を再生した壁が拘束していた。
「これは…!?」
『そのまんまお仲間がやられるサマを眺めてろ』
「奏!くッ!!」
「なんだコレ…!!全然抜け出せねぇ!!」
『無理無理。『
「『周』…?『放出系』…?」
風鳴翼が聞いたことのない専門用語で頭を悩ませているが、書くいう私も頭を悩ませる。アイツは一体なにを言っているんだ…!?
『『周』は物質にオーラを纏わせて強度を増したりできて、『放出系』は体外でもオーラを留めることができる系統……つってもチンプンカンプンか。詳しく知りたきゃピク○ブ図鑑で調べろ』
いやメタいぞお前。
『さてと、お前には少し趣向を変えてみるとするか』
すると、クロスギーツは右手を前に突き出すと、突如右手が赤い炎に包まれる。その炎が鎮火すると、エコーのかかった女性の声と共にその手に握られていたのは大きめのゴテゴテした銃だった。
黒を基準に側面には円に十字に刻まれたマーク(スマブラマーク)が彫られており、銃口とグリップの間である中心部分は楽器のラッパの部品であるピストンバルブに該当する部分見受けられ、それが3つではなく5つあり、その5つの上部には丸い窪み、尻側にはカードなどが入れられそうな部分がある。
『相手は青い剣士……なら、コイツだな』
クロスギーツはどこからか台座に乗った一体のフィギュアを取り出すと、銃の丸い窪みにはめ込んだ。
『いってら』
音声と待機音が鳴る銃を風鳴翼に向けて引き金を引くと、銃にはめ込んだフィギュアが消失し、銃口から光の玉が発射される。次の瞬間、光の玉が等身大サイズのフィギュアのキャラクターになった。フィギュアのキャラが、実際に動いたのだ。
召喚されたのは、青髪の男だ。片手に剣を持ち、頭にバンダナを巻いた鎧の男。あの男から放たれる気迫が、只者ではないことを物語る。
『【蒼炎の勇者 アイク】。彼相手にどこまでやれるかな?』
「相手が誰であろうと……不足はない!!」
「せぇやああ!!」
風鳴翼とアイクと呼ばれた青い剣士が、ぶつかり合う。その攻防は熾烈を極め、武器がぶつかり合って火花が散り、地面のコンクリートが悲鳴を上げて崩れていく。
「ならばッ!!」
風鳴翼は蒼炎の勇者アイクから一旦距離を取り、空中へと飛んだ。空中で体制を立て直し、青い瞳が蒼炎の勇者アイクを射抜いた。
自身の周りに大量の剣を具現化し、それが一斉に蒼炎の勇者アイクへと降り注ぐ。
だが蒼炎の勇者アイクは目力に一切の緩みなく、剣を逆手に持って振り上げる。一体なにを――と思う束の間、剣から炎が噴き出し――剣を地面に突き刺した。
その瞬間、剣を突き刺した地面から――いや、正確には剣からだろうか。剣を突き刺した衝撃で剣から炎が噴き出して自身に向かっていた剣を爆風で薙ぎ払った。
アイク「――――」
クロスギーツ『すっげ』
翼「――打ち合いからして只者ではないと分かってはいたが…ここまでとは。だが、真の狙いは達成できた」
クロスギーツ『は?……あ』
風鳴翼の呟きにクロスギーツが怪訝そうに首を傾げるが、すぐにその理由に気付いた。かくいう私もそれに気づいた。
クロスギーツ――ヤツの影に、さっきの攻撃の一部であろう剣が刺さっていたのだ。
「これで貴様は動けない…。この男の次は、お前だ!!」
『うーん……バカにしてる?よっと』
だがアイツはなんの縛りも感じさせないまま後ろを振り向いてしゃがむと自分の影に刺さっている剣を引っこ抜いた。
あの技は影に小刀を打ち込んで動きを封じるというワケの分からない技だ。それを当たり前のように無効化するのは、普通じゃない。まぁ我が魔王も当然対処できるが。
「――なに!?」
『こんな小細工がさぁ、曲がりなりにも神である俺に、ましてや半人前の技が通用するとでも?』
「くッ!!」
『じゃあ続き再会。行っていいよ』
「――――」
蒼炎の勇者アイクは、瞳で風鳴翼を捉えながら歩く。剣を片手に持ち、風鳴翼への攻撃を再開する。
再び繰り広げられる熾烈な剣による争い、そしてその攻防は蒼炎の勇者アイクが防御の構えのまま後方へ下がったことにより中断される。風鳴翼は押していると思ったのだろうか、そのまま前へと突き進んだ。
―――だがアレは違う。アレは防御の構えじゃない。私にはわかる。アレは…溜めている。
「ぬぅん!!」
「ぐはっ!!」
「翼ッ!!」
瞬間、蒼炎の勇者アイクが常人では眼に視えぬほどのスピードで一直線に剣を振り、風鳴翼を通り過ぎる。
風鳴翼も流石は歴戦の猛者と言うだけあって攻撃した瞬間に咄嗟にガードしていたようだが急なことで間に合わずダメージを負ったようだ。
風鳴翼は地面に伏し、なんとかして立とうとするが、ダメージが大きすぎるのか何度も失敗する。天羽奏もなんとか壁の拘束から逃れようとしているが、オーラとやらで強化されているせいか全然ビクともしない。
『んじゃ、そろそろ切り札いきますか。よっと』
「うわっ!!」
「奏…!」
天羽奏を壁の拘束から解放し、風鳴翼の横へ転がす。突然のことと先ほどのダメージが残っているため天羽奏は起き上がれずに体が痙攣している。
その光景を確認したクロスギーツは再びあの銃を取り出すと、今度は蒼炎の勇者アイクとは違うフィギュアを三個取り出した。それを銃の窪みに装填する。
そのままクロスギーツは銃を上空に向けて放つと、3つの光の玉が放たれその光の玉が変化する。
その光の玉が変化して現れたのは、金髪に大剣を持った男性(クラウド)と茶髪のセミロングヘアーに剣を持った少年(DQ11勇者)、金の短髪に青いラインの入った赤い大剣を持った青年(シュルク)だ。
だが全員その姿は半透明であり、幽霊のようだ。半透明の男たちがクロスギーツの横に立つと同時に、さっきまで明確にその場にいたはずの蒼炎の勇者アイクの姿も半透明になった。
『さぁ、終わりだ』
クロスギーツがベルトの左のハンドルを二回回すと、騒然とした待機音が流れる。
それと同時に半透明の男たちが一斉にクロスギーツの体と重なっていき、どういうわけか先ほど捨てたはずの二振りの剣がクロスギーツの手元に戻る。念動力でも使っているのか?
『リミットチャージ…完了』
『バイキルト』
『モナドアーツ起動…【撃】』
クロスギーツが呟いたと同時にクロスギーツの体が赤い光(バイキルト)と青いオーラ(リミットチャージ)に包まれ、剣を中心に赤いオーラ(モナドアーツ)が迸ると同じに、クロスギーツ全体が虹色の光に包まれる。
『―――最後の切り札』
左側のハンドルを回すと同時に、クロスギーツが一瞬で倒れているあの二人の前に現れ、二振りの剣で二人を打ち上げた。
そう叫ぶクロスギーツの声と重ね合わさるように、蒼炎の勇者アイクの声もダブって聞こえた。
打ち上げられたあの二人は空中で斬られ、蹴られを繰り返し、最終的には蒼炎を纏った二本の剣によって地面に叩き付けられると同時に赤と黒の稲妻のようなものが発生し、あの二人は遥か彼方へと吹っ飛んでいった。
最後の攻撃の瞬間に、蒼い炎で【X】の文字が出ていたのが、印象的だ。
「―――――」
「圧巻だったな…」
私は思わずそう呟いた。明らかなワンサイドゲームで、相手に一切の猶予を与えないやり方。アイツ、明らかに強くなっている。だがアイドルオタクになった意味は分からんが。
私はマフラーを使って我が魔王のすぐ横へとワープする。
「我が魔王」
『……響か。――あの男、少し見ないうちにかなり強くなったようだな。流石はマホロアのところの戦闘員と言ったところか…』
「そうですね。我が魔王には及びませんが、強くなっていることは確かですね」
『……黒竹と言ったな。――もういいぞ。今回の埋め合わせは必ずしよう。もう帰ってくれて構わな――『ふざけんな』……なに?』
コイツ…今我が魔王に対して暴言を!!許すまじだ、アイツ如きが我が魔王に盾突くなど――!
私は怒りのあまり前に出ようとしたが、我が魔王によって止められる。
『響。落ち着け』
「我が魔王…申し訳ございません」
『俺のせっかくの休暇を台無しにしてくれたこの罪…そう簡単には晴らせねぇぞ…』
クロスギーツはベルトからバックルを取り外し、黒狐のマークを一瞬浮かび上がらせると同時に変身を解除した。
その佐藤の服装は―――変わっていた。変身前はアイドルオタク感満載の服だったというのに、黒と青竹色が中心の服装に変わっていた。
黒と青竹色のTシャツの上に膝関節まで伸びている黒い薄手のコート。そのコートの左右の二の腕辺りにはそれぞれ青竹色で四匹ずつのなにかしらの狐のロゴ、背中には青竹色でクロスギーツのライダーズクレスト、右胸の部分には青色でマホロアのロゴマークが描かれている。
そのコートの上にさっきのオタクの恰好の時に着けていた左手首の長方形の何かと右一の腕に巻かれている【ライドウォッチホルダー】に酷似したなにかとそれに填まっている二つのボール、ベルトで固定された両脇のホルダーに着いている左右四つずつの色とりどりのボールはそのままに。
左手には青竹色の矢印型宝石の付いた銀色のリングが填められ、右手には遺伝子の模様が付いた七色に光る宝珠が填められた黒色と青竹色のグローブ。黒いズボンは当たり前で挙句の果てには靴下は黒、靴すら黒と青竹色で構成されており、ヤツの執念が伺える
―――そしてなにより、ヤツの顔。さっきの恰好の時は左目を隠していた青竹色のメッシュの部分が完全にオールバックしており、左目につけられた痛々しい切り傷が露わになっている。
そしてその左目は右目の黒い瞳とは対照的に、青竹色に輝いていた。いわゆるオッドアイと言うものだ。
「だから俺は……この世界で理想の一歩を辿る」
ヤツの言葉で我に返った。行けない、考えることだけに没頭しては駄目だ。
ヤツはまるで悟りを開いたかのように両手を天に向かって広げる。ポーズがウザい。神にでもなったつもりか。だが私の思考も佐藤の次の声によって阻まれる。
「全ての世界の狐と言う狐は、人間年齢換算でランドセル背負ったロ○シ○タからハロンパス背負ったジジババまで、全部俺んだぁああああああ!!!」
「ヴェハハハハハハハハ!!!!」
「『―――――』」
この時、私は言葉を失った。それは我が魔王も同じであった。私はおそらく今人生で類を見ないほどの憐みの表情をヤツに向けていることだろう。アレほど憎んだ連中の一人と同じ顔の別人であったとしても、あの変わり様は流石に堪える。
――もしかして私のせいだったりするのか?あの時きつく言い過ぎたからか?それで歪んであんな訳分からない感じになったのか?―――いや、そんなわけない。考えすぎだ、私。
だからその時、私はポロっと口から言葉が零れ出ていた。
「佐藤……この一か月でなにがあった…?」
「あん?一か月?何言ってんだお前。アレからもう何年も経ってるだろうが」
「―――は?」
私は佐藤の言葉に疑問を抱く。アレから、何年も経っている?そんなわけがない。アレからまだ一か月しか経っていないぞ。
だが、目の前の佐藤の前回からの変わり様がその説を有力化させていく。身長も私より大きくなって、良く聴けばすぐ分かるが、声変わりしている。顔つきもより男らしくなっており、確かに何年も経っていないと現れないはずの変化が、この一か月で佐藤に現れている。
そんなとき疑問に思った私の横で、我が魔王が呟いた。
『…『相対性理論』だ』
「我が魔王?ソレは一体…?」
『マホロアたちは様々な世界を旅して周っている。世界が違ければ当然、時間の流れも違う。分かりやすく言えば浦島太郎と同じ現象だ』
「…なるほど」
浦島太郎は竜宮城で3日間過ごし、帰ったら地上では300年経過していた話だ。それと同じことで佐藤にも起きており、言い換えるなら私たちの世界が竜宮城で、佐藤がいたのが地上と言うことか。
「この世界の時間の流れの差異は知らねぇが…全く成長してねぇな、お前」
「一か月しか経ってないんだから当たり前だろうが!!って、そうじゃなくて。佐藤、お前、なにがあった?なにがあったらそんな風になるんだ!?」
「答える義理も義務もねぇが、強いて言うならそうだな…俺は狐の素晴らしさに気付いた」
うん。何言っているのかさっぱり分からないぞ。
「俺は知った…この全て森羅万象……狐以外のモノは全て有象無象のカスに過ぎないと」
どうしよう。切実に頭の医者を勧めるべきなのかもしれない。
「だからこそ、せっかくの
佐藤は右手を突き出すと、突如その手に黄金の剣を顕現させた。黄金と黒で構成されたその剣の
「【オージャカリバーZERO】…この力を使い、お前を…ぶっ潰す」
その瞬間、膨大な風が吹き荒れ、佐藤のコートがバサバサと揺れ――太陽が覆われた。私と我が魔王が慌てて空を見上げるとそこには――漆黒と黄金に輝く物体があった。
『……【コーカサスカブト城】』
隣で我が魔王が呟いた。あの物体の名前のようだ。―――城(ジョウ)?今、我が魔王は城と言った。私が聞き間違えるはずがない。我が魔王の言う通りなら――アレは、城(シロ)?
すると、あの城の腹の部分が開き、そこから漆黒と黄金の巨大な昆虫が姿を表した。
クワガタ、トンボ、カマキリ、チョウチョ(パピヨン)、ハチ、テントウムシ二匹、クモ二匹、アリ、カブト、サソリ(スコーピオン)、バッタ、ダンゴムシ、テントウムシ、ムカデ、セミが確認できた。
よく見ると、あの巨大な昆虫――全てロボットだ。巨大な昆虫型ロボットの軍勢が、私の視界の半分以上を覆い尽くしていた。
「恐怖しろ!そして慄け!一切の情け容赦無く、一木一草尽く!貴様を討ち滅ぼす者の名は、【ニヤリ】!!狐と言う狐全てを愛でる者!!I LOVE FOX!!」
「ハハハハハハ!!」と笑い叫ぶ佐藤を見て、もはやなにも言葉が出てこない。佐藤の呼び名が【黒竹】から【ニヤリ】と別のモノに変わっていたが、そんなことを気にする余裕がないほどに私は放心状態だった。
佐藤は右手の剣を頭上に勢いよく掲げると、荒れた息で叫んだ。
「さぁ…降臨せよ!!ゴッドキングオージャーZER――」
その時だった。佐藤の腰から突如8本の赤い光の線が飛び出たのだ。その赤い光の線は地面にぶつかると同時に、8匹の狐の姿へと変化した。
それは、4匹の子狐と、二足歩行の狐2匹、九尾の狐が2匹と言う構図だった。その狐たちが現れた瞬間に、4匹の子狐が剣を掲げている佐藤に対して飛びついた。
「グホォ!!」
4匹の猛攻に佐藤は野太い声を上げながらダメージを負い、手に持っていた剣を地面に落とした。
佐藤は痛みに身をよじりながら、4匹が離れていくと同時に冷気を纏っている九尾の狐が動いた。
その狐の口から放たれた氷のビームが佐藤に直撃し、佐藤は氷漬けになった。
すると今度は熱気を纏っている方の九尾の狐が炎を纏いながら回転し物凄い勢いのまま氷漬けになった佐藤に突進し、氷が砕け散るとともに佐藤の体が方向性を失い空中でキリモミ回転している。
そこですかさず、二足歩行の狐二匹が空中向けて飛んだ。
二匹の狐が空中で何度も何度も佐藤のことをひっかいて攻撃を繰り返す。最終的に地面に叩き付けられた佐藤は、ピクリとも動かない。え、アレ死んでないか?
二匹の狐の内、青と黒で構成された方の狐が佐藤に近づき、佐藤の服の襟を掴んだ。
(あ、持って帰ってくれるのか?正直助かる…)
そう思った私だったが、すぐさま考えが甘かったことを知る。
あの狐は佐藤の服の襟を掴むと、佐藤の体を空中に投げた。
本当に、ここで追い打ちをかけるなんて思わないじゃないか
空中に投げ出された佐藤の顔面に、後ろにいた灰色と紫色で構成された狐(ヒスイゾロアーク)のストレートキックが直撃した。
続いて青黒の狐(ゾロアーク)の繰り出したアッパーカットが佐藤の土手っ腹に炸裂する。
今度は二匹の連携によって佐藤の体が圧迫され嫌な音が聞こえた。
次も二匹の手によって佐藤の体が地面に叩き付けられる。
ぶっちゃけて言うがかめ○め波だ。二匹の狐がかめは○波を撃った。オーバーキルと言う言葉が生易しいほどに感じるまでにボロボロになった佐藤を今度こそ青黒の狐は荷物を担ぐように抱え、灰紫の狐は佐藤が落とした剣を拾い、こちらの方を向いて、一礼した。
言葉はなかったが、「ウチのが本当に申し訳なかった」と言うのがヒシヒシと伝わった。
あの狐たちはそれぞれの子狐たちを抱えたとき、クワガタ型のロボットが私たちと狐たちの前を通り過ぎた。通り過ぎた後、狐たちは既にいなかった。
あのクワガタロボットは他のロボットとともにあの城の中に収納されると同時に、城が空高くにまで飛んでいき、やがて姿が見えなくなった。
「―――――」
情報多可すぎて、まずどこからつっこめばいいのか分からない。なにがどうしてこうなった!?
『アレは…あのネコ(?)の技…。狐はイヌ科のはず…何故あのネコ(?)の技を…』
「――我が魔王?」
私が唖然としていると、隣から我が魔王の呟きが聞こえた。だが、呟きのほとんどは私が思考停止していたために聞き逃してしまった。
我が魔王はしばらくの沈黙の後、顔を私の方へと向けた。
『―――響』
「―――どうかなさいましたか?」
『もう彼を
「ございません」
とりあえずもうアイツに合うのは二度とごめんだ。
―――これが、14歳のころの私のものがたり。
「『―――ッ!?』」
突然声の聞こえた方向を、私と我が魔王で同時に振り向いた。声の発生源は、私たちの後ろだった。
その方向には――一人の男が、ライトグリーンとピンクのベルトを巻き、片手に大きな長方形のモノを持っていた。そしてその男の後ろの空中には、【GOD MAXIMUM MICHTY X】と書かれたホログラム画面と胴体の巨大な顔が印象的ななにかが浮いている。
『……【ゲンム】』
目の前の男は、我が魔王を呼び捨てにして高笑いをし始めた。コイツ……我が魔王に何たる不敬を…!
だが、我が魔王の呟きで私は少しだけ正気に戻る。我が魔王は今アイツのことを【ゲンム】と呼んだ。この名前には聞き覚えがある。
【仮面ライダーエグゼイド】に類する仮面ライダーにして…その物語の元凶【檀黎斗】。アイツがそうだと言うのか…!?
よく見れば、アイツが腰に巻いているのは【ゲーマドライバー】で手に持っているのは【ガシャット】だ。
『何故、貴様がここにいる…?』
「貴様がニヤリを呼び出す際に出現させたオーロラカーテン。アレに便乗させてもらったのさァ…」
『あの時か…』
あの時か!!だが、オーロラカーテンから出てきたのは佐藤だけだったはず…。
「今の私がなんなのか、忘れたわけではあるまい?私はオーロラカーテンを通過する直前、自身の体を分解した。そして貴様らの見えないところで体を再構築すれば、今の状況の出来上がりと言うワケだァ…」
『……とするとお前、二ヤリと一緒にライブ会場にいたのか…』
―――…あ、そう言われればそうなる。檀黎斗。私の知っている限りコイツがライブ会場に行くような性格ではないと思うのだが…。こういう一面もあったのか。
「無駄話はここで終わりだ…。今度こそ…貴様を削除する!!」
檀黎斗はゲーマドライバーにガシャットを装填しレバーを開放すると、とてもやかましい音声が流れる。ていうか最後に至っては完全な自画自賛じゃないか!!
『なにをするかと思えば…またその
「フッ。貴様相手になにもせずに挑みに来たと思ったら……大間違いだ。見るがいい!私の才能…そして“愛”の集大成を!!」
何故そこで“愛”?どこから出てきたんだ“愛”。
気持ち悪い顔をしながら、檀黎斗は全く別のガシャットを取り出した。あのガシャットは…【ハイパームテキ】か?いや、距離が離れていても分かる。アレは、色が違う。ハイパームテキは黄金色だが、あのガシャットは紫と黒で構成されている。
『なんだ…そのガシャットは?』
「自身が主人公となり天下統一を果たし栄光のエンディングを迎える究極の人生ゲーム」
ゲームの解説をしたあと、もう一つのガシャットを起動した檀黎斗はポーズを取り、高らかに叫んだ。
二つのガシャットを合体したヤツは、両手で二つのガシャットのスイッチを押し――ガシャットエングレイブが開いた。
その瞬間、ヤツの後ろに浮いていた【ゴッドマキシマムゲーマ】が檀黎斗のことを格納すると、突如ゴッドマキシマムゲーマが紫色の光を放ち、檀黎斗を上空に射出した。
飛び上がった檀黎斗は紫色の光を纏いポーズをとり(掴み取れ栄光のエンディング)、続けて紫の光が檀黎斗の周りを回転して包むと同時に檀黎斗が回転し最終的に灰色のジャケットを広げるとその下には『宝条永夢ゥ!』のシーンの切り抜き――要するに檀黎斗の上半身のプリントに字幕には『宝条永夢ゥ!』ではなく『神だァ!』と書かれたクソダサTシャツを見せびらかし(最上級の天才 檀黎斗)髪を掻き上げると同時に変身が完了(ゴッド無双ゲンム)し、地面に着地した。
変身した檀黎斗の姿は、さながら【仮面ライダーエグゼイド ムテキゲーマー】の色違いと言ったところだ。差異があるとすればムテキの額にあった十字星の代わりに銀色のM字の前髪があり頭部両端の角が歪に伸びて左角と両肩が乱れたピクセルの造形になっていることだろうか。
あの姿はさしずめ、【仮面ライダーゲンム ゴッド無双ゲーマー】と言ったところか…?
……それにしてもさっきの変身待機音もなかなかにウザかったが、進化系のためからこちらの変身音のほうがさらにウザい。あのクソダサTを見せびらかす必要があったのだろうか。最後の『神だ』に至っては檀黎斗の地声だ。それになにより―――
『……なんだ、アレは?』
我が魔王の呟きが隣から聞こえる。かく言う私も同じ感想だ。私と我が魔王の視界に映るもの、それは――
“無双神”の文字と変身音の字幕!
見せびらかすウザ顔の檀黎斗のホログラム!
ちなみに文字と字幕はこんな感じである。
(そンう)となっているのは漢字の“双”の間にゲンムがいることを表している
かつれこれまでこんなにクソウザくてクソダサイ変身シークエンスがあっただろうか。いやない。一体どこからツッコめばいいのか、ツッコミどころがありすぎて分からない。
それにゲンムの背後に映し出されている変身音の中で一つだけ大きく映し出されている『最上級の天才 檀黎斗』がヤツの自己主張の激しさと絶対的な自信が強調しているのが救えない。
揃って思考停止していると、時間経過で消える仕様なのか空に映し出された字幕とホログラムが消えた。
『さぁ……ゲームスタートだぁ!!』
左手に【ガシャコンバグヴァイザー】をチェーンソーモードにし、右手に【ゾンビブレイカー】を装備――って、それ別系列の仮面ライダーの武器だろうが!
私の心のツッコミを無視してゲンムは、なにか叫び始めた。
ゲンムがそう叫んだ瞬間、ゲンムの頭上に氷でできた巨大なハンマーとその周辺に巨大な電撃玉が複数現れ、ゲンムより先にそれらが我が魔王と私に攻撃を仕掛けた。
『フンッ!!』
先に氷の巨大ハンマーが私たちに向けて振り下ろされたが、我が魔王が右手を突き出した瞬間黄金の衝撃波が放たれ巨大ハンマーを欠片も残さず粉々に砕いた。
だがその瞬間、
「――うッ!!」
頭上から巨大な
不味い、このままだと私は我が魔王の邪魔になる!!我が魔王も、私が隣にいれば集中して対応できないだろう。私はマフラーを使ってこの場から離脱しようとするが――、
『どこへ行くゥ!』
全方向から、巨大な電撃玉が私目掛けて飛んできた。不味い、対応できない――!!
『響ッ!!』
そんな時、我が魔王が私の前に立って腕を薙ぎ払うと、電撃玉が全て消失した。
『大事ないか?』
「我が魔王…申し訳ありません!私のために、お手を煩わせてしまい…」
『話はあとだ…。ッ!!フンッ!!』
我が魔王が急にしゃがんだと思ったら、我が魔王が地面に手を着くと同時に私たちを守るように分厚い氷の壁が地面から生えた。ウィザードのディフェンドだ。
訳も分からず困惑していると突如、空中から私たち目掛けて複数の炎の龍が一直線に攻撃してきた。
龍の威力が凄まじいのか、我が魔王が作った氷の壁が徐々に溶けてヒビが入ってきている。
『ハァッ!!』
再び我が魔王が腕を振るうと、緑と黒の竜巻が私たちと覆って壁となり、同時に氷の壁と炎の龍を巻き込んでやがて消失した。ダブルの力か…。
『よく気が付いたな。今のフェイントに』
『この技は…』
『そう!!カービィの能力たちの中でもさらに強力な【スーパー能力】!!先ほどの攻撃は【ギガントハンマー】と【スノーボウル】を組み合わせた【ギガントスノーハンマー】!!氷で生成したギガントハンマーを地面に叩き付け、ハンマーの冷気で生成した巨大氷柱を衝撃で落とし、氷柱が地面に落ちた際に氷の棘を展開するゥ。』
『――――』
『そして今見せたのが【ドラゴストーム】と【ミラクルビーム】を合体させた【ミラクルドラゴストーム】!!発動当初はオリジナルのビーム弾と遜色ないが、本命は効果時間が切れた後!!ビーム弾が爆破または消失した場所を起点に、敵目掛けてドラゴストームをお見舞いするゥ!!初見殺しだァアアアアアアア!!』
『随分と、気前よく教えてくれるではないか…』
『一度見せた後に隠してもなんの意味もない。……さて、逢魔響ィッ!!』
と、急に私のことをゲンムが指名した。おい、チェーンソーで私のことを指すな!!
『キミが変な気を起こさぬ限り、私はキミを傷つけるつもりはない。だから見ているがいい!!キサマの主が私に倒されるサマをなァ!!ヴェハハハハハハハハ!!!』
「貴様…!!」
『よい…響』
「我が魔王!?」
檀黎斗の言葉に堪忍袋の緒が切れかけた私の理性を繋ぎとめたのは、我が魔王だった。
『ヤツに私は倒せない…何故ならば、私は生まれながらの王だからだ』
「我が魔王…」
『貴様が王なら私は神だァアアアアア!!』
負けじと檀黎斗も大声で奇声を放った。五月蠅すぎる…。
『それに…貴様が何故カービィのコピー能力を扱えるのかについても…気になったのでな。聞かせてもらうぞ』
『
ゲンムが手を空に掲げると、ゲンムを中心に地面が毒々しい色に変化していき――ていうか実際溶けてないか、コレ?!
徐々にその勢いは増していき、変な色をした粘液やら毒々しい色の煙などがゲンムを中心に充満していく。
『ポイズンクロニクル。疫病と毒のディストピアとなった星を救うゲーム。そしてこの毒を…フンッ』
ゲンムは、持っていたゾンビブレイカーを自分の足元に放り捨てた。するとどうだろう。あの毒たちがみるみるとゾンビブレイカーの持ち手の部分へと吸収されていくではないか。
『…そうか。ゾンビブレイカーの持ち手、【ブレイクグリップ】には毒を吸引する役割がある。そして貯めた毒を、必殺技にて一気に放つ…』
『そう。……だがこんなものは序の口だ。これからキサマには、多種多様な攻撃が、その身に襲い掛かるのだからなァ』
『貴様の攻撃は……私には届かない』
『そんな強がりを言えるもの……今のうちだァアアア!!【ウルトラソード】、発動!!』
ゲンムが手を掲げると、ゾンビブレイカーが一人でに浮き上がりゲンムの右手に収まり、ゾンビブレイカーを頭上に掲げると、ゾンビブレイカーが巨大化した。
『……ゲームの序章は始まったばかりだ…。コレでくたばってもらっては困る…。是非、耐えてみせてくれ…』
巨大化したゾンビブレイカーの【デッドリーポンプ】が、一人でに動き始める。
「我が魔王…」
『問題ない。だが、あの毒が散らばるのは面倒だな…。浄化するのが手っ取り早い』
我が魔王は、一つのウォッチを取り出した。白色が目立つウォッチだ。アレは――
【仮面ライダービルド・ジーニアスフォーム】のウォッチだ。それを起動した後、【ジオウサイキョーギレード】が現れ我が魔王の右手に収まった。
ジーニアスウォッチをジカンギレード部分のライドウォッチスロットに装填した。
我が魔王がジオウサイキョーギレードを両手で構えると、“ジーニアス”と書かれた長大な光の刃が出来上がる。その長大な刃は白くて淡い光も放っている。
【仮面ライダービルド・ジーニアスフォーム】の変身に必要な【ジーニアスボトル】。アレには直接セット部分を刺す事で毒などを解毒できる力がある。それを利用して、ゲンムの力を相殺するつもりだ。
『準備はできたか?なら……行くぞォオオオオオ!!』
『―――来いッ!!』
我が魔王とゲンム――両方の武器が、衝突する。
――続かない
これにて、【逢魔時王と一人の歌姫の従者】と【PROJECT NIYARI 始まりの軌道】のコラボ小説は終わりになります。
不完全燃焼だと思う人もいるでしょうが、ゲンム・ゴッド無双ゲーマーVSオーマジオウのバトルは完全にオマケのつもりで書いたので、これで終了です。
だけど、勝敗だけならしっかりしてます。
このお話は過去のお話なので、本編にて響と総悟がピンピンしていることから考えると、勝敗は言わずもがなです。やっぱりオーマジオウは最強なんだァ…。
ゲンム・ゴッド無双ゲーマーの更なる活躍が見たい方は、【PROJECT NIYARI 始まりの軌道】の方も是非読んでみてください!
まぁまだゴッド無双ゲーマーどころか檀黎斗すら登場してないんですけどね…。
ちなみに終始響視点で物語を書いたので、ゲンムゴッド無双ゲーマーの姿の詳細は書いてませんが、無双ゲーマーと完全に同一です。響は無双ゲーマーのことを知らないので、ムテキゲーマーに例えていました。
いつかのお楽しみということで…ここまで読んでくれてありがとうございました。
評価・感想お願いします。
公開設定 二ヤリのポケモン情報一覧
ゾロア(色違い) ダークボール
ヒスイゾロア(色違い) マスターボール
ゾロアーク(色違い) ムーンボール
ヒスイゾロアーク(色違い) ウルトラボール
ロコン(色違い) ハイパーボール
アローラロコン(色違い) プレミアボール
キュウコン(色違い) ゴージャスボール
アローラキュウコン(色違い) プレシャスボール
ライドウォッチホルダーに酷似したものに填まってるボール
?????(色違い) モンスターボール
※進化条件 なつき進化
????(メガストーン) モンスターボール
・二ヤリはオシャボ目的で特別なボールをなにも考えず使っているので、深い意味はない。
・二ヤリのポケモンは全て黒、青、紫、灰色などの寒色系の色のポケモンである。
* * *
ちなみに二ヤリの左手首についている長方形のものの正体は【ガッチャードローホルダー】である。
【フィギュアーツスマブライザー】
入手経路不明な二ヤリの武器の一つ。ラッパラッターよろしく、鍵の代わりにフィギュアを装填する(窪みに鍵の差し込み口も存在している)ことでファイターを召喚する。ファイターの召喚以外にも、グランドジオウよろしく使用者本人がファイターの力を使うことも可能。
さらにはカードの装填部分も存在しており、ここにカードを入れることによってカードに応じたモノを召喚可能。さらにはグランドジオウ同様に力を使える。
起動音声はアルケミスドライバーのような感じの起動音がそのままCV:【古賀英里奈】さんになっただけ。
【フィギュアーツスマブライザー】と【ゴッド無双ゲーマー】を自分の小説で使ってみたいという方はDMください。DMくれた際、現時点で考えてる設定とか教えるので。
それと設定を貸した場合は活動報告にその方の“ユーザー名”と“出てきた小説のリンク”を貼って投稿させていただきます。